刑法第208条の2
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条文
[編集]- 第208条の2
- 2人以上の者が他人の生命、身体又は財産に対し共同して害を加える目的で集合した場合において、凶器を準備して又はその準備があることを知って集合した者は、2年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金に処する。
- 前項の場合において、凶器を準備して又はその準備があることを知って人を集合させた者は、3年以下の拘禁刑に処する。
改正経緯
[編集]2022年改正
[編集]2022年、以下のとおり改正(施行日2025年6月1日)。
- (改正前)懲役
- (改正後)拘禁刑
2013年改正
[編集]自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(平成25年11月27日法律第86号 「自動車運転処罰法」)が制定され、危険運転致死傷および自動車運転過失致死傷の規定は、同法第2条及び第3条に継承されたため「危険運転致死傷罪」に関する条項は削除され、第208条の3に定められていた「凶器準備集合罪」の条数が、2001年改正前の条数に繰り上がった。
2001年改正
[編集]本改正以前は、自動車運転加害については、業務上過失致死傷罪(刑法第211条)が適用されていたが、飲酒運転などを原因とする事故などについて、刑が軽すぎるなどの批判があり、2001年法改正で「危険運転致死傷罪」を創設し(詳細は自動車運転処罰法第2条参照)、それまで、本条にあった凶器準備集合罪は第208条の3に繰り下がった。
解説
[編集]参照条文
[編集]判例
[編集]- 兇器準備集合(最高裁決定 昭和45年12月03日)
- 長さ1メートル前後の角棒は本条にいう「兇器」にあたるか
- 長さ1メートル前後の角棒は本条にいう「兇器」にあたる。
- 本条にいう「集合」にあたる場合
- すでに一定の場所に集まつている二人以上の者が、その場で兇器を準備し、またはその準備のあることを知つたうえ、他人の生命、身体または財産に対し共同して害を加える目的を有するに至つた場合は、本条にいう「集合」にあたる。
- 本条にいう「集合」の状態の継続と兇器準備集合罪の継続
- 本条にいう「集合」の状態が継続するかぎり、兇器準備集合罪は、継続して成立する。
- 長さ1メートル前後の角棒は本条にいう「兇器」にあたるか
- 兇器基準集合、銃砲刀剣類所持等取締法第違反、火薬類取締法第違反(最高裁判決 昭和47年03月14日)
- 本条にいう「兇器」にあたらないとされた事例
- 他人を殺傷する用具として利用する意図のもとに準備されたダンプカーであっても、他人を殺傷する用具として利用される外観を呈しておらず、社会通念に照らし、ただちに他人をして危険感をいだかせるに足りない場合には、本条にいう「兇器」にあたらない。
- 兇器準備集合、公務執行妨害(最高裁判決 昭和52年05月06日)
- 共同加害の目的が認められないとして兇器準備集合罪の成立を成否を否定した原判決に事実誤認の疑いがあるとされた事例
- 角材の柄付きプラカード等を所持して集団示威運動を行つていた学生集団の先頭部分の学生のうち、所携の右プラカード等を振り上げて警察官をめがけて殴りかかつている状況を相互に目撃し得る場所に近接して位置し、しかもみずから警察官に対し暴行に及んだ者あるいは暴行に及ぼうとしていた者についてまで、右行為は各自の個人的な意思発動による偶発的行為であるとして、兇器準備集合罪にいう共同加害目的の存在を否定した原判決は、判示の事情のもとにおいては、事実を誤認した疑いがあり、破棄を免れない。
- 角材の柄付きプラカード等→兇器
- みずから警察官に対し暴行に及んだ者あるいは暴行に及ぼうとしていた者→共同加害目的
- 兇器準備集合(最高裁決定 昭和58年06月23日)
- 兇器準備集合罪の保護法益
- 兇器準備集合罪は、個人の生命、身体又は財産ばかりでなく、公共的な社会生活の平穏をも同様に保護法益とするものである。
- 迎撃形態の兇器準備集合罪と相手方からの襲撃の客観的蓋然性の要否
- 兇器準備集合罪はいわゆる抽象的危険犯であつて、いわゆる迎撃形態の兇器準備集合罪が成立するためには、必ずしも相手方からの襲撃の蓋然性ないし切迫性が客観的状況として存在することは必要でなく、兇器準備集合の状況が社会生活の平穏を害しうる態様のものであれば足りる。
- 兇器準備集合罪の保護法益
- 兇器準備集合(最高裁決定 昭和58年11月22日)
- 迎撃形態の兇器準備集合罪における共同加害目的
- いわゆる迎撃形態の兇器準備集合罪において共同加害目的があるというためには、行為者が、相手方からの襲撃の蓋然性ないし切迫性を認識している必要はなく、相手方からの襲撃のありうることを予想し、襲撃があつた際にはこれを迎撃して相手方の生命、身体又は財産に対し共同して害を加える意思を有していれば足りる。
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