刑法第199条
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条文
[編集](殺人)
- 第199条
- 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の拘禁刑に処する。
改正経緯
[編集]2022年、以下のとおり改正(施行日2025年6月1日)。
- (改正前)懲役
- (改正後)拘禁刑
解説
[編集]- 未遂(第203条)のみならず予備(第201条)も犯罪を構成する。
- 被害者の承諾・同意がある場合は、別罪(自殺関与及び同意殺人 第202条)を構成する。
- かつては、加重要件犯として第200条に尊属殺人罪が規定されていたが、1973年(昭和48年)最高裁判所において、法の下の平等に反する違憲立法と判決され、1995年(平成7年)の改正刑法で削除された。
参考
[編集]- 「殺人行為」とは、相手が死ぬことについて認容して相手を死に致す行為を言うが、比較法的には、認容からさらに進んで「相手が死ぬ」ことを目的として又は強盗など重い犯罪の機会において殺人行為を行う場合を別に類型化して刑を加重する法系がある。死を目的とする殺人行為は「謀殺(murder)」、それを除いた殺人行為(homicide)を「故殺(manslaughter)」としばしば呼称する。
- 旧刑法においては、殺人罪について「謀殺」と「故殺」を区分し以下の通り規定されていた。
- 第一節 謀殺故殺ノ罪
- 第二百九十二条 予メ謀テ人ヲ殺シタル者ハ謀殺ノ罪ト為シ死刑ニ処ス
- 第二百九十三条 毒物ヲ施用シテ人ヲ殺シタル者ハ謀殺ヲ以テ論シ死刑ニ処ス
- 第二百九十四条 故意ヲ以テ人ヲ殺シタル者ハ故殺ノ罪ト為シ無期徒刑ニ処ス
- 第二百九十五条 支解折割其他惨刻ノ所為ヲ以テ人ヲ故殺シタル者ハ死刑ニ処ス
- 第二百九十六条 重罪軽罪ヲ犯スニ便利ナル為メ又ハ已ニ犯シテ其罪ヲ免カル丶為メ人ヲ故殺シタル者ハ死刑ニ処ス
- 第二百九十七条 人ヲ殺スノ意ニ出テ詐称誘導シテ危害ニ陥レ死ニ致シタル者ハ故殺ヲ以テ論シ其予メ謀ル者ハ謀殺ヲ以テ論ス
- 第二百九十八条 謀殺故殺ヲ行ヒ誤テ他人ヲ殺シタル者ハ仍ホ謀故殺ヲ以テ論ス
- 第一節 謀殺故殺ノ罪
(Homicide)
- Article 199 A person who kills another shall be punished by the death penalty or imprisonment with work for life or for a definite term of not less than 5 years.
参照条文
[編集]- 第203条(未遂罪)
- 未遂は、罰する。
判例
[編集]- 殺人(最高裁決定 昭和27年2月21日)刑法第202条
- 通常の意思能力のない被害者に縊死の方法を教えて縊首させた所為と殺人罪
- 被害者が通常の意思能力もなく、自殺の何たるかも理解せず、しかも被告人の命ずることは何でも服従するのを利用して、その被害者に縊死の方法を教えて縊首せしめ死亡するに至らしめた所為は、殺人罪にあたる。
- 殺人、業務上横領(最高裁判決 昭和33年11月21日)刑法第202条
- 被害者の意思の瑕疵と刑法第202条の嘱託、承諾
- 被害者の意思が自由な真意に基かない場合は刑法第202条にいう被殺者の嘱託または承諾としては認められない。
- 擬装心中は殺人罪にあたるか
- 自己に追死の意思がないに拘らず被害者を殺害せんがため、これを欺罔し追死を誤信させて自殺させた所為は、通常の殺人罪に該当する。
- 被害者の意思の瑕疵と刑法第202条の嘱託、承諾
- 殺人(最高裁決定 昭和59年3月27日)
- 殺人罪にあたるとされた事例
- 厳寒の深夜、銘酊しかつ暴行を受けて衰弱している被害者を河川堤防上に連行し、未必の殺意をもつて、その上衣、ズボンを脱がせたうえ、脅迫的言動を用いて同人を護岸際まで追いつめ、逃げ場を失つた同人を川に転落するのやむなきに至らしめて溺死させた行為は、殺人罪にあたる。
- 殺人被告事件(最高裁決定 平成17年7月4日)
- 重篤な患者の親族から患者に対する「シャクティ治療」を依頼された者が入院中の患者を病院から運び出させた上必要な医療措置を受けさせないまま放置して死亡させた場合につき未必的殺意に基づく不作為による殺人罪が成立するとされた事例
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- 「シャクティ治療」- 手の平で患者の患部をたたいてエネルギーを患者に通すことにより自己治癒力を高めるという「シャクティパット」と称する独自の治療
- 重篤な患者の親族から患者に対する「シャクティ治療」を依頼された者が,入院中の患者を病院から運び出させた上,未必的な殺意をもって,患者の生命を維持するために必要な医療措置を受けさせないまま放置して死亡させたなど判示の事実関係の下では,不作為による殺人罪が成立する。
- 被告人は,自己の責めに帰すべき事由により患者の生命に具体的な危険を生じさせた(被告人に責任のある先行行為の存在)上,患者が運び込まれたホテルにおいて,被告人を信奉する患者の親族から,重篤な患者に対する手当てを全面的にゆだねられた立場にあったものと認められる。その際,被告人は,患者の重篤な状態を認識し,これを自らが救命できるとする根拠はなかったのであるから,直ちに患者の生命を維持するために必要な医療措置を受けさせる義務を負っていたものというべきである(排他的な保障人的地位の存在)。それにもかかわらず,未必的な殺意をもって,上記医療措置を受けさせないまま放置して患者を死亡させた被告人には,不作為による殺人罪が成立し,殺意のない患者の親族との間では保護責任者遺棄致死罪の限度で共同正犯となると解するのが相当である。
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