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行政事件訴訟法第31条

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

法学コンメンタール行政事件訴訟法

条文

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(特別の事情による請求の棄却)

第31条
  1. 取消訴訟については、処分又は裁決が違法ではあるが、これを取り消すことにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において、原告の受ける損害の程度、その損害の賠償又は防止の程度及び方法その他一切の事情を考慮したうえ、処分又は裁決を取り消すことが公共の福祉に適合しないと認めるときは、裁判所は、請求を棄却することができる。この場合には、当該判決の主文において、処分又は裁決が違法であることを宣言しなければならない。
  2. 裁判所は、相当と認めるときは、終局判決前に、判決をもつて、処分又は裁決が違法であることを宣言することができる。
  3. 終局判決に事実及び理由を記載するには、前項の判決を引用することができる。

解説

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Wikipedia
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ウィキペディア事情判決の記事があります。
行政処分や裁決が違法だった時、裁判所はこれを取り消すのが原則だが、「取り消すと著しく公益を害する(公共の福祉に適合しない)事情がある場合」には請求を棄却できるといういわゆる「事情判決」の制度を定める。なお、棄却できるのは取り消し請求の訴えのみであり、違法を原因とした損害賠償の請求等は、当然この対象ではない。

参照条文

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判例

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  1. 選挙無効請求(最高裁判決 昭和51年04月14日)憲法第44条
    衆議院議員選挙が憲法に違反する公職選挙法の選挙区及び議員定数の定めに基づいて行われたことにより違法な場合において行政事件訴訟法31条1項の基礎に含まれている一般的な法の基本原則に従い選挙を無効とする旨の判決を求める請求を棄却するとともに当該選挙が違法である旨を主文で宣言すべきものとした事例
    衆議院議員選挙が憲法に違反する公職選挙法の選挙区及び議員定数の定めに基づいて行われたことにより違法な場合であつても、それを理由として選挙を無効とする判決をすることによつて直ちに違憲状態が是正されるわけではなく、かえつて憲法の所期するところに必ずしも適合しない結果を生ずる判示のような事情などがあるときは、行政事件訴訟法31条1項の基礎に含まれている一般的な法の基本原則に従い、選挙を無効とする旨の判決を求める請求を棄却するとともに当該選挙が違法である旨を主文で宣言すべきである。
  2. 土地改良事業施行認可処分取消(最高裁判決 平成4年01月24日)行政事件訴訟法第9条,土地改良法第96条の2第1項
    土地改良事業の工事等が完了して原状回復が社会通念上不可能となった場合と右事業の施行の認可の取消しを求める訴えの利益の帰すう
    町営の土地改良事業の工事等が完了して原状回復が社会通念上不可能となった場合であっても、右事業の施行の認可の取消しを求める訴えの利益は消滅しない。

前条:
第30条
(裁量処分の取消し)
行政事件訴訟法
第2章 抗告訴訟
第1節 取消訴訟
次条:
第32条
(取消判決等の効力)
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