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高校化学 非金属元素

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』
高校化学 16族元素 から転送)
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水素と貴ガス

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水素

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水素は、単体として宇宙で最も多く存在する元素である。地球上では水 H2O として最も多く存在する。単体 H2 は常温常圧で無色無臭の気体である。

製法

工業的には、石油や天然ガスを高温水蒸気と反応させて、得られる。他には、純粋な水素を作る場合は、水を電気分解する。

実験室では、塩酸や希硫酸などの強酸に、亜鉛などの金属を加える。水素は水に溶けにくいため、水上置換で捕集する。

主な性質・反応
  • 空気中で容易に燃焼し、水になる。酸素との混合気体は爆発的に燃焼する。
  • 高温では還元性をもち、高温で金属などの酸化物を還元する。
  • 殆どの元素と化合して水素化合物を作る。

※化学反応式の矢印の上にΔをつけると、加熱が必要な反応であることを示す。

水素化合物は、水素結合により化合しているため、極性分子である。また、化合する元素が周期表の右側にいるほど酸性、左側にいるほど塩基性が強くなる。

水素は、アンモニア、塩化水素、メタノールなどの原料である。

水素は燃焼における生成物が水だけなので、環境に負荷をかけにくい新しいエネルギー源として注目されており、燃料電池自動車(FCV)や水素式燃料電池駆動電車(FV)の開発が進められている。

貴ガス

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貴ガス(noble gas)[1]は、18族元素のヘリウム He, ネオン Ne, アルゴン Ar, クリプトン Kr, キセノン Xe, ラドン Rn の総称である[2]

18族元素は価電子をもたないため、他の原子と結合したり、イオンになることがほとんどない。したがって、化学反応を起こして化合物となることがほとんどない。また、単体の気体として、原子1個で1つの分子を形成している。このような分子を単原子分子と呼ぶ。

単体

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貴ガスには次のような物質がある。これらはいずれも無色無臭で、常温常圧で気体である。また、いずれも融点および沸点が低い。

  • ヘリウム (He): 風船や飛行船を浮かせるために用いられる。また、すべての物質の中で、融点がもっとも低い(-269℃、4K)ので、超伝導など極低温の実験の際の冷媒に液体ヘリウムが用いられる。
  • ネオン (Ne): ネオンサインなどに用いられる。
  • アルゴン (Ar): 溶接するときの酸化防止ガスに用いられる。空気中に0.93%存在する。
  • クリプトン (Kr): 電球などに用いられる。
  • キセノン(Xe): カメラのストロボなどに用いられる。
  • ラドン (Rn): 放射能があり、放射線治療などに用いられる。
ヘリウム ネオン アルゴン クリプトン キセノン

貴ガスは原子単体で安定なため、普通は化合物にならない。ガラス管に内圧が低くなるよう貴ガスを封入し電圧をかけることで、それぞれ異なった色の光を放つ(真空放電という)。そのため、電球やネオンサインとして用いられるものが多い。

ヘリウム ネオン アルゴン クリプトン キセノン

エキシマ(発展)

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アルゴン気体とフッ素気体をつめた放電管に放電をすると、不安定なアルゴンフッ素 ArF (エキシマ)が一時的に生成し、それが分解する際に波長197 nmの紫外線を放出する。

この光は、半導体製造の際の光化学反応の光源に使われている。また、キセノンでもハロゲンとのエキシマによってレーザー光が放出されることが知られている。

化合物

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貴ガスは、反応性が低く化合物を作らないと考えられていたが、1960年代に、 などキセノンの化合物の合成に成功した。その後も貴ガスの化合物は合成されたが、ネオンの化合物は未だ合成に成功していない。

キセノンとフッ素ガスを混合した気体に放電または熱を加えてできた、二フッ化キセノン XeF2 や四フッ化キセノン XeF4 や六フッ化キセノン XeF6 の固体は無色である。

ハロゲン

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周期表の17族に属する、フッ素 F、塩素 Cl、臭素 Br、ヨウ素 I、アスタチン At をハロゲンという[3]

ハロゲンの原子は最外殻に価電子を7つ持っており、1価の陰イオンになりやすく、化合物をつくりやすい。そのため、天然では、ハロゲンは鉱物(ホタル石 CaF2 、岩塩 NaCl etc.)として存在している場合が多い。または、海水中に陰イオンとしてハロゲンが存在している場合も多い。

単体

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ハロゲンの単体はいずれも二原子分子で有色、有毒である。

沸点(bp)・融点(mp)は、原子番号の大きいものほど高い。

ハロゲンの単体は酸化力が強い。酸化力の強さは原子番号が小さいほど大きくなる。つまり酸化力の強さは、

である。

たとえば、ヨウ化カリウム水溶液に塩素を加えると、ヨウ素は酸化されて単体となる。

逆に、塩化カリウム水溶液にヨウ素を加えても、ヨウ素よりも塩素のほうが酸化力が強いため、反応は起こらない。


また、ハロゲンの各元素ごとの酸化力の違いは、水や水素との反応にも関わる。

最も酸化力のつよいフッ素は、水と激しく反応し、酸素を発生する。

フッ素 F2 塩素 Cl2 臭素 Br2 ヨウ素 I2
色・状態
淡黄色・気体 黄緑色・気体 赤褐色・液体 黒紫色・固体
融点 (℃) -220 -101 -7 114
沸点 (℃) -138 -34 59 184
酸化力 大 ←――――――――――――――――――――――――――――――――――→ 小
水との反応 激しく反応して
酸素 O2 が発生
一部が反応
HCl などを生じる
塩素より反応は弱いが、
似た反応をする
水に反応しにくく、
水に溶けにくい
2H2O + 2F2
→ 4HF + O2
2H2O + Cl2
⇄ HCl + HClO
水素との反応 低温・暗所でも
爆発的に反応
光を当てることで
爆発的に反応
高温にすると反応 高温にすると一部が反応

フッ素

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常温常圧下では淡黄緑色の気体である。

酸化力が非常に強く、様々な物質と激しく反応する。ガラスでさえフッ素を吹き付けると燃えるように反応するため扱いが難しい。

水や水素との反応物であるフッ化水素(HF)が水に溶けたフッ化水素酸(HFaq)はガラスを侵すため、ポリエチレン容器に入れ保管する。

塩素

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塩素 Cl2 は常温常圧で黄緑色の有毒な気体である。

塩素は歴史的に衣類の漂白剤として用いられていたが、第一次世界大戦で毒ガス兵器として用いられ、約3000人を殺害した。

製法
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工業的:塩化ナトリウム水溶液の電気分解を用いたイオン交換膜法で生成する。

実験室的: ①酸化マンガン(IV)に濃塩酸を加え、加熱する。

なお、この反応では塩素と同時に水も生成する。さらに、濃塩酸には次節に見るように揮発性がある。したがって、この反応により得られる気体は純粋な塩素ではなく、水や塩化水素を少量含んでいる。それらを取り除くため、この気体を水と濃硫酸に順番に通す。まず水に通すことで、揮発した塩化水素が吸収される。次いで濃硫酸に通すことで、濃硫酸の吸湿作用により気体中の水が吸収され、純粋な塩素を得ることができる。なお、この水・濃硫酸に通す順番を逆にしてはならない。先に濃硫酸に通した後水に通しても、得られる気体の中には最後に通した水から蒸発した水蒸気が含まれているためである。塩素は空気よりも重いため、濃硫酸を通したあとの塩素を、下方置換で集める。

②塩化ナトリウム、酸化マンガン(IV)に濃硫酸を加えて加熱する。

③さらし粉に塩酸を加える。

④高度さらし粉に稀塩酸を加える。

※化学反応式の右辺の↑は、矢印のすぐ左の生成物が気体であることを示している。

性質
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塩素 Cl2 の水溶液を塩素水(chlorine water)という。塩素は、水に少し溶けて、その一部が次亜塩素酸 になる。

次亜塩素酸は弱酸性で、強い酸化作用がある。これは、普通の塩素イオンの酸化数が-1なのに対し、次亜塩素酸イオン中の塩素原子の酸化数が+1なので還元されやすいためである。

塩素水および次亜塩素酸は、漂白剤や殺菌剤として水道やプールの水の殺菌などに広く用いられている。

  • さらし粉

水酸化カルシウムと塩素を反応させると、さらし粉(主成分:)ができる。

また、を高度さらし粉(次亜塩素酸カルシウム)という。

高度さらし粉は、漂白剤や殺菌剤として利用される。いわゆるカルキとは、さらし粉のこと。ドイツ語のクロールカルキを略してカルキと読んでいる。

  • その他

塩素はさまざまな金属と反応して塩化物となる。たとえば、単体の塩素の中に加熱した銅線を入れると、煙状の塩化銅(II) CuCl2 を生成する。

臭素

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臭素(Br2)は常温常圧で赤褐色の液体である。この性質は非金属元素の単体では唯一であり、全元素で見ても他には水銀のみである。水に少し溶け、赤褐色の溶液(臭素水)となる。また、有機溶媒のヘキサンやエタノールに可溶である

ヨウ素

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ヨウ素(I2)は常温常圧で黒紫色の固体である。昇華性があり、加熱すると固体から液体にならず直接気体となる。これを利用して、固体のヨウ素の純度を上げることができる。1リットルビーカーに不純物を含むヨウ素の固体を入れ、ガスバーナーで加熱する。ビーカーの上部には冷水を入れた丸底フラスコを置いておく。加熱によりヨウ素のみが気体となり、上昇してフラスコの底部付近で冷やされて固体に戻る。そのため、フラスコ底部に純度の高いヨウ素の針状結晶が析出する。

ヨウ素は水に溶けにくいが、エーテルなどの有機溶媒にはよく溶ける。また、ヨウ化カリウム水溶液にもよく溶けて褐色の溶液となる。

デンプン水溶液にヨウ素を溶かしたヨウ化カリウム水溶液を加えると、青紫色を呈する。このようにデンプンにヨウ素を作用させて青紫色となる反応をヨウ素デンプン反応と呼ぶ。これにより、ヨウ素やデンプンの検出ができる。なお、ヨウ素デンプン反応が起こっている容器を加熱すると透明になるが、冷却するとまた青紫色に戻る。

ヨウ素デンプン反応を用いた試薬に、ヨウ化カリウムデンプン紙がある。これは、ろ紙にデンプンとヨウ化カリウムを含ませたものであり、酸化力の強い物質の検出に用いられる。酸化力の強い物質がある場合、ヨウ化カリウムは酸化されてヨウ素の単体となる。

このヨウ素がデンプンに作用して紫色から青紫色に変化する。

化合物

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ハロゲン化水素

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ハロゲンは水素と化合してハロゲン化水素となる。いずれも無色刺激臭の気体である。

また、ハロゲン化水素の水溶液は酸性を示す。

名称 フッ化水素 塩化水素 臭化水素 ヨウ化水素
組成式 HF HCl HBr HI
沸点(℃) 20 -85 -67 -35
水溶液 名称 フッ化水素酸 塩酸 臭化水素酸 ヨウ化水素酸
酸の強さ 弱酸 強酸
+AgNO3aq AgF(水に可溶) AgCl↓(白) AgBr↓(淡黄) AgI↓(黄)
更に+NH3aq - 沈澱が再溶解 沈澱が少し溶ける 沈澱は溶けない

ハロゲン水溶液の酸性は、フッ化水素酸だけが弱酸である。それ以外は強酸である。

※化学式横の↓は、沈澱が生じたことを表す。

フッ化水素
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フッ化水素(HF)は、ホタル石(主成分 CaF2)に濃硫酸を加えて加熱することで、得られる。

フッ化水素は水によく溶け、弱酸のフッ化水素酸(hydrofluoric acid)となる。

フッ化水素酸は、ガラスの主成分である二酸化ケイ素(SiO2)を溶かすため、保存するときはポリエチレン容器に保存する。

生成物は水とヘキサフルオロケイ酸である。

工業の用途として、ガラスの表面処理や、くもりガラスの製造に、フッ化水素酸が用いられる。

フッ化水素だけ沸点が他のハロゲン化水素よりも高いが、この原因は、フッ化水素では水素結合が生じるからである。フッ化水素酸だけ弱酸である理由も、同様に水素結合によって電離度が低くなっているためである。

塩化水素
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水素と塩素の混合物に光を当てると、激しく反応して塩化水素(HCl)を生じる。

塩化水素は、実験室では塩化ナトリウムに濃硫酸を加え加熱することで得られる。(不揮発性酸による揮発性酸の遊離反応)

塩化水素とアンモニアの反応
白煙( NH4Cl )を生じる

塩化水素は水によく溶け、その水溶液は塩酸(hydrochloric acid)である。濃度の濃いものは濃塩酸、薄いものは希塩酸と呼ばれる。塩酸は強酸性を示し、多くの金属と反応して水素を発生する。

また、強酸性であることから、弱酸の塩と反応して塩を生じ、弱酸を遊離させる。

塩酸には揮発性があり、常温で一部が気体となる。そのため、アンモニアのついたガラス棒を近づけると、塩酸の気体とアンモニアとが触れて反応し、塩化アンモニウム NH4Clの固体が生じ、白煙が見える。この反応は、塩化水素やアンモニアの検出に用いられる。

ハロゲン化銀・ハロゲン化鉛

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ハロゲン化銀は、フッ化銀を除いて、一般に水に溶けにくい。このため、ハロゲンの化合物の水溶液に、硝酸銀をくわえると、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀などのハロゲン化銀が沈殿する。

名称 フッ化銀 塩化銀 臭化銀 ヨウ化銀 フッ化鉛(II) 塩化鉛(II) 臭化鉛(II) ヨウ化鉛(II)
組成式 AgF AgCl AgBr AgI PbF2 PbCl2 PbBr2 PbI2
黄色 白色 淡黄色 黄色 白色 白色 白色 黄色
水への溶けやすさ 溶けやすい 溶けにくい 溶けにくい 溶けにくい 溶けにくい 溶けにくい 溶けにくい 溶けにくい
熱水への溶けやすさ 溶けやすい 溶けにくい 溶けにくい 溶けにくい 溶ける 溶ける 溶ける

塩化水素(HCl)

塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀には感光性があり、生じた沈澱に光を当てると銀が遊離する。また、これらはいずれもチオ硫酸ナトリウム水溶液によく溶ける。アンモニア水への溶けやすさは異なり、塩化銀はよく溶け、臭化銀も一部溶けるが、ヨウ化銀は溶けない。

塩素のオキソ酸

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分子中に酸素を含む酸をオキソ酸という。

塩素のオキソ酸には、酸化数の異なる次の4つがある。

名称 次亜塩素酸 亜塩素酸 塩素酸 過塩素酸
化学式 HClO HClO2 HClO3 HClO4
性質 殺菌・漂白作用 殺菌・漂白作用 強力な酸化剤 塩は爆発性

右にいくほど強酸性である。

さらし粉

さらし粉・高度さらし粉(化学式: CaCl(ClO)・H2O、Ca(ClO)2)は、次亜塩素酸イオンを含むため、その酸化作用により漂白剤や殺菌剤として広く用いられている。水酸化カルシウムと塩素を反応させることで得られる。


塩素酸 および 塩素酸塩
(※ 検定教科書では「酸素」の単元で習う場合が多い。)

塩素酸HClO3は不安定な物質だが、カリウムやナトリウムの塩は安定で、強い酸化剤である。塩素酸カリウムKClO3は酸化マンガン(IV)を触媒として用いて加熱すると酸素を発生するため、花火やマッチの火薬中に燃焼を助けるため含まれる。

ハロゲン化物と日用品

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ハロゲンの化合物のなかには、日用品の中に広く用いられている物もある。たとえば、フッ素化合物の一つ、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン)はフライパンの表面に薄く塗られ、焦げ付きを防ぐ役割を果たしている。また、臭化銀はその感光性を利用して、写真のフィルムに用いられている。塩素は多くのビニル・プラスチック製品に含まれている。また、ヨウ素は消毒剤や うがい薬 に用いられている。

「まぜるな危険」

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洗剤の「まぜるな危険」の化学反応(執筆中)

16族元素

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16族に属する酸素(O)、硫黄(S)はともに価電子を6つ持ち、2価の陰イオンになる。ともに単体は同素体を持つ。

酸素

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酸素の単体には、原子2個で1つの分子を作っている酸素(O2)と、原子3個で1つの分子を作っているオゾン(O3)がある。いずれも常温では気体であるが、大きく異なった性質を示す。

酸素は空気中で約21%ふくまれる。また、酸素は地殻を構成する主な元素でもあり、地殻のおよそ半分は酸素でできている。地殻中ではSO2

単体

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酸素 O2 分子

酸素(O2)は常温で無色無臭の気体である。

工業的な製法は、液体空気の分留または水の電気分解によって酸素を得る。

実験室で酸素を得るには、過酸化水素水に酸化マンガン(IV)を加えればよい。この反応で酸化マンガン(IV)は触媒として働き、過酸化水素が分解して酸素を発生する。

※化学反応式の矢印の上に括弧で物質を書くと、その物質がその反応における触媒であることを示す。

また、塩素酸カリウムと酸化マンガン(IV)を混合して加熱してもよい(熱分解反応)。この反応でもやはり酸化マンガン(IV)は触媒として働く。

酸素は水に溶けにくいので、水上置換により捕集する。

液体酸素は磁性を持ち、磁石にくっつく。

オゾン

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オゾン O3 分子

オゾン(O3)は、酸素中で無声放電(音の小さい放電)を行うか、強い紫外線を当てることで生成する。

オゾン O3 は分解しやすく、分解の際に強い酸化作用を示す。オゾンは淡青色・特異臭の気体で、人体には有害である。漂白作用も持つ。

また、オゾンは酸化作用によりヨウ化カリウムデンプン紙を青変する。

このためオゾンは水で湿らせたヨウ化カリウムデンプン紙により検出できる。

大気中には上空25 kmほど(成層圏)にオゾンが豊富に含まれる層があり、オゾン層と呼ばれる。オゾン層は人体に有害な紫外線を吸収する働きがあるが、冷蔵庫などに用いられていたフロンガスがオゾンを分解し、このオゾン層が南極付近で局所的に薄くなる現象(オゾンホール)が発生し、環境問題として取り上げられた。現在ではフロンガスの規制などの対策により回復過程にあり、遅くとも21世紀中には全快する見込みである。(高等学校 地学も参照。)

化合物

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酸素の化合物は一般に酸化物と呼ばれる。酸素はあらゆる物質と化合することができ、一般に金属元素とはイオン結合、非金属元素とは共有結合による酸化物を作る。

酸化物は、酸や塩基との反応の仕方から3通りに分類される。

酸化物の分類
酸性酸化物 CO2 , NO2 , SiO2 , SO2 , SO3 , Cl2O7 など
塩基性酸化物 Na2O , MgO , CaO , Fe2O3 , CuO , BaO など
両性酸化物 Al2O3 , ZnO
  • 酸性酸化物 : 水に溶けて酸性を示したり、塩基と反応して塩を生じる酸化物を、酸性酸化物という。
  • 塩基性酸化物 : 水に溶けて塩基性を示したり、酸と反応して塩を生じる酸化物を、塩基性酸化物という。
  • 両性酸化物: 酸・塩基のどちらとも反応して塩を生じる酸化物を、両性酸化物という。

一般に、非金属元素の酸化物は酸性酸化物であり、金属元素の酸化物は塩基性酸化物である。

酸性酸化物の例
酸性酸化物 CO2 , NO2 , SiO2 , SO2 , SO3 , Cl2O7 など

二酸化炭素や二酸化硫黄など、非金属元素の酸化物の多くは、酸性酸化物である。

酸性酸化物の定義により、酸性酸化物は水に溶けると、酸性を示す。

※ H2SO4は酸。

また、酸性酸化物は塩基と反応すると、塩をつくる。

※ Na2SO3は塩。

二酸化炭素(CO2)は塩基と反応して塩を生じる。

※ CaCO3は塩。

二酸化窒素(NO2)は水に溶けて硝酸(HNO3)となる。

一般に、酸性酸化物が水と反応するとオキソ酸が生じる。

塩基性酸化物の例
塩基性酸化物 Na2O , MgO , CaO , Fe2O3 , CuO , BaO など

水に溶けて塩基性を示したり、酸と反応して塩を生じる酸化物を、塩基性酸化物という。

※ NaOHは塩基。

金属元素の酸化物の多くは、塩基性酸化物である。酸化カルシウムや酸化ナトリウムなどが、塩基性酸化物である。

酸化カルシウム(CaO)は水に溶けて水酸化カルシウム(Ca(OH)2)となる。

また、これは酸と反応して塩を生じる。

両性酸化物の例
両性酸化物 Al2O3 , ZnO

酸・塩基のどちらとも反応して塩を生じる酸化物を、両性酸化物という。

酸化アルミニウム(Al2O3)や酸化亜鉛(ZnO)は、酸とも塩基とも反応して塩を生じる。

下の式の生成物は、テトラヒドロキシドアルミン酸ナトリウムである。

オキソ酸

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塩素の酸性酸化物を水に溶かすと、水と反応して酸を生じる。

塩素の酸化物には、いくつかの種類があるが、一例として酸を生じる反応として、下記の化学反応がある。

リンの酸性酸化物も、水と反応し、酸を生じる。

また、このように酸性酸化物を水と反応させて得られた酸は、分子中に酸素原子と水素原子を含む場合が多い。 塩素の場合は、過塩素酸 HClO4 などが得られるし、窒素の場合は、亜硝酸(HNO2)と硝酸(HNO3)などが得られるし、分子式を見ればわかるように酸素原子と原子が分子中に含まれてる。

化学式 名称 酸の強さ Clの酸化数
HClO4 過塩素酸 つよい側 +7
HClO3 塩素酸 +5
HClO2 亜鉛素酸 +3
HClO 次亜鉛素酸 よわい側 +1

一般に、分子中に酸素分子のある構造の酸のことをオキソ酸(oxoacid)という。(「オキソ酸」といった場合、水素原子は、なくても構わない。)

オキソ酸の分子構造についての議論のさいには、塩素原子や窒素原子など、由来となった酸性酸化物の元素を「中心原子」と設定して議論するのが一般的である。(つまり、酸素原子や水素原子は、中心ではない。)

中心元素が同じであれば、結合している酸素の数が多いほど、オキソ酸の酸性は強くなる。

たとえば窒素のオキソ酸として亜硝酸(HNO2)と硝酸(HNO3)があるが、硝酸の方が強い酸である。

また、中心元素が第3周期のリン、硫黄、塩素であるようなオキソ酸は、この順に酸性が強くなる。リン酸(H3PO4)は弱酸であるが、硫酸(H2SO4)は強酸であり、過塩素酸(HClO4)はさらに強い酸性を示す。

塩素のオキソ酸の酸性の順は、

(つよい側) HClO4 > HClO3 > HClO2 > HClO (よわい側)

名称は

HClO4 過塩素酸。 HClO3 塩素酸。 HClO2 亜鉛素酸。HClO 次亜鉛素酸。

である。

いまのところ、上記の4つ以外は、塩素のオキソ酸は発見されていない。

硫黄

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単体

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硫黄(S)の単体には、斜方硫黄、単斜硫黄、ゴム状硫黄などの同素体がある。単体は火山地帯から多く産出され、また重油の精製過程のひとつである脱硫(だつりゅう)の工程において多く得られる。日本では、この脱硫で得られた硫黄により国内需要を全て賄っている。

斜方硫黄(S8

斜方硫黄は常温で安定な黄色・塊状の結晶である。硫黄原子が8つ環状に結合して1つの分子を形成している。融点は113℃。

単斜硫黄(S8

単斜硫黄は高温(95.5℃以上)で安定な黄色・針状の結晶である。硫黄原子が8つ環状に結合して1つの分子を形成している。斜方硫黄を加熱することで得られる。

ゴム状硫黄(Sx

ゴム状硫黄は黒褐色の無定形固体である。ただし、純粋なものは黄色を示すものがある。数十万の硫黄原子がジグザグに結合しているため、引っ張ると結合角が変わり弾力性がある。

斜方硫黄を加熱すると琥珀色の液体となる。これを加熱し続けると次第に暗褐色となり、粘性が増してくる。さらに加熱すると濃青色の液体となり、これを水中に入れ急冷するとゴム状硫黄となる。

  • 反応性

硫黄は、高温で反応性が高い。

硫黄の燃焼

硫黄は高温では多くの元素と化合して硫化物となる。たとえば鉄粉と硫黄の粉末を混合して加熱すると、硫化鉄(II) FeS が生じる。

また、空気中で青白い炎をあげて燃焼し、二酸化硫黄となる。

化合物

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硫化水素
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硫化水素(H2S)は無色腐卵臭の気体である。火山ガスや温泉に豊富に含まれる。よく言われる「硫黄の臭い」は硫黄ではなくこれである(硫黄の単体は無臭)。人体に有毒であるため、使用時には十分な換気に注意しなければならない。硫化水素は水に溶け、弱酸性を示す。

実験室では硫化鉄(II)に強酸を加えることで得られる。

硫化水素は、おおくの場合に還元剤として働き、二酸化硫黄を還元して硫黄の単体を生じる。

多くの金属イオンと反応して硫化物の沈殿を作るため、金属イオンの分離や検出に多く用いられる。

主な硫化物沈澱とその色
硫化物沈澱 Ag2S PbS CuS FeS※ NiS※ CdS MnS※ ZnS※
淡黄

※酸性条件下では沈澱しない。

ちなみに、温泉卵の黒は硫化鉄の色である。

二酸化硫黄
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二酸化硫黄亜硫酸ガス、SO2)は刺激臭をもつ無色の有毒な気体で、火山ガスや温泉などに含まれる。

酸性酸化物であり、水に溶けて亜硫酸(H2SO3)を生じ、弱酸性を示す。

実験室では、銅を濃硫酸に加えて加熱するか、亜硫酸塩を希硫酸と反応させることにより得られ、下方置換で捕集する。

工業的には、硫黄の燃焼により製造される。

二酸化硫黄は還元性があり、漂白作用がある。ただし、硫化水素のような強い還元剤がある場合は、酸化剤として作用する。

硫黄を含む物質は燃焼により二酸化硫黄を生じる。二酸化硫黄の水溶液は、弱い酸性を示す。

硫黄は石油や石炭に多く含まれているため、このような化石燃料を大量に燃焼させると、大気中に多量の二酸化硫黄が放出され、雨水に溶け込み、酸性雨の原因となる。

三酸化硫黄
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三酸化硫黄無水硫酸、SO3)は、有毒の結晶である。

水と激しく反応して硫酸を生成する。

工業的には、二酸化硫黄を空気中の酸素で酸化して得る。このとき用いる触媒が、酸化バナジウム(Ⅴ)(V2O5)である。

硫酸
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硫酸(H2SO4)は工業的に接触法(接触式硫酸製造法、contact process)により、酸化バナジウム(Ⅴ)を主成分とする触媒をもちいて、次のような工程で製造されている。

  1. 硫黄を燃焼させ、二酸化硫黄を作る。
  2. 二酸化硫黄と酸素との混合気体を乾燥させ、酸化バナジウム(Ⅴ)を触媒として反応させて三酸化硫黄を作る。
  3. 三酸化硫黄を濃硫酸に吸収させ、濃硫酸中の水と反応させて発煙硫酸とする。
  4. 発煙硫酸を稀釈し、濃硫酸とする。

硫酸は、硫黄のオキソ酸である。通常はH2SO4の水溶液を硫酸と呼ぶ。硫酸は無色透明で粘性があり、密度の大きい重い液体である。濃度により性質が異なり、濃度の90%以上程度の濃いものを濃硫酸(concentrated sulfuric acid)といい、薄いものを希硫酸(diluted sulfuric acid)と呼ぶ。

濃硫酸を水で希釈することで希硫酸が得られる。希釈する際は水を入れたビーカーを水を張った水槽中に入れ、冷却しながら濃硫酸を静かに加えるようにする。これは、硫酸の水への溶解エンタルピーの絶対値が非常に大きいためである。けっして、これを逆にしてはならない。もし、濃硫酸に水を加えるようにすると、放出された熱によって水が激しく蒸発して濃硫酸が跳ねることがあり、たいへん危険である。

濃硫酸には次のような性質がある。

  • 酸化作用: 金属を加え加熱すると、銅・銀・水銀などのイオン化傾向の小さい金属を酸化するようになる。加熱した濃硫酸を熱濃硫酸と呼ぶこともある。
  • 脱水作用(dehydration): 有機化合物の分子内に含まれている酸素原子や水素原子を、水分子H2Oとして奪う。たとえば紙(セルロース)に濃硫酸を垂らすと、その部分から酸素と水素が奪われ、炭化する。このとき、硫酸自身は還元されて二酸化硫黄となる。
  • 吸湿作用: 強い吸湿作用があり、中性・酸性気体の乾燥剤として用いられる。
  • 不揮発性:沸点が高く不揮発性なので、揮発性の酸の塩と反応して揮発性の酸を遊離する

希硫酸は強酸であり、多くの金属と反応して水素を発生する。一方濃硫酸は水をほとんど含まないため電離度が小さく、ほとんど酸性を示さない。

硫酸イオン(SO42-)はBa2+やCa2+と反応して白色沈殿を生じる。そのため、これらのイオンの検出・分離に用いられる。また日常生活においても、硫酸はカーバッテリーや非常用電源などとして使われる鉛蓄電池の電解液として用いられている。

また、肥料や薬品の製造にも用いられる。

15族元素

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窒素(N)、リン、P)はともに15族に属する非金属元素である。価電子を5つ持つ。

窒素

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単体

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窒素(N2)は常温常圧で無色無臭の気体である。窒素原子2つが三重結合して1つの分子を作っている、二原子分子の気体である。空気中に体積比でおよそ78%含まれており、工業的には液体空気の分留により生産される。

実験室では、亜硝酸アンモニウムの熱分解で得る。

液体の窒素(液体窒素、-196℃、7K)は物質の冷却にしばしば用いられている。窒素は水上置換で捕集する。

化合物

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アンモニア
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アンモニア(NH3)は無色刺激臭の気体である。水に非常に溶けやすく、水溶液はアンモニア水と呼ばれ、弱塩基性を示す。

沸点は-33.4℃である。

アンモニアは、工業的には、高温高圧下で四酸化三鉄()などの触媒を用いて窒素と水素を直接反応させるハーバー・ボッシュ法により製造される。

実験室では、塩化アンモニウムと水酸化カルシウムの粉末を混合して加熱することにより得られる。水に非常に溶けやすく空気より軽いため、上方置換で捕集する。

(弱塩基遊離反応)

アンモニアが生成したことを確かめるには、濃塩酸を近づければよい。アンモニアと濃塩酸が反応して塩化アンモニウムの白煙を生じる。

水溶液中のアンモニウムイオン(NH4+)を検出する際には、ネスラー試薬が用いられる。アンモニウムイオンがあれば黄色~褐色の沈殿を生じる。

アンモニアは、硝酸の原料、あるいは尿素((NH2)2CO)などの窒素肥料の原料などとしても利用される。

窒素酸化物
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窒素の酸化物は数種類あり、それらの総称を窒素酸化物と呼ぶ。主なものに一酸化窒素(NO)と二酸化窒素(NO2)がある。一般に、窒素酸化物NOxノックスと呼ぶ。

一酸化窒素 (NO)

常温で無色の気体。水に溶けにくい。希硝酸に銅を加えることで発生する。空気中で酸化されやすいため、水上置換で捕集する。

空気中での酸化の反応式は、

である。

二酸化窒素 (NO2

常温で赤褐色の刺激臭を持つ気体。水に溶けやすく、反応して硝酸()となる。

実験室では濃硝酸に銅を加えることで発生する。水に溶けやすいので下方置換で捕集する。

空気中では一部で2分子が結合して四酸化二窒素)となる。

窒素は常温では燃焼しない。すなわち酸素と反応して酸化物にならない。しかし、高温下では窒素と酸素が直接反応して窒素酸化物を生じる。また化石燃料の燃焼によっても窒素酸化物が生成する。そのため車のエンジンなどから窒素酸化物が発生し、大気中に放出されたものが雨水に吸収され、硫黄酸化物と同様に酸性雨の原因となる。

硝酸
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硝酸)は窒素のオキソ酸であり、有名な強酸である。通常はの水溶液を硝酸と呼ぶ。濃度によりやや異なる性質を示し、濃度の濃いものを濃硝酸、薄いものを希硝酸と呼ぶ。硝酸は揮発性の酸であるため、実験室では硝酸塩に濃硫酸を加えることにより得られる。(不揮発性酸による揮発性酸の遊離反応)

硝酸の製法は、工業的には、オストワルト法(Ostwald process)により製造される。次のような工程を経て硝酸が得られる。

  1. アンモニアと空気の混合気体を、触媒の白金 Pt に触れさせ、800℃〜900℃でアンモニアを酸化させて一酸化窒素とする。
  2. 一酸化窒素を空気中でさらに酸化して、二酸化窒素とする。
  3. 二酸化窒素を水に吸収させ、硝酸とする。ここで発生する一酸化窒素は回収し、2に戻って再び酸化する。

硝酸は無色の水溶液であるが、光や熱により分解して二酸化窒素と酸素を生じる。そのため、保管の際には、褐色瓶に入れ冷暗所で保存するようにする。

市販の硝酸(濃度約60%)は発煙性を示す。

稀硝酸・濃硝酸ともに強い酸化作用を持っており、金・白金以外の金属を酸化して溶かす。イオン化傾向の大きい金属と反応するとき窒素酸化物を生じる。希硝酸からは一酸化窒素が、濃硝酸からは二酸化窒素がそれぞれ発生する。

(希硝酸)
(濃硝酸)

また硝酸は強酸であり、イオン化傾向の大きい金属と反応して水素を発生する。

  • 不動態

ただし、鉄 Fe やアルミニウム Al やニッケル Ni は、硝酸とは反応して水素を発生するが、濃硝酸に加えても溶けない。これは、金属の表面が酸化され、水に溶けにくい緻密な酸化被膜を生成して、内部が保護され、反応が内部まで進行しなくなるためである。このような状態を不動態(passive state)という。

  • その他

硝酸塩はほとんど水に溶ける。そのため、ガラス器具にこびりついた金属類を洗浄する際に用いられることも多い。

また、硝酸は火薬、染料、医薬品の製造に用いられる。

硝石
硝酸塩の一つである硝酸カリウムは、天然には硝石として存在する。この硝石は、原始的な方法で製造することができる。硝石のおおもとの原料は、糞尿である。尿などにふくまれるアンモニアが、土壌中でさまざまな物質と反応して、硝酸イオンを多く含む物質になる。この硝酸イオンを原料に、カリウムをふくむ灰汁(あく)とともに煮ると化学反応をして硝酸カリウムになる。中世や近世では、この硝石を中間材料として、火薬などを作っていた。

窒素の応用

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たとえば、ポテトチップスなどのような油で揚げたスナック菓子の酸化防止のため、袋の中に窒素が詰められる。酸素があると、油が酸化してしまうが、代わりに何らかの気体を詰める必要があるので、窒素を袋の中につめているのである。(※ 2017年のセンター試験『化学基礎の』本試験で出題)

リン

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単体

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リン、P)は5種類の同素体を持つ。代表的なものは黄リン(P4)と赤リン (Px)の2つである。

黄リン(白リン、P4)は淡黄色の蠟状固体であり、人体にきわめて有毒である。空気中で自然発火するため、水中に保存する。二硫化炭素(CS2)に溶ける。

赤リン(Px)は暗赤色の粉末状固体であり、弱い毒性を持つ。二硫化炭素(CS2)に溶けない。赤リンはマッチの箱の擦り薬として用いられている。

※ マッチでリンが使われてる部分は、マッチ棒ではなく、マッチ箱のほう。
マッチの発明の歴史
1669年に発火温度の低い燐が発見されてから最初のマッチ(燐寸)が発明されるまでには200年ほどを要した。最初期のマッチは火つきは悪く、火がつくと飛び散り、二酸化硫黄の腐卵臭がすると欠点だらけであった。これらの欠点は1931年に黄燐マッチが開発されることで改善し、火つきの非常に良いマッチが誕生した。しかし、こちらも黄燐の猛毒性、僅かな摩擦・衝撃での発火、温度上昇による自然発火などの別の問題点があった。同じ燐でも自然発火温度が高く、毒性も弱い赤燐が1845年に発見されると、その10年後には赤燐を用いた安全マッチが開発された。このマッチは現在のものと殆ど相違ない。日本では、1875年に最初のマッチが作られたとされる。なお、西部劇などに見られるマッチは硫化燐マッチであり、黄燐マッチではない。

単体のリンは燐酸カルシウム(Ca3(PO4)2)を主成分とする鉱石に珪砂(二酸化珪素を主成分とする砂)を混ぜて電気炉中で強熱して作られる。このとき得られるのは黄燐である。黄燐は窒素中で長時間加熱(250℃付近)することで赤燐となる。

酸化物

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リンを空気中で燃焼させると、十酸化四リン(五酸化二燐、)の白煙を生じる。

十酸化四リンは白色の粉末状固体であり、強い吸湿性を示し、乾燥剤として用いられる。この吸湿性から、空気中に放置すると空気中の水蒸気を吸収して自分自身がその水に溶ける。この現象を潮解という。十酸化四リンは潮解性(deliquescence)のある物質である。 十酸化四リンは水と反応してリン酸)となる。

リン酸は酢酸のような弱酸よりは強いが、塩酸のような強酸よりは弱い、中程度の強さの酸である。 リンは生物にとって必要不可欠な元素である。生物は、アデノシン(アデニン+リボース)にリンが高エネルギーリン酸結合により3つ化合した化合物であるATP(アデノシン三リン酸)にエネルギーを保存し、利用する。農業においても必要な元素で、リン酸肥料として用いられる。主なものとして、リン鉱石と硫酸と水との反応から得られるリン酸二水素カルシウム()と、硫酸カルシウム()との混合物である過リン酸石灰がある。 この過リン酸石灰が、リン肥料の主成分である。 リン酸カルシウム およびヒドロキシアパタイト は、動物の骨や歯の主成分である。

植物の成長に必要な必須元素のうち、窒素・燐・カリウムは肥料の三要素と呼ばれる。

14族元素

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炭素 C 、ケイ素 Si はともに14族に属する元素である。価電子を4個持つ。

炭素

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炭素 (C) は生物を構成する重要な元素であり、多くの化学製品にも含まれている。炭素を含む物質は一般に有機物と呼ばれる。有機化合物については別の章で詳しく学ぶ。この節では、炭素の単体、一酸化炭素、二酸化炭素について説明する。

単体

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炭素の単体は共有結合の結晶であり、結合の仕方によっていくつかの同素体が存在する。

ダイヤモンド (C)
ダイヤモンド
ダイヤモンドの構造

ダイヤモンドは無色の固体で、1つの炭素原子が4つの炭素原子と正四面体の頂点方向に共有結合し、それが多数連結して結晶を形成している。共有結合の結晶であるため、非常に融点・沸点が高く、地球上で最も硬い物質として知られている。電気は通さないが、熱はよく伝える。宝石としての利用のほか、工業的には研磨剤としても使われる。光の屈折率が大きい。


黒鉛 (C)
黒鉛
グラフェン黒鉛(グラファイト)の一層をグラフェンと呼ぶ。上図ではグラフェンが4層描かれている。

黒鉛は金属光沢のある黒色の固体で、炭素原子が正六角形の層状構造を持っている。各層は3つの共有結合によって形成され、残りの価電子は自由電子として層間を移動する。この自由電子の存在により、黒鉛は電気をよく通し、熱伝導性も高い。層と層の結合は弱いため、黒鉛は柔らかく、鉛筆の芯や電気分解用の電極として使用される。


フラーレン(C60、C70など)
フラーレン

フラーレンは茶褐色の固体で、多数の炭素原子が球状に結合している。右図はC60フラーレンのモデルで、炭素原子が60個、サッカーボール状に結合している。20世紀後半に発見された物質で、現在も研究が進んでいる。純粋なフラーレンは電気を通さないが、アルカリ金属を添加すると超伝導性を示すことがある。有機溶媒に溶ける性質を持つ。


グラフェン

グラフェンは炭素原子が六角形に配列した一層のシート状の物質で、非常に強く柔軟であり、電気や熱を効率よく伝える。


カーボンナノチューブ

カーボンナノチューブ(Carbon Nanotube、CNT)は、炭素原子が六角形に結びついたグラフェンシートを丸めて筒状にしたナノ材料。日本人が開発した。非常に高い強度と優れた電気・熱伝導性を持ち、宇宙エレベーターのケーブルとして検討されている。


無定形炭素
活性炭

炭素の同素体とは異なり、黒鉛や炭化水素が不規則に結合し、結晶構造を明確に持たない(アモルファス状態の)固体がある。これを無定形炭素(amorphous carbon)と呼ぶ。木炭やコークスが代表的で、この中でも活性炭は多孔質であり、さまざまな物質を吸着する性質があるため、消臭剤などに用いられている。


酸化物

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炭素が空気中で燃焼すると、酸化物が生成される。

一酸化炭素 (CO)

炭素や有機化合物が空気中で不完全燃焼すると、一酸化炭素 (CO) が生じる。一酸化炭素は無色無臭の気体で、非常に有毒である。吸入すると血液中のヘモグロビンと結合し、酸素の運搬を阻害する。水には溶けにくい。

二酸化炭素と炭素の単体を高温接触させることでも得られる。

(酸化還元反応)

実験室では、蟻酸に濃硫酸を加えることで一酸化炭素を生成できる。

(脱水反応)

工業的には、水蒸気を高温のコークスに作用させることで得られる。

(酸化還元反応)
※水素と一酸化炭素の混合ガスを水性ガスという。メタノールの原料となる。

空気中では青白い炎を上げて燃焼し、二酸化炭素を生じる。

一酸化炭素は還元性を持ち、金属酸化物を還元して単体にする性質がある。

二酸化炭素 (CO2)

炭素や有機化合物が空気中で完全燃焼すると、二酸化炭素 (CO2) が生じる。実験室では炭酸カルシウムに塩酸を加えて発生させることができる。

工業的には、石灰石の熱分解によって二酸化炭素が得られる。

二酸化炭素は無色無臭の気体で、毒性はない。酸性酸化物であり、水に溶けると炭酸水素イオン を生成し、弱酸性を示す。

また、塩基と反応して塩を作る。

二酸化炭素を石灰水(水酸化カルシウム水溶液)に通すと、炭酸カルシウムが生成され白濁する。この反応は二酸化炭素の検出に用いられる。

ドライアイス

二酸化炭素の固体は分子結晶で、ドライアイスとして知られ、冷却剤として使用される。常圧下で昇華性を持ち、液体にならずに直接気体となる。

二酸化炭素は生物の活動によって放出・吸収される。呼吸では、酸素を吸収して糖類と反応し、エネルギーを取り出す過程で二酸化炭素が生成される。

※この反応で合成されるATPは38分子

逆に、植物は光のエネルギーを用いて二酸化炭素を吸収し、糖類を合成する。この過程を光合成という。

※反応エンタルピーは2803 kJ

また、微生物の中には糖類を醱酵させ、エネルギーを得るものがあり、その過程で二酸化炭素が生じる。

※この反応で合成されるATPは2分子

ケイ素

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ケイ素珪素、Si)は酸素の次に多く地殻中に含まれている元素である。水晶などの鉱物にも含まれている。半導体の主な原料であり、工業的に重要な元素となっている。ケイ素はシリコンともいう。

※地殻の元素含有量は、O2 > Si > Al > Feの順である。

単体

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ケイ素

ケイ素(Si)は金属光沢をもつ銀灰色の固体である。ケイ素は金属光沢をもつが、しかし金属ではない。

光や紫外線、赤外線などは電磁波であるが、ケイ素は電磁波の反射率が可視光(波長:780nm〜380nm)のあたりだけ、反射率が高いため、人間の目で見た場合に、ケイ素は金属光沢があるように見える。

ケイ素の単結晶電子部品の製造などに用いられる。これを薄く切断してシリコンウェハーにする。

ケイ素は天然には単体として存在せず、酸化物を還元することにより製造される。単体は共有結合の結晶であり、ダイヤモンドと同様の構造でケイ素原子が結合する。そのためダイヤモンド同様融点・沸点は高く、固い結晶を作る。導体と不導体の中間程度の電気抵抗を持つ半導体で、太陽電池やコンピュータ部品に用いられる。

シリコンの結晶に、わずかにリンやホウ素を加えたものは、電気をよく通すものになる。これらの材料(シリコンの結晶に、わずかにリンやホウ素を加えたもの)も「半導体」という。

  • その他
ケイ素の単体の結晶構造

ケイ素の結晶構造は、ダイヤモンドの結晶構造と同じ。


シリセン
シリセンは、ケイ素(シリコン)原子が六角形に配列し、グラフェンに似た二次元シート構造を持つ新しい物質である。シリコンは通常、三次元のダイヤモンド構造を取るが、シリセンではケイ素原子が平面状に並び、蜂の巣状の構造を作り出す。このため、シリセンは「シリコン版グラフェン」とも呼ばれることがある。

シリセンは、グラフェンと同様に優れた電子的特性を持ち、次世代のエレクトロニクス材料として注目されている。特に、シリコンベースの既存の半導体技術との互換性が期待されており、ナノテクノロジーやトランジスタ、センサーなどの分野での応用が研究されている。

ただし、シリセンはグラフェンよりも安定性が低く、空気中では速やかに酸化されるため、特定の条件下でしか安定した形で存在できない。一般的には金属基板の上に成長させることで安定させる技術が使われている。

シリセンはその特性を利用して、エレクトロニクスやスピントロニクス、さらにはエネルギー材料などの広い分野で革新的な技術を生み出す可能性があるが、まだ研究段階にあるため、今後の発展が期待される。


二酸化ケイ素

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水晶

二酸化ケイ素シリカ)は自然界で石英として存在する。透明な石英の結晶は「水晶」と呼ばれ、宝石として用いられる。また、砂状のものは珪砂(けいしゃ)と呼ばれ、硝子(ガラス)の原料となる。

ガラスは身近な様々な場面で用いられている。科学においては耐熱器具や光ファイバーに用いられている。

二酸化ケイ素は共有結合結晶である。ケイ素原子と酸素原子との結合は非常に強く、固く安定な結晶を作る。また、強い結合のためか、融点も高く(1550℃)、塩酸にも溶けない。しかし、フッ化水素酸とは反応して溶ける。

また、二酸化ケイ素は酸性酸化物であり、塩基と反応して珪酸塩を生じる。たとえば水酸化ナトリウムと反応して、ケイ酸ナトリウム()を生じる。

これに水を加えて加熱すると、水飴状の水ガラス(water glass、)が得られる。また、水ガラスに塩酸を加えると、白色ゲル状のケイ酸が得られる。

※ 実際は組成が安定せず、できるのが のみとは限らない

このとき塩化ナトリウムが副生成物としてできるので、塩化ナトリウムを水洗して除き、のこったケイ酸を加熱乾燥するとシリカゲル(silica gel)が得られる。シリカゲルは多孔質で分子を吸着するため、乾燥剤や吸着剤として用いられる。

  • 発展: 水晶振動子

電子工業における水晶の応用として、水晶振動子としての利用がある。

水晶に電圧を掛けると、一定の周期で振動することから、クオーツ時計などの発振器として利用されている。


  1. ^ 希ガス(稀ガス、rare gas)とも
  2. ^ 18族元素にはオガネソン Og もあるがこの元素の性質はあまり解明されていない。
  3. ^ 17族元素にはテネシン Ts もあるがこの元素の性質はあまり解明されていない。