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高校化学 16族元素

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

16族に属する酸素(O)、硫黄(S)はともに価電子を6つ持ち、2価の陰イオンになる。ともに単体は同素体を持つ。

酸素の単体

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酸素の単体には、原子2個で1つの分子を作っている酸素(O2)と、原子3個で1つの分子を作っているオゾン(O3)がある。いずれも常温では気体であるが、大きく異なった性質を示す。

酸素は空気中で約21%ふくまれる。また、酸素は地殻を構成する主な元素でもあり、およそ半分は酸素である。

酸素

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酸素 O2 分子

酸素(O2)は常温で無色無臭の気体である。

工業的な製法は、液体空気の分留によって酸素を得る。

実験室で酸素を得るには、過酸化水素水に酸化マンガン(IV)を加えればよい。この反応で酸化マンガン(IV)は触媒として働き、過酸化水素が分解して酸素を発生する。

2H2O2 → 2H2O + O2

また、塩素酸カリウムと酸化マンガン(IV)を混合して加熱してもよい。この反応でもやはり酸化マンガン(IV)は触媒として働く。

2KClO3 → 2KCl + 3O2

オゾン

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オゾン O3 分子

オゾン(O3)は、酸素中で無声放電を行うか、強い紫外線を当てることで生成する。

3O2 ⇄ 2O3

オゾン O3 は分解しやすく、分解のさいに強い酸化作用を示す。オゾンは淡青色・特異臭の気体で、人体には有害である。オゾンの分子は、酸素原子が3つ結合して1つの分子を作っている。

また、オゾンの酸化作用は、ヨウ化カリウムデンプン紙を青変する。

2KI + O3 + H2O → 2KOH + O2 + I2

このためオゾンの検出法は、水で湿らせたヨウ化カリウムデンプン紙でオゾンを検出できる。

大気中には上空25000mほどにオゾンが豊富に含まれる層があり、オゾン層と呼ばれる。オゾン層は人体に有害な紫外線を吸収する働きがあるが、近年このオゾン層が南極付近で局所的に薄くなっており(オゾンホール)、環境問題として取り上げられることが多くなっている。

酸素の化合物

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酸素の化合物は一般に酸化物と呼ばれる。酸素はあらゆる物質と化合することができ、一般に金属元素とはイオン結合、非金属元素とは共有結合による酸化物を作る。

酸化物は、酸や塩基との反応のしかたから3通りに分類される。

酸化物の分類
酸性酸化物 CO2 , NO2 , SiO2 , SO2 , SO3 , Cl2O7 など
塩基性酸化物 Na2O , MgO , CaO , Fe2O3 , CuO , BaO など
両性酸化物 Al2O3 , ZnO
  • 酸性酸化物 : 水に溶けて酸性を示したり、塩基と反応して塩を生じる酸化物を、酸性酸化物という。
  • 塩基性酸化物 : 水に溶けて塩基性を示したり、酸と反応して塩を生じる酸化物を、塩基性酸化物という。
  • 両性酸化物: 酸・塩基のどちらとも反応して塩を生じる酸化物を、両性酸化物という。

一般に、非金属元素の酸化物は酸性酸化物であり、金属元素の酸化物は塩基性酸化物である。

酸性酸化物の例
酸性酸化物 CO2 , NO2 , SiO2 , SO2 , SO3 , Cl2O7 など

二酸化炭素や二酸化硫黄など、非金属元素の酸化物の多くは、酸性酸化物である。

酸性酸化物の定義により、酸性酸化物は水に溶けると、酸性を示す。

SO3 + H2O → H2SO4
※ H2SO4は酸。

また、酸性酸化物は塩基と反応すると、塩をつくる。

SO2 + 2NaOH2O → Na2SO3 + H2O
※ Na2SO3は塩。


二酸化炭素(CO2)は塩基と反応して塩を生じる。

CO2 + Ca(OH)2 → CaCO3 + H2O
※ CaCO3は塩。


二酸化窒素(NO2)は水に溶けて硝酸(HNO3)となる。

3NO2 + H2O → 2HNO3 + NO


塩基性酸化物の例
塩基性酸化物 Na2O , MgO , CaO , Fe2O3 , CuO , BaO など

水に溶けて塩基性を示したり、酸と反応して塩を生じる酸化物を、塩基性酸化物という。

Na2O + H2O → 2NaOH
※ NaOHは塩基。

金属元素の酸化物の多くは、塩基性酸化物である。酸化カルシウムや酸化ナトリウムなどが、塩基性酸化物である。

酸化カルシウム(CaO)は水に溶けて水酸化カルシウム(Ca(OH)2)となる。

CaO + H2O → Ca(OH)2

また、これは酸と反応して塩を生じる。

CaO + 2HCl → CaCl2 + H2O


両性酸化物の例
両性酸化物 Al2O3 , ZnO

酸・塩基のどちらとも反応して塩を生じる酸化物を、両性酸化物という。

酸化アルミニウム(Al2O3)や酸化亜鉛は、酸とも塩基とも反応して塩を生じる。

Al2O3 + 6HCl → 2AlCl3 + 3H2O
Al2O3 + 2NaOH + 3H2O → 2Na[Al(OH)4]

オキソ酸

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塩素の酸性酸化物を水に溶かすと、水と反応して酸を生じる。

塩素の酸化物には、いくつかの種類があるが、一例として酸を生じる反応として、下記の化学反応がある。

Cl2O7 + H2O → HClO4

リンの酸性酸化物も、水と反応し、酸を生じる。

P4O10 + 6H2O → 4H3PO4


また、このように酸性酸化物を水と反応させて得られた酸は、分子中に酸素原子と水素原子を含む場合が多い。 塩素の場合は、過塩素酸 HClO4 などが得られるし、窒素の場合は、亜硝酸(HNO2)と硝酸(HNO3)などが得られるし、分子式を見ればわかるように酸素原子と原子が分子中に含まれてる。

化学式 名称 酸の強さ Clの酸化数
HClO4 過塩素酸 つよい側 +7
HClO3 塩素酸 +5
HClO2 亜鉛素酸 +3
HClO 次亜鉛素酸 よわい側 +1


一般に、分子中に酸素分子のある構造の酸のことをオキソ酸(oxoacid)という。(「オキソ酸」といった場合、水素原子は、なくても構わない。 ※ 東京書籍と実教出版の見解。 いっぽう、啓林館などが、「オキソ酸」の定義に水素原子を含ませる定義である。)

オキソ酸の分子構造についての議論のさいには、塩素原子や窒素原子など、由来となった酸性酸化物の元素を「中心原子」と設定して議論するのが一般的である。(つまり、酸素原子や水素原子は、中心ではない。)

中心元素が同じであれば、結合している酸素の数が多いほど、オキソ酸の酸性は強くなる。


たとえば窒素のオキソ酸として亜硝酸(HNO2)と硝酸(HNO3)があるが、硝酸の方が強い酸である。

また、中心元素が第3周期のリン、硫黄、塩素であるようなオキソ酸は、この順に酸性が強くなる。リン酸(H3PO4)は弱酸であるが、硫酸(H2SO4)は強酸であり、過塩素酸(HClO4)はさらに強い酸性を示す。

塩素のオキソ酸の酸性の順は、

(つよい側) HClO4 > HClO3 > HClO2 > HClO (よわい側)

名称は

HClO4 過塩素酸。 HClO3 塩素酸。 HClO2 亜鉛素酸。HClO 次亜鉛素酸。

である。

(※ 範囲外:) いまのところ、上記の4つ以外は、塩素のオキソ酸は発見されていない。(※ 参考文献: 化学同人『理工系基礎レクチャー 無機化学』、鵜沼秀郎 ほか 著、2007年第1版、2014年第1版第9刷、73ページ)

硫黄の単体

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硫黄(S)の単体には、斜方硫黄、単斜硫黄、ゴム状硫黄などの同素体がある。単体は火山地帯から多く産出され、また重油の精製過程のひとつである脱硫(だつりゅう)の工程において多く得られる。

斜方硫黄(S8

斜方硫黄は常温で安定な黄色・塊状の結晶である。硫黄原子が8つ環状に結合して1つの分子を形成している。

単斜硫黄(S8

単斜硫黄は高温で安定な黄色・針状の結晶である。硫黄原子が8つ環状に結合して1つの分子を形成している。斜方硫黄を加熱することで得られる。

ゴム状硫黄(Sx

ゴム状硫黄は褐色の無定形固体である。ただし、純粋なものは黄色を示すものがある。数十万の硫黄原子がジグザグに結合しているため、引っ張ると結合角が変わり弾力性がある。

斜方硫黄を加熱するとコハク色の液体となる。これを加熱し続けると次第に暗褐色となり、粘性が増してくる。さらに加熱すると濃青色の液体となり、これを水中に入れ急冷するとゴム状硫黄となる。


  • 反応性

硫黄は、高温で反応性が高い。

硫黄の燃焼

硫黄は高温では多くの元素と化合して硫化物となる。たとえば鉄粉と硫黄の粉末を混合して加熱すると、硫化鉄(II) FeS が生じる。

Fe + S → FeS

また、空気中で青白い炎をあげて燃焼し、二酸化硫黄となる。

S + O2 → SO2

硫黄の化合物

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硫化水素

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硫化水素(H2S)は無色腐卵臭の気体である。人体に有毒であるため、使用時には十分な換気に注意しなければならない。硫化水素は水に溶け、弱酸性を示す。

H2S ⇄ HS- + H+ ⇄ S2- + 2H+

火山ガスや温泉に豊富に含まれるが、実験室では硫化鉄(II)に強酸を加えることで得られる。

FeS + 2HCl → FeCl2 + H2S↑
FeS + H2SO4 → FeSO4 + H2S↑

硫化水素は、おおくの場合に還元剤として働き、二酸化硫黄を還元して硫黄の単体を生じる。

2H2S + SO2 → 2H2O + 3S↓

多くの金属イオンと反応して硫化物の沈殿を作るため、金属イオンの分離や検出に多く用いられる。

Fe2+ + H2S → 2H+ + FeS↓


二酸化硫黄

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二酸化硫黄(SO2)は腐卵臭をもつ無色の有毒な気体で、刺激臭がある。また、火山ガスや温泉などに含まれる。

酸性酸化物であり、水に溶けて弱酸性を示す。

SO2 + H2O ⇄ HSO3- + H+

実験室では、銅を濃硫酸に加えて加熱するか、亜硫酸塩を希硫酸と反応させることにより得られ、下方置換で得る。

Cu + 2H2SO4 → CuSO4 + 2H2O + SO2
NaHSO3 + H2SO4 → NaHSO4 + H2O + SO2
Na2SO3 + H2SO4 → Na2SO4 + H2O + SO2

工業的には、硫黄の燃焼により製造される。

S + O2 → SO2

二酸化硫黄は還元性があり、漂白作用がある。ただし、硫化水素のような強い還元剤がある場合は、酸化剤として作用する。

硫黄を含む物質は燃焼により二酸化硫黄を生じる。二酸化硫黄の水溶液は、弱い酸性を示す。

硫黄は石油や石炭に多く含まれているため、このような化石燃料を大量に燃焼させると、大気中に多量の二酸化硫黄が放出され、雨水に溶け込み、酸性雨の原因となる。

硫酸

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硫酸(H2SO4)は工業的に接触法(contact process)により、酸化バナジウムを主成分として触媒をもちいて、次のような工程で製造されている。

  1. 硫黄を燃焼させ、二酸化硫黄を作る。
    S + O2 → SO2
  2. 二酸化硫黄と酸素との混合気体を乾燥させ、酸化バナジウム(V2O5)を触媒として反応させて三酸化硫黄を作る。
    2SO2 + O2 → 2SO3
  3. 三酸化硫黄を濃硫酸に吸収させ、発煙硫酸とする。
    SO3 + H2O → H2SO4
  4. 発煙硫酸を希釈し、濃硫酸とする。


硫酸は、硫黄のオキソ酸である。通常はH2SO4の水溶液を硫酸と呼ぶ。硫酸は無色透明で粘性があり、密度の大きい重い液体である。濃度により性質が異なり、濃度の90%以上程度の濃いものを濃硫酸(concentrated sulfuric acid)といい、薄いものを希硫酸(diluted sulfuric acid)と呼ぶ。


濃硫酸を水で希釈することで希硫酸が得られる。希釈する際は水を入れたビーカーを水を張った水槽中に入れ、冷却しながら濃硫酸を静かに加えるようにする。これは、硫酸の水への溶解熱が非常に大きいためである。けっして、これを逆にしてはならない。もし、濃硫酸に水を加えるようにすると、溶解熱によって水が蒸発し濃硫酸が跳ねることがあり、たいへん危険である。

硫酸は沸点が高い、不揮発性の酸である。したがって、塩酸や硝酸のような揮発性の酸の塩と反応して塩を作り、揮発性酸が遊離する。

NaCl + H2SO4 → NaHSO4 + HCl↑

濃硫酸には次のような性質がある。

  • 酸化作用: 金属を加え加熱すると、銅などのイオン化傾向の小さい金属を酸化するようになる。加熱した濃硫酸を熱濃硫酸と呼ぶこともある。
    Cu + 2H2SO4 → CuSO4 + 2H2O + SO2
  • 脱水作用(だっすいさよう、dehydration): 有機化合物の分子内に含まれている酸素原子や水素原子を、水分子H2Oとして奪う。たとえば紙に濃硫酸を垂らすと、その部分から酸素と水素が奪われ、炭化する。
  • 吸湿作用: 強い吸湿作用があり、乾燥剤として用いられる。
  • 不揮発性:

希硫酸は強酸であり、多くの金属と反応して水素を発生する。一方濃硫酸は水をほとんど含まないため電離度が小さく、ほとんど酸性を示さない。

硫酸イオン(SO42-)はBa2+やCa2+と反応して白色沈殿を生じる。そのため、これらのイオンの検出・分離に用いられる。また日常生活においても、硫酸はカーバッテリーや非常用電源などとして使われる鉛蓄電池の電解液として用いられている。