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借地借家法第38条

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

法学民事法コンメンタール借地借家法

条文

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(定期建物賃貸借)

第38条
  1. 期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第三十条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第二十九条第一項の規定を適用しない。
  2. 前項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。
  3. 建物の賃貸人が前項の規定による説明をしなかったときは、契約の更新がないこととする旨の定めは、無効とする。
  4. 第一項の規定による建物の賃貸借において、期間が一年以上である場合には、建物の賃貸人は、期間の満了の一年前から六月前までの間(以下この項において「通知期間」という。)に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができない。ただし、建物の賃貸人が通知期間の経過後建物の賃借人に対しその旨の通知をした場合においては、その通知の日から六月を経過した後は、この限りでない。
  5. 第一項の規定による居住の用に供する建物の賃貸借(床面積(建物の一部分を賃貸借の目的とする場合にあっては、当該一部分の床面積)が二百平方メートル未満の建物に係るものに限る。)において、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。この場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から一月を経過することによって終了する。
  6. 前二項の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。
  7. 第三十二条の規定は、第一項の規定による建物の賃貸借において、借賃の改定に係る特約がある場合には、適用しない。

解説

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本条の賃借権は、「定期借家権」とも呼ばれる。本法制定時の本条は「賃貸人の不在期間の建物賃貸借」であり、本条のある節の名は「期限付建物賃貸借」であった。その後、1999年公布(2000年3月施行)の改正で定期建物賃貸借が導入されたものである。

第1項では、書面による契約であるということを定期建物賃貸借の要件としている。こうした規定は「賃貸人の不在期間の建物賃貸借」の時代にもあった。なお、「公正証書」は例示であり、公正証書でなければならないというものではない。こうした書面によるという要件は定期借地権にもあり、事業用定期借地権等の場合は公正証書でなければならないとされている(第22条第23条)。なお、第29条の適用を排除し、定期借地権と異なり、期間の短さにも特段の制限はないものとしているため、「1泊2日」でも可能となっている。

第2項は、契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、あらかじめ、書面で説明しなければならないとしている。この条項は、1999年公布の改正案には当初なかったものであるが、審議の過程で追加されたものである[1]。賃貸借契約締結に際して、宅地建物取引業法の適用対象である宅地建物取引業者の代理、媒介による場合、同法35条に基づく重要事項説明が必要であり、そこで賃貸借契約の内容に関するものもあるが、本項の説明は、法律上それとは別である。実際には、貸主が代理・媒介の業者に本項の説明を委託することが考えられるが、一連で行うとしても「二重説明」の問題が、規制緩和への逆行であることはもとより、定期借家普及の支障とも指摘されている[2]。第3項で、この説明をしなかった場合、契約の更新がないこととする旨の定めは無効となり、定期建物賃貸借ではない建物賃貸借となるとしている。第2項、第3項に相当する規定は定期借地権にはない。

第4項は、期間の満了により建物の賃貸借が終了することに関する、賃貸人からの通知期間について定めている。対象となる賃貸借は、期間が1年以上である場合で、通知期間は期間の満了の1年前から6月前までの間となる。ただし、建物の賃貸人が通知期間の経過後建物の賃借人に対しその旨の通知をした場合においては、その通知の日から6月を経過した後は、契約終了を建物の賃借人に対抗することができることとなる。

第5項は、期間の定めのある賃貸借を一方的に中途解約することはできないという原則に対する例外で、「住宅弱者」の保護を念頭においたものであるという[3]。これも定期借家普及の支障とも指摘されている[2]

第6項は、借主に不利にならない範囲で第4項、第5項を強行法規にするというものである。建物の賃借人に不利な特約は無効となる。

第7項は、借賃増減請求権に関する規定を定期建物賃貸借には適用しないというものである。なお、定期借地権については該当する規定がなく、第11条の地代増減請求権の規定が適用されることとなる。

脚注

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  1. ^ 参議院会議録情報 第146回国会 国土・環境委員会 第3号
  2. ^ 2.0 2.1 定期借家推進協議会『 定期借家制度の見直し及び今後の普及策に関する提言について』2002年 2010年10月19日閲覧
  3. ^ 衆議院 第146回国会 建設委員会 第5号(平成11年11月19日(金曜日))(法案提出者による説明)

参照条文

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判例

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前条:
借地借家法第37条
(強行規定)
借地借家法
第3章 借家
第3節 定期建物賃貸借等
次条:
借地借家法第39条
(取壊し予定の建物の賃貸借)


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