労働法
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労働法とは
[編集]- 雇用契約において、雇用者(使用者)が対価を支払う見返りに、被用者(被傭者)が労働力を提供する即ち、使用者と労働者の間の対等な契約であるというのが建前である。しかし、一般的な現実社会においては、資本を有し多くの労働者を抱えることとなる使用者に対して、労働者は個人としては代替を可能とされ、その採否や労働条件の決定において社会的な不均衡が存在する。
- このような社会的な不均衡を公平にするため、労働者個人としての最低限の権利を定めるとともに使用者に対して労働者が集団で法主体となることができることを定めた法体系が労働法である。
労働法小史・比較法と現代の労働法
[編集]労働法総論
[編集]労働法の分類
[編集]- 講学上、労働法は以下の4つのカテゴリーに分類される。
- 個別的労働関係法 - 個々の労働者と使用者の間の権利義務関係を規律する法
- 集団的労働関係法 - 労働者の団結権等を保障する法
- 労働紛争解決法 - 個別・集団双方の紛争処理
- 労働市場法 - 雇用政策・職業安定・職業紹介等
- 「個別的労働関係法」「集団的労働関係法」「労働紛争解決法」は、各々、労働基準法・労働組合法・労働関係調整法を代表的な法令とし、この三法は労働三法と呼ばれる。
個別的労働関係法
[編集]- 個々の労働者に関して労働環境を保障する法のカテゴリーである。雇用関係における当事者間の不均衡を是正する他、
- さらに、下位分類を置く整理も用いられている。
集団的労働関係法
[編集]- 雇用契約は、雇用者(雇用主・使用者)と被用者(労働者)間の契約であるが、既述のとおり、雇用主と労働者には社会的不均衡が存在するため、同一の雇用主(または雇用主の集団)に対して、労働者が結集して(団結)、雇用主との間で交渉、その効果を労働者全体に及ぼし(団体交渉)、また、交渉の効果を高めるため労働拒否であるストライキを正当な手段とする(団体行動)ことが、社会的に認められるようになり、それらの団結権・団体交渉権・団体行動権などを保障・規律する法として、「集団的労働関係法」と呼ばれる労働法のカテゴリーが形成された。
- 労働者が集団で雇用主と交渉をすることは、脅迫・強要との外観を呈することが往々にしてあり、また、ストライキなどの労働拒否は雇用契約における債務不履行ともなる。また、米国などにおいては、労働力の独占として独占禁止法に抵触したという歴史的な事実もある。このため、これらの権利の行使にあたっては、労働者の権利の保護の目的に沿った妥当な方法が求められる。この前提により、集団的労働関係は、「労働組合」運動に結集され、それを律する法律としては「労働組合法」が存在する。
労働紛争解決法
[編集]- 労働関係の紛争解決は、雇用契約が、当事者の契約における社会的地位の格差や、日本において慣習化している終身雇用などの事情、他の労働者への影響などを踏まえると、裁判制度が前提とする一回性の解決では、労働問題の適切な解決と言い難い。
- 個別的労働関係における紛争の即時的かつ適正な解決のため、労働基準監督署・都道府県労働局による監督・指導や個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(個別労働関係紛争解決促進法)、労働審判法と言った、裁判以前に当事者における調停等を含んだ法制度が構成されている。
- また、一方の当事者を労働組合とし集団的的労働関係においては、ストライキ等の労働争議の予防・解決のための調整制度(あっせん・調停・仲裁など)を定める「労働関係調整法」が紛争解決の代表的なものとなっている。
労働市場法
[編集]- 職業安定法・雇用対策法・雇用保険法・労働者派遣法・職業能力開発促進法など、雇用仲介・雇用政策・失業保障・職業能力開発を扱う法律群、すなわち、「雇用関係そのもの」ではなく「雇用に至る前後の市場と政策」を主たる対象する分野を「労働市場法」と位置付ける。
- 労働法は、元来、雇用関係にある労働者を救済するため「個別的労働関係法」「集団的労働関係法」「労働紛争解決法」の3カテゴリで構成されてきたが、講学上の観点から、労働政策全体を見渡し、労働契約(雇用契約)法制と雇用政策法制の交錯(非正規雇用・派遣・失業保障など)を体系的に位置付けやすくし、また、立法政策・労働行政の観点から、労働基準法等労働条件規制と雇用政策(職安法・雇用保険法等)を切り分けることで、「企業内の労働条件の問題」と「マクロな雇用・失業対策」「マッチング政策」の役割分担が明確にすることから、「労働市場法」の概念を定立することが有用であるとされる。
- さらに、訴訟実務の観点からは、個別紛争(解雇・残業代・ハラスメント等)を扱う場面では、問題の中心は個別的労働関係法・紛争解決法であり、労働市場法を明示的に意識しなくても検討は可能なことが多い一方で、派遣・請負、職業紹介、雇用保険給付、リスキリング政策などに関連する事案や制度設計を扱う場合には、「労働市場法」として別建てで押さえておく方が、関係法令の射程や政策目的の理解がしやすいという特性がある。
