民法第489条
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法学>民事法>コンメンタール民法>第3編 債権 (コンメンタール民法)
条文
[編集](元本、利息及び費用を支払うべき場合の充当)
- 第489条
- 債務者が一個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき場合(債務者が数個の債務を負担する場合にあっては、同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担するときに限る。)において、弁済をする者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、これを順次に費用、利息及び元本に充当しなければならない。
- 前条の規定は、前項の場合において、費用、利息又は元本のいずれかの全てを消滅させるのに足りない給付をしたときについて準用する。
改正経緯
[編集]2017年改正前は、以下の条項が定められていたが、本条項は前条に吸収され、代って、第491条から本条に移動となった。
(法定充当)
- 弁済をする者及び弁済を受領する者がいずれも前条の規定による弁済の充当の指定をしないときは、次の各号の定めるところに従い、その弁済を充当する。
- 一 債務の中に弁済期にあるものと弁済期にないものとがあるときは、弁済期にあるものに先に充当する。
- 二 すべての債務が弁済期にあるとき、又は弁済期にないときは、債務者のために弁済の利益が多いものに先に充当する。
- 三 債務者のために弁済の利益が相等しいときは、弁済期が先に到来したもの又は先に到来すべきものに先に充当する。
- 四 前二号に掲げる事項が相等しい債務の弁済は、各債務の額に応じて充当する。
解説
[編集]まず債務の費用の総額に充当(弁済額が総額に満たなければ488条に従って弁済者に指定させ、指定しなければ債権者、両者とも指定しなければ法定充当)し、次に利息の総額に充当(弁済額が総額に満たなければ、(省略))し、最後に元本に充当(弁済額が総額に満たなければ、(省略))する。
金銭消費貸借契約の場合、消費者金融業者が、契約締結費、弁済にかかる費用(印紙税など)のほか、「礼金」や「調査料」を「費用」として、元本と表向きの利息とともに請求していたが、「礼金」や「調査料」を利息制限法第3条によって表向きの金利に含めて計算することが定められた。つまり、
- 元本×表向きの金利+(「礼金」や「調査料」)=「みなし利息」。
- 契約締結費、弁済にかかる費用=真の費用。
この「みなし利息」が利息制限法にいう「利息」で、利息制限法の上限を超える部分については無効(利息制限法第1条)。弁済額は元本×利息制限法の上限の利率に充当されることになる。それを越える弁済は、たとえ債務者が「利息」充当を指定しても元本に充当される(判例)。(詳しくはw:グレーゾーン金利参照)
参照条文
[編集]判例
[編集]- 貸金請求 (最高裁判決 昭和39年11月18日)利息制限法第1条,利息制限法第2条,利息制限法第4条
- 債務者が任意に支払つた利息制限法所定の制限をこえる利息・損害金は当然に残存元本に充当されるか。
- 債務者が利息制限法所定の制限をこえる金銭消費貸借上の利息、損害金を任意に支払つたときは、右制限をこえる部分は、民法第491条(旧)により、残存元本に充当されるものと解すべきである。
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