民法第891条
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条文[編集]
(相続人の欠格事由)
- 第891条
- 次に掲げる者は、相続人となることができない。
解説[編集]
相続人の欠格事由について定めた規定である。
- 1号
- 「故意」とは、殺人の故意を指す。殺人の故意が認められない傷害致死の場合は該当しない(大判大11.9.25)ので、相続人となることができる。
- 「刑に処せられた者」が要件であるため、たとえ被相続人を殺しても、判決を受ける前に死亡したなどの場合は欠格事由にあたらない。
- 「同順位にある者」とあるので、例えば子が父を殺せば、父の相続について欠格事由に該当し、かつ、母の相続についても(父と子は母の相続について同順位であるため)欠格事由に該当する。従って、母の相続に関しても相続人となることはできない。
- 2号
- 但書は注意を要する。たとえば被相続人を殺害した者が自分の息子であった場合、これを告訴しなくても欠格事由にはあたらない。
- 5号
- 「隠匿」については、もっぱら自らの利益を図るための隠匿のみが欠格事由にあたると限定解釈されている。
[1]民法891条は戦前の民法969条であり、とくに第2号は民法起草時から論点になった。法典調査会では穂積陳重が説明した。その中で日本では讐討(かたきうち)は許されなくなったが「法律ニ訴ヘルコトハ少ナクモ徳義上ノ義務デアルト思フ」といい、これに対して委員高木豊三、横田国臣は削除説を主張し、穂積八束はこれに反対した。評議の結果少数で否決された(採用)。起草委員の富井、梅は削除して構わぬという態度であった。この規定については外国でもフランス法以外にはあまり類がない規定であり、穂積重遠は「相続法大意」(大正15年)で、この条項は削除すべしとし「いつまでに告発告訴しなければ欠格になるのか、他から告訴告発があった場合は如何、指定又は選定家督相続人にも適用があるか、等解釈上の疑問があるのみならず、此等の疑問に対しては相当な解決を下し得るとしても、元来此規定は血族復讐の観念に由来する私訴公訴混同時代の産物で、告発及び告訴が私人の法律上の義務でない今日の制度たるべきでない」と説いている[2]。
参照条文[編集]
判例[編集]
- 相続権不存在確認等、所有権移転登記抹消登記手続 (最高裁判例 平成9年01月28日)
- 相続人が相続に関する被相続人の遺言書を破棄又は隠匿した場合において、相続人の右行為が相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときは、右相続人は、民法891条五号所定の相続欠格者に当たらない。
- (大判大11.9.25)
- 被相続人又ハ先順位者ヲ死ニ致スノ意思ナク単ニ傷害ノ結果其ノ死ヲ誘致シタル者ハ民法第969条第1号ニ該当セス
脚注[編集]
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