民法第822条
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法学>民事法>コンメンタール民法>第4編 親族 (コンメンタール民法)
条文[編集]
(懲戒)
改正経緯[編集]
2011年改正により、以下の条項から改正。
- 親権を行う者は、必要な範囲内で自らその子を懲戒し、又は家庭裁判所の許可を得て、これを懲戒場に入れることができる。
- 子を懲戒場に入れる期間は、六箇月以下の範囲内で、家庭裁判所が定める。ただし、この期間は、親権を行う者の請求によって、いつでも短縮することができる。
- 本条は明治民法の規定(旧・第882条)を戦後の民法改正においてもそのまま引き継いだものであったが、第1項の「懲戒場」に該当する施設は存在しなかったため、第1項後段及び第2項は実効性に乏しかった。そのため、平成23年の改正で懲戒場に関する部分は削除された。
解説[編集]
親権者の懲戒権について規定する。
親権者は子の非行に対する教育のために、子の身体・精神に苦痛を加えるような行為(叱責、子のものを取り上げる・毀損する、外出や外部との連絡の禁止するなど)をとることができる。もっとも、懲戒は子の利益(第820条)のため、ひいては教育の目的を達成するためのものであるから、その目的のために必要な範囲内でのみ認められる。
したがって、当該目的ではなく、親権者の恣意により行われた場合は、そもそも懲戒ではなく児童虐待と判断されることもあり、暴行罪、逮捕監禁罪などの犯罪の違法性を阻却しない。
また、懲戒に相当する原因があったとしても、過度の懲戒を加えたときは、懲戒権の濫用となり、外傷など身体の完全性を損なうものであれば、当然、傷害罪又は過失傷害罪[1]が成立するし、長時間施錠した部屋に監禁するなどの懲戒は犯罪を構成する。
なお、児童虐待の防止等に関する法律第14条(親権の行使に関する配慮等)は、以下のとおり定める。
- 児童の親権を行う者は、児童のしつけに際して、体罰を加えることその他民法(明治二十九年法律第八十九号)第820条の規定による監護及び教育に必要な範囲を超える行為により当該児童を懲戒してはならず、当該児童の親権の適切な行使に配慮しなければならない。
- 児童の親権を行う者は、児童虐待に係る暴行罪、傷害罪その他の犯罪について、当該児童の親権を行う者であることを理由として、その責めを免れることはない。
改正検討[編集]
法制審議会家族法制部会は、「懲戒権」概念を廃止し、本条を以下のとおり改正する旨、令和4年通常国会に民法改正案を上程する予定であると報道されている[2]。
- 監護及び教育をするに当たっては、子の人格を尊重するとともに、子の年齢及び発達の程度に配慮しなければならず、かつ、体罰その他の心身に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない。
参照条文[編集]
参考[編集]
明治民法において、本条には以下の規定があった。趣旨は、民法第774条に継承された。
- 第八百二十条ノ場合ニ於テ夫ハ子ノ嫡出ナルコトヲ否認スルコトヲ得
脚注[編集]
- ^ 「傷害」が発生しないように十分な注意を持って懲戒したことが証される場合。
- ^ 読売新聞『体罰・虐待を正当化する口実に…子への民法「懲戒権」見直しへ』(2022/01/05 13:00)
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