自然公園法と自然環境保全法
日本の自然公園法と自然環境保全法の関係に関する解説であり、両法の入門的な意味ももたせるものである。なお、本項目では、特記ない限り日本の法令についての解説である。免責についてw:自然公園法、w:自然環境保全法にも準ずる。
両法の関係
[編集]この2つの法律は、ともに自然保護に関する目的で、いわゆる自然保護区をとるものである。すなわち、区域を指定して法令で行為への規制をかけるもので、規制の構造に似通った面もある。
- 自然環境保全地域と自然公園の区域(地域)分け対比
自然環境保全地域 | 特別地区(自然環境保全法第25条) 一定の行為についての許可制 |
海域特別地区(自然環境保全法第27条) 一定の行為についての許可制 |
普通地区(自然環境保全法第28条) 一定の行為についての届出制 |
自然公園 | 特別地域(自然公園法第20条) 特別保護地区、利用調整地区の指定も可 一定の行為についての許可制 |
海域公園地区(自然公園法第22条) 利用調整地区の指定も可 一定の行為についての許可制 |
普通地域(自然公園法第33条) 一定の行為についての届出制 |
自然環境保全地域、自然公園とも、右に記載のいずれかの地区・地域に含まれる。
一方で、両法の主管箇所である環境省は、『自然環境保全法の運用について』で、「原生自然公園地域及び自然環境保全地域は、自然環境を適正に保全し、将来の国民に継承していくという性格の地域であり、すぐれた自然の風景地を保護するとともにその利用を増進を図るという性格の地域である自然公園とは、その性格を異にする」としている。両法の第1条(自然公園法第1条、自然環境保全法第1条)を見比べても検証できる。
現在、同じ土地が両法による指定を重複して受けることは、制度上排除されている(自然公園法第71条、自然環境保全法第22条第2項、自然環境保全法第45条第2項)。
制定時の「一本化」について
[編集]元々、自然環境保全法(1972年公布)は「総合的な自然保護法」を目指し、自然公園法(制定年代[1])も統合する、という当時の所管庁の環境庁原案であった。しかし、同庁と林野庁などの他省庁との調整が難航し、その過程で、自然公園法も存続させ、別建ての法律となったものである。この調整の難航とは、主に土地利用の制約の強さ、農業、林業等への影響をめぐるものである[2]。
なお、都道府県条例では、石川県は一つの条例[3]で都道府県自然環境保全地域と都道府県立自然公園について規定しているが、多くは法律に準じて別建てとなっている。
脚注
[編集]- ^ 1932年、国立公園法制定、自然公園法は同法を発展解消させた形で1957年公布された。
- ^ 小林『我が国の景観保全・形成法制』(『レファレンス』49 - 50頁)
- ^ ふるさと石川の環境を守り育てる条例
参考文献
[編集]- 小林正、『我が国の景観保全・形成法制』国立国会図書館(『レファレンス』平成19年1月号)、2007年