刑法第19条の2

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条文[編集]

(追徴)

第19条の2
前条第1項第3号又は第4号に掲げる物の全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴することができる。

解説[編集]

犯罪による利益を残さないため、犯罪産出物件・犯罪取得物件などやその対価について、没収の対象物が既に費消されていることなどによって没収できない場合に、その価額を追徴できるものと定めている。

参照条文[編集]

判例[編集]

  • 偽造公文書行使、公文書偽造、詐欺、収賄(最高裁判例 昭和25年02月28日)
    追徴金額について主文と理由との間に齟齬ある判決の違法
    原判決は被告人が判示Aから(1)昭和22年10月中旬から同年11月初旬までの間三回に亘り一人分合計1535円に相当する酒食の饗応を受け(2)同年11月29日から12月1日までの間に一人分6025円に相当する酒食遊興等の饗応を受けたことを判示しその擬律において判示收受した賄賂はこれを没收することができないから其価格を追徴する旨を説示している点から見て右金額を被告人から追徴したものであることが認められる、然るに右金額は合計7560円であることは算數上明らかであるに拘わらず原判決は被告人に對し金7560円より100円多い7660円の追徴を主文において言渡しているもので正しく本來追徴し得るべき額より過大な金額を追徴したことになり原判決は主文と理由との間に齟齬があるから論旨は理由がある。
  • 収賄、受託収賄、第三者収賄、贈賄(最高裁判例 昭和40年04月28日)
    刑法第197条の5に基づいて第三者から賄賂の価額を追徴するにあたりその第三者に対して実質上弁解防禦の機会が与えられたものとされた事例。
    前項の場合において、右支部の代表者が、その支部を第三者とする刑法第197条の2の罪について、被告人として弁解、防禦の機会を与えられているときは、同法第197条の5によりその支部から賄賂の価額を追徴するにあたり、同支部に対しても、実質上弁解、防禦の機会が与えられていたものということができる。
  • 収賄、加重収賄、有印虚偽公文書作成、同行使(最高裁判例 昭和43年09月25日)
    没収に代えて追徴すべき賄賂の価額の算定基準時
    授受された賄賂が没収不能となりその価額を追徴すべき場合には、授受後においてその物の価額の増減があつたとしても、その物の授受当時の価額を追徴額とすべきである。
  • 収賄(最高裁決定 昭和55年12月22日)
    ゴルフクラブ入会保証金預託証書がいわゆるゴルフクラブ会員権を表章する有価証券とはいえないとされた事例
    証書上からはいわゆるゴルフクラブ会員権の内容が明らかでないうえ、指図文句の記載もなく、会員権の譲渡にゴルフクラブの承認が必要とされている等の本件ゴルフクラブ入会保証金預託証書は、ゴルフクラブ会員権を表章する有価証券とはいえない。
    →従って、本件ゴルフクラブ入会保証金預託証書は追徴の対象物ではない。
    いわゆるゴルフクラブ会員権を賄賂として収受した場合における没収・追徴
    いわゆるゴルフクラブ会員権を賄賂として収受した場合には、会員権それ自体は没収の対象となるものではなく、これを収受した時点におけるその価額を追徴すべきである。
  • 収賄被告事件(最高裁決定 平成16年11月08日)
    収賄の共同正犯者が共同して収受した賄賂についての追徴の方法
    収賄の共同正犯者が共同して収受した賄賂については,刑法(平成7年法律第91号による改正前のもの)197条ノ5の規定により,共犯者各自に対し,公務員の身分の有無にかかわらず,それぞれその価額全部の追徴を命じることができるし,また,収賄犯人等に不正な利益の保有を許さないという要請が満たされる限りにおいて,相当と認められる場合には,裁量により,各自にそれぞれ一部の額の追徴を命じ,あるいは一部の者にのみ追徴を科することも許される。
    収賄の共同正犯者が共同して収受した賄賂についてその総額を均分した金額を各自から追徴することができるとされた事例
    収賄の共同正犯者2名が共同して収受した賄賂について,両名が共同被告人となり,両名の間におけるその分配,保有及び費消の状況が不明であるなど判示の事実関係の下においては,賄賂の総額を均分した金額を各被告人から追徴することができる。

前条:
刑法第19条
(没収)
刑法
第1編 総則
第2章 刑
次条:
刑法第20条
(没収の制限)


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