刑法第184条
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条文
[編集](重婚)
- 第184条
- 配偶者のある者が重ねて婚姻をしたときは、2年以下の拘禁刑に処する。その相手方となって婚姻をした者も、同様とする。
改正経緯
[編集]2022年、以下のとおり改正(施行日2025年6月1日)。
- (改正前)懲役
- (改正後)拘禁刑
解説
[編集]- 本法において、婚姻は法律婚のみを指す(通説)ので、本来、あり得ない犯罪である(ある個人について2個の戸籍が存在することとなり、発生すれば行政事務上の過誤)。
- 適用例として、A男は妻B女と不仲で、B女の署名を偽造し虚偽の離婚をし、一方で、C女との婚姻届を提出・受理された時、B女との離婚は成立しておらず重婚が成立するというものがあるが、重婚はそもそも「一夫一妻制」を破る反倫理的行為(例えばイスラム教で認められる一夫多妻制)であるため禁止をするという当初の立法趣旨からは逸脱した適用といえる。
注釈
[編集]- 保護法益
- 一夫一婦制の婚姻制度(民法732条)の維持(高橋;中山・注釈410:「『被害者なき犯罪』の典型」)
- 主体
- 「配偶者のある者」:法律上の婚姻関係にある者(事実婚は含まない)
- 国際結婚の場合、相手方の本国法において別の相手方と法律婚の関係にあれば重婚が成立する。
- 「相手方となって婚姻をした者」:必要的共犯の対向犯(中山・注釈410)
- 行為
- 「婚姻」:法律婚を締結すること(事実婚は除く)。
参照条文
[編集]- 民法第732条(重婚の禁止)
- 法の適用に関する通則法第24条(婚姻の成立及び方式)
判例
[編集]- 有印私文書偽造同行使公正証書原本不実記載同行使重婚被告事件(名古屋高判昭和36年11月8日高刑集14巻8号563頁)
- 偽造・虚偽の協議離婚届により戸籍上前婚を抹消して、婚姻届を提出した場合に重婚罪の成立を認めた事例
- 妻の不知の間に、同人の署名押印を冒用し内容虚偽の協議離婚届を偽造し、その届出をし戸籍上その者との婚姻関係を抹消し、然る後他の女との婚姻届を戸籍事務管掌者に提出し戸籍上その者との婚姻関係を成立させた場合には、重婚罪が成立する。
参考判例
[編集]- 退去強制令書発布処分等取消請求(名古屋地裁判決平成18年6月29日)
- 原告とAとの婚姻は実体を伴ったものと認められるのであるところ,本件裁決及びこれに至るまでの一連の手続(入国警備官による違反調査,入国審査官による違反審査及び特別審理官による口頭審理の各手続)においては,原告が本国で婚姻していたこと,すなわち,Aとの婚姻が重婚に当たることから,原告とAの婚姻が実体を欠く婚姻であるとの判断がなされたものと解される。
- しかしながら,既に認定したとおり,原告の重婚の事実は,本件裁決の前提手続である名古屋入管入国審査官による違反審査の時点では既に解消していたのであって,この事実が正確に認識されていれば,原告とAとの婚姻が実体を備えたものであることについて正しい認識がなされ,これに基づいた判断がなされた可能性が高いものと思料される。そうすると,本件裁決は,重婚状態にない原告とAとの婚姻を,重婚状態にあるものと誤認したことを前提として,婚姻関係の実体の存否に関する事実誤認に基づいてなされたものであると解するのが相当である。
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