応用情報技術者試験

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応用情報技術者試験(おうようじょうほうぎじゅつしゃしけん)に関するコンテンツです。

概要[編集]

応用情報技術者試験(略号APApplied Information Technology Engineer Examination)とは、平成21年度(2009年度)より実施されている情報処理技術者試験の区分の1つです。試験実施団体は、経済産業省所管の独立行政法人情報処理推進機構(IPA)IT人材育成センター国家資格・試験部(旧・情報処理技術者試験センター)です。

IPAが定めた情報処理技術者試験制度のスキルレベル3(スキルレベルは1から4が設定されています。)に相当する国家試験です。ちなみに下位区分の基本情報技術者試験はスキルレベル2、ITパスポート試験はスキルレベル1です。また、情報セキュリティスペシャリスト試験など上位の区分はスキルレベル4であり、高度情報処理技術者試験と総称されます。

第一種情報処理技術者試験(1970年-2000年実施)、ソフトウェア開発技術者試験(2001年-2008年実施)の後継にあたる区分です。2004年(平成16年)までは年1回の実施でしたが、2005年(平成17年)より春期(4月第3日曜日)および秋期(10月第3日曜日)の年2回実施となっています。

対象者像は「高度IT人材となるために必要な応用的知識・技能をもち、高度IT人材としての方向性を確立した者」と規定しており、主に数年の経験を積んだシニアプログラマやシステムエンジニアを主対象としていますが、前身の第一種情報処理技術者試験やソフトウェア開発技術者試験(ソフ開)とは異なり、システム開発者側だけでなく、従来シスアド試験で対象としていた利用者側にもある程度対応した試験となっています(この点は基本情報技術者試験も同様です)。

一般的に基本情報技術者試験に合格した人が次に目指す試験区分として知られています。また、高度情報処理技術者試験への登竜門的な試験区分でもあります。基本情報と同様に出題範囲は広いですが、より深い知識と応用力を試され、午後試験では記述式の設問が大幅に増えます。単純に知識をもとにした回答だけではなく、論理的な回答をアウトプットする能力が問われるため難易度はかなり高いです。

高度試験が各分野(セキュリティ、データベース、ネットワーク、組み込みシステムなど)に特化した試験である一方、応用情報はIT全般に関する総合的な知識が必要とされるゼネラリスト的な試験として認知されています(内容は基本情報よりはやや深いが高度試験よりは浅いです)。ただし午後問題は選択式のため、基礎理論アルゴリズムといった数学的要素の強い問題を回避することも可能です。

応用情報は社会人の受験者が多いです。基本情報では大学生などの学生や入社3年以内の新人社員の受験者が比較的多いですが、応用情報では学生、新人の受験者は(全くいないわけではありませんが)比較的少ないです。

難易度[編集]

公表されている合格率は例年20%前後です。しかし、応用情報技術者試験の場合、受験者の大部分は既に基本情報技術者試験に合格できる実力を持っている場合が多いため、難易度は相対的に高くなっています。

2014年度(平成26年度)秋期試験より、試験方式の改訂で午後試験で経営戦略プログラミングに関する問題が必須回答ではなくなったため、旧第一種情報処理技術者試験やソフトウェア開発技術者試験(ソフ開)時代の開発者向け試験としての性格が薄れ、インフラ(ネットワーク)エンジニアなど経営やプログラミングとの関わりが薄い人でも挑戦できるようになりました。(ソフ開の頃はアルゴリズムやSQLに関する深い知識がないとどうしても合格することができませんでした。)

現在は午後試験は必須解答のセキュリティ以外の問題はすべて自由選択制となっており選択の幅が広いため、ある意味で基本情報よりも挑戦しやすいと言われることも多いですが、基本情報を受験せずにいきなり応用情報を受験する場合は、全問必須解答の午前試験の対策はより一層力を入れる必要があります。また、午後試験では下位区分(基本情報、ITパスポート試験情報セキュリティマネジメント試験)とは異なり、記述式の問題が登場するため、既に下位区分に合格している人もしっかり対策する必要があります。

IT以外の資格試験では、行政書士試験や通関士試験、社会保険労務士(社労士)試験、FP技能士1級、日商簿記検定1級などと同じくらいの難易度と言われています。宅地建物取引士(宅建)試験やFP技能士2級、日商簿記検定2級よりは難易度が高いと言われることが多いです。

応用情報技術者試験が対象とする人材像[編集]

対象者像[編集]

高度IT人材となるために必要な応用的知識・技能をもち、高度IT人材としての方向性を確立した者

業務と役割[編集]

基本戦略立案又はITソリューション・製品・サービスを実現する業務に従事し、独力で次のいずれかの役割を果たす。

  • 需要者(企業経営、社会システム)が直面する課題に対して、情報技術を活用した戦略を立案する。
  • システムの設計・開発を行い、又は汎用製品の最適組合せ(インテグレーション)によって、信頼性・生産性の高いシステムを構築する。また、その安定的な運用サービスを実現する。

期待する技術水準[編集]

  • 情報技術を活用した戦略立案に関し、担当業務に応じて次の知識・技能が要求される。
    • 経営戦略・情報戦略の策定に際して、経営者の方針を理解し、経営を取り巻く外部環境を正確に捉え、動向や事例を収集できる。
    • 経営戦略・情報戦略の評価に際して、定められたモニタリング指標に基づき、差異分析などを行える。
    • 提案活動に際して、提案討議に参加し、提案書の一部を作成できる。
  • システムの設計・開発・運用に関し、担当業務に応じて次の知識・技能が要求される。
    • アーキテクチャの設計において、システムに対する要求を整理し適用できる技術の調査が行える。
    • 運用管理チーム、オペレーションチーム、サービスデスクチームなどのメンバとして、担当分野におけるサービス提供と安定稼働の確保が行える。
    • プロジェクトメンバとして、プロジェクトマネージャ(リーダ)の下でスコープ、予算、工程、品質などの管理ができる。
    • 情報システム、ネットワーク、データベース、組込みシステムなどの設計・開発・運用・保守において、上位者の方針を理解し、自ら技術的問題を解決できる。

出題範囲[編集]

基本情報技術者試験と同様に、情報技術全般から幅広く出題されますが、応用情報技術者試験では基本情報よりも深く掘り下げた内容が出題されます。特に午後は基本情報と異なり、記述式の問題も登場するためしっかり学習してください。

ただし応用情報の午後は基本情報と異なり、セキュリティ以外はすべて選択問題です。そのため、アルゴリズムプログラミング)の問題を回避することも可能です。

午前[編集]

テクノロジ系から50問、マネジメント系から10問、ストラテジ系から20問出題されます。

ソフトウェア開発技術者試験ではテクノロジ系が中心でしたが、2009年(平成21年)春期以降はマネジメント系、ストラテジ系からの出題数が増えています。

テクノロジ系[編集]

全部で50問出題されます。近年は数学セキュリティからの出題が増えています。

基礎理論
コンピュータシステム
  • コンピュータ構成要素
  • システム構成要素
  • ソフトウェア
  • ハードウェア
技術要素
開発技術
  • システム開発技術
  • ソフトウェア開発管理技術

マネジメント系[編集]

80問中10問はマネジメントに関する問題です。ソフトウェア開発技術者試験の頃よりも配点が上がっています。

プロジェクトマネジメント
  • プロジェクトマネジメント
サービスマネジメント
  • サービスマネジメント
  • システム監査

ストラテジ系[編集]

80問中20問は経営戦略や企業活動に関する問題です。ソフトウェア開発技術者試験の頃よりも大幅に配点が上がっています。

システム戦略
  • システム戦略
  • システム企画
経営戦略
  • 経営戦略マネジメント
  • 技術戦略マネジメント
  • ビジネスインダストリ
企業と法務
  • 企業活動
  • 法務

午後[編集]

必須問題1問と選択問題4問の計5問を解答します。配点は各20点です(100点満点)。

必須問題
  • セキュリティ - 2014年(平成26年)春から必須問題になりました。他の分野よりは難易度が低いはずなので、全問正解とまでは行かなくても8割以上の正解は目指しましょう。
選択問題

以下の10分野から4分野を選択します。基本情報技術者試験と異なり、アルゴリズム(プログラミング)は必ずしも選択しなくても良くなっています。2014年(平成26年)春期まではストラテジとアルゴリズムのどちらか片方は必須でしたが、現在は完全自由選択となっています。

テクノロジ系が中心の基本情報と異なり、応用情報では商業系の問題(ストラテジ、マネジメント)が充実しているため、文系の人ならむしろ基本情報より勉強しやすいかもしれません。

形式[編集]

午前午後の二部構成です。両方とも正解率60%以上で合格となり、晴れて応用情報技術者の国家資格を得ることができます(逆に言えば、例えば午前で100点満点を獲得できたとしても、午後で59点しか取れなかった場合は不合格となってしまいますので注意してください)。

なお、応用情報技術者試験では午前が不合格だった場合、午後は採点されません(多段階選抜方式、足切り)。また、応用情報技術者試験では、基本情報技術者試験のような科目免除制度(午前免除)は存在しません。

午前[編集]

試験時間は2時間30分(150分)です。四肢択一式(マークシート使用)で80問出題されます。すべて必須解答です。素点形式で採点され60点以上で合格です(満点は100点)。

テクノロジ系から50問、マネジメント系から10問、ストラテジ系から20問出題されます。第一種情報処理技術者試験やソフトウェア開発技術者試験の頃より、マネジメント系やストラテジ系からの出題数が増えています。

テクノロジ系は基礎理論、数学、コンピュータシステム、データベース、ネットワーク、セキュリティ、開発技術などから幅広く出題されますが、近年は数学セキュリティからの出題が増えているため、この2分野は重点的に勉強するようにしましょう。

基本情報技術者試験と同様にマークシート方式ですが、問題の難易度が若干高く設定されているので油断しないこと。

午後[編集]

試験時間は2時間30分(150分)です。素点形式で採点され60点以上で合格です(満点は100点)。

長文形式の大問が11問出題され、そのうち必須問題1問(セキュリティ)と選択問題4問の計5問を解くことになっています。配点はそれぞれ各20点です。2014年(平成26年)度春期からはセキュリティが必須問題となっています。

午前が知識科目ならば、午後は技能、応用力が問われる科目です。そして応用情報技術者試験では下位区分(基本情報技術者試験など)と異なり、記述式の問題が登場するので、しっかり練習する必要があります。

セキュリティは必須問題で難易度もあまり高くないので必ず勉強してください。そして8割以上の正解を目指してください。残りの選択問題4問については最低でも2問以上は得意分野にしておくこと。プログラミングははっきり言って苦手な人は手を出さないほうが良いです。ストラテジも難易度が高いです。

参考

2014年(平成26年)度春期まではストラテジとプログラミングのどちらかが必須解答問題でした(配点20点)。また、残りの選択問題は5問を選択する形式で、配点は各16点でした(2014春ではセキュリティは必須に変わったので選択問題は4問)。

ストラテジとプログラミングはどちらも難易度が高い分野なので、現在は完全自由選択になったことから、だいぶ受験しやすい試験になったと言えます。

特典[編集]

応用情報技術者試験の合格者は以下の特典を受けることができる場合があります。

  • 応用情報技術者試験の合格者を入学試験(推薦、AO)での優遇や、入学後の単位認定の対象とする大学、短期大学があります。
  • 公務員採用試験(警察官など)で優遇される場合があります。特にIT関連職種では情報処理技術者試験の合格者しか採用しないケースが少なくありません。また、採用後も階級評価の対象となる場合があります。
  • 自衛隊の技術曹および予備自衛官補の任用資格です。階級は2等陸曹、2等海曹、2等空曹とされています。

また、応用情報技術者試験に合格することで、一部の科目が免除になる国家試験があります。

  • 弁理士試験の選択科目
  • 中小企業診断士試験の「経営情報システム」
  • 高度情報処理技術者試験の午前I - 有効期間は応用情報技術者試験合格の日から2年間です。

沿革[編集]

この試験は何度か試験制度が変更されています。

  • 1970年(昭和45年)第一種情報処理技術者試験開始
    • 当時は年1回のみの実施でした。
  • 2001年(平成13年)春期よりソフトウェア開発技術者試験開始
    • 第一種情報処理技術者試験よりも設計に関する問題が増えました。
  • 2005年(平成17年)受験者数増加に伴い、現在のような春期と秋期の年2回の実施に変更されました。
  • 2009年(平成21年)春期より応用情報技術者試験開始
    • システム開発者だけでなく、利用者側(ITを利活用する者)にも対応した試験に生まれ変わりました。経営プロジェクトマネジメントに関する問題が増えた他、午後ではアルゴリズム(プログラミング)とデータベース(SQL)が選択問題に変更されました。
  • 2014年(平成26年)春期から、現在のように午後でセキュリティが必須問題になりました。また、午前でもセキュリティ分野からの出題数が増えています。
    • 同年秋期から、午後の解答数が6問から5問に変更されています。

その他[編集]

2015年(平成27年)度までは基本情報技術者試験(スキルレベル2)合格後に応用情報技術者試験(スキルレベル3)へとステップアップするというのが王道ルートでしたが、基本情報は午後のアルゴリズムプログラミングが必須問題であり配点も大きいため、これらが苦手な人は合格するのが難しいため、応用情報の受験を諦めてしまう人も少なくありませんでした(一応念のため書きますが、制度上は基本情報を受けずにいきなり応用情報を受験することも可能です。)。しかし、2016年(平成28年)度からは基本情報と同じスキルレベル2の情報セキュリティマネジメント試験(セキュマネ)が新設されたため、セキュマネ合格後に(基本情報を経由せずに)応用情報へとステップアップするというルートも新たに追加されました。基本情報は午後のアルゴリズムプログラミングが必須問題であり配点も大きいため、これらが苦手な人はセキュマネ合格後にいきなり応用情報を受験するのも良いでしょう(応用情報の午後はプログラミングが選択問題であり回避することが可能です。)。また、先にセキュマネに合格しておくと、応用情報のセキュリティ対策にもなります。ただし、応用情報の午前ではセキュマネになかった基礎理論開発技術の問題が出題される上に、午後が記述式になるため、その点は注意が必要です。

関連項目[編集]

関連外部リンク[編集]

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