刑事訴訟法/公判手続
除斥・忌避
[編集]- 除斥
下記のように裁判官が、裁判の公平性を妨げるおそれのある裁判官であるとき、当然にその裁判から外れる規定があり、このような規定を除斥という。
上記で「当然に」と言うように(条文には「当然に」は無いが)、当事者からの申立てを待つまでもなく、その裁判官はその裁判から排除される[1]。
除斥については、説明するより条文を見たほうが早い。(※ 市販の教科書ではそういった説明ではない)
- 第20条
- 裁判官は、次に掲げる場合には、職務の執行から除斥される。
- 裁判官が被害者であるとき。
- 裁判官が被告人又は被害者の親族であるとき、又はあったとき。
- 裁判官が被告人又は被害者の法定代理人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人であるとき。
- 裁判官が事件について証人又は鑑定人となったとき。
- 裁判官が事件について被告人の代理人、弁護人又は補佐人となったとき。
- 裁判官が事件について検察官又は司法警察員の職務を行ったとき。
- 裁判官が事件について第266条第2号の決定、略式命令、前審の裁判、第398条乃至第400条、第412条若しくは第413条の規定により差し戻し、若しくは移送された場合における原判決又はこれらの裁判の基礎となった取調べに関与したとき。ただし、受託裁判官として関与した場合は、この限りでない。
- (※以上、条文)
もし裁判官自身が被害者〜代理人などである場合、当然にその裁判からはずれるのは妥当だろう。
「検察官又は司法警察員の職務を行ったとき。」(6号)というのは読者に分かりづらいかもしれないが、これを除斥とする理由は、当該事件について予断を抱いているおそれがあるという亊から、除斥の理由とされている。
なお7号は、主に、前審などに関与した裁判官を除斥とする内容である[2]。
- 忌避
除斥理由が認められるが裁判官が排除されていない場合や、その他、裁判官に不公平な裁判をするおそれのある場合、当事者(検察官[3])または弁護人は その裁判官を排除するように申立てすることができ、これを忌避という。
21条1項で「不公平な裁判をする虞があるとき」とされているが、しかし判例では、除斥の理由以外で忌避が認められる要件は厳しい。 判例では、「それだけでは直ちに忌避の理由となしえない」という解釈である(最決昭和48・10・8刑集27巻9号1415頁)。
判例の見解の根拠として、一般的に言われるのは、単に不適切なだけの行為があった場合には異議を使えばいいので[4]、裁判官に単に不適切な行為があっただけでは忌避を認める理由にはなりづらいと考えられている。しかし、反対説もある。
なお忌避の申し立ては、対象の裁判官が所属する裁判所に対して行い、その裁判所が合議体で忌避の是非を判断する。ただし簡易裁判所の場合、簡裁は裁判官が1人なので、忌避された本人が判断するのは不合理なので、代わりに管轄の地域の地方裁判所が忌避の是非の判断をする。
また、忌避された裁判官は、忌避の是非の判断に関与できない(23条)。
- 簡易却下
「訴訟を遅延させる目的でのみされたことの明らかな」忌避申し立て、申立ての手続に違反するなど不適切な忌避申し立ては、決定で申立てを却下しなければならない(24条)。これを簡易却下という。 簡易却下の決定については、忌避された裁判官も決定に関与できる(24条)。
- 回避
裁判官が自ら、忌避されるべき原因があると認める場合に、裁判官みずから職務から外れる制度があり、これを回避という(規13条)。
なお、裁判官の除斥・忌避・回避の規定は、裁判所書記官にも準用される(26条、規15条)。
裁判員制度
[編集]被告人の出頭
[編集]原則的に、被告人は出頭する義務がある[5]。原則的に、被告人が出頭しないと開廷できない(286条)。ただし例外的に、出頭しなくても開廷できる場合もあり、たとえば30万円以下の罰金・科料では出頭不要である(284条)[6]。
勾留されている被告人が、公判期日に召喚を受けたが正当な理由なく出頭を拒否し、刑事施設職員による引致を著しく困難にしたときは、裁判所は、被告人の出頭がなくても、その期日の公判手続を行うことができる(286条の2)。
また、公判期日に出頭した被告人は、裁判長の許可がなければ退廷できない。裁判長は、被告人を在廷させるため、相当な処分をすることができる(288条)。
弁護人の出頭
[編集]- 必要的弁護事件
死刑または無期もしくは長期3年を超える懲役・禁錮に当たる事件を審理する場合は、弁護人がいなければ開廷することができない。このような事件を必要的弁護事件という。
また、必要的弁護事件で、弁護人が出頭しないとき、裁判長は職権で国選弁護人を付けなければならない(289条)。
公判準備
[編集]- ※調査中
証拠調べ
[編集]証人になれる資格のことを証人適格という。 条分上は、原則として、誰にでも証人適格がある亊になっている。 刑訴法143条によると、裁判所は、この法律に特別の定のある場合を除いては、何人でも証人としてこれを尋問することができる(143条)旨が書かれている。
しかし被害者は証人にはなれない[7]。
また、裁判官・書記官は、当該訴訟から引かないかぎり証人にはなれず、証人になった場合は当該訴訟から除斥される(20条4号、26条1項)[8]。
公務員または公務員であった者が知り得た事実について、職務上の秘密であるとの申し出があれば、当該の監督官庁の承諾がなければ、これらの者を証人として尋問できない(144条)。
- 証人保護
※ビデオリンクなど
- その他
証人尋問の順序については原則として、まず、証人尋問を請求した当事者による尋問(主尋問)、→ そのあとで、相手方当事者による尋問(反対尋問)
の順に行われる(このような順序による尋問の方式を「交互尋問」という)。
被害者参加制度
[編集]2007年の刑訴法の改訂により、被害者は公判期日に法廷で意見をいう事ができるようになっている。被害者がこの制度を使うには、あらかじめ被害者または委託を受けた弁護士が、検察に申出をしなければいけない。検察官を経由して、裁判所に制度の利用が通知される(316条の33)。
そして裁判所が相当と認めれば、期日当日に、被害者は法廷で意見などを言うことが可能になる。被害者は検察側の一員のような立場として参加することになる。つまり、原告 対 被告という対立構造を変える制度ではないし、第三者的な新たな当事者をつくる制度でもない[9]。
この制度に参加した被害者のことを被害者参加人という。
なお、被害者参加人は、被害者側弁護士をつける亊ができるし、その被害者側弁護士を国選弁護人として国費の提供を受けることもできる(犯罪被害保護11条〜18条)。
被害者参加人および被害者側弁護士は、公判期日に検察側の当事者として参加できる。このため、あらかじめ公判期日の日程が被害者側にも通知される(316条の34第2項)[10]。
参加した被害者とその弁護人は、証人尋問や被害者への質問も、裁判所が相当と認めれば、法廷のその手続での段階にて被害者から検察への申出を経由した上で、被害者は法廷でこれらの尋問・質問を行うことができる(尋問は316条の36、質問は同37)。
2007年以前からも証人として被害者が出頭し発言する亊は可能であったが、しかし2007年以前は被害者は意見をいうことはできなかったし、被害者が別の証人に質問する亊なども不可能であった。
対象犯罪は、故意の犯罪行為により人を死傷させた罪、強制わいせつおよび強制性交罪(刑176〜179)、業務上過失致死傷罪、逮捕監禁・略取誘拐・人身売買の罪、など一部の犯罪に限定される。
判決
[編集]- ※ 調査中
- 判決の宣告
判決は、公開の法廷で、宣告によりこれを告知する(342条)。
判決の宣告をするには、裁判長が主文および理由を朗読するか、あるいは、主文を朗読し理由の要旨を告げることによって行われる(規35条)。 有罪判決の宣告をする場合は、被告人に対し、上訴期間および上訴申立書を差し出すべき裁判所を告知しなければならない(規220条)。
裁判長は、判決をしたあと、被告人に対し、その将来について適当な訓戒(説諭[11])をすることができる(規221条)。
弁論の分離・併合
[編集]関連のある複数の事件を1つの手続にまとめて同時に審判することを併合という。
一方、複数の事件をふくむ1つの審判を事件ごとの複数の審判に分けることを分離という。
裁判所は、裁量によって、事件を併合または分離して処理できる(313条)。
また、被告人にも分離・併合の請求権がある(313条)[12]。特に複数の被告人のいる事件の場合で、被告人の防御が相反する場合には、場合によっては分離しなければいけない場合がある(313条2)[13]。
事件によっては膨大であったりして、そのままだと審理に時間がかかりすぎるおそれがあるなら、
- 弁論の再会
その他、裁判所は、裁量により、いったん終結した弁論を再会することができる(313条1項)。
公判手続きの停止・更新など
[編集]公判手続の停止
[編集]裁判所は、
- 被告人が心神喪失の状態にあるとき、
- 被告人が病気のため出頭することができないとき(代理人を出頭させた場合を除く[14])、
には、出頭できるようになるまで、検察官および弁護人の意見を聴いた上で、医師の意見も聴いた上で[15]、決定で公判を停止させなければならない(314条)。
また、
- 犯罪事実の存否の証明に欠かせない証人が病気のため公判期日に出頭できないとき
にも、
- ※ 調査中
また、裁判所は、訴因・罰条の追加・変更により被告人の防御に実質的な不利益を生じるおそれがあると認めるときは、被告人または弁護人の請求により、決定で、被告人に充分な防御の準備をさせるために必要な期間、(決定で)公判手続を停止しなければならない(312条4項)。
公判手続の更新
[編集]閉廷後、裁判官が変わったときは、公判手続きを更新しなればならない(315条)。 つまり、公判廷で行われる証言などを、裁判官は直接見聞きしなければならない。これを「口頭主義」「直接主義」という。