民法第550条
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法学>民事法>コンメンタール民法>第3編 債権 (コンメンタール民法)
条文
[編集](書面によらない贈与の解除)
- 第550条
- 書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。
改正経緯
[編集]2017年改正により、書面によらない贈与は、「撤回」ではなく「解除」ができることとなった。もともと、書面によっていないこともあり、「承諾」の有無は曖昧であったため契約が成立しているのか否かが不分明であったところ、たとえ、契約が成立したと解されようとも、書面がなければ双方から解除できるものとした。
解説
[編集]- 書面によらない贈与契約は、当事者同士が慎重さを欠いている場合も多いため、原則として撤回可能であることを定めた規定である。無償契約一般の拘束力の問題について論じる際によくあげられる。
- 現在では、電磁上の記録など証拠力の強い契約記録方法は他にもあるが、他の法令における書面と電磁上の記録などを同一視する旨の規定がないことから、「書面」に限るべきであろう。
履行の終わった部分
[編集]- 動産
- 「引渡し」が必要十分。
- 不動産
- 広く解釈される傾向にある。
- 登記がなくても、「引渡し」がなされていれば足りる(戦前からの判例)。
- 「簡易の引き渡し」でもよい(最判昭和39年5月26日)。
- 「占有改定」でもよい(最判昭和31年01月27日 - #2)。
- 移転登記があれば「引渡し」も必要ない(最判昭和40年03月26日)。
- 登記がなくても、「引渡し」がなされていれば足りる(戦前からの判例)。
参照条文
[編集]- 第522条(契約の成立と方式)
判例
[編集]- 建物返還並に登記無効等請求(最高裁判決 昭和31年01月27日)
- 書面によらない不動産の贈与において履行の終了ありと認められる場合
- 書面によらない不動産の贈与において、所有権の移転があつただけでは履行を終つたものとすることは出来ず、その占有の移転があつたときに履行を終つたものと解すべきである。
- 「占有改定」は履行の終了ありと認められるか。
- 右建物は、出来上りと共にその所有権が受贈者に移転すると同時に、以後、贈与者は受贈者の為めに右建物を占有する旨の意思を暗黙に表示したものと解すべきであるから、これによつて、右建物の占有もまた、受贈者に移転したものというべきである。
- 書面によらない不動産の贈与において履行の終了ありと認められる場合
- 不動産所有権移転登記手続等請求(最高裁判決 昭和36年12月12日)旧・民事訴訟法第199条(現・民事訴訟法第114条)
- 書面によらない贈与を認める判決が確定した後の民法第550条による右贈与の取消の可否。
- 書面によらない贈与による権利の移転を認める判決が確定した後は、既判力の効果として民法第550条による取消権を行使して右贈与による権利の存否を争うことは許されない。
- 家屋明渡請求(最高裁判決 昭和39年5月26日)
- 家屋の贈与につき履行が終つたものとされた事例。
- 病気のため入院中の内縁の夫が、同棲に使用していたその所有家屋を妻に贈与するに際して、自己の実印を該家屋を買受けたときの契約書とともに妻に交付する等判示事実関係のもとにおいては、簡易の引渡による該家屋の占有移転があつたものとみるべきであるから、これにより、右贈与の履行が終つたものと解すべきである。
- 所有権移転登記抹消請求(最高裁判決 昭和40年03月26日)
- 不動産の贈与契約に基づく所有権移転登記と贈与の履行の終了。
- 不動産の贈与契約にもとづいて該不動産の所有権移転登記がなされたときは、その引渡の有無をとわず、民法第550条にいう履行が終つたものと解すべきである。
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