会社法第355条
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法学>民事法>商法>会社法>コンメンタール会社法>第2編 株式会社 (コンメンタール会社法)>第2編第4章 機関 (コンメンタール会社法)
条文
[編集](忠実義務)
解説
[編集]株式会社の取締役の、会社に対して負う義務についての規定である。
法令等の遵守義務(コンプライアンス等)、忠実義務につき規定する。
忠実義務とは何かについては、商法旧会社編における議論がそのまま引き継がれる。
沿革
[編集]- 旧商法254条ノ3
- 取締役ハ法令及定款ノ定並ニ総会ノ決議ヲ遵守シ会社ノ為忠実ニ其ノ職務ヲ遂行スル義務ヲ負フ
関連条文
[編集]- 会社法第348条(業務の執行)
- 会社法第349条(株式会社の代表)
- 会社法第350条(代表者の行為についての損害賠償責任)
- 会社法第356条(競業及び利益相反取引の制限)
- 会社法第423条(役員等の株式会社に対する損害賠償責任)
- 会社法第419条(執行役の監査委員に対する報告義務等)
参考文献
[編集]判例
[編集]- 損害賠償請求事件(最高裁判決 平成18年4月10日)
- cf.会社法第355条判例
- いわゆる仕手筋として知られるAが大量に取得したB社の株式を暴力団の関連会社に売却するなどとB社の取締役であるYらを脅迫した場合においてAの要求に応じて巨額の金員を交付することを提案し又はこれに同意したYらの忠実義務,善管注意義務違反が問われた行為について過失を否定することができないとされた事例
- いわゆる仕手筋として知られるAが,大量に取得したB社の株式を暴力団の関連会社に売却するなどとB社の取締役であるYらを脅迫した場合において,売却を取りやめてもらうためAの要求に応じて約300億円という巨額の金員を融資金の名目で交付することを提案し又はこれに同意したYらの忠実義務,善管注意義務違反が問われた行為について,Aの言動に対して警察に届け出るなどの適切な対応をすることが期待できないような状況にあったということはできないという事情の下では,やむを得なかったものとしてその過失を否定することはできない。
- 取締役の責任追及請求事件(最高裁判決 平成12年10月20日) 商法第254条3項(民法第644条),商法第254条ノ3(現本条),商法第265条1項(現・会社法第356条),商法第266条1項4号,5号(現・会社法第356条)
- 商法265条1項の取引を行うにつき同法254条3項(民法644条)、商法254条ノ3に定める義務に違反した取締役と同法266条1項5号の責任
- 株式会社の取締役が商法265条1項の取引によって会社に損害を被らせた場合、当該取締役は、同法第266条1項4号の責任を負う外、右取引を行うにつき故意又は過失により同法第254条3項(民法644条)、商法第254条ノ3に定める義務に違反したときには、同法266条1項5号の責任をも負う。
- 商法第266条1項4号の規定は、取締役が商法265条1項の取引(会社と取締役間の利益相反取引)をして会社が損害を被った場合は、故意又は過失の有無にかかわらず、これを賠償する責めに任ずる旨を定めるものであり、右取引が法令違反行為にも当たるときに同法266条1項5号の責任(法令違反に対する責任)が成立することを妨げるものではない。
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