商法第526条

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法学民事法商法コンメンタール商法第2編 商行為 (コンメンタール商法)

条文[編集]

(買主による目的物の検査及び通知)

第526条
  1. 商人間の売買において、買主は、その売買の目的物を受領したときは、遅滞なく、その物を検査しなければならない。
  2. 前項に規定する場合において、買主は、同項の規定による検査により売買の目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないことを発見したときは、直ちに売主に対してその旨の通知を発しなければ、その不適合を理由とする履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。売買の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないことを直ちに発見することのできない場合において、買主が6箇月以内にその不適合を発見したときも、同様とする。
  3. 前項の規定は、売買の目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないことにつき売主が悪意であった場合には、適用しない。

改正経緯[編集]

2017年民法改正により「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」に変わったことにより第2項及び第3項が以下のとおり改正された。

  1. 第2項
    (旧)前項に規定する場合において、買主は、同項の規定による検査により売買の目的物に瑕疵があること又はその数量に不足があることを発見したときは、直ちに売主に対してその旨の通知を発しなければ、その瑕疵又は数量の不足を理由として契約の解除又は代金減額若しくは損害賠償の請求をすることができない。売買の目的物に直ちに発見することのできない瑕疵がある場合において、買主が6箇月以内にその瑕疵を発見したときも、同様とする。
    (新)前項に規定する場合において、買主は、同項の規定による検査により売買の目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないことを発見したときは、直ちに売主に対してその旨の通知を発しなければ、その不適合を理由とする履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。売買の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないことを直ちに発見することのできない場合において、買主が6箇月以内にその不適合を発見したときも、同様とする。
  2. 第3項
    (旧)前項の規定は、売主がその瑕疵又は数量の不足につき悪意であった場合には、適用しない。
    (新)前項の規定は、売買の目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないことにつき売主が悪意であった場合には、適用しない。

解説[編集]

本条は、商人間の不動産売買についても適用されるか。
条文上、不動産は排除されていない。裁判例においても、本条が不動産売買に適用されることを前提とした上で、特約により本条の適用が全部または一部で排除されるのかが、争点となっている。事案として、マンション用地の受領後、6か月経過後に土壌汚染が判明した場合の、土壌汚染対策費の負担を売主が負うか否かが争われている。
不動産実務上、本条は買主にとって不利な規定なので、買主は不動産売買契約に際して、本条を適用しない旨の条項を売買契約に入れることを要請する場合がある。

判例[編集]

2017年改正前判例[編集]

2017年改正前の判例であって、項番1は法律上可能なものとなり、項番2及び項番3は不特定物を区分する実益がなくなっている。但し、項番3の検査期間徒過後の請求不能については維持されている。
  1. 自動車残代金並びに附属品代請求(最高裁判例 昭和29年01月22日)民法第570条,民法第566条
    商事売買における目的物の瑕疵と代金減額請求権の有無
    商事売買においても、目的物に瑕疵あることを理由として代金減額の請求をすることはできない。
  2. 石炭代金請求(最高裁判例 昭和35年12月02日)
    不特定物の売買と商法第526条の適用の有無。
    不特定物の売買にも商法第526条の適用がある。
  3. 売掛代金請求(最高裁判例 昭和47年01月25日)民法第415条,民法第570条
    商人間の不特定物を目的とする売買における不完全履行と代物請求権
    商人間の不特定物を目的とする売買において、瑕疵のある物が給付された場合においても、商法526条1項の適用の結果、買主において契約を解除しえず、また損害の賠償をも請求しえなくなつたのちにおいては、買主は売主に対し、もはや完全な給付を請求することはできないものと解すべきである。

前条:
商法第525条
(定期売買の履行遅滞による解除)
商法
第2編 商行為
第2章 売買
次条:
商法第527条
(買主による目的物の保管及び供託)
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