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民法第445条

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

法学民事法民法コンメンタール民法第3編 債権 (コンメンタール民法)

条文

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(連帯債務者の一人との間の免除等と求償権)

第445条
連帯債務者の一人に対して債務の免除がされ、又は連帯債務者の一人のために時効が完成した場合においても、他の連帯債務者は、その一人の連帯債務者に対し、第442条第1項の求償権を行使することができる。

改正経緯

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2017年改正以前の条文は以下のとおり。

連帯の免除と弁済をする資力のない者の負担部分の分担)

連帯債務者の一人が連帯の免除を得た場合において、他の連帯債務者の中に弁済をする資力のない者があるときは、債権者は、その資力のない者が弁済をすることができない部分のうち連帯の免除を得た者が負担すべき部分を負担する。
以下旧条項に関する解説。
本条は、債権者が連帯債務者の1人に対し連帯の免除をした場合、債務者間の求償債権の回収不能に関して債権者が負う責任について定める。民法第444条の特則。
連帯の免除とは、債権者が、連帯債務者の1人(又は数人)の債務を、負担部分までの分割債務とすることをいう(相対的連帯免除)。全額の弁済義務を免除するという点で一種の債務免除であるから、債権者が連帯債務者の1人(又は数人)に対して一方的な意思表示によってすることができる。
  • 例えばA・B・Cの3人がDに対して60万円の連帯債務を負っている場合、債権者DがAに対して連帯の免除をしたとすると、AはDに対し20万円の分割債務を、B・CはDに対し従前どおり60万円の連帯債務を負うこととなる。この場合、Aが20万円の弁済をすると、B・Cの債務額も当然20万円減少する。
    なお、債権者が、すべての連帯債務者について連帯の免除をする場合(絶対的連帯免除)もあるが、この場合はすべての債務が分割債務となり、求償の問題は発生しないので、本条の対象ではない。
  • 本条の適用結果
    一般に、連帯債務者Cが債権者Dに60万円全額を弁済したときは、Cは、他の連帯債務者A・Bに対して、それぞれ負担部分である20万円を求償することができる(民法第442条1項)。Bが無資力であった場合、民法第444条本文に従えば、Cは、Aに対し、更に負担部分に応じて10万円の負担(求償額と合わせて30万円)を求めることができる。
    しかし、債権者Dが連帯債務者の1人であるAに連帯の免除をしていた場合、本条が適用される結果、CはAに対して20万円の求償しかできないかわりに、Cは、債権者Dに対して、Aが負担すべきであった10万円の返還を求めることができる。
本条は、連帯の免除の意思表示の解釈規定であるから、これと異なる意思表示があれば、それに従う。
改正前条項の妥当性には疑問が持たれており、債権者としては、通常、連帯債務者の一部が無資力の場合の負担まで自己が負担しようとする意思ではなく、依然、連帯を免除した者に負担させる意思(又は連帯を免除した者以外の連帯債務者に対し負担部分以上の請求をしない意思)であると解釈すべきであるとされていた(通説)。

解説

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2017年改正前は、以下の場合において、絶対効を認めていたが、改正により相対効の原則(第441条)の範疇に吸収された。

  • 連帯債務者の一人に対して債務の免除(改正前第437条
  • 連帯債務者の一人のために時効が完成(改正前第439条

すなわち、債務者が連帯債務者の一人に対して債務の免除したとしても(又は連帯債務者の一人のために時効が完成した場合においても)、他の連帯債務者が、自己の財産の負担により、債務を消滅させた場合には、他の連帯債務者は、その一人の連帯債務者に対し、第442条第1項の求償権を行使することができる。

参照条文

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前条:
民法第444条
(償還をする資力のない者の負担部分の分担)
民法
第3編 債権

第1章 総則
第3節 多数当事者の債権及び債務

第4款 連帯債務
次条:
民法第446条
(保証人の責任等)
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