コンテンツにスキップ

民法第443条

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

法学民事法民法コンメンタール民法第3編 債権 (コンメンタール民法)

条文

[編集]

(通知を怠った連帯債務者の求償の制限)

第443条
  1. 他の連帯債務者があることを知りながら、連帯債務者の一人が共同の免責を得ることを他の連帯債務者に通知しないで弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得た場合において、他の連帯債務者は、債権者に対抗することができる事由を有していたときは、その負担部分について、その事由をもってその免責を得た連帯債務者に対抗することができる。この場合において、相殺をもってその免責を得た連帯債務者に対抗したときは、その連帯債務者は、債権者に対し、相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。
  2. 弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得た連帯債務者が、他の連帯債務者があることを知りながらその免責を得たことを他の連帯債務者に通知することを怠ったため、他の連帯債務者が善意で弁済その他自己の財産をもって免責を得るための行為をしたときは、当該他の連帯債務者は、その免責を得るための行為を有効であったものとみなすことができる。

改正経緯

[編集]

2017年改正

  1. 第1項については以下のとおり改正。
    1. 通知すべき事項
      (改正前)連帯債務者の一人が債権者から履行の請求を受けたことを
      (改正後)他の連帯債務者があることを知りながら、連帯債務者の一人が共同の免責を得ることを
    2. 求償の制限を受ける連帯債務者 - 過失要件がなくなった
      (改正前)過失のある連帯債務者は、債権者に対し
      (改正後)その連帯債務者は、債権者に対し
  2. 第2項については以下のとおり改正。
    1. 通知すべき事項
      (改正前)連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たことを他の連帯債務者に通知すること
      (改正後)弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得た連帯債務者が、他の連帯債務者があることを知りながらその免責を得たこと
    2. 求償を受ける連帯債務者の行為
      (改正前)弁済をし、その他有償の行為をもって免責を得たときは
      (改正後)弁済その他自己の財産をもって免責を得るための行為をしたときは
    3. 求償が限定される連帯債務者
      (改正前)その免責を得た連帯債務者は
      (改正後)当該他の連帯債務者は
    4. 求償が限定される連帯債務者の行為
      (改正前)自己の弁済その他免責のためにした行為
      (改正後)その免責を得るための行為

解説

[編集]

本条は、連帯債務者が債権者に対して弁済をするに当たっては、他の債務者に対して事前及び事後に通知をすべきことを定め、これを怠ったときは求償権の制限を受けることを定めている。

第1項

[編集]

連帯債務者の一人が、債権者に対して弁済をするにあたっては、他の債務者に事前の通知を要すると定めている。

いま、連帯債務者B・C・Dが債権者Aに対して60万円の連帯債務を負っており(負担部分は平等)、BはAに対してこれと相殺適状にある30万円の反対債権を有しているとする。本項によれば:

  • DがB・Cに事前に通知してからAに60万円を弁済した場合、DはB・Cに対しておのおの20万円の求償権を獲得する(442条1項の原則どおり)。
  • DがB・Cに事前に通知することなくAに60万円を弁済した場合、DがBに対する20万円の求償権を行使したときは、BはAに対して有する反対債権をもってこの求償権と相殺できる(本項前段)。この場合において、相殺に供されたBのAに対する反対債権は、Bの負担部分(20万円)の範囲で、Dに移転する。すなわち、DはAに対して20万円を請求できる(本項後段)。

第2項

[編集]

連帯債務者の一人が、債権者に対して弁済をした場合は、他の債務者に事後の通知を要すると定めている。

いま、連帯債務者B・C・Dが債権者Aに対して60万円の連帯債務を負っており(負担部分は平等)、まず、DがAに対して60万円を弁済し(第一弁済)、ついで、BがAに対してやはり60万円を弁済したとする(第二弁済)。本項によれば:

  • Dが弁済後、B・Cに事後の通知をした場合、Dの第一弁済が有効、Bの第二弁済は無効である。したがってDはB・Cに対しておのおの20万円の求償権を獲得する(442条1項の原則どおり)。
  • Dが弁済後、B・Cに事後の通知を怠り、その結果Bが事前の通知をせず、第二弁済をした場合は、Dの第一弁済は有効、Bの第二弁済が無効である。したがってBは求償権を獲得せず、DがB・Cに対しておのおの20万円の求償権を獲得する。

※後述の判例による。

参照条文

[編集]

判例

[編集]
  1. 求償金(最高裁判決 昭和57年12月17日)
    民法443条1項の事前の通知を怠つた連帯債務者が同条二項の規定により自己の免責行為を有効であるとみなすことの可否
    連帯債務者の一人が弁済その他の免責の行為をするに先立ち他の連帯債務者に対し事前の通知を怠つた場合は、既に弁済その他により共同の免責を得ていた他の連帯債務者に対し、自己の免責行為を有効であるとみなすことはできない。

前条:
民法第442条
(連帯債務者間の求償権)
民法
第3編 債権

第1章 総則
第3節 多数当事者の債権及び債務

第4款 連帯債務
次条:
民法第444条
(償還をする資力のない者の負担部分の分担)
このページ「民法第443条」は、まだ書きかけです。加筆・訂正など、協力いただける皆様の編集を心からお待ちしております。また、ご意見などがありましたら、お気軽にトークページへどうぞ。