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刑法第186条

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

条文

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(常習賭博及び賭博場開張等図利)

第186条
  1. 常習として賭博をした者は、3年以下の拘禁刑に処する。
  2. 賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、3月以上5年以下の拘禁刑に処する。

改正経緯

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2022年、以下のとおり改正(施行日2025年6月1日)。

(改正前)懲役
(改正後)拘禁刑

解説

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常習賭博罪

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ウィキペディアに賭博及び富くじに関する罪#常習賭博罪の記事があります。

常習的に賭博を行う者の罪を加重する。単純賭博の法定刑は「50万円以下の罰金又は科料」と極めて軽いが、常習性が認められると、拘禁刑まで大幅に引き上げられる。

「常習」という概念そのものは、大審院時代からすでに繰り返し問題とされてきた。大審院は大正3年2月17日判決において「刑法第186条にいわゆる常習とは博戯又は賭事を慣行するのいうにして」と述べ、続く大正3年9月8日判決では「賭博を常習とするとは、慣行的に賭博行為を為す習癖の存在することをいう」とした。さらに大正14年12月21日判決では「賭博常習者とは、賭博行為を反覆累行する習癖を有する者を指称し」という表現が採られている。これらの判例を通じて、大審院は早い段階から「常習」を単なる一回的な行為の性質としてではなく、行為者に内在する反覆累行の習癖、すなわち行為者の属性・性癖として捉える方向を確立していた。

この大審院の流れを最高裁が正面から承継し、確定的な定式として示したのが昭和23年7月29日判決である。この判決の裁判要旨は次のように述べている。

「所謂賭博常習者とは、賭博を反覆累行する習癖あるものをいうのであって、必ずしも博徒又は遊人の類のみを指称するものではない。」

この一文は、その後の裁判実務において「常習」の定義として繰り返し引用される、いわば標準的な定式となった。この判決が示した内容は大きく二つの点で重要な意味を持つ。

  1. 「常習」の実体を「賭博を反覆累行する習癖」という、行為者の内面に存在する性癖・傾向として位置づける。これにより、常習性は単発の行為の外形的な反復回数だけで機械的に判断されるものではなく、行為者に染み付いた行動傾向として理解されることになった。
  2. 常習性の認定に「博徒又は遊人」であること、すなわち賭博を生業とし、正業を持たずに賭博にのみ耽溺しているような特殊な人物像であることを要件としない、という点を明確にした。これは、常習賭博罪が単に「プロの賭博師」だけを処罰する規定ではなく、正業を持ちながらも賭博を繰り返す習癖のある者を広く含む規定であることを示した。

賭博場開張図利罪

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ウィキペディアに賭博及び富くじに関する罪#賭博場開張図利罪の記事があります。

単純賭博罪及び常習賭博罪はその被害は行為者本人(家族等は別論)に及ぶいわゆる「被害者なき犯罪」の典型とされるが、その賭博の場を設定し提供することは、犯罪を生み出す源泉とも言える。また、賭博場の開帳は、賭博をする者に対して不公正に賭博を進行させること(いわゆるイカサマ賭博)が容易な地位にあり、また、その収益は公に触れることもないなど反社会性が強く、賭博の行為者に比べ格段に重い法定刑が規定されている。

本罪の適用においては、第1項の「常習賭博罪」もあわせて訴追される場合が多い。これは、賭博場の開帳者は賭博の相手型となることが一般的であるためであるが、刑事政策的に賭博場開帳者の非難の程度は社会的に重いと考えられており、常習賭博罪と賭博場開張図利罪を併合罪とすることによって、法定刑の上限を「5年以下の拘禁刑」から、1.5倍の「7.5年以下の拘禁刑」まで引き上げることができるため(第47条参照)とされており、この取り扱いは、大審院時代から判例として支持され、戦後から現在にかけても維持されている。

参照条文

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判例

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常習賭博罪

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  1. 常習賭博(最高裁判決昭和23年7月29日)
    1. 所謂賭博常習者の意義
      所謂賭博常習者とは、賭博を反覆累行する習癖あるものをいうのであつて、必ずしも博徒又は遊人の類のみを指稱するものではない。
    2. 賭博の前科と常習賭博の認定
      被告人が賭博罪で八幡浜区裁判所で、昭和18年4月16日罰金60円に、同年11月6日罰金150円に、昭和21年2月23日罰金800円に各処せられ、更に昭和22年8月27日本件賭博罪を犯したという事跡に鑑み、被告人を賭博常習者と認定しても、経験則に反しない。
  2. 常習賭博(最高裁判決 昭和26年3月15日)刑法第185条,旧刑訴法第360条1項
    賭博常習者の意義
    賭博常習者というのは賭博を反覆累行する習癖を有する者の義であつて、必ずしも所論のような織業的賭博、いわゆる博賭打ち又は遊人或は定職があつても専ら勝負事に耽つて、半職業化したような特殊な存在をいうものでないことは当裁判所屡次の判例とするところであつて、今なおこれを変更する必要を認めない。
  3. 常習賭博(最高裁判決昭和26年8月1日)
    1. 賭博常習者と憲法第14条にいわゆる社会的身分
      刑法第186条の常習賭博罪が同第185条の単純賭博罪に比し、賭博常習者という身分によつて刑を加重していることは所論のとおりである。そして右加重の理由は賭博を反覆する習癖にあるのであつて、即ち常習者賭博は単純賭博に比しその反社会性が顕著で、犯情が重いとされるからである。そして、賭博常習者というのは、賭博を反覆する習癖、即ち犯罪者の属性による刑法上の身分であるが、憲法第14条にいわゆる社会的身分と解することはできない。されば刑法第186条の規定をもつて憲法第14条に違反するものであるとの趣旨は到底これを採用することはできない。
    2. 4年前の賭博の前科を常習性認定の一資料とすることの可否
      賭博の前科のみによつて賭博の常習性を認定することは必らずしも違法ではなく、また所論の右最終前科と本件賭博との間にたとい4年の歳月を経過していればとて、右前科を賭博常習認定の一資料とすることに何等経験則上の違背も認めることはできない。
  4. 常習賭博(最高裁決定 昭和26年4月10日)
    常習賭博罪における数個の賭博行為と罪数
    常習賭博罪における数個の賭博行為は、包括して単純な一罪を構成する。
  5. 常習賭博(最高裁判決 昭和54年10月26日)
    常習賭博罪の常習性が認められるとされた事例
    長期間営業を継続する意思のもとに、多額の資本を投下して多数の賭博遊技機を設置した遊技場の営業を開始し、警察による摘発を受けて廃業するまでの三日間、来場した多数の遊技客と賭博をしたなど原判示の事情のもとにおいては、右遊技場の営業者に常習賭博罪の常習性を認めることができる。

賭博開帳図利罪

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  1. 賭場開帳図利、同幇助(最高裁判決 昭和24年6月18日)
    賭博開帳図利罪における利益を得る目的の意義
    賭博開帳の罪は、利益を得る目的でもつて、賭博を為さしめる場所を開設する罪であり、その利益を得る目的とは、その賭場において、賭博をする者から寺錢、または手數料等の名儀をもつて、賭場開設の對價として、不法な財産的利得をしようとする意思のあることをいうのである。
  2. 賭場開張図利、同幇助、銃砲等所持禁止令違反(最高裁判決 昭和25年9月14日)刑法第168条2項,旧刑訴法第360條1項
    1. 賭場開帳図利罪については開帳者が收得した利益の価額数量を判示する必要はない
      賭場開帳図利罪において図利の事実がその犯罪構成要件たることは勿論であるが、その収得せんとした利益の価額、数量等は必ずしもこれが構成要件ではない。原判決では、被告人が判示の日時頃、判示の各賭場を開帳し、多数の賭客を招き判示の賭博をなさしめて寺銭を徴して利を図つたものであることが説示されているのである。從つて原判決はその徴した寺銭の金額を明示しなかつたとしても、なほ処罰の対象とされた被告人の賭場開帳図利行為を具体的に説示したものというに十分である。
    2. 賭場開帳図利罪の成立要件と罪質
      賭場開帳図利罪は犯人が自ら主宰者となり、その支配下に賭博をさせる一定の場所を提供し、寺銭入場料等の名目で利益の收得を企図することによつて成立するのであつて、所論のごとく慣行犯(常習犯)と解すべきいわれはない。
  3. 賭場開張図利(最高裁判決 昭和25年11月22日)
    1. 刑法第186条第2項賭場開張図利罪規定の合憲性
      刑法第186条第2項賭場開張図利罪の規定は、憲法第13条に違反しない。
      • 賭博行為は、一面互に自己の財物を自己の好むところに投ずるだけであつて、他人の財産権をその意に反して侵害するものではなく、従つて、一見各人に任かされた自由行為に属し罪悪と称するに足りないようにも見えるが、しかし、他面勤労その他正当な原因に因るのでなく、単なる偶然の事情に因り財物の獲得を僥倖せんと相争うがごときは、国民をして怠惰浪費の弊風を生ぜしめ、健康で文化的な社会の基礎を成す勤労の美風(憲法27条1項参照)を害するばかりでなく、甚だしきは暴行、脅迫、殺傷、強窃盗その他の副次的犯罪を誘発し又は国民経済の機能に重大な障害を与える恐れすらあるのである。これわが国においては一時の娯楽に供する物を賭した場合の外単なる賭博でもこれを犯罪としその他常習賭博、賭場開張等又は富籖に関する行為を罰する所以であつて、これ等の行為は畢竟公益に関する犯罪中の風俗を害する罪であり(旧刑法第2篇第6章照)、新憲法にいわゆる公共の福祉に反するものといわなければならない。ことに賭場開張図利罪は自ら財物を喪失する危険を負担することなく、専ら他人の行う賭博を開催して利を図るものであるから、単純賭博を罰しない外国の立法例においてもこれを禁止するを普通とする。されば、賭博等に関する行為の本質を反倫理性、反社会性を有するものでないとする所論は、偏に私益に関する個人的な財産上の法益のみを観察する見解であつて採ることができない。
    2. 政府乃至都道府県が賭場開張図利乃至富籤罪と本質上同一の行為を為すことによつて右犯罪行為を公認したものといえるか
      賭博及び富籤に関する行為が風俗を害し、公共の福祉に反するものと認むべきことは前に説明したとおりであるから、所論は全く本末を顛倒した議論といわなければならない。すなわち、政府乃至都道府県が自ら賭場開張図利乃至富籤罪と同一の行為を為すこと自体が適法であるか否か、これを認める立法の当否は問題となり得るが、現に犯罪行為と本質上同一である或る種の行為が行われているという事実並びにこれを認めている立法があるということだけから国家自身が一般に賭場開張図利乃至富籤罪を公認したものということはできない。
  4. 賭博場開帳図利幇助等(最高裁決定 昭和48年2月28日)
    1. 賭博場開張図利罪と賭博者の集合の要否
      賭博場開張図利罪が成立するためには、必ずしも賭博者を一定の場所に集合させることを要しない。
    2. いわゆる野球賭博の開催が賭博場開張図利罪を構成するとされた事例
      一般多数人をしてプロ野球の勝敗に関する賭銭博奕(いわゆる「野球賭博」)を行なわせて利を図るため、ある場所に電話、帳面、プロ野球日程表等を備えつけ、同所において、電話により賭客の申込みを受け、あるいは同所外で受けた賭客の申込みを集計して整理し、また、当該プロ野球試合の結果に基づいて勝者に支払うべき賭金およびその中から徴収すべき寺銭の集計などをし、さらに寺銭を徴収する等の方法により行なつた本件「野球賭博」開催の所為は、賭博場開張図利罪を構成する。

前条:
刑法第185条
(賭博)
刑法
第2編 罪
第23章 賭博及び富くじに関する罪
次条:
刑法第187条
(富くじ発売等)
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