日本国憲法第73条
表示
条文
[編集]【内閣の職権】
- 第73条
- 内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
- 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
- 外交関係を処理すること。
- 条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
- 法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。
- 予算を作成して国会に提出すること。
- この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
- 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。
解説
[編集]法律の委任
[編集]参照条文
[編集]判例
[編集]- 重要物資在庫緊急調査令違反(最高裁判決 昭和26年1月31日)
- 昭和22年政令第65号重要物資緊急調査令の合憲性
- 昭和22年政令第65号号重要物資緊急調査令は同20年勅令第5号2号ポッダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基いて制定されたもので、それが官報による公布の際同政令前文にその旨明示せず罰則を設けても憲法第73条に違反しない。
- 臨時物資需給調整法違反(最高裁判決 昭和26年2月27日)日本国憲法第31条
- 農林省令第27号附則所定の「…規則廃止前にした行為に対する罰則の適用については…なお従前の例による」とした規則の趣旨と憲法第31条・第73条第6号
- 所論昭和25年3月27日農林省令第27号附則の趣旨は加工水産物配給規則廃止前に行われた違反行為に対しては同規則廃止後も廃止前に行われた違反行為の罰則に関する範囲においては、これを廃止しない趣旨であつて、一旦廃止して更に罰則を設けるという趣旨でない故所論違憲論は前提を欠き採用できない。
- 食糧管理法違反(最高裁判決 昭和26年12月5日)
- 食糧管理法施行規則第29条と法律の委任
- 食糧管理法第9条と食糧管理法施行令第11条及び同法施行規則第29条との関係
- 食糧管理法9条は主要食糧に関する移動等に関して、政令で必要な枠を定めることをこれに委任し、同時にこの枠の範囲内において必要な規定を定めることも命令(政令以外の命令)に委任する趣旨を有するものである。即ち、法律が直接に命令に委任したものであつて、ただその命令によつて定め得る事項の枠だけを政令に定めしめているに過ぎないのである。本件の場合において食糧管理法9条から枠を定める委任を受けた政令(食糧管理法施行令11条)は、移動の制限という具体的な一定の枠を定め、命令(農林省令、食糧管理法施行規則29条)は、この枠の範囲内において法律の委任に従つて移動に関する制限規定を設けたものである。それ故、所論のように、法律から委任を受けた政令が、自らその委任事務を尽さずしてこれをそのまま勝手に、命令に委任したという関係にあるのではない。従つて、食糧管理法施行令11条及び同法施行規則29条の違憲無効を主張する論旨は、理由なきものと言わねばならぬ。
- 国家公務員法違反(最高裁判決 昭和33年5月1日)
- 人事院規則1417の趣旨および国家公務員法第102条第1項との関係
- 人事院規則1417は国家公務員法第102条第1項に基き、一般職に属する国家公務員の職責に照らして必要と認められる政治的行為の制限を規定したものであり、委任の範囲を逸脱したものではない
- 酒税法違反(最高裁判決 昭和33年7月9日)
- 酒税法第54条と憲法第73条第6号
- 酒税法第54条により帳簿記載事項の詳細を定める権限を行政機関に賦与しても憲法第73条第6号に違反しない。
- 酒税法65条によれば、同法54条の規定による帳簿の記載を怠つた者等は、所定の罰金、科料に処される旨規定しているから、同65条の規定は、罪となるべき事実とこれに対する刑罰とを規定したいわゆる罰則規定であり、同54条の規定は、その罪となるべき事実の前提要件たる帳簿の記載義務を規定したものということができる。しかるに、同54条は、その帳簿の記載等の義務の主体およびその義務の内容たる製造、貯蔵又は販売に関する事実を帳簿に記載すべきこと等を規定し、ただ、その義務の内容の一部たる記載事項の詳細を命令の定めるところに一任しているに過ぎないのであつて、立法権がかような権限を行政機関に賦与するがごときは憲法上差支ないことは、憲法73条6号本文および但書の規定に徴し明白である。
- 酒税法第54条により帳簿記載事項の詳細を定める権限を行政機関に賦与しても憲法第73条第6号に違反しない。
- 酒税法施行規則第61条第9号の規定は右酒税法第54条の委任の趣旨に反するか
- 酒税法施行規則第61条第9号の規定は、前記酒税法第54条の委任の趣旨に反しない。
- 酒税法施行規則61条は、その1号ないし8号において、帳簿に記載すべき事項を具体的且つ詳細に規定しており、同条9号は、これらの規定に洩れた事項で、各地方の実状に即し記載事項とするを必要とするものを税務署長の指定に委せたものであつて、前記酒税法施行規則においてこのような規定を置いたとしても、前記酒税法54条の委任の趣旨に反しないものであり、違憲であるということはできない。
- 酒税法施行規則第61条第9号の規定は、前記酒税法第54条の委任の趣旨に反しない。
- 酒税法第65条および第54条の規定の趣旨
- 酒税法65条によれば、同法54条の規定による帳簿の記載を怠つた者等は、所定の罰金、科料に処される旨規定しているから、同65条の規定は、罪となるべき事実とこれに対する刑罰とを規定したいわゆる罰則規定であり、同54条の規定は、その罪となるべき事実の前提要件たる帳簿の記載義務を規定したものということができる。
- (参考)
- 酒税法(昭和23年法律107号による改正前のもの)54条
- 酒類、酒母、醪若ハ麹ノ製造者又ハ酒類若ハ麹ノ販売業者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ製造、貯蔵又ハ販売ニ関スル事実ヲ帳簿ニ記載スヘシ
- 同法65条1号
- 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ三万円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス。
- 一、第五四条ノ規定ニ依ル帳簿ノ記載ヲ怠リ若ハ詐リ又ハ帳簿ヲ隠匿シタル者
- 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ三万円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス。
- 酒税法施行規則(昭和23年政令第148号による改正前のもの)61条9号
- 酒類、酒母、醪又ハ麹ノ製造者ハ左ノ事項ヲ帳簿ニ記載スヘシ
- 九、前各号ノ外製造、貯蔵又ハ販売ニ関シ税務署長ノ指定スル事項」
- 酒類、酒母、醪又ハ麹ノ製造者ハ左ノ事項ヲ帳簿ニ記載スヘシ
- 酒税法(昭和23年法律107号による改正前のもの)54条
- 酒税法第54条と憲法第73条第6号
- 日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第3条に基く行政協定に伴う刑事特別法違反(砂川事件 最高裁判決 昭和34年12月16日) - 憲法第9条に係る判断は同法記事判例節、憲法第98条に係る判断は同法記事判例節参照
- 特に国会の承認を経ていない安保条約第3条に基く行政協定(以下行政協定と略す。)の合憲性 - 第3号但書「但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。」との関係
- 行政協定は特に国会の承認を経ていないが違憲無効とは認められない。
- 行政協定の根拠規定を含む安全保障条約が国会の承認を経ている。
- 国会においては、参議院本会議において、昭和27年3月25日に行政協定が憲法73条による条約であるから、同条の規定によつて国会の承認を経べきものである旨の決議案が否決され、また、衆議院本会議において、同年同月26日に行政協定は安全保障条約3条により政府に委任された米軍の配備規律の範囲を越え、その内容は憲法73条による国会の承認を経べきものである旨の決議案が否決されている。
- 大阪市条例第六八号違反(最高裁判決 昭和37年5月30日)日本国憲法第31条
- 憲法第31条の趣旨―刑罰はすべて法律そのもので定めなければならないか
- 憲法31条はかならずしも刑罰がすべて法律そのもので定められなければならないとするものでなく、法律の授権によつてそれ以下の法令によつて定めることもできると解すべきで、このことは憲法73条6号但書によつても明らかである。
- 地方自治法第14条第5項およびこれに基づく昭和25年大阪市条例第68号第2条第1項の合憲性
- 地方自治法第14条第5項およびこれに基づく昭和25年大阪市条例第68号「街路等における売春勧誘行為等の取締条例」第2条第1項は、憲法第31条に違反しない。
- 憲法第31条の趣旨―刑罰はすべて法律そのもので定めなければならないか
- 道路交通法違反(最高裁判決 昭和39年9月18日)日本国憲法第31条
- 犯罪の構成要件はすべて法律そのもので定められなければならないか。
- 犯罪の構成要件は、すべて法律そのもので定められなければならないものではなく、法律の授権によつて、その一部を公安委員会規則によつて定めることもできることは、当裁判所の判例(昭和27年(あ)第4533号同33年7月9日大法廷判決、刑集12巻11号2407頁・昭和31年(あ)第4289号同37年5月30日大法廷判決、裁判集142巻847頁)の趣旨とするところである。
- 農地売渡処分取消等請求(最高裁判決 昭和46年1月20日)
- 農地法施行令16条の法適合性
- 農地法施行令28条が、自作農創設特別措置法3条による買収農地につき、農地法80条の認定をすることのできる場合を、農地法施行令16条4号所定の場合に限ることとし、当該買収農地自体、社会的、経済的にみて、すでにその農地としての現況を将来にわたつて維持すべき意義を失い、近く農地以外のものとすることを相当とするもののような、明らかに農地法が売払いの対象として予定しているものにつき、同法80条の認定をすることができないとしたことは、法の委任をこえるもので、無効というべきである。
- 買収農地の旧所有者の農地法80条に基づく売払いを求める権利
- 買収農地を自作農の創設等の目的に供しないことを相当とする事実が生じた場合には、その旧所有者は、農地法80条1項に基づく農林大臣の認定の有無にかかわらず、直接、農林大臣に対し当該土地の売払いを求めることができる。
- 農地法80条に基づく農林大臣の認定および売払いの性質
- 農地法80条に基づく農林大臣の認定は行政庁の内部的な行為であり、また、同条に基づく売払いは私法上の行為であつて、いずれも行政訴訟の対象となる行政処分ではない。
- 農地法施行令16条の法適合性
- 現住建造物等放火未遂、火炎びん使用等の処罰に関する法律違反、傷害、爆発物取締罰則違反、非現住建造物等放火(最高裁判決 昭和53年10月20日)
- 爆発物取締罰則に関する違憲主張が排斥された事例
- 所論は、憲法31条、59条1項、73条6項、98条1項違反をいうが、爆発物取締罰則が現行憲法施行後の今日においてもなお法律としての効力を保有しているものであることは、当裁判所の判例とするところであり(昭和23年(れ)第1140号同24年4月6日大法廷判決・刑集3巻4号456頁、昭和32年(あ)第309号同34年7月3日第二小法廷判決・刑集13巻7号1075頁、昭和46年(あ)第2179号同47年3月9日第一小法廷判決・刑集26巻2号151頁参照)、所論は理由がない。
- 所論は、憲法14条1項、19条、31条違反をいうが、爆発物取締罰則1条は、所定の目的で爆発物を使用した者を処罰するものであつて、その思想、信条の如何を問うものではなく、また、同条にいう、「治安ヲ妨ケ」るの概念は不明確なものではないから(前掲昭和47年3月9日第一小法廷判決参照)、所論は前提を欠き、適法な上告理由にあたらない。
- 道路交通法違反(最高裁判決 昭和60年12月19日)日本国憲法第31条
- 道路標識等による最高速度の指定を都道府県公安委員会に委任することと憲法31条、73条6号
- 道路標識等による最高速度の指定を都道府県公安委員会に委任することは、憲法31条、73条6号に違反しない。
- 重要物資在庫緊急調査令違反(最高裁判決 )日本国憲法第41条, 国家公務員共済組合法(平成24年法律第63号による改正前のもの)附則12条の12第4項, 厚生年金保険法等の一部を改正する法律(平成8年法律第82号)附則30条1項
- 国家公務員共済組合法附則12条の12第4項及び厚生年金保険法等の一部を改正する法律附則30条1項と憲法41条及び73条6号
- 退職一時金に付加して返還すべき利子の利率の定めを政令に委任する国家公務員共済組合法附則12条の12第4項及び及び同条の経過措置を定める厚生年金保険法等の一部を改正する法律附則30条1項は,憲法41条及び73条6号に違反しない。
- 国公共済法附則12条の12は,同一の組合員期間に対する退職一時金と退職共済年金等との重複支給を避けるための調整措置として,従来の年金額からの控除という方法を改め,財政の均衡を保つ見地から,脱退一時金の金額の算定方法に準じ,退職一時金にその予定運用収入に相当する額を付加して返還させる方法を採用したものと解される。このような同条の趣旨等に照らすと,同条4項は,退職一時金に付加して返還すべき利子の利率について,予定運用収入に係る利率との均衡を考慮して定められる利率とする趣旨でこれを政令に委任したものと理解することができる。
- そして,国公共済法附則12条の12の経過措置を定める厚年法改正法附則30条1項についても,これと同様の趣旨で退職一時金利子加算額の返還方法についての定めを政令に委任したものと理解することができる。
|
|