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将棋/▲7六歩

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』
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1手目▲7六歩まで

角道を開ける出だし。

△3四歩と後手も角道を開ける手と、△8四歩と飛車先の歩を突く手が考えられる。


△3四歩

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詳細は「/△3四歩」を参照
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2手目△3四歩まで

先手が居飛車でいくなら、▲2六歩と飛車先を突く手が自然である。振り飛車でいく場合は△4四歩他が考えられる。

2手目△3四歩は、居飛車党でも2010年代から多く愛用されるようになった。羽生善治は2010年の1月を最後に△8四歩は指さず、▲7六歩に対して△3四歩を志向し始める。渡辺明も竜王位時代、先手居飛車党に対して△8四歩とし、角換わり同型は後手番でしか指していなかったが、その後角換わり同型の後手を持って敗れ始めると、以後は二手目△8四歩をほぼ封印し、二手目△3四歩を志向している。

振飛車党や、二手目には△3四歩とする横歩取りや一手損角換わり等を中心に指す居飛車党には関係がないが、2手目が△8四歩のとき、先手には▲2六歩からの角換わりや相がかり、▲7八銀や▲6八銀からの矢倉という選択肢が生じる。矢倉戦が様変わりし、このころから角換わりは矢倉に比べ、戦いが開始するときの形が、最も定型化されているうえに、そのあとの戦いもかなり突きつめて研究することが可能であるという特徴を持つことになった。

その角換わりがAIの研究などで先手必勝との結論があるようであるが、このことから棋士が合理的選択をするようになれば、後手は2手目に△8四歩と突くと先手は絶対に角換わりにするとなれば、長年居飛車党でも矢倉を指し続けてきた棋士もかなりの棋士が2手目△8四歩に3手目▲2六歩の角換わりとなる、つまり角換わり同型はずっと以前から後手の悩みのタネだったが、その傾向は年々強まっていくことになるとみられた。

以降はさらに、▲7六歩△3四歩▲2六歩に後手も他の手もあり、未開拓の手段も多く定跡形が詰まると研究などもあってこの流行に流れることになる。90年代後半から2000年代にも藤井システムや、相居飛車後手△8五飛が大流行した際にこうした傾向が生じたが、いまだ定跡化されていない将棋が色々と残っている状況である。


△8四歩

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詳細は「/△8四歩」を参照
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2手目△8四歩まで

陽動振り飛車は別として、居飛車を宣言した手。逆にそのあと先手に戦形を決めさせる意味もあり、先手番は次に△8五歩と突かれたときに、飛車先を銀で受ける矢倉等か、角で受けて角換わり、雁木、振り飛車か、さらには飛車先を受けない相掛かり模様等のどれかを選択させることになる。

居飛車の角換わりや相掛かりなどでいくなら、▲2六歩と飛車先を突く手が自然だが、▲6八銀▲7八銀と上がり、△3四歩には▲7七銀や▲6六歩、△8五歩には▲7七銀や▲7七角と飛車先を受ける手も考えられる。

振り飛車でいくなら、飛車を振ることや左銀を動かすなどが、考えられる。

上記の#△3四歩にあるとおり、居飛車党でも2手目は△3四歩を志向する傾向があるが、藤井聡太は相手がどう指そうが、後手番でもこれまで2手目は8四歩が定番でなおかつ全8冠制覇という結果を出し続けている。

2手目△3四歩に比べて変化球が少ない分3手目を限定させる意味合いを持つ。また。▲7六歩△3四歩で、角を早くに対峙する形はそのぶん先手番後手番双方とも駒組みに注意が必要となる。▲7六歩△3四歩に▲6八銀と指す間違いはできないわけである。つまり、2手目△8四歩は先手から変化球的な手段を受けない指し方だといえるが、序盤につまずかない代わりに、リードする展開になる可能性も少ないのが2手目△8四歩ともいえ、1982年刊行『史上最強ワセダ将棋』(講談社)でも、▲7六歩に2手目△8四歩とすると、先手にあらゆる指し方が生じ、後手はさまざまな戦法戦術を知っておかなくてはならなくなると指摘している。

このことを踏まえ、将棋流行語大賞2024では第5位に「子育てしながら8四歩」がランクインする。後手番で2手目に△8四歩と突くのは相手の研究をすべて受けて立つ姿勢であるため、相当な準備が必要になるとみているが、広瀬章人が子育てしながらその姿勢を貫いているのですごいということを、山本博志が広瀬のすごさを伝えるのに使った表現として知られる。このためすっかり山本の言葉として知られているが、もとは渡辺明がオリジナルだという。

なお山本がいうには、将棋AIが最善手と示す2手目△8四歩がAIの最善を追求するのに対し、2手目△3四歩はAIの評価値は落ちるが、自分の好きな作戦に持ち込めるメリットがある、△8四歩が真理を追求する手に対して、△3四歩はオリジナリティで勝負する手とした。ここから、居飛車党の後手2手目は、その人の将棋に対する姿勢を表しているとした。

△3二金

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2手目△3二金まで

相居飛車になるなら無難だが、先手に振り飛車にされると玉を囲いづらく作戦の幅が狭くなる(そのため2手目△3二金や初手▲7八金は、居飛車党の相手に「振り飛車もできるか」と挑発する意味があるともいわれる)。

2006年の竜王戦佐藤康光に2手目△3二金を連投された渡辺明は、後に「△3二金には▲5六歩から中飛車にして、ちゃんとやれば先手がよくなる」と述べ[1]、翌年佐藤に再び△3二金を指された際、中飛車を選択した。

一方の佐藤は「挑発ではなく、論理に基づく手」とし[1]、▲2六歩に△4一玉の新手や、▲5六歩に対する△4二銀〜△5二飛の相中飛車の構想を披露した。


△3二飛

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詳細は「2手目△3二飛」を参照
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2手目△3二飛まで

2手目△3二飛戦法。

初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩に△3五歩と突く後手石田流が、▲2五歩△3二飛▲6八玉△6二玉?に、▲2二角成△同銀▲6五角で後手苦しいと見られ[2]、それでも後手番で石田流を指す方法として今泉健司が考案した。

▲2六歩に

  1. △3四歩?は▲2二角成△同銀▲6五角で後手悪いが[2]
  2. △4二銀が佐藤康光の新手で、
    1. ▲2五歩△3四歩▲2四歩?△同歩▲同飛は、△8八角成▲同銀△3三角で後手勝ちのため、
    2. ▲6八玉△6二玉から囲い合いとなる。


△5四歩

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詳細は「/△5四歩」を参照
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2手目△5四歩まで

▲2六歩△3四歩でゴキゲン中飛車の出だしに合流する。ヒラメ戦法でも使用されている。場合によっては菅井流の角道オープンの三間飛車に構えることも。

初手から▲7六歩△3四歩に▲6八玉と上がるゴキゲン中飛車封じを警戒する意味があったが[3]、これには以下△5四歩に▲2二角成?△同銀▲5三角は、△3三角の久保流(2010年A級順位戦、対三浦弘行戦)で後手も指せるというのが定説になっている[4]


△5二飛

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1961年8月の丸田祐三 vs.大山康晴 戦(王位戦)から、2017年8月の斎藤慎太郎 vs.大橋貴洸 戦(第67期王将戦一次予選)などがある。

△4二飛

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藤井猛 vs.片上大輔 戦(2010年1月、宇都宮市東武百貨店でのお好み対局)脇謙二 vs.片上大輔 戦(2008年3月、順位戦)富岡英作 vs. 中村修 戦(1993-03月、銀河戦)など。

△3二銀

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二歩千金の著『2手目△3二銀システム』 (マイナビ将棋BOOKS、2024年)で知られる。

詳細は「/△3二銀」を参照

△4二銀

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後手嬉野流での出だし。プロ棋戦では千田翔太が2017年1月の第48期新人王戦で都成竜馬対して指す。戦型は急戦矢倉となる。

△6二銀

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2手目△6二銀まで

これは、相手が振り飛車党の場合に、飛車先を突かない戦法、例えば右四間飛車+腰掛銀などで用いられる作戦として知られている。

この銀を上がると手が遅れるため、▲2六歩△3四歩▲2五歩△3二金で、▲2四歩△同歩▲同飛と早くの飛車先交換は可能。英春流の出だしとして知られる。

第76期名人戦七番勝負第6局
佐藤天彦名人 - 羽生善治竜王
「形が悪いからとか、美学に反する、重いといった抽象的な判断で、可能性を捨てることはない。どんな手でも、やってみる価値はある。」 後手は、7四の歩を取らせる相掛形の構想となる。

第43期棋王戦五番勝負 第5局
渡辺 明棋王 - 永瀬拓矢七段
棒銀の▲2五銀は成立しないが、本譜は▲36銀形を陽動に用いて対策している。 △3三銀形が持久戦に不利ならば△4四歩3三桂形で受け、手つまりを狙うのは後手番特有のニュアンス。

第68回NHK杯2回戦第6局
三枚堂達也 六段 - 渡辺 明 棋王
▲47銀雁木で対抗する。それに対し後手は角頭に早く仕掛ける。

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歩1
12手目△7四飛まで
佐藤 - 羽生 戦
歩1
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歩2
28手目△7二飛まで
三枚堂 - 渡辺 戦

先手の初手▲7六歩に対する2手目△6二銀については、羽生善治が対谷川浩司、郷田真隆、森下卓といった居飛車党に対して数度指している。

△7二銀

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神崎健二 vs. 北浜健介 戦(2017年10月、第3期叡王戦段位別予選)、矢内理絵子 vs. 泉正樹 戦(2010年8月12日、第12回京急将棋まつり)など。

△5二金右

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△4二玉

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深浦康市が奨励会時代に指している(1989年4月27日 対庄司俊之戦 三段リーグ)。

△5二玉

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△1四歩

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2手目△1四歩まで

阪田三吉が天龍寺の決戦で用いた手。△9四歩より咎めにくいとされる[5]

その後も2017年1月 ▲菅井竜也 vs.△山本真也戦(第43期棋王戦予選)など数局指されている。


△9四歩

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2手目△9四歩まで

阪田三吉が南禅寺の決戦で用いた手。 先崎学も佐藤康光に対して、2001年7月の日本シリーズで用いている。


△7四歩

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2手目△7四歩まで

w:ハメ手のひとつとして知られる。

▲5五角?と飛車取りに出られるが、△3四歩▲8二角成△同銀▲8八銀と飛車角交換になったときに、△9五角!の王手が防ぎづらく、▲8六飛または▲7七飛と飛車を打って受けるしかない(▲7七銀??は△同角右成▲同桂△同角成の二枚替え、▲4八玉??、▲6八飛??は△8八角成で銀がタダ)。

将棋世界1993年9月号、中村修の講座「後手番二手目の可能性」によると、研究してみると意外と大変、かなり有力とさえ感じてきたという。これは、居飛車のまま、8筋を伸ばして飛車先交換は3手かかり、そして△7四歩から袖飛車での歩交換も同じ3手である。

なお自らが開発したこの二手目△7四歩戦法を対米長邦雄(当時名人)戦で採用し、92手で快勝している。

図以下、▲2六歩△7二飛▲2五歩△3四歩に、▲2四歩は、△同歩▲同飛△8八角成▲同銀△3三角▲2八飛△2六歩で、2手目△5四歩作戦と同様な展開となる。以下、

  1. ▲4六角とし、対して△8二銀と受けてくれれば▲7八金△2二飛▲2四歩で、少し後手が指せそうとしている
  2. ▲4六角とし、対して△2七歩成ならば、▲同飛△8八角成▲9一角成△8九馬で、これも後手がよさそうとしている
  3. ▲9五角の王手に対して、△6二銀などでは▲7八金△4四角▲7七角として、飛車走りが実現すれば先手良しといえ、角打ちの王手には△7三桂の一手。以下▲7八金△9四歩▲8六角△4四角などは、ハッキリしないとしている

もどって、▲2六歩△7二飛▲2五歩△3四歩に、

  1. ▲7八金とし、以下△3二金▲2四歩△同歩▲同飛△7五歩▲同歩△同飛。ここで▲3四飛と横歩を取ると△8八角成でおしまい。▲2二角成△同銀▲3四飛にも、以下△3三桂▲3六飛△2七角▲5六飛△4五角成▲5三飛成△5二歩。
  2. ▲7八金△3二金▲2四歩△同歩▲同飛△7五歩に、▲3四飛△7六歩▲7三歩△同桂▲2二角成△同銀▲7四歩△6五桂では
    1. ▲7三歩成とすると、△7三同飛とは取れず(▲3二飛成がある)、△9五角。以下▲7七桂△4二飛▲3五飛△6四歩▲9六歩で形勢不明
    2. 角打ちを消して逆に▲9五角。以下△4一玉▲7三歩成△5一角▲7四飛△9四歩でこれも難解

としている。

つまり中村は、後手ハッキリ悪くなる順は見つからず、2手目△7四歩はかなり優秀な作戦だとしている。


△6四歩

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△6二飛

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2009年7月 新人王戦、▲菅井竜也 vs.△小泉祐 戦で、後手の小泉が実戦する。戦型は先手石田流対後手右四間に。

△7二飛

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2009年6月 新人王戦、▲中村亮介 vs.△小泉祐 戦で、後手の小泉が実戦する。後手が勝利。

△9二飛

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2011年11月 新人王戦、▲上村亘 vs.△小泉祐 戦で、後手の小泉が実戦する。後手が勝利。

△4二金

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△6二金

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2手目△6二金まで

2012年2月 新人王戦、▲永瀬拓也 vs.△小泉祐 戦 の実戦例がある[6]

この時の対戦では1局目に後手の小泉が先手の▲7六歩に△3二銀と指して持将棋になる。指しなおし局では先手小泉の初手が▲7八銀。これも千日手となり、再度の指しなおし局で当手順となった。

△6二金・△8一飛型は一つの形だが、2手目△6二金は△6二銀と同様、▲2六歩と突かれると飛車先が受からない。

ただし▲2六歩に△6一金と戻した場合、後手は2手掛けて何も指しておらず論外だが、▲2五歩△3四歩にすぐ▲2四歩△同歩▲同飛?と行くのは、△8八角成▲同銀△3三角で、△8三歩型が生きる可能性がある。

渡辺明、郷田真隆は、2手目△6二玉右玉としてわかるが、△6二金は不自然、意味がわからないと評している[6]

森内俊之の見解では、2手目△6二銀に比べて明らかに損[6]

広瀬章人豊島将之は、2手目△6二玉よりは良い可能性をわずかに示唆した[6]


△6二玉

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2手目△6二玉まで

ボンクラーズ-米長 2012で米長邦雄が指した手で、新米長玉と呼ばれる。

▲2六歩と突かれると飛車先が受からず損とされるが、コンピュータ将棋の多くは飛車先の交換を重視せず、▲7五歩や▲6八飛と振り飛車にすることが知られている。

序盤でコンピュータの定跡を無効化し、力戦にして厚みを築いて入玉を目指す狙いがある。


△7二金

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△5二金左

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△9二香

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△1二香

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△2四歩

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2手目△2四歩まで

▲2六歩△3四歩で後手角頭歩戦法の出だし。△3四歩▲2六歩△2四歩に合流する。以下▲2五歩△同歩▲同飛には、△8八角成▲同銀△3三桂▲2三飛成に△2二飛の飛車ぶつけが狙い。


△4四歩

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2手目△4四歩?まで

パックマン。▲4四同角に△4二飛と回って△4七飛成を狙う。


脚注

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  1. ^ 1.0 1.1 鈴木 2008。
  2. ^ 2.0 2.1 佐藤 2010、pp. 12-24。
  3. ^ 森内ら 2014、p. 15。
  4. ^ 森内ら 2014、p. 40。
  5. ^ 鈴木 2008、pp. 67-70。
  6. ^ 6.0 6.1 6.2 6.3 渡辺ら 2015、pp. 22-24。

参考棋譜

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参考文献

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