コンテンツにスキップ

民法第130条

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

法学民事法コンメンタール民法第1編 総則 (コンメンタール民法)

条文[編集]

条件の成就の妨害等)

第130条
  1. 条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方は、その条件が成就したものとみなすことができる。
  2. 条件が成就することによって利益を受ける当事者が不正にその条件を成就させたときは、相手方は、その条件が成就しなかったものとみなすことができる。

改正経緯[編集]

  • 2017年改正により、第2項を追加。

解説[編集]

条件の成就擬制[編集]

信義則の観点から、条件が成就することにより不利益を受ける当事者の一方が、当該条件の成就を妨害することにより、条件不成就となった場合、相手方は、条件が成就したものとみなして(擬制)、法的効果を主張することができることを定める。

【適用例】

  • 報酬金請求(最高裁判例 昭和45年10月22日
    Aは土地の購入を、不動産業者Bに、その報酬につき売買契約締結を停止条件として仲介委託していたが、Bが探した売主Cと直接契約を締結し、報酬金を支払わなかった事案について、本条(第1項)を適用し、仲介委託契約が成就したものとみなして、同契約に定める報酬の支払いを命じた。

故意に」の意味としては、①民法第709条における「故意」同様、結果の認識で足りるとするのが多数説であるが、信義則の観点から、②相手方の権利を害する目的とする説や、③不利益を免れる意思とする説がある。

本条項は、信義則の観点から定められているものなので、総合的に評価する必要があり、上記の故意があっても信義則に反するものでなければ本条の適用は避けるべきである一方で、信義則に反するものである場合には、行為者の主観態様が過失程度のものであっても適用することが適当である。

条件の不成就擬制[編集]

元々条文上、「条件成就妨害時の成就擬制」を定めていたが、逆に、条件が成就することにより利益を受ける者が、「不正に」成就させた場合、類推適用し逆に成就しないものとみなすべきではないかとの議論は古くからなされ学説上は通説となり、判例上も認められていたものであり(最高裁判決 平成6年5月31日)、2017年改正において取り入れられた。

参照条文[編集]

判例[編集]

  1. 農地売買契約無効確認等請求 (最高裁判決 昭和36年5月26日)民法第127条,農地法第3条
    1. 農地の売買契約において「知事の許可を得ることを条件とする」ことの意義
      知事の許可を得ることを条件として農地の売買契約をしたとしても、いわゆる停止条件を附したものということはできない。
      • 知事の許可は右法律行為の効力発生要件、すなわち法定条件であり任意の条件とは異なる。
    2. 農地の売主が故意に知事の許可を得ることを妨げた場合と民法第130条の類推適用の有無
      農地の売主が故意に知事の許可を得ることを妨げたとしても、買主は条件を成就したものとみなすことはできない。
      • 法定条件に、本条は類推適用されない。
  2. 報酬金請求 (最高裁判決 昭和45年10月22日)民法第645条民法第648条
    宅地建物取引業者を排除して売買契約が成立した場合に停止条件の成就が故意に妨げられたとして右業者の報酬請求権が認められた事例
    土地等の買受人が、その買受につき宅地建物取引業者に仲介を依頼し、買受契約の成立を停止条件として一定額の報酬を支払う旨を約したのに、買受人が右業者を排除して直接売渡人との間に契約を成立させた場合において、右契約の成立時期が業者の仲介活動の時期に近接しているのみならず、当時その仲介活動により買受人の買受希望価額にあと僅かの差が残つているだけで間もなく買受契約が成立するに至る状態にあつたのであり、しかも、買受契約における買受価額が業者と買受人が下相談した価額を僅かに上廻る等の事情のあるときは、買受人は、業者の仲介によつて間もなく買受契約の成立に至るべきことを熟知して故意にその仲介による契約の成立を妨げたものというべきであり、業者は、停止条件が成就したものとみなして、買受人に対し、約定報酬の請求をすることができる。
  3. 執行文付与に対する異議 (最高裁判決 平成6年5月31日)2017年改正により法制化
    条件の成就によって利益を受ける当事者が故意に条件を成就させたときと民法130条の類推適用
    条件の成就によって利益を受ける当事者が故意に条件を成就させたときは、民法130条の類推適用により、相手方は条件が成就していないものとみなすことができる。
    • (事案)
      1. XとYは、①Yは仕様αである製品を作らない、②Yが仕様αである製品を製造した場合、定額の損害賠償をXにする旨の和解契約を締結していた。
      2. Xは、取引関係者であるAに指示し、Yの従業員であるBに仕様βで発注し、製造が進んだ段階で仕様αとしなければ解約すると強要し、仕様αの製品を供給させた。
      3. Xは、②の支払い条件が成就したとして、損害賠償の支払いを求めた。
    • (判旨)
      Yの行為は本件和解条項①に違反する行為に当たるものであることは否定できないけれども、Xは、単に本件和解条項違反行為の有無を調査ないし確認する範囲を超え、Aを介して積極的にYを本件和解条項①に違反する行為をするよう誘引したものであって、これは、条件の成就によって利益を受ける当事者であるXが故意に条件を成就させたものというべきであるから、民法130条の類推適用により、Yらは、本件和解条項②の条件が成就していないものとみなすことができると解するのが相当である。

前条:
民法第129条
(条件の成否未定の間における権利の処分等)
民法
第1編 総則

第5章 法律行為

第5節 条件及び期限
次条:
民法第131条
(既成条件)
このページ「民法第130条」は、まだ書きかけです。加筆・訂正など、協力いただける皆様の編集を心からお待ちしております。また、ご意見などがありましたら、お気軽にトークページへどうぞ。