民法第969条
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条文
[編集](公正証書遺言)
- 第969条
- 公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
- 証人2人以上の立会いがあること。
- 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
- 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。
- 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
- 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。
改正経緯
[編集]2023年民事執行法等改正に伴い、以下のとおり改正された。施行は、2028年6月末までとされているが、現時点では未定である。
- 第3号から第5号を削除。
- 第2項として以下の条項を新設。
- 前項の公正証書は、公証人法(明治41年法律第53号)の定めるところにより作成するものとする。
- 第3項として以下の条項を新設。
解説
[編集]- 公正証書遺言の作成方法について定める。明治民法第1069条を継承。
- 法令上、
- 遺言者による口授→公証人の筆記→公証人の読み聞かせ・閲覧
- により作成されるが、実務慣行においては、事前準備として公証人又は公証役場事務員等が聞き取りを行い遺言者に確認しつつ遺言書を作成するものであり、「口授」「筆記」「読み聞かせ・閲覧」の順序は判例において柔軟に解されている。
- 発声に障害あるものに適用し難い制度であったが、2011年改正により、手話などによる伝達を認めた、民法第969条の2が新設された。
参照条文
[編集]判例
[編集]- 遺言無効確認請求事件(最高裁判決平成13年3月27日)民法第974条
- 遺言の証人となることができない者が同席してされた公正証書遺言の効力
- 遺言公正証書の作成に当たり当該遺言の証人となることができない者が同席していたとしても,この者によって遺言の内容が左右されたり,遺言者が自己の真意に基づいて遺言をすることを妨げられたりするなど特段の事情のない限り,同遺言が無効となるものではない。
参考
[編集]明治民法において、本条には以下の規定があった。家督相続に関する規定であるが、遺産相続について旧・第997条に準用され、民法第891条に継承された。
- 左ニ掲ケタル者ハ家督相続人タルコトヲ得ス
- 故意ニ被相続人又ハ家督相続ニ付キ先順位ニ在ル者ヲ死ニ致シ又ハ死ニ致サントシタル為メ刑ニ処セラレタル者
- 被相続人ノ殺害セラレタルコトヲ知リテ之ヲ告発又ハ告訴セサリシ者但其者ニ是非ノ弁別ナキトキ又ハ殺害者カ自己ノ配偶者若クハ直系血族ナリシトキハ此限ニ在ラス
- 詐欺又ハ強迫ニ因リ被相続人カ相続ニ関スル遺言ヲ為シ、之ヲ取消シ又ハ之ヲ変更スルコトヲ妨ケタル者
- 詐欺又ハ強迫ニ因リ被相続人ヲシテ相続ニ関スル遺言ヲ為サシメ、之ヲ取消サシメ又ハ之ヲ変更セシメタル者
- 相続ニ関スル被相続人ノ遺言書ヲ偽造、変造、毀滅又ハ蔵匿シタル者
なお、本条の明治民法における規定は以下のとおりである。
- 明治民法第1069条
- 公正証書ニ依リテ遺言ヲ為スニハ左ノ方式ニ従フコトヲ要ス
- 証人二人以上ノ立会アルコト
- 遺言者カ遺言ノ趣旨ヲ公証人ニ口授スルコト
- 公証人カ遺言者ノ口述ヲ筆記シ之ヲ遺言者及ヒ証人ニ読聞カスコト
- 遺言者及ヒ証人カ筆記ノ正確ナルコトヲ承認シタル後各自之ニ署名、捺印スルコト但遺言者カ署名スルコト能ハサル場合ニ於テハ公証人其事由ヲ附記シテ署名ニ代フルコトヲ得
- 公証人カ其証書ハ前四号ニ掲ケタル方式ニ従ヒテ作リタルモノナル旨ヲ附記シテ之ニ署名、捺印スルコト
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