民法第189条
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法学>民事法>民法>コンメンタール民法>第2編 物権 (コンメンタール民法)
条文
[編集]- 第189条
- 善意の占有者は、占有物から生ずる果実を取得する。
- 善意の占有者が本権の訴えにおいて敗訴したときは、その訴えの提起の時から悪意の占有者とみなす。
解説
[編集]善意の占有者は、占有物から生ずる果実を取得することができる。本来、本権を有しない限り果実の取得権は発生しないが、自身に本権が帰属すると誤信した(=善意)の占有者はこの規定により保護されることになっている。盗人など、自身に本権が帰属しないと知っている(=悪意)の占有者はこの規定の保護の対象外となり、原則通り果実の返還義務(不当利得)を負う。
第2項は、民法第186条の推定規定の例外を定めたものである。
もし民法第703条が適用されれば、訴訟によって占有者に占有の権原がないことが明らかになった後でも、すでに費消した果実については「取得」が認められて返還する義務を負わず、まだ費消していない果実については返還しなければならない。この189条も不当利得の条文だから、この条文の「果実」とはすでに費消した果実に限ると解釈されている(縮小解釈)。
ただ、189条は703条と異なり、訴訟によって占有者に占有の権原がないことが明らかになった場合、提訴時にさかのぼって190条が適用されるため、占有開始時から提訴時までにすでに費消した果実は「取得」が認められて返還義務がないが、提訴時以降に費消した果実は金銭評価して利息をつけて返還しなければならない。
つまり権利者は善意の占有者に対して物の返還を求めると同時に、費消していない果実の返還+提訴時以降に費消した果実の金額と利息を請求することができる。
参考文献
[編集]- 加藤雅信『新民法体系物権2(第2版)』222頁、235頁
参照条文
[編集]判例
[編集]- 損害賠償請求 (最高裁判決 昭和32年01月31日)民法第709条,民訴法199条1項(現・民事訴訟法第114条),民訴法709条(→民事執行法)
- 本権の訴における敗訴者は不法行為についても起訴の時から悪意の占有者とみなされるか
- 係争物件を自己の所有と信じ占有していた者が、本権の訴において敗訴したからとて、右敗訴者は、当然には、不法行為の関係についてまで、起訴の時から悪意の占有者とみなされるものではない。
- 不当利得返還請求(最高裁判決 昭和38年12月24日)民法第703条
- 銀行業者が不当利得した金銭を利用して得た運用利益と民法第189条第1項の適用の有無
- 銀行業者が不当利得した金銭を利用して得た運用利益については、民法第189条第1項の類推適用により同人に右利益の収取権が認められる余地はない。
- 銀行業者が不当利得した金銭によつて得た法定利率による利息相当額以内の運用利益につき返還義務があるとされた事例
- 第一項の運用利益が商事法定利率による利息相当額(臨時金利調整法所定の一箇年契約の定期預金の利率の制限内)であり損失者が商人であるときは、社会観念上、受益者の行為の介入がなくても、損失者が不当利得された財産から当然取得したであろうと考えられる収益の範囲内にあるものと認められるから、受益者は、善意のときであつても、これが返還義務を免れない。
- 不当利得された財産に受益者の行為が加わることによつて得られた収益についての返還義務の範囲
- 不当利得された財産に受益者の行為が加わることによつて得られた収益については、社会観念上、受益者の行為の介入がなくても、損失者が右財産から当然取得したであろうと考えられる範囲において損失があるものと解すべきであり、その範囲の収益が現存するかぎり、民法第703条により返還されるべきである。
- 銀行業者が不当利得した金銭を利用して得た運用利益と民法第189条第1項の適用の有無
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