高等学校化学I/非金属元素の単体と化合物/ハロゲン

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周期表-ハロゲン.png

周期表の17族に属する フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、アスタチン(At)の5種類の元素のことをハロゲンという。

ハロゲンの原子は最外殻に価電子を7つ持っている。ハロゲンは容易に1価の陰イオンになりやすい。

このためハロゲンは化合物をつくりやすい。そのため、天然では、ハロゲンは鉱物(ホタル石 CaF2 、岩塩 NaCl)として存在している場合も多い。または、海水中に陰イオンとしてハロゲンが存在している場合が多い。

ハロゲンの単体の性質[編集]

ハロゲンの単体は単体はいずれも二原子分子であり、原子2つで1つの分子を形成している。
ハロゲンの単体はすべて有色である。
ハロゲンの単体はすべて、毒性がある。

反応性が高く、いずれの単体も有毒である。

沸点・融点は、原子番号の大きいものほど高い。

ハロゲンはいずれも陰イオンとなりやすいため酸化力が強く、原子番号が小さいほど酸化力は大きい。(つまり、フッ素F2がいちばん、酸化力が強い。)

フッ素 F2 塩素 Cl2 臭素 Br2 ヨウ素 I2
色・状態 F,9.jpg Cl,17.jpg Br,35.jpg I,53.jpg
淡黄色・気体 黄緑色・気体 赤褐色・液体 黒紫色・固体
融点 (℃) ー220 ー101 ー7 114
沸点 (℃) ー138 ー34 59 184
酸化力 大 ←――――――――――――――――――――――――――――――――――→ 小
水との反応 激しく反応して
酸素 O2 が発生
一部が反応
HCl などを生じる
塩素より反応は弱いが、
似た反応をする
水に反応しにくく、
水に溶けにくい
2H2O + 2F2
→ 4HF + O2
2H2O + Cl2
⇄ HCl + HClO
水素との反応 低温・暗所でも
爆発的に反応
光を当てることで
爆発的に反応
高温にすると反応 高温にすると一部が反応


ハロゲンの酸化力[編集]

ハロゲンの単体は電子をうばう力が大きいため、酸化力が強い。 ハロゲンの酸化力の強さは原子番号が小さいほど大きくなる。つまり酸化力の強さは、

F2 > Cl2 > Br2 > I2

である。 たとえば、ヨウ化カリウム水溶液に塩素を加えると、ヨウ素は酸化されて単体となる。

2KI + Cl2 → 2KCl + I2

逆に、塩化カリウム水溶液にヨウ素を加えても、反応は起こらない。

このことから、ヨウ素よりも塩素のほうが酸化力が強いことが分かる。


また、ハロゲンの各元素ごとの酸化力の違いは、水や水素との反応にも関わる。 もっとも酸化力のつよいフッ素は、水と激しく反応し、酸素を発生する。

2F2 + 2H2O → 4HF + O2

それぞれの単体の性質[編集]

塩素[編集]

塩素(Cl2)は常温常圧で黄緑色の気体である。 塩素の製法は、工業的には、塩化ナトリウム水溶液の電気分解でつくる。

製法は、実験室では、酸化マンガン(IV)に濃塩酸を加え、加熱することで塩素の単体が得られる。

MnO2 + 4HCl → MnCl2 + 2H2O + Cl2

単体の塩素は、黄緑色の有毒な気体である。また、塩素の気体は、空気よりも重い。

なお、この反応では塩素と同時に水も生成する。さらに、濃塩酸には次節に見るように揮発性がある。したがって、この反応により得られる気体は純粋な塩素ではなく、水や塩化水素を少量含んでいる。それらを取り除くため、この気体を水と濃硫酸に順番に通す。まず水に通すことで、揮発した塩化水素が吸収される。次いで濃硫酸に通すことで、濃硫酸の吸湿作用により気体中の水が吸収され、純粋な塩素を得ることができる。なお、この水・濃硫酸に通す順番を逆にしてはならない。先に濃硫酸に通した後水に通しても、得られる気体の中には最後に通した水から蒸発した水蒸気が含まれているためである。塩素は空気よりも重いため、濃硫酸を通したあとの塩素を、下方置換で集める。


  • 性質

塩素は、水に少し溶けて、その一部が次亜塩素酸 HClO になる。

Cl2 + 2H2O → HCl + HClO

次亜塩素酸は、強い酸化作用がある。

※ なお、塩素 Cl2 の水溶液を塩素水(えんそすい,chlorine water)という。塩酸とは異なるので、混同しないように。塩酸は、塩化水素の水溶液である。

塩素水および次亜塩素酸は、漂白剤や殺菌剤として利用される。


  • 次亜塩素酸

塩素は水に少し溶け、塩化水素(HCl)と次亜塩素酸(HClO)を生じる。

Cl2 + H2O → HCl + HClO

次亜塩素酸は酸化力が強く、殺菌作用があるため、水道やプールの水の殺菌などに広く用いられている。またこの酸化力により色素を酸化するため、漂白剤としても用いられる。

HClO + 2H+ + 2e- → HCl + H2O


  • さらし粉

水酸化カルシウムと塩素を反応させると、さらし粉(主成分:CaCl(ClO)・H2O)ができる。

さらし粉または高度さらし粉(主成分:Ca(ClO)2・2H2O)に塩酸を加えることによっても塩素の単体を得ることができる。

CaCl(ClO)・H2O + 2HCl → CaCl2 + 2H2O + Cl2
Ca(ClO)2・2H2O + 4HCl → CaCl2 + 4H2O + 2Cl2

工業的には塩化ナトリウム水溶液の電気分解を用いた、イオン交換膜法により製造される。


高度さらし粉は、漂白剤や殺菌剤として利用される。

(※ 範囲外: ) いわゆる「カルキ」とは、この、さらし粉のこと。ドイツ語のクロールカルキを略してカルキと読んでいる。


  • その他

塩素はさまざまな金属と反応して塩化物となる。たとえば、単体の塩素の中に加熱した銅線を入れると、煙状の塩化銅(II) CuCl2 を生成する。

Cu + Cl2 → CuCl2

ヨウ素[編集]

ヨウ素(I2)は常温常圧で黒紫色の固体である。昇華性があり、加熱すると固体から液体にならず直接気体となる。これを利用して、固体のヨウ素の純度を上げることができる。1リットルビーカーに不純物を含むヨウ素の固体を入れ、ガスバーナーで加熱する。ビーカーの上部には冷水を入れた丸底フラスコを置いておく。加熱によりヨウ素のみが気体となり、上昇してフラスコの底部付近で冷やされて固体に戻る。そのため、フラスコ底部に純度の高いヨウ素の針状結晶が析出する。

ヨウ素は水に溶けにくいが、エーテルなどの有機溶媒にはよく溶ける。また、ヨウ化カリウム水溶液にもよく溶けて褐色の溶液となる。

デンプン水溶液にヨウ素を溶かしたヨウ化カリウム水溶液を加えると、青紫色を呈する。このようにデンプンにヨウ素を作用させて青紫色となる反応をヨウ素デンプン反応と呼ぶ。これにより、ヨウ素やデンプンの検出ができる。

ヨウ素デンプン反応を用いた試薬に、ヨウ化カリウムデンプン紙がある。これは、ろ紙にデンプンとヨウ化カリウムを含ませたものであり、酸化力の強い物質の検出に用いられる。酸化力の強い物質がある場合、ヨウ化カリウムは酸化されてヨウ素の単体となる。

2I- → I2 + e-

このヨウ素がデンプンに作用して紫色から青紫色に変化する。

ハロゲンの化合物[編集]

ハロゲン化水素[編集]

ハロゲンは水素と化合してハロゲン化水素となる。いずれも無色刺激臭の気体である。

また、ハロゲン化水素の水溶液は酸性を示す。

名称 フッ化水素 塩化水素 臭化水素 ヨウ化水素
組成式 HF HCl HBr HI
沸点(℃) 20 ー85 ー67 ー35
水溶液 名称 フッ化水素酸 塩酸 臭化水素酸 ヨウ化水素酸
酸の強さ 弱酸 強酸 強酸 強酸

ハロゲン水溶液の酸性は、フッ化水素酸だけが弱酸である。それ以外は強酸である。

フッ化水素(HF)[編集]

フッ化水素は、ホタル石(主成分 CaF2)に濃硫酸をくわえて加熱することで、得られる。

CaF2 + H2SO4 → 2HF + CaSO4

フッ化水素は水によく溶け、弱酸のフッ化水素酸(hydrofluoric acid)となる。

フッ化水素酸は、ガラスの主成分である二酸化ケイ素 SiO2)を溶かすため、保存するときはポリエチレン容器に保存する。

SiO2 + 6HF → H2SiF6 + 2H2O

工業の用途として、ガラスの表面処理や、くもりガラスの製造に、フッ化水素酸が用いられる。

フッ化水素だけ沸点が他のハロゲン化水素よりも高いが、この原因は、フッ化水素では水素結合が生じるからである。(← ※ 実教出版、数研出版、第一学習社の教科書で紹介。)

フッ化水素酸だけ弱酸である理由も、同様に水素結合によって電離度が低くなっているためである。(← ※ 実教出版、第一学習社の教科書の見解。)

塩化水素(HCl)[編集]

塩化水素の、実験室での製法は、塩化ナトリウムに濃い硫酸を加え加熱することで得られる。

NaCl + H2SO4 → NaHSO4 + HCl↑
塩化水素とアンモニアの反応
白煙( NH4Cl )を生じる

塩化水素は水によく溶け、その水溶液は塩酸(hydrochloric acid)である。濃度の濃いものは濃塩酸、薄いものは希塩酸と呼ばれる。塩酸は強酸性を示し、多くの金属と反応して水素を発生する。

2HCl + Zn → ZnCl2 + H2

また、強酸性であることから、弱酸の塩と反応して塩を生じ、弱酸を遊離させる。

HCl + NaHCO3 → NaCl + H2O + CO2

塩酸には揮発性があり、常温で一部が気体となる。そのため、アンモニアのついたガラス棒を近づけると、塩酸の気体とアンモニアとが触れて反応し、塩化アンモニウム NH4Cl が生じる。この反応は、塩化水素やアンモニアの検出に用いられる。

HCl + NH3 → NH4Cl

ハロゲン化銀・ハロゲン化鉛[編集]

ハロゲン化銀は、フッ化銀を除いて、一般に水に溶けにくい。このため、ハロゲンの化合物の水溶液に、硝酸銀をくわえると、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀などのハロゲン化銀が沈殿する。

名称 フッ化銀 塩化銀 臭化銀 ヨウ化銀 塩化鉛(II) 臭化鉛(II) ヨウ化鉛(II)
組成式 AgF AgCl AgBr AgI PbCl2 PbBr2 PbI2
黄色 白色 淡黄色 黄色 白色 白色 黄色
水への溶けやすさ 溶けやすい 溶けにくい 溶けにくい 溶けにくい 溶けにくい 溶けにくい 溶けにくい
熱水への溶けやすさ 溶けやすい 溶けにくい 溶けにくい 溶けにくい 溶ける 溶ける 溶ける

塩化水素(HCl)

塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀には感光性があり、生じた沈澱に光を当てると銀が遊離する。また、これらはいずれもチオ硫酸ナトリウム水溶液によく溶ける。アンモニア水への溶けやすさは異なり、塩化銀はよく溶け、臭化銀も一部溶けるが、ヨウ化銀は溶けない。

塩素のオキソ酸[編集]

塩素のオキソ酸には、酸化数の異なる次の4つがある。

名称 次 亜塩素酸 亜塩素酸 塩素酸 過塩素酸
化学式 HClO HClO2 HClO3 HClO4
性質 殺菌・漂白作用 殺菌・漂白作用 強力な酸化剤 塩は爆発性
さらし粉

さらし粉(化学式: CaCl(ClO)・H2O または Ca(ClO)2)は、次亜塩素酸イオンを含むため、その酸化作用により漂白剤や殺菌剤として広く用いられている。水酸化カルシウムと塩素を反応させることで得られる。

Ca(OH)2 + Cl2 → CaCl(ClO)・H2O


(※ 発展) 塩素酸 および 塩素酸塩
(※ 検定教科書では「酸素」の単元で習う場合が多い。)

塩素酸HClO3は不安定な物質だが、カリウムやナトリウムの塩は安定で、強い酸化剤である。塩素酸カリウムKClO3は酸化マンガン(IV)を触媒として用いて加熱すると酸素を発生するため、花火やマッチの火薬中に燃焼を助けるため含まれる。

2KClO3 → 2KCl + 3O2

範囲外? : ハロゲン化物と日用品[編集]

ハロゲンの化合物のなかには、日用品の中に広く用いられている物もある。たとえば、フッ素化合物の一つ、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン)はフライパンの表面に薄く塗られ、焦げ付きを防ぐ役割を果たしている。また、臭化銀はその感光性を利用して、写真のフィルムに用いられている。塩素は多くのビニル・プラスチック製品に含まれている。また、ヨウ素は消毒剤や うがい薬 に用いられている。


範囲外? : 「まぜるな危険」[編集]

洗剤の「まぜるな危険」の化学反応については、啓林館の教科書を除いて、検定教科書では書かれてない。