高等学校物理/物理II/バンドギャップ

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(うろ覚えなので、訂正してください。)
※ 高校物理の検定教科書や参考書とかに、バンドギャップ理論の結果だけが書いてあるので、その導出の方針も、本ウィキブックスでは記述する。


「バンドギャップ」の正体は何か?[編集]

量子力学の基本方程式である「シュレーディンガーの方程式」という微分方程式を立てるさいに、その対象の物理現象にあわせて、変形する必要がある。

量子力学で結晶格子をあつかう場合、原子が周期的な並んでいるために、結晶構造がどの直線方向にも周期的である事から、それらの現象を方程式としては、直線方向に周期的なポテンシャル(電位や位置エネルギーのようなもの)条件のもとに、シュレーディンガー方程式を変形して解く必要がある。

なお、シュレーディンガーの方程式を、結晶格子の構造のような直線方向の周期的なポテンシャル条件に変形した式のことを「ブロッホの式」という。また、この「ブロッホの式」の結果から得られる様々な結果が、「ブロッホの定理」などと呼ばれる。

「シュレーディンガーの方程式」および「ブロッホの式」を解く計算は、なかなか難解であるので、計算によらずに図的に解を求めたい。

なので、その式の結果だけを、分かりやすく図示する必要がある。

「ブロッホの式」についての計算結果の図が、「バンドギャップ」であり、参考書などに書かれている、あのバンドギャップの図である。(2015年ごろに買った現在、市販の参考書には、バンドギャップの図が書かれている。しかし、2014年ごろに発売された検定教科書には、書かれてない。)


「バンドギャップ」とは、単に「ブロッホの式」の結果を図示したものにすぎないので、けっして、あのような形状の外形や内部形状をしている半導体や金属結晶などの実物が、つねに存在しているのではない

また、ブロッホの式の計算では、直線上に1次元的に周期的に並ぶ、無数の原子核のあつまりを想定しており、けっして三次元にならぶ実際の結晶構造などは想定していない。しかし20世紀の物理学では、実際の三次元にならぶ物体の物質の性質の解釈にも、ブロッホの式やバンドギャップ図を、適用している。(「実際に、直線上に1次元的に原子を周期的に並ばせたら、実験結果は、どうなるか?」という分野は、メタマテリアルなどと言われる分野であり、21世紀になって、やっと研究の盛んになった分野である。)

また、バンドギャップ図には、他にも気をつけることがある。それは、けっして物理的な形状には、対応していない、と言うことである。層状に複数の材料を並べている半導体の「バンドギャップ」の図の場合、バンドギャップの横軸方向には、層の並んでいる順序どおりにバンドギャップの横軸を描くので、内部形状と横軸方法の形が似ることがあるので、ついつい「バンドギャップ」の概念が、てっきり物理的な形状をあらわしたものと誤解してしまいかねないが、もともとは、単に「ブロッホの式」の結果を図示しただけの図である。

なので、一見すると、バンドギャップの概念は、無駄なように思えるし、ブロッホの式を解けない物理専門外の者への、妥協(だきょう)の産物(さんぶつ)のようにも思えるかもしれない。

しかし、さらに高度な物理現象として、電界などの外部条件を結晶に追加したときに、結晶の量子的な物理現象の実験結果が、電場などの条件がなかった時とは実験結果が微妙に変わるのだが、それらの追加条件の影響を考察するさいに、いちいち毎回、「ブロッホの式」を解きなおすのは、とても煩雑である。

なので、かわりに、バンドギャップの図を用いて、シュレーディンガーの方程式も解かずに、ブロッホの式を解かずに、効率的に実験結果を予測したいのである。


「シュレーディンガーの方程式」および「ブロッホの式」の解法および「バンドギャップ」の概念の導出は、高校レベルを大幅に越えてるので、解法および導出の方法は省略し、本wikibooksでは、概略のみを示す。

また、いきなり結晶構造を扱うのは難解なので、まずは化学結合から説明する。


原子の結合とエネルギーの高低[編集]

結合性軌道[編集]

結合のさいの、エネルギーについての、グラフの模式図。


まず、2個の原子のまわりの価電子どうしの結合では、「ブロッホの式」は使用しない。たった2個の原子は、結晶構造ではないので、ブロッホの式の使いようが、ないのである。

いっぽう、「シュレーディンガーの方程式」は、2個の原子の結合を解析するさいに、使用する


さて、多くの種類の原子は、結合することで、安定する。(希ガスは例外。)

とりあえず、希ガス以外の、一般の原子を考える。

ところで物理学では、エネルギーの高い状態から、低い状態へと、移動するのが、自然である。つまり、エネルギー準位が結合前は高く、結合後は、エネルギー準位が低下している。

このことから、つまり、結合前の原子はエネルギーが高く、結合後の分子は、エネルギーが低いと考えるべきである。

その事をグラフで表現すると、右図のようなグラフになる。グラフの縦軸の「E」はエネルギーのこと。

右図で、左右に「1s」とあるが、それが、原子の結合前のエネルギーである。(↑と↓の矢印については、高校範囲外なので、気にしなくてよい。)

右図では、原子(または価電子)は2個だとしている。

で、左右の「1s」のあいだに、「σ」というのが、上下2個あるが、そのうちの、下側のσが、結合後のエネルギーの値である。


化学で、このような結合によって生じる軌道を考えて、そのような軌道を「結合性軌道」(けつごうせい きどう)という。


反結合性軌道[編集]

さて、理論物理の式で「シュレーディンガーの方程式」というのがあるのだが、これを解くと、解が2つあり(最終的に2次方程式になる)、結合後のエネルギーについて、下側のσのほかに、もうひとつ、グラフのσで著したように、結合前よりも高いエネルギーの解が出て来る。

この、数式上の、エネルギーが結合前よりも高い軌道を、反結合性軌道(はん けつごうせい きどう)という。

先に結論をいうと、「反結合性軌道」は一見すると、不合理に見える解だが、じつは、この反結合性軌道が、導体や半導体における、伝導体の正体になっていく。


3個以上の原子の結合[編集]

2個の価電子の結合では、2個の解が出た。

3個の価電子の結合では、シュレーディンガーの方程式を解いたときの解の個数は、2^2=4で、4個の解が出る。

4個の価電子の結合では、シュレーディンガーの方程式を解いたときの解の個数は、2^3=8で、8個の解が出る。

説明の都合上、「3個の原子の結合」とか「4個の原子の結合」などと簡単そうに書いたが、しかし、あらためて物理的な考えてみると、あまり、物理的な意味はハッキリしない。あくまで、シュレーディンガー方程式の計算上の理屈では、3個の原子の場合は4個の解が出て、4個の原子の場合は8個の解が出る、という計算結果なだけである。

なぜ、「物理的な意味はハッキリしない」かというと、2個の電子の場合なら、価電子が2個組み合わさって、電子対になる現象に相当する。

しかし、3個の価電子は、けっして、1個の電子対には、ならない。同様に、4個の電子も、けっして、1個の電子対には、ならない。


なお、先に結論を言うが、金属原子を、このような「原子の結合の数が、3個以上の場合」に見立てるのである。
金属結晶は、自由電子が結晶内部を自由に移動できるので、自由電子を共有していると考え、それを、共有している自由電子どうしの化学結合のような現象、として、見立てるのである。
いちおう、絶縁体の原子4個や半導体の原子4個でも、シュレーディンガーの式を立てることはできるし、解くこともできるし、8個の解も出すことができる。シュレーディンガー方程式は、金属でなくても適用できるし、そもそも化学結合の解析にシュレーディンガー方程式を活用できるからである。 しかし、絶縁体や半導体の場合の、8個の解とは何なのか、あまり物理的な意味がハッキリしない。

さて、4個以上の価電子の場合も同様に、原子を増やしていくと、解の個数がふえる。

さて、金属の結晶では、原子が周期的に並んでおり、しかも、電子が自由に移動できる。(いっぽう、絶縁体の結晶では、電子が自由に移動できないので、けっして、「4個以上の多数の価電子どうしが、いくつも結合している場合」とは、みなせない。)

なので、金属の結晶では、価電子が、何千個や何万個も、おたがいに結合している、とみなす事ができる。

ともかく、シュレーディンガーの方程式を、原子が周期的に並んでいる、という条件で解いた式を、「ブロッホの式」という。なお、ブロッホの式では、計算には原子核の配置さえ分かっていればいいので、絶縁体や半導体でもブロッホの式は適用できる。

(注意。: このシュレーディンガー方程式およびブロッホの式で、周期的に並ばせるものは「原子」であり、けっして「電子」ではない。電子は自由電子として共有されるので、むしろ電子を周期的には並ばせてはいけない。なお、大学で習う「ブロッホの式」の計算では、そのような電子の周期的な並ばせは、そもそも登場しないので、あまり心配しなくてよい。)

結晶構造のように、結晶で、原子が周期的に多数個、並べば、物理学の計算としては、そこでやっと「ブロッホの式」を使用する必要が生じる。

なお、いちおう、ブロッホの式では、計算には原子核の配置さえ分かっていればいいので、絶縁体や半導体でもブロッホの式は適用できる。

このため、半導体のPN接合の接合界面の解析でも「ブロッホの式」を使用して解析するという慣習が、20世紀からの物理学教育および電子工学教育での通例であり、日本やアメリカの大学教育でも同様であるので、物理学科や電子工学科の学生は、その慣例にしたがう事になる。

(なお、直線状1次元に原子を並べたとして、ブロッホの式を解くので、実際の原子結晶の3次元的な構造には、対応しない。あらかじめ原子核の配置が分かっていることが前提になっている。)

(※ そもそも、ブロッホの式から予想される理論には、例外も多い。たとえば、遷移金属酸化物(NiOやCuOなど)からなる結晶の性質については、ブロッホの式の理論では、あまり上手く、説明できない。ブロッホの式から発展してできた理論「バンド理論」(※ ←「バンド理論」については後述する)では、金属である事が予想されるハズの物質なのに、実際には絶縁体であるという物質も発見されており、そのような物質の一例として「モット絶縁体」といわれる種類の物質が、物理学者モットなどによって20世紀中頃までには、すでに発見されていた。)


さて、このブロッホの式の計算結果によると、ある値のエネルギーの周囲に、解の個数が多くなったり、べつの値のあるエネルギーの周囲には、解の個数が少なくなったり、つまり、解の分布に、ムラが生じることが、計算によって分かっている。

つまり、周囲に解が多いエネルギーもあれば、周囲に解が少ないエネルギーもある。

この、周囲に解のないエネルギーが、バンドギャップ理論の禁止帯(きんしたい) の正体である。


いっぽう、(実際に実験結果で電子がその位置エネルギーをとってるかどうかとは無関係に、)とりあえず「ブロッホの式」では電子がそのエネルギーを帯のことを、エネルギー帯という。

つまり、「ブロッホの式」では解があっても、それは実際の実験では「電子がその位置エネルギーを取り得る可能性がありうる」という必要条件的な可能性にすぎず、かならずしも、その位置エネルギーの解を取り得るとはかぎらない。


実際の金属結晶では、エネルギー帯を、位置エネルギーのひくい順番に、電子が埋まっていく。(つまり、バンドギャップの図では、下側から埋まっていく。)


※ 絶縁体についてもバンドギャップ構造を考える通説がある。なんでも、その絶縁体のバンドギャップ理論の通説によると、「絶縁体は、バンド構造での禁止帯が広いから、絶縁体である」らしい。で、通説では、導体の場合は禁止帯の幅が狭い、らしい。半導体の場合は、禁止帯の幅が、導体と絶縁体の中間くらい、らしい。で、絶縁体では、価電子帯(充満帯)にある電子が、上の帯に励起しずらい、らしい。
※ 「絶縁体のバンドギャップ構造」や「半導体のバンドギャップ構造」を考える通説では、充満帯にある電子の励起のしやすさで、その物質の導電性が決まる、らしい。通説では、金属導体にある電子は励起をしやすいために、電気伝導度が高い、とされている。通説では、金属が励起しやすいのは、禁止帯の幅が狭いから、らしい。通説では、半導体が高温で電気伝導度が高くなるのは、熱エネルギーによって禁止帯を超えるエネルギーを電子が貰うから、らしい。
(※ 範囲外: ) なお、理系の大学などでは、禁止帯を飛び越える電子の割合について、「フェルミエネルギー」という概念をもちいて、計算する。おおまかな計算の原理は、ボルツマン因子をつかった計算である。『高等学校化学II/化学反応の速さ』で、消されてなけれえば、発展項目としてボルツマン因子を説明してあるだろう。高等な熱力学などでは「『温度が高くなるほど、○○が増える』というような現象の起きるとき、その確率はに比例する」というような理論があり、この理論の中にある式のエネルギーEを、禁止帯のエネルギー幅の値に置き換えればすれば、それがもう、ほとんどフェルミエネルギーの理論になる。なお、実際には、式の形は多少は違うし、熱力学ではなく「統計力学」の理論をもちいて物理学者フェルミなどは、その理論を導出したのだが。しかし、高校レベルでは、この程度の理解でも、充分だろう。
半導体工学の教科書でよく「フェルミエネルギー」の解説があるが、べつに半導体内部の電子にかぎった話題ではなく、金属内部の電子もフェルミエネルギーの計算対象である。


(※ ウィキペディア日本語版の『価電子帯』のバンドギャップの図が、まちがっている(2017年7月13日の時点では)。なので読者は、検定教科書や参考書で、バンドギャップの図を調べよ。)


※ よくあるマチガイとして、「金属ではバンド構造が成り立たない」(×)という誤解があり、ネット上にも、そのような勘違いが多い。しかし、上記の記述でも説明したように、むしろ結晶構造の存在こそが、バンド構造の前提となる、直線上に並んだ原子配置という必要条件である。
検定教科書や参考書では、きちんと、金属でもバンド構造が成り立つという図になっている。じっさい、数研出版の『チャート式物理II』などの参考書を読めば、バンドギャップの図の紹介で、導体のバンドギャップ図も紹介している。
「金属ではバンド構造が成り立たない」(×)という誤解をしている人の多くは、どうやら、「半導体でしかバンド構造が成り立たない」(×)のような誤解をしているようだ。彼らの勘違いの原因は、おそらく、大学の理工学部(の物理学科や電子工学科など)では、半導体の物理をおしえる科目での、さいしょのほうの授業でバンド構造を紹介するので、そのような誤解をしているのだろう。
※ 金属酸化物(NiOやCuO)をふくむ化合物では、バンド理論では、うまく性質を説明できない事が、実験的に知られている。ところで、金属酸化物の結晶には、超伝導体になるものが多い。そのため、超伝導との関連から、バンド理論も研究されている。
※ なお、固体電解質になるものも多い。

※ 範囲外: 二光子吸収[編集]

(※ 絶対に高校の範囲外なので、いっさい暗記しなくて良い。高校どころか、多くの理系大学生でも知らない分野である。)

(※ 『高等学校物理/物理II/原子と原子核』で、光電効果の説明を読んでおいてください。予備知識として、光電効果の知識が必要です。)

金属などの結晶では、通常は、バンドのエネルギー間隔に相当するエネルギーの波長(周波数)の光しか吸収しない。

しかし、そもそもバンド構造は、けっして絶対的な原理ではなく、たかが金属結晶などの一部の構造物でしかなりたたない程度の、現象である。

そのためか、とても小さい確率であるが、金属でも、バンド間隔に相当しないエネルギーを吸収する場合もあり、その結果、上下のバンド間の中間的なエネルギーに対応する波長の光を吸収する事があり、このような現象を二光子吸収という。

このため、例えば本来なら赤外光を吸収できなくて紫外光を吸収するような材料であっても、高強度の赤外光をあびせる事などにより、赤外光を吸収させる事ができる。

また、金属だけでなく、セラミックや高分子化合物などの多くの種類の分子で、とても低い確率であるが、高強度の光をあびせつづける事によって二光子吸収が起きる。

二光子吸収を起こさせるための光源として、まず(半導体などによる)レーザー光が必要で、強度のとても強い、短時間(フェムト秒)のレーザーを用いた場合に、このような二光子吸収の現象が観測される。すでに高精度の観測装置などに、二光子吸収の原理は、実用されている。

※ 範囲外: 量子ホール効果[編集]

まず、とても薄い材料では、そもそも、バンドギャップの前提になるような、三次元の結晶構造が存在しない。

そのため、wikibooks『高等学校物理/物理II/原子と原子核』で、光電効果の発展事項でも説明したように、薄い材料や微粒子では、光電効果が、従来の理論から外れるのであった。

さて、物体の表面も、薄いのである。

しかし、常温の物体表面で見られる現象では、すでに古代から人類は、さまざまな物体の表面を観察しており、今や、新しい現象は、もう残っていない。

しかし、表面ではなく、たとえば半導体トランジスタのエミッタとベースの境界面のように、2種類の物体の接合している内部の界面では、普通の方法では観察できず、そうではない。


何を説明したいかというと、「量子ホール効果」という現象を説明したい。

予備知識: ホール効果[編集]

まず、予備知識として、「量子」的ではない、通常の「ホール効果」を説明しよう。

物質は、磁場Bを掛けた時に、その物質の抵抗値が変化する。この現象(物質に磁場を掛けた時に、その物質の抵抗値が変化する現象)のことをホール効果という。しかし、導体の場合は、ホール効果による抵抗の変化量が小さい。いっぽう、半導体では、ホール効果による抵抗の変化量が大きい。

このため、現代では、ホール効果をもちいた製品は、主に半導体で作成される。

なお、ホール効果のおきる原因は、ローレンツ力によって、電子の運動がサイクロトロン運動のように円運動になり、電子から見た場合の 道のり(みちのり) が増えるからである。


ここまでのホール効果のハナシでは、物体の「バンドギャップ」も、「表面」も、なんの関係もない。また、大学1年レベルの物理の教科書で、ホール効果については、入門的な事項として、説明されている。

次の文章から、「バンドギャップ」が関係してくるハナシをする。

量子ホール効果[編集]

さて、ある種類の半導体の内部界面では、絶対零度にちかい極度の低温では、磁場を変化させていったときの電気抵抗の値の変化が、連続な変化ではなく、飛び飛びの値として不連続な変化していく事が知られており、これを量子ホール効果という。

この量子ホール効果の理解も、バンドギャップの考えから見れば( 後知恵(あとぢえ)であるが・・・ )、「内部界面」が、その定義上、とても薄いのであるから、そもそもバンドギャップが成り立たないと考えると、ツジツマがある。

(※ というか、そもそも数学では、たとえば中学校でならう「線分」には太さが存在しなかったし、立方体や直方体の「表面」にも「厚さ」が存在しなかった。)

さて、本wikibooksの上述の例(および『高等学校物理/物理II/原子と原子核』で、光電効果の発展事項でも説明した例)のように、物質がうすい等の理由で、バンドギャップが成り立たない場合、その原子の取りうるエネルギーが飛び飛びの値になるのであった。

量子ホール効果でも同様に、2種類の接合している半導体の内部界面がうすくてバンドギャップの前提条件が成り立たないと見なせば、原子のエネルギーが飛び飛びの値になるのも当然と思えるし、その結果として、抵抗が飛び飛びの値になるのも当然と思えるだろう。(後知恵(あとぢえ)であるが・・・)

日本国では、すでに、電気抵抗の測定のための国家標準器として、この量子ホール効果を利用した素子が、すでに実用化されている。

なお、磁場のもとで、ある原子や分子のエネルギーがとびとびになる場合のそのエネルギーのことをランダウ準位という。


また、なお、厚さがナノメートル単位ほどに薄い薄膜(はくまく)のように電子が二次元方向にしか移動できない状態や、あるいは、接合している2種類の半導体の内部界面のように電子が二次元方向の影響だけを強く受ける場合のような状態をまとめて、2次元電子系という。


また、なお、2016年のノーベル物理学賞では、量子ホール効果と超伝導との関係を、数学的に解明した(トポロジーなどの手法を用いた)研究がノーベル賞を受賞している。物理学者サウレス(米国)などが、この量子ホール効果と超伝導との関係の数学的研究で2016年のノーベル物理学賞を受賞した。