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会社法第130条

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

法学民事法商法コンメンタール会社法第2編第2章 株式 (コンメンタール会社法)

条文

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株式の譲渡の対抗要件

第130条
  1. 株式の譲渡は、その株式を取得した者の氏名又は名称及び住所を株主名簿に記載し、又は記録しなければ、株式会社その他の第三者に対抗することができない。
  2. 株券発行会社における前項の規定の適用については、同項中「株式会社その他の第三者」とあるのは、「株式会社」とする。

解説

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  • 株式の譲渡は、会社に対しては株主名簿の記載のみをもって対抗できる。
  • 株券が発行されていない場合は、譲渡の当事者以外の第三者に対しても、株主名簿の記載のみが対抗要件である。
  • 上場会社の株式については、株式等振替制度によっている。
    • 株式譲渡に関しては、振替機関(証券保管振替機構)及び口座管理機関(一般には証券会社)上に開設された口座において電子的に行われ、取引当事者においては、口座情報が対抗要件となる。都度、会社の株主名簿が更新されるものではない。
    • 株主総会への参加、配当金の支払いといった全株主一律になされる手続きについては、振替機関から会社になされる総株主通知(社債等振替法第151条)により株主名簿の書き換えがなされる。
    • 個別の株主権(少数株主権等)行使については、振替機関に請求し発行される個別株主通知をもって、会社に請求する(社債等振替法第154条)。

関係条文

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判例

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  1. 株主総会決議取消請求(最高裁判決昭和30年10月20日)
    株式の譲渡につき名義書換が未了の場合会社はその譲渡を認めることができるか
    記名株式の譲渡があつたにかかわらず株主名簿の名義書換が会社の都合でおくれていても、会社が右譲渡を認め譲受人を株主として取り扱うことは妨げない。
  2. 株券引渡請求(最高裁判決昭和35年9月15日)
    1. 親株の譲渡行為がなされたにかかわらず名義書替手続の失念された場合と新株引受権。
      株主総会の決議に基き一定時の株主に新株引受権が付与されたとき、親株について右一定時より以前に譲渡行為がなされていても、その日時までに譲渡人の失念により名義書替手続がなされていなければ、譲渡人は新株引受権を取得するものではない。
    2. 株主総会の決議により一定時現在の株主に対し新株引受権を付与する場合の株主の意義。
      株主総会の決議が一定時現在の株主に対し新株引受権を与えている場合の株主とは、右一定時において株主名簿に登録されていて会社に対抗できる株主をいう。
  3. 株式引渡請求(最高裁判決昭和41年7月28日)
    過失により株式譲受人の名義書換請求に応じない株式会社は当該株式の譲渡を否認することができるか。
    株式譲受人から株式会社に対し株式名義の書換の請求をした場合において、会社の過失により書換が行なわれなかつたときは、会社は、株式名義の書換のないことを理由として、株式の譲渡を否認することができない。
  4. 株主総会決議取消請求(最高裁判決昭和42年9月28日)
    名義書換を不当に拒絶した場合の効果
    譲渡人の捺印のみで記名を欠く裏書により記名株式の譲渡を受けた者が、記名を補充せず、会社に対して株主名簿の名義書換請求をしても、会社はこれに応ずる義務はないが、会社は、被上告人らの名義書換の請求に応じてその株券を預りながら、訴外Dと被上告人並びに訴外Eらとの紛争について、Dの立場を有利にするため名義書換をせず、株券の返還もせず、被上告人らが記名の補充することを妨げているというのであり、そののような事実関係のもとにおいては、会社が右記名の欠缺を主張することは、自ら違法に阻止妨害している記名補充権の行使を求めることにより、被上告人またはEらに不能を強い、誠実に書換をなすべき自己の義務に反するから、右記名の欠缺を主張して株式の名義書換の請求を拒否できない。
  5. 株式名義書換(最高裁判決昭和60年3月7日) 商法(昭和五六年法律第七四号による改正前のもの)350条第1項
    商法350条1項の株券提出期間の経過前に株式を譲り受けた者が右期間経過後にする名義書換請求
    定款を変更して株式譲渡制限の定めを設けるとの決議があつた場合において、商法350条1項の株券提出期間の経過前に株式を譲り受けた者は、右期間の経過後であつても、会社に対し、旧株券を呈示し、右期間経過前に株式を譲り受けたことを証明して、名義書換を請求することができる。
  6. 株主総会決議不存在確認等請求、同附帯控訴事件(名古屋高裁判決平成3年4月24日)
    名義書換えを要求したのに会社が実質的に正当な理由なく拒絶したと同視し得る場合
    被控訴人らは、本件訴訟において、控訴人(会社)に対し本件株式の株主であることの確認を求めているところ、控訴人は、被控訴人らが本件係争株式を取得したことはないと主張してこれを争っているのであって、被控訴人らが控訴人に対して名義書換えを請求したとしても、控訴人がこれを拒絶することは明らかである。また、控訴人が過去にその法人税申告書に前記のような記載をしていたこと、控訴人の代表者であるCと被控訴人Aとが、Dの株式を各200株宛取得する旨の遺産分割協議書を作成していることに照らせば、控訴人は、本件係争株式が被控訴人らに帰属している事実を知っており、かつ、そのことを容易に証明し得る状態にあるのであって、仮に、控訴人が被控訴人らの名義書換え請求を拒否したとすれば、正当な理由なく拒否したものと評価すべきことになるということができる。右のような事情がある場合には、控訴人が被控訴人らの名義書換え請求を正当な理由なく拒絶した場合と実質的に同視することができるので、被控訴人らは、本件係争株式について名義書換えを経ていないけれども、右株式の株主たる地位を控訴人に対抗することができるものというべきである。
    • 会社に対して株主たる地位にあることを主張する者は、その取得原因として譲渡や相続を主張する場合はもとより、他人名義で取得したいわゆる名義株の実質上の株主であることを主張する場合においても、株主名簿に自己の氏名及び住所が記載されていることが必要であると解される。そして、右規定が対抗要件を定めたものであることからすると、会社が自ら進んで右の実質関係を認め、株主名簿に記載されていない者を株主として取り扱うことは差支えないが、たとえ会社が株主名簿上の株主が無権利者であって実質上の株主は他にいることを知っている場合でも、名義書換え前の株主は、特段の事情のない限り、右のことを理由に会社に対して株主たる権利を主張することはできないというべきである。しかし、実質上の株主が会社に対して名義書換えを要求したのに会社がこれを正当な理由なく拒絶した場合又は実質的にこれと同視し得る場合には、右特段の事情があるものとして、会社は、名義書換えがされていないことを理由に株主であることを否認することはできないと解するのが相当である。

前条:
会社法第129条
(自己株式の処分に関する特則)
会社法
第2編 株式会社

第2章 株式

第3節 株式の譲渡等
次条:
会社法第131条
(権利の推定等)
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