民法第708条
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法学>民事法>コンメンタール民法>第3編 債権 (コンメンタール民法)
条文[編集]
(不法原因給付)
- 第708条
- 不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。
改正経緯[編集]
現代語化前
- 不法ノ原因ノ為メ給付ヲ為シタル者ハ其給付シタルモノノ返還ヲ請求スルコトヲ得ズ。但不法ノ原因ガ受益者ニ付テノミ存シタルトキハ此限リニ在ラス。
解説[編集]
意義[編集]
- 民法第703条以下に定める不当利得に該当する場合、即ち法律上の原因なく財産等が移転し、その結果、損失が発生したものがいる場合であっても、移転の原因が不法なものであるときは、原因のないことを理由に返還の請求を成すことはできない。
- 但し、衡平を斟酌し、不法の原因が、もっぱら「受益者」のみにある場合、例えば、不法原因について受益者が作出した場合、この限りでなく、不当利得として返還を請求することができる。
- 法は、不法をなすものには手を貸さないという「クリーンハンズの原則」の表明。
要件[編集]
- 給付が存在していること
- 給付の原因が、不法なものであること。
- 「不法な原因」とは、公序良俗に反してなされた給付とされる(判例)。なお、強行規定に反しているだけでは、「不法」とまで言いえず、態様が倫理感覚に反していることが求められる。
- 不法の原因に給付者が自らの意思で加担していること。
- 意思形成過程に瑕疵等があれば、錯誤などを理由として加担の意思の不存在を主張しうる。
具体例[編集]
- 典型例としては、賭博の支払返還がある。私的な賭博は違法であるから、それが原因で発生した債権債務関係は公序良俗違反として無効であり、これに基づく支払を受けた者は不当利得を得ている状態となっている。しかしながら、この給付は賭博と言う、不法な原因により給付されているため、本条項により返還を請求することはできない。
- しかし、これが、いわゆる「いかさま賭博」であった場合、これは一方的に負けることが確定しているのであるから、そもそも賭博ではなく「詐欺」の類である(刑法論としても同旨)。従って、これは、詐欺取消しの上、但書が適用され、返還を請求できる事例となる。
効果[編集]
- 不当利得として、返還を請求することはできない。
- 給付者は、物であれば所有権を失い、債権であれば、その権利を失う。
判例[編集]
- 約束手形金請求(最高裁判決 昭和28年01月22日)民法第90条
- 貸金請求(最高裁判決 昭和29年08月31日)民法第90条,民法第587条
- 預金返還請求(最高裁判決 昭和30年10月07日)民法第90条
- 売掛代金請求(最高裁判決 昭和37年03月08日)石油製品配給規則(昭和24年総理庁令、大蔵省令、法務庁令、文部省令、厚生省令、農林省令、商工省令、運輸省令、逓信省令、労働省令、建設省令1号)1条,石油製品配給規則(昭和24年総理庁令、大蔵省令、法務庁令、文部省令、厚生省令、農林省令、商工省令、運輸省令、逓信省令、労働省令、建設省令1号)11条,石油製品配給規則(昭和24年総理庁令、大蔵省令、法務庁令、文部省令、厚生省令、農林省令、商工省令、運輸省令、逓信省令、労働省令、建設省令1号)12条
- 債務不存在確認等請求(最高裁判決 昭和40年12月17日)
- 所有権移転登記抹消請求(最高裁判決 昭和41年07月28日) 刑法第96条の2,民訴法58条,民訴法56条
- 建物明渡等請求 (最高裁判決 昭和45年10月21日)
- 建物の所有者のした贈与に基づく履行行為が不法原因給付にあたる場合には、贈与者において給付した物の返還を請求できないことの反射的効果として、右建物の所有権は、受贈者に帰属するに至ると解するのが相当である。
- 建物所有権移転登記手続等請求(最高裁判決 昭和46年10月28日)
- 損害賠償請求事件(最高裁判決 平成20年06月10日)民法第709条(2につき)出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律(平成15年法律第136号による改正前のもの)5条2項
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