会社法第356条
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法学>民事法>商法>コンメンタール会社法>第2編 株式会社>第4章 機関
条文
[編集]- 第356条
- 取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。
- 民法第108条の規定は、前項の承認を受けた同項第2号又は第3号の取引については、適用しない。
解説
[編集]- 民法第108条(自己契約及び双方代理)
- 取締役が同種の事業を行う他の株式会社の取締役に就任すること自体は、競業取引とはならない。
関連条文
[編集]- 会社法第365条(競業及び取締役会設置会社との取引等の制限)
- 会社法第416条(委員会設置会社の取締役会の権限)
- 会社法第419条(執行役の監査委員に対する報告義務等)
- 会社法第423条(役員等の株式会社に対する損害賠償責任)
- 会社法第428条(取締役が自己のためにした取引に関する特則)
判例
[編集]- 貸金返還請求(最高裁判決 昭和38年12月06日)商法第265条
- 無利息無担保の金銭消費貸借は商法第265条にいう取引にあたるか。
- 株式会社に対しその取締役が無利息、無担保で金銭を貸し付ける行為は、商法第265条にいう取引にあたらない。
- 約束手形金請求(最高裁判決 昭和39年1月28日)商法第265条
- 手形裏書が商法第265条の取引にあたらないとされた事例。
- 会社が約束手形を取締役に裏書譲渡するに際し、取締役から手形金額と同額の金員の交付を受けた場合においては、右手形裏書は、商法第265条の取引に該当しない。
- 売掛代金請求(最高裁判決 昭和43年12月25日)商法第265条
- 商法第265条にいう取引の意義
- 商法第265条にいう取引には、取締役と会社との間に直接成立すべき利益相反行為のみならず、取締役個人の債務について、その取締役が会社を代表して、債権者に対し債務引受をする等取締役個人の利益となり会社に不利益を与える行為も包含されるものと解すべきである。
- 商法第265条に違反する取引の効力
- 会社は、商法第265条に違反する取引のうち、取締役と会社との間に直接成立すべき取引については、右取締役に対して、その無効を主張することができるが、取締役が会社を代表して自己のためにした会社以外の第三者との間の取引については、右第三者が取締役会の承認を受けていなかつたことについて悪意であるときにかぎり、その無効を主張することができる。
- 商法第265条にいう取引の意義
- 商品売掛代金保証債務履行請求(最高裁判決 昭和45年04月23日)商法第265条
- 甲乙両会社の代表取締役が甲会社の債務につき乙会社を代表してする保証と商法265条
- 甲乙両会社の代表取締役を兼ねている者が、甲会社の債務につき乙会社を代表してする保証は、甲会社の利益にして、乙会社に不利益を及ぼす行為であつて、商法265条にいう取締役が第三者のためにする取引にあたる。
- 約束手形金請求(最高裁判決 昭和46年10月13日)商法第265条、手形法第16条
- 株式会社がその取締役にあてて約束手形を振り出す行為と商法265条
- 株式会社がその取締役にあてて約束手形を振り出す行為は、原則として、商法265条にいう取引にあたる。
- 商法265条に違反して株式会社が振り出した約束手形を取得した第三者に対する会社の手形上の責任
- 株式会社は、商法265条に違反して振り出した約束手形を裏書により取得した第三者に対しては、右手形が会社からその取締役にあてて振り出され、かつ、その振出につき取締役会の承認がなかつたことについて、右第三者が悪意であつたことを主張・立証しないかぎり、振出人としての責任を免れない。
- 約束手形の振出につき手形上の記載にかかわらず商法265条の適用がないとされた事例
- 株式会社振出の約束手形において、受取人の記載が右会社の取締役になつている場合でも、現実には、右会社が受取人欄白地の約束手形を振り出して直接取締役以外の者に交付し、その者が右取締役から受取人欄の補充と裏書を受けたものであるときは、商法第265条の適用はない。
- 株式会社がその取締役にあてて約束手形を振り出す行為と商法265条
- 貸金請求(最高裁判決 昭和48年12月11日)商法第265条
- 会社から貸金の返還を求められた取締役と商法265条違反の主張
- 会社が取締役に貸し付けた金員の返還を求めた場合に、その取締役は、商法265条違反を理由として右貸付けの無効を主張することができない。
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