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刑法第230条の2

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』
法学刑事法刑法コンメンタール刑法
法学コンメンタールコンメンタール刑法

条文

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(公共の利害に関する場合の特例)

第230条の2
  1. 前条第1項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
  2. 前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。
  3. 前条第1項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。

解説

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参照条文

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判例

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  1. 名誉毀損(最高裁判決 昭和30年12月09日)
    1. いわゆる取材源についての論理慣行と名誉毀損罪における事実証明の程度
      いわゆるニュースソース秘匿の論理慣行があるとしても、それだからといつて言論、出版の業にたずさわる者に限つて特に事実の真実の証明が不充分であつても差支ないとはいえない。
    2. 刑法第230条ノ2の事業の真実性の立証責任
      名誉毀損罪の成否において、裁判所は、公共の利害に関する事実にかかりその目的専ら公益を図るに出てたるものと認める場合は、更に事実の真否を探究すべく、その探究にあたつて裁判所は一般証拠法の原則に従い当事者の立証並びに職権調査によつて事実の真実性が明らかとなつたときは無罪、真実の虚偽または不存在が認められた場合のほか真偽いずれとも決定しえないときは、真実の証明がなかつたものとして被告人に不利益に帰するのであり、この意味においては被告人は事実の証明に関し立証責任を負うものである。
  2. 名誉毀損、私文書偽造、同行使、公正証書原本不実記載、同行使(最高裁決定 昭和43年01月18日)
    人の噂であるという表現を用いて名誉を毀損した場合と刑法第230条ノ2にいわゆる事実の証明の対象
    「人の噂であるから真偽は別として」という表現を用いて公務員の名誉を毀損する事実を摘示した場合において、刑法第230条ノ2所定の事実の証明の対象となるのは、風評そのものの存在ではなく、その風評の内容たる事実が真実であることと解すべきである。
  3. 名誉毀損(最高裁判決 昭和44年06月25日)
    事実を真実と誤信したことにつき相当の理由がある場合と名誉毀損罪の成否
    刑法230条ノ2第1項にいう事実が真実であることの証明がない場合でも、行為者がその事実を真実であると誤信し、その誤信したことについて、確実な資料、根拠に照らし相当の理由があるときは、犯罪の故意がなく、名誉毀損の罪は成立しないものと解するのが相当である。
  4. 名誉毀損、脅迫(最高裁決定 昭和46年10月22日)
    名誉毀損の摘示事実を真実と誤信したことにつき相当の理由がないとされた事例
    公然事実を摘示し人の名誉を毀損した者が、摘示事実を真実であると誤信したとしても、その誤信が、係属中の刑事事件の一方の当事者の主張ないし要求または抗議等で断片的な客観性のない資料に基づくものであるときは、右誤信は相当の理由があるものとはいえない。
  5. 名誉毀損(最高裁判例 昭和51年03月23日)刑法第230条1項,刑法第230条の2
    1. 名誉毀損の摘示事実につき真実と誤信する相当の根拠がないとされた事例
      被告人以外の特定人が真犯人である旨の名誉毀損の摘示事実については、本件に現われた資料に照らすと、真実と誤信するのが相当であると認めうる程度の根拠は、存在しない。
    2. 弁護人が被告人の利益擁護のためにした行為と刑法上の違法性の阻却
      弁護人が被告人の利益を擁護するためにした行為につき刑法上の違法性の阻却を認めるためには、それが弁護活動のために行われたものであるだけでは足りず、行為の具体的状況その他諸般の事情を考慮して、法秩序全体の見地から許容されるべきものと認められなければならないのであり、かつ、その判断にあたつては、その行為が法令上の根拠をもつ職務活動であるかどうか、弁護目的の達成との間にどのような関連性をもつか、弁護を受ける被告人自身がこれを行つた場合に刑法上の違法性の阻却を認めるべきどうかの諸点を考慮に入れるのが相当である。
    3. 弁護人が被告人の利益擁護のためにした名誉毀損行為につき正当な弁護活動として刑法上の違法性が阻却されないとされた事例
      被告人以外の特定人が真犯人であることを広く社会に報道して、世論を喚起し、被告人を無罪とするための証拠の収集につき協力を求め、かつ、最高裁判所の職権発動による原判決の破棄ないしは再審請求の途をひらくため、右の特定人が真犯人である旨の事実摘示をした名誉毀損行為は、弁護人の相当な弁護活動として刑法上の違法性を阻却されるものではない。
  6. 名誉毀損(最高裁判決 昭和56年04月16日)
    1. 私人の私生活上の行状と刑法230条の2項1項にいう「公共ノ利害ニ関スル事実」
      私人の私生活上の行状であつても、そのたずさわる社会的活動の性質及びこれを通じて社会に及ぼす影響力の程度などのいかんによつては、その社会的活動に対する批判ないし評価の一資料として、刑法230条の2項1項にいう「公共ノ利害ニ関スル事実」にあたる場合がある。
    2. 刑法230条の2項1項にいう「公共ノ利害ニ関スル事実」にあたるとされた事例
      多数の信徒を擁するわが国有数の宗教団体の教義ないしあり方を批判しその誤りを指摘するにあたり、その例証として摘示した「右宗教団体の会長(当時)の女性関係が乱脈をきわめており、同会長と関係のあつた女性二名が同会長によつて国会に送り込まれていること」などの事実は、同会長が、右宗教団体において、その教義を身をもつて実践すべき信仰上のほぼ絶対的な指導者であつて、公私を問わずその言動が信徒の精神生活等に重大な影響を与える立場にあつたなど判示の事実関係のもとにおいては、刑法230条の2項1項にいう「公共ノ利害ニ関スル事実」にあたる。
    3. 刑法230条の2項1項にいう「公共ノ利害ニ関スル事実」にあたるか否かの判断方法
      刑法230条の2項1項にいう「公共ノ利害ニ関スル事実」にあたるか否かは、摘示された事実自体の内容・性質に照らして客観的に判断されるべきであり、これを摘示する際の表現方法や事実調査の程度などは、同条にいわゆる公益目的の有無の認定等に関して考慮されるべきことがらであつて、摘示された事実が「公共ノ利害ニ関スル事実」にあたるか否かの判断を左右するものではない。
  7. 損害賠償請求事件(最高裁判決 平成14年01月29日)民法第709条,民法第710条
    通信社が新聞社に記事を配信するに当たりその内容を真実と信ずるについて相当の理由があるとはいえないとされた事例
    通信社が,殺人未遂罪で逮捕された甲が7,8年前に自宅で大麻を所持しており,その事実を捜査機関が突き止めた旨の事実を記事にして配信し,新聞社がこれを掲載した場合に,甲が自宅に大麻を所持していた事実の裏付けになる資料は甲と離婚した乙の供述のみであること,捜査の対象となっていない大麻所持についての報道であること,甲以外の関係者からそのころの甲と大麻とのかかわりについて取材することが不可能であった状況がうかがえないこと,捜査官が甲の大麻所持についていかなる事実を把握し,どのような心証を持ち,どのように判断しているのかについての取材内容が明らかでないことなど判示の事情の下においては,乙の供述が一貫し,甲が大麻と深いつながりがあることを自ら認めており,記事作成の時点で甲が既に逮捕され,甲に対する取材が不可能であった等の事情が存するときであっても,通信社に上記配信記事に摘示された事実を真実と信ずるについて相当の理由があったものとはいえない。

参考判例

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民事・損害賠償

  1. 謝罪広告等請求本訴、損害賠償請求反訴、損害賠償請求事件(最高裁判決 平成11年10月26日)
    名誉毀損の行為者が刑事第一審の判決を資料として事実を適示した場合と右事実を真実と信ずるについての相当の理由
    名誉毀損の行為者において刑事第一審の判決を資料としてその認定事実と同一性のある事実を真実と信じて摘示した場合には、特段の事情がない限り、摘示した事実を真実と信ずるについて相当の理由がある。

前条:
刑法第230条
(名誉毀損)
刑法
第2編 罪
第34章 名誉に対する罪
次条:
刑法第231条
(侮辱)
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