内乱記 第1巻

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目次[編集]

内容目次」を参照せよ。


内乱前夜[編集]

1節[編集]

元老院でレントゥルスとスキピオが、カエサルへの強硬策を主張

  • ①Litteris [a Fabio] C. Caesaris consulibus redditis
    • ガイウス・カエサルの書状が(2名の)執政官コンスルたちに渡されて、
  • aegre ab his impetratum est summa tribunorum plebis contentione,
    • 護民官たちの最大限の努力によって、辛うじて彼ら(執政官)により願いを叶えられた。
  • ut in senatu recitarentur;
    • その結果、(カエサルの書状が)元老院セナトゥスで朗読された。
  • ut vero ex litteris ad senatum referretur, impetrari non potuit.
    • しかしながら、手紙の中身について、元老院で議題にかけられるように(との願いを)叶えてもらうことはできなかった。
  • ②Referunt consules de re publica [in civitate].
    • 執政官たちは、国事について議題にかけた。
  • L. Lentulus consul senatui rei publicae se non defuturum pollicetur,
  • si audacter ac fortiter sententias dicere velint;
    • (ただし元老院が)もし大胆かつ強く意向を示すことを望むならば(の話だが)。
  • ③sin Caesarem respiciant atque eius gratiam sequantur,
    • しかしもし(元老院が)カエサルに配慮しかつ彼の人望に追従するのならば、
  • ut superioribus fecerint temporibus, se sibi consilium capturum
    • ──(元老院は)以前はそのようにしていたのだが、──
  • neque senatus auctoritati obtemperaturum;
    • (その場合は)自分(レントゥルス)は自らのために決心するであろうし、元老院の決議には従わないであろう。
  • habere se quoque ad Caesaris gratiam atque amicitiam receptum.
    • 自分もまた、カエサルの厚意と友情には受け入れられるのではあるが。
  • ④In eandem sententiam loquitur Scipio:
    • スキピオも(レントゥルスと)同様の意見を述べた。
  • Pompeio esse in animo rei publicae non deesse, si senatus sequatur;
    • もし元老院が従うならば、ポンペイウスは国家に対して尽くすつもりである。
  • si cunctetur atque agat lenius,
    • もし(元老院が)ためらい、ぐずぐずとふるまうならば、
  • nequiquam eius auxilium, si postea velit, senatum imploraturum.
    • もし元老院が後で彼(ポンペイウス)の支援を望んで嘆願しても無駄であろう。

2節[編集]

ローマ市の聖域(ポメリウム=赤い帯で囲まれた領域)を示す地図。元老院はこの聖域の中で催されており、軍隊司令権(インペリウム)を持つポンペイウスが聖域に立ち入ることは許されなかった。

元老院がカエサル軍の解散について討議。護民官が拒否権を発動

  • ①Haec Scipionis oratio,
  • quod senatus in urbe habebatur Pompeiusque aderat,
    • 元老院が都(ローマ)で催されていてポンペイウスが近くに来ていたので、
      (訳注:ポンペイウスは当時は両ヒスパニアの属州総督であったので、都の聖域に入れず、元老院会議に参加することが許されなかった。)
  • ex ipsius ore Pompei mitti videbatur.
    • ポンペイウス当人の口から発せられたものだと思われる。
  • ②Dixerat aliquis leniorem sententiam,
    • ある者たちは(以下のような)より穏健な意見を述べていた。
  • ut primo M. Marcellus, ingressus in eam orationem,
  • non oportere ante de ea re ad senatum referri, quam dilectus tota Italia habiti et exercitus conscripti essent,
    • 全イタリアで徴兵がなされて軍隊が(名簿に)登録されるよりも前に、その事について元老院で議題にかけられるべきではない。
  • quo praesidio tuto et libere senatus, quae vellet, decernere auderet;
    • その(軍隊の)護衛によって、安全かつ自由に、元老院は望むことをあえて決議しうるのだ、と。
  • ③ut M. Calidius, qui censebat,
    • マルクス・カリディウスは(以下のように)述べた。
  • ut Pompeius in suas provincias proficisceretur, ne qua esset armorum causa;
    • ポンペイウスは、いかなる武力の口実も生じないように、自らの(担当する)属州に出発するべきだ。
  • timere Caesarem, ereptis ab eo duabus legionibus, ne ad eius periculum reservare et retinere eas ad urbem Pompeius videretur;
    • 2個軍団を彼(ポンペイウス)により奪われたカエサルは、ポンペイウスが都の辺りにそれらを留めて彼(カエサル)を危険に置こうとしているのではないかと恐れていると思われる、と。
  • ut M. Rufus, qui sententiam Calidi paucis fere mutatis rebus sequebatur.
    • マルクス・(カエリウス・)ルフスは、カリディウスの意見をほんのわずか題材を変えただけで追随した。
  • ④Hi omnes convicio L. Lentuli consulis correpti exagitabantur.
  • ⑤Lentulus sententiam Calidi pronuntiaturum se omnino negavit,
    • レントゥルスは、カリディウスの意見を動議に付すことをまったく拒絶した。
  • Marcellus perterritus conviciis a sua sententia discessit.
    • (マルクス・)マルケッルスは、罵倒を恐れて、自分の意見を撤回した。
  • ⑥Sic vocibus consulis, terrore praesentis exercitus,
    • 執政官の怒声により、(ローマ近郊に)居合わせる軍隊を恐れて、
  • minis amicorum Pompei plerique compulsi,
    • ポンペイウスの友人たちの脅しにより、多くの人が駆り立てられて、
  • inviti et coacti Scipionis sententiam sequuntur:
    • 不本意ながらも強いられて、スキピオの意見に従った。
  • uti ante certam diem Caesar exercitum dimittat;
    • 期日の前に、カエサルは軍隊を解散するように、と。
      (訳注:期日がいつなのかは取り決められていなかったようである。しかしながら、カエサルがその要求通り翌年の執政官選挙に立候補するつもりならば、選挙が行われる7月までには軍隊を解散しなければならない、ということになる。)
  • si non faciat, eum adversus rem publicam facturum videri.
    • もしそうしなければ、彼(カエサル)は国家に反逆するつもりであるとみなされる、と。
護民官マルクス・アントニウス。カエサルの部下として頭角を現わし、後に三頭政治家となる。

護民官アントニウスらが拒否権を発動

  • ⑦Intercedit M. Antonius, Q. Cassius, tribuni plebis.
  • Refertur confestim de intercessione tribunorum.
    • 護民官たちの拒否権発動について速やかに討議される。
  • ⑧Dicuntur sententiae graves;
    • 厳しい意見が述べられる。
  • ut quisque acerbissime crudelissimeque dixit, ita quam maxime ab inimicis Caesaris conlaudatur.
    • 誰であれ、厳しく耐え難いことを言えば言うほど、カエサルの敵対者たちから最大限に誉めそやされる。

3節[編集]

ポンペイウスが元老院議員らを鼓舞し、兵を集める

  • ①Misso ad vesperum senatu omnes,
    • 元老院が夕方に散会になり、
  • qui sunt eius ordinis, a Pompeio evocantur.
    • その階級にある者は皆、ポンペイウスによって呼び出された。
  • Laudat <promptos> Pompeius atque in posterum confirmat,
    • ポンペイウスは、<意のままになる者たちを>ほめたたえ、後日のために励まし、
      (訳注:< >部分は、写本にはないが、校訂者によって挿入提案されている。)
  • segniores castigat atque incitat.
    • 気が進まぬ者たちを叱責して駆り立てる。
  • ②Multi undique ex veteribus Pompei exercitibus
    • 四方八方から、ポンペイウスのかつての兵隊の多く者たちが、
  • spe praemiorum atque ordinum evocantur,
    • 恩賞や地位の見込みにより召集される。
  • multi ex duabus legionibus, quae sunt traditae a Caesare, arcessuntur.
    • カエサルにより(ポンペイウスに)引き渡されていた2個軍団のうちから、多くの者たちが呼び寄せられる。
  • ③Completur urbs et ipsum comitium tribunis, centurionibus, evocatis.
    • 都(ローマ)や民会そのものが、軍団次官トリブヌス百人隊長ケントゥリオ(再召集された)古参兵エウォカティらでいっぱいになる。
  • ④Omnes amici consulum, necessarii Pompei
    • 執政官コンスルの友人たち、ポンペイウスの縁者たち、
  • atque eorum, qui veteres inimicitias cum Caesare gerebant,
    • カエサルと長年の敵対関係をなした者たちの皆々が
  • in senatum coguntur;
    • 元老院に集められる。
  • ⑤quorum vocibus et concursu terrentur infirmiores, dubii confirmantur,
    • その者らの喚声や騒ぎによって、臆病な者たちはおじけさせられ、迷える者たちは勇気付けられ、
  • plerisque vero libere decernendi potestas eripitur.
    • だが大半の者たちは、自由に判断する能力を奪われる。
  • ⑥Pollicetur L. Piso censor sese iturum ad Caesarem,
    • 監察官ケンソル ルキウス・ピソは、自分はカエサルのところへ行くであろう、と約束した。
      (訳注:ピソは、娘カルプルニアがカエサルの3人目の妻となっており、カエサルの岳父であった。)
  • item L. Roscius praetor, qui de his rebus eum doceant;
    • 同様に法務官プラエトル ルキウス・ロスキウスも、これらの事情について彼(カエサル)に知らせるという。
      (訳注:ロスキウスは、『ガリア戦記』では、カエサルの副官を務めていた。)
  • sex dies ad eam rem conficiendam spatii postulant.
    • (2人は)その事を成し遂げるために6日間の時間を要求する。
  • ⑦Dicuntur etiam ab nonnullis sententiae,
    • さらに、少なからぬ者たちによって、意見が述べられる。
  • ut legati ad Caesarem mittantur, qui voluntatem senatus ei proponant.
    • 元老院がその意向を説明するべく、カエサルのところへ使節たちが遣わされるように、と。

4節[編集]

カトー、レントゥルス、スキピオ、ポンペイウス、それぞれの事情

  • ①Omnibus his resistitur,
    • これらすべて(の提案)が反対され、
  • omnibusque oratio consulis, Scipionis, Catonis opponitur.
    • すべてに対して、執政官(レントゥルス)、スキピオ、カトーの演説により反論される。

カトー

  • Catonem veteres inimicitiae Caesaris incitant et dolor repulsae.
    • カトーを、カエサルとの長年の敵対関係や落選した恨みが駆り立てていた。

レントゥルス

  • ②Lentulus aeris alieni magnitudine
  • et spe exercitus ac provinciarum
    • および、軍隊や属州への期待によって、
  • et regum appellandorum largitionibus movetur,
    • および、王と呼ばれることになる者たちからの賄賂によって、突き動かされている。
  • seque alterum fore Sullam inter suos gloriatur, ad quem summa imperii redeat.
    • かつ、最高司令権(インペリウム)をものにすべく、自分は第二のスッラになるのだと、身内の間で自慢している。

スキピオ

  • Scipionem eadem spes provinciae atque exercituum impellit,
    • スキピオを、属州や軍隊への(レントゥルスと)同様の期待が駆り立てる。
  • quos se pro necessitudine partiturum cum Pompeio arbitratur,
    • それらを、ポンペイウスとの親戚関係のために、(2人で)分け合おうと思っていた。
  • simul iudiciorum metus atque ostentatio sui
    • そのうえ、裁判沙汰への懸念、および、自らを誇示することや、
  • et adulatio potentium, qui in re publica iudiciisque tum plurimum pollebant.
    • 国務や裁判において当時 大いに力をふるっていた有力者のへつらい(が彼を駆り立てていた)。

ポンペイウス

  • ④Ipse Pompeius ab inimicis Caesaris incitatus,
    • ポンペイウス自身は、カエサルの敵対者たちから駆り立てられて、
  • et quod neminem dignitate secum exaequari volebat,
    • 威信において、誰も自分に匹敵されることを望まなかったので、
  • totum se ab eius amicitia averterat
    • 自分すべてを彼(カエサル)との友情から遠ざけて、
  • et cum communibus inimicis in gratiam redierat,
    • (カエサルとの)共通の敵対者たちと和解していた。
      (訳注:in gratiam redire cum ~「~と和解する」)
  • quorum ipse maximam partem illo adfinitatis tempore iniunxerat Caesari.
    • その者ら自身の大半は、(ポンペイウスが)彼(カエサル)と姻戚関係だったときに、カエサルに(敵として)負わせていたものだった。
      (訳注:ポンペイウスは、カエサルの娘ユリアを妻にしていたが、彼女の病死はカエサルとの関係悪化の一因になった。)
  • ⑤Simul infamia duarum legionum permotus,
    • 同時に(カエサルから引き渡されていた)2個軍団の評判の悪さに揺すぶられ、
  • quas ab itinere Asiae Syriaeque ad suam potentiam dominatumque converterat,
    • ──それらは、アジアシリアへの行軍中だったのを、自らの権力と支配のために転向させていたのであるが、──
  • rem ad arma deduci studebat.
    • 事態が武力によって導かれることを切望していたのだ。

5節[編集]

カエサル軍の解散を命ずる元老院最終決議(1月7日)

  • ①His de causis aguntur omnia raptim atque turbate.
    • こうした理由によって、すべてが急いで混乱したままに行われる。
  • Nec docendi Caesaris propinquis eius spatium datur,
    • カエサルの縁者たちには、彼に(事態を)知らせる猶予も与えられず、
  • nec tribunis plebis sui periculi deprecandi
    • 護民官たちには、自らに危険がないように祈ること(の機会も与えられず)、
  • neque etiam extremi iuris intercessione retinendi, quod L. Sulla reliquerat, facultas tribuitur;
  • ②sed de sua salute septimo die cogitare coguntur,
    • けれども(護民官たちは)7日目には、身の安全について考えることを強いられる。
  • quod illi turbulentissimi superioribus temporibus tribuni plebis octavo denique mense suarum actionum respicere ac timere consuerant.
    • それ(身の安全)は、往時には、あの甚だしく治安を乱す者であった護民官たちが、自らの職務の8か月目にしてようやく気遣い心配するのが常であったのに。
  • ③Decurritur ad illud extremum atque ultimum senatus consultum,
  • quo nisi paene in ipso urbis incendio atque in desperatione omnium salutis latorum audacia numquam ante descessum est:
    • まさに都の大火災にあって、すべての人々の安全がほぼ望みがないとき以外は、法案提出者の大胆さにより(元老院が)それにより採決したことは以前は決してなかったのだ。
  • dent operam consules, praetores, tribuni plebis, quique <pro> consulibus sint ad urbem, ne quid res publica detrimenti capiat.
    • 執政官コンスル法務官プラエトル護民官、都の辺りにいる執政官格のおのおのは、国家がいかなる損害も蒙らないように尽力すべきだ、と。
  • ④Haec senatus consulto perscribuntur a.d. VII Id. Ian.
    • この元老院決議は、1月7日に(議事録に)記載された。
  • Itaque V primis diebus, quibus haberi senatus potuit, qua ex die consulatum iniit Lentulus, biduo excepto comitiali
    • こうして、レントゥルスが執政官職に就いた日から、民会の2日間を除けば、元老院が開催可能であった最初の5日間にして、
  • et de imperio Caesaris et de amplissimis viris, tribunis plebis, gravissime acerbissimeque decernitur.
    • カエサルの軍隊司令権について、かつ、重要な人物たち、護民官たちについて、重く厳しく決議されたのである。
  • ⑤Profugiunt statim ex urbe tribuni plebis seseque ad Caesarem conferunt.
    • すぐに、護民官たちは都(ローマ)から逃れて、カエサルのところへ赴いた。
      (訳注:se conferre「行く、赴く」)
  • Is eo tempore erat Ravennae exspectabatque suis lenissimis postulatis responsa,
    • そのとき、彼(カエサル)は、ラウェンナにいて、自らの穏当な申し立てに対する(元老院からの)返答を待っていた。
  • si qua hominum aequitate res ad otium deduci posset.
    • (元老院議員の)人としての公正さにより、事態が平穏に導かれるかも知れないと。

6節[編集]

ポンペイウスと元老院が臨戦態勢を敷く

  • ①Proximis diebus habetur extra urbem senatus.
    • その後の数日間、元老院は都(ローマ)の外で催された。
      (訳注:元老院会議が都の外、つまり聖域の外で開催されれば、ポンペイウスも出席することができる。)
  • Pompeius eadem illa, quae per Scipionem ostenderat agit;
    • ポンペイウスは、スキピオを通して示していたのと同じことを述べる。
  • senatus virtutem constantiamque collaudat;
    • (ポンペイウスは)元老院の勇敢さと揺るぎなさを称賛する。
  • copias suas exponit:
    • (ポンペイウスは)自らの軍勢を説明する。
  • legiones habere sese paratas X;
    • 自分は戦備が整った10個軍団を保持している、と。
  • ②praeterea cognitum compertumque sibi alieno esse animo in Caesarem milites
    • そのうえ(カエサル側の)兵士たちがカエサルに異心を抱いていることが、自分に知られ、確かめられた。
  • neque iis posse persuaderi, uti eum defendant aut sequantur.
    • 彼ら(カエサル側兵士)に、彼(カエサル)を護衛するように、従うようにと説得することができないのだ、と。
  • ③Statim de reliquis rebus ad senatum refertur:
    • すぐに、ほかの事案について、元老院で討議される。
  • tota Italia dilectus habeatur;
    • 全イタリアで徴兵が行われるように。
  • Faustus Sulla propere in Mauretaniam mittatur;
    • ファウストゥス・スッラはただちにマウレタニアに派遣されるように。
  • pecunia uti ex aerario Pompeio detur.
    • ポンペイウスには、国庫の中から金銭を使うことが認められるように。
  • Refertur etiam de rege Iuba, ut socius sit atque amicus.
    • ヌミディアの)王であるユバ(1世)についてさえ、「同盟者にして友人」とするように議題にかけられる。
  • ④Marcellus hoc se passurum in praesentia negat.
    • マルケッルスは、自分はこれ(最後の案)を今のところは認めるつもりではないと述べた。
  • De Fausto impedit Philippus, tribunus plebis.
    • ファウストゥス(の件)については、護民官ピリップスが妨げた。
  • ⑤De reliquis rebus senatus consulta perscribuntur.
    • 残りの事案については、元老院決議が(議事録に)記載された。
  • Provinciae privatis decernuntur, duae consulares, reliquae praetoriae.
    • 諸属州(の総督)には(官職を退いていた)私人が取り決められ、二つは執政官格属州で、残りは法務官格属州となった。
  • Scipioni obvenit Syria, L. Domitio Gallia;
  • Philippus et Cotta privato consilio praetereuntur, neque eorum sortes deiciuntur.
    • ピリップスとコッタ(の分)は、私的な取引によって無視されることになり、彼らのくじが投じられることはなかった。
  • ⑥In reliquas provincias praetores mittuntur.
    • 残りの属州には、法務官(経験者)たちが派遣される。
  • Neque exspectant, quod superioribus annis acciderat, ut de eorum imperio ad populum feratur,
    • 前年にはそうであったように、彼らの軍隊司令権インペリウムについて民衆の前で公示されるということを待たずに、
  • paludatique votis nuncupatis exeunt.
    • 軍用外套を着て、宣誓をして出陣する。
  • ⑦Consules, quod ante id tempus accidit nunquam, <ne auspicato quidem> ex urbe proficiscuntur,
    • 執政官たちは、前代未聞のことながら<鳥卜によって吉とされることなく>、都から出発した。
      (訳注:< > は、写本になく、校訂者によって挿入提案されている。)
  • lictoresque habent in urbe et Capitolio privati contra omnia vetustatis exempla.
    • あらゆる古い伝承の先例に反して、私人が都やカピトリウムにおいて先導吏リクトルを持つことになった。
  • ⑧Tota Italia dilectus habentur, arma imperantur,
    • 全イタリアで徴兵が行われ、武器が求められた。
  • pecuniae a municipiis exiguntur, e fanis tolluntur,
    • 自治市ムニキピウムから金銭が取り立てられ、神殿からも運び去られ、
  • omnia divina humanaque iura permiscentur.
    • あらゆる 神に属するものと人間に属するものの法が、ごちゃ混ぜにされたのだ。

カエサルのイタリア侵攻[編集]

7節[編集]

カエサルが兵士たちの前で訓示

  • ①Quibus rebus cognitis, Caesar apud milites contionatur.
    • それらの事情を知ると、カエサルは兵士たちのもとで熱弁をふるった。
  • Omnium temporum iniurias inimicorum in se commemorat;
    • あらゆる時期にわたる、敵対者たちの(カエサル)自らに対する不当行為に言及した。
  • a quibus deductum ac depravatum Pompeium queritur invidia atque obtrectatione laudis suae,
    • その連中により、(カエサル)自らの名声に対する妬みや中傷によって、ポンペイウスが(カエサルから)引き離され、誤らせられたのだと、嘆いた。
  • cuius ipse honori et dignitati semper faverit adiutorque fuerit.
    • (カエサル)自身は、彼(ポンペイウス)の栄誉と威信をいつでも支持し、助力者であったのに、と。
  • ②Novum in re publica introductum exemplum queritur,
    • 国家に導入されてしまった新たな先例を嘆いた。
  • ut tribunicia intercessio armis notaretur atque opprimeretur;
    • すなわち、護民官の拒否権発動が武力によって烙印を押され、打ちのめされたのだ。
  • quae superioribus annis armis esset restituta.
    • (拒否権発動は)先年には、武力で復活させられたものであるのに。
  • Sullam nudata omnibus rebus tribunicia potestate tamen intercessionem liberam reliquisse.
    • スッラは、護民官の権限からあらゆることを剥奪したが、しかしながら拒否権発動を自由なままで残したのだ。
  • ④Pompeium, qui amissa restituisse videatur,
    • ポンペイウスは、(護民官に)失われていたものを復活したと思われるのに、
  • dona etiam, quae ante habuerint, ademisse.
    • (護民官が)以前に持っていた贈り物さえも奪ってしまったのだ。
  • ⑤Quotienscumque sit decretum, darent operam magistratus, ne quid res publica detrimenti caperet
    • 政務官マギストラトゥスは、国家がいかなる損害も蒙らないように尽力するように、と決議されたときはいつでも、
  • (qua voce et quo senatus consulto populus Romanus ad arma sit vocatus),
    • ──その言葉と元老院決議によって、ローマの人民は武器を取るように導かれたのだが、──
  • factum in perniciosis legibus,
    • 破滅的な法律(が提案されたとき)においてなされたのであり、
  • in vi tribunicia,
    • 護民官が暴力をふるったときにおいてであり、
  • in secessione populi templis locisque editioribus occupatis:
    • 民衆の離反において、神殿や高くそびえる地点が占拠されたときであった。
  • ⑥atque haec superioris aetatis exempla expiata Saturnini atque Gracchorum casibus docet;
  • quarum rerum illo tempore nihil factum, ne cogitatum quidem.
    • そのような事は、今回は行われていないし、計画されたことすらないのだ。
  • nulla lex promulgata, non cum populo agi coeptum, nulla secessio facta.
    • いかなる(破滅的な)法律も公布されておらず、民衆と企てもされず、いかなる離反もなされていない。
  • ⑦Hortatur, cuius imperatoris ductu VIIII annis rem publicam felicissime gesserint
    • (兵士らは)その最高司令官の指揮のもとで9年間にわたって国益に適うように戦った、と激励した。
  • plurimaque proelia secunda fecerint,
    • 非常に多くの戦闘を順調に戦い、
  • omnem Galliam Germaniamque pacaverint,
  • ut eius existimationem dignitatemque ab inimicis defendant.
    • (今後も)彼(カエサル)の名声と威信を敵対者たちから護るように、と。

⑧Conclamant legionis XIII, quae aderat, milites

    • 居合わせた第13軍団の兵士たちは叫んだ。
  • ─ hanc enim initio tumultus evocaverat, reliquae nondum convenerant ─
    • ── というのも、(この軍団を)この騒乱のはじめにおいて呼び寄せていたのだが、ほかの軍団はまだ集結していなかったのだが、 ──
  • sese paratos esse imperatoris sui tribunorumque plebis iniurias defendere.
    • 自分たちは、自分たちの最高司令官(カエサル)と護民官たちへの不当行為を防ぐ覚悟ができている、と。

8節[編集]

アリミヌムへ出発。ポンペイウスからカエサルへの弁明

  • ①Cognita militum voluntate, Ariminum cum ea legione proficiscitur
    • (カエサルは)兵士たちの意志を確認すると、その軍団(第13軍団)とともにアリミヌムへ出発する。
      (訳注:アリミヌム Ariminum は、現在のリミニ市。カエサルが演説をしたという演壇が残っている。)
  • ibique tribunos plebis, qui ad eum confugerant, convenit;
    • そこに、彼(カエサル)のところへ逃れて来ていた護民官たちが、訪れる。
  • reliquas legiones ex hibernis evocat et subsequi iubet.
    • (カエサルは)残りの諸軍団を冬営地から呼び出して、後に続くことを命じる。
  • ②Eo L. Caesar adulescens venit, cuius pater Caesaris erat legatus.
    • そこへ、青年ルキウス・カエサルが来る。彼の父は、カエサルの副官であった。
      (訳注:彼はルキウス・ユリウス・カエサル5世 Lucius_Julius_Caesar_V
      彼の父はルキウス・ユリウス・カエサル4世 Lucius Julius Caesar_Ⅳで、本書の著者ガイウス・ユリウス・カエサル4世の従兄弟・副官であった。)
  • Is, reliquo sermone confecto, cuius rei causa venerat,
    • 彼は、その用事のためにやって来たところのほかの話題を片付けてから、
  • habere se a Pompeio ad eum privati officii mandata demonstrat:
    • 自分は、ポンペイウスから彼(カエサル)への、私的な務めの言伝ことづてを持っている、と説明する。
  • ③velle Pompeium se Caesari purgatum,
    • ポンペイウスは、カエサルに対して弁明する(疑いを晴らす)ことを望んでいる、と。
  • ne ea, quae rei publicae causa egerit, in suam contumeliam vertat.
    • 国家のために(ポンペイウスが)したことを、自分(カエサル)への侮辱だと受け止めないでくれ。
  • Semper se rei publicae commoda privatis necessitudinibus habuisse potiora.
    • いつでも自分は、国家の利益を、私的な親しい関係より重要だとみなしてきた。
  • Caesarem quoque pro sua dignitate
    • カエサルもまた、自らの威信のために、
  • debere et studium et iracundiam suam rei publicae dimittere
    • 自らの欲求や怒りを、国家のために放棄しなければならない。
  • neque adeo graviter irasci inimicis, ut, cum illis nocere se speret, rei publicae noceat.
    • 敵対者たちに激しく怒るあまり、連中を害しようと希望する一方で、国家を害しないでくれ、と。
      (訳注:adeo ~ ut …「~ほど、…」)
  • ④Pauca eiusdem generis addit cum excusatione Pompei coniuncta.
    • (ルキウスは)ポンペイウスの弁明と関連付けられたものとして同じ類のことをわずかに付け加えた。
  • Eadem fere atque eisdem verbis praetor Roscius agit cum Caesare
    • (ルキウスと)ほぼ同じことを、同じ言葉で、法務官 ロスキウスがカエサルに談判して、
  • sibique Pompeium commemorasse demonstrat.
    • ポンペイウスが自分(ロスキウス)に述べたことである、と説明した。
      (訳注:ロスキウスについては、3節⑥項を参照。)

9節[編集]

カエサルからポンペイウスへの弁明と要求

  • ①Quae res etsi nihil ad levandas iniurias pertinere videbantur,
    • それらの事柄が(敵方の)不当行為を軽減するために何ら役立たないと思われたとはいえ、
  • tamen idoneos nactus homines, per quos ea, quae vellet, ad eum perferrentur,
    • それでも、適当な人たちを見つけて、彼らを通して(カエサルが)望むことを彼(ポンペイウス)に伝えようとして、
  • petit ab utroque, quoniam Pompei mandata ad se detulerint,
    • ポンペイウスの言伝ことづてを自分(カエサル)のところへ知らせてくれたので、(ロスキウスとルキウス・カエサルの)両人に頼んだ。
  • ne graventur sua quoque ad eum postulata deferre,
    • 自分(カエサル)の要求もまた彼(ポンペイウス)のところへ知らせることを煩わしく思わないでくれ。
  • si parvo labore magnas controversias tollere atque omnem Italiam metu liberare possint.
    • もし、わずかな労苦で、大きな論争を片付けることができ、かつ全イタリアを恐れから解放することができるのだとすれば。
  • ②Sibi semper primam fuisse dignitatem vitaque potiorem.
    • 自分(カエサル)にとっては、威信は常に第一のものであったし、生命よりも重要なものであった。
  • Doluisse se,
    • (以下のことが)自分を苦悩させた。
  • quod populi Romani beneficium sibi per contumeliam ab inimicis extorqueretur,
    • ローマの民衆の自分(カエサル)に対する恩恵が、侮辱を通して、敵対者たちによってもぎ取られることが。
  • ereptoque semenstri imperio in urbem retraheretur,
    • かつ、6か月間の軍隊司令権インペリウムを奪い取られて都(ローマ)に連れ戻されることが。
  • cuius absentis rationem haberi proximis comitiis populus iussisset.
    • 次の民会では(カエサルの)不在が考慮に入れられること、と民衆が命じていたのにだ。
  • ③Tamen hanc iacturam honoris sui rei publicae causa aequo animo tulisse;
    • それでも、この自分の名誉の損失に対して、国家のために、冷静に耐えたのだ。
  • cum litteras ad senatum miserit, ut omnes ab exercitibus discederent,
    • (将軍たち)皆が軍隊から離れるべきだという書状を元老院のところへ送ったとき、
  • ne id quidem impetravisse.
    • そのことさえも、かなえてもらえなかったのだ。
  • ④Tota Italia dilectus haberi,
    • 全イタリアで徴兵が行われて、
  • retineri legiones II, quae ab se simulatione Parthici belli sint abductae,
    • パルティア人との戦争を口実に、自分(カエサル)から引き離された2個軍団は引き止められて、
  • civitatem esse in armis.
    • 市民たちは武装している。
  • Quonam haec omnia nisi ad suam perniciem pertinere?
    • これらすべては、自分(カエサル)の破滅のためでなければ、一体どこを目指すのか?
    • (これらすべては、カエサルの破滅を目指したものに違いない。)
  • ⑤Sed tamen ad omnia se descendere paratum
    • しかしとにかく、自分(カエサル)はすべてに屈する覚悟ができているし、
  • atque omnia pati rei publicae causa.
    • 国家のために、すべてに耐える(覚悟ができている)。
  • Proficiscatur Pompeius in suas provincias,
  • ipsi exercitus dimittant,
    • 自分たち(カエサルとポンペイウス)は軍隊を解散させるべし、
  • discedant in Italia omnes ab armis,
    • イタリアにいる皆が武器を放棄すべし、
  • metus e civitate tollatur,
    • 市民たちから恐れが取り除かれるべし、
ローマの国号である Senatus Populusque Romanus(ローマの元老院と民衆)の略称 SPQR を刻んだ石。
  • libera comitia atque omnis res publica senatui populoque Romano permittatur.
    • 民会は自由なまま、すべての国務が「ローマの元老院と民衆」に託されるべし。
  • ⑥Haec quo facilius certisque condicionibus fiant et iure iurando sanciantur,
  • これらをより容易にし、確かな条件がつくられ、誓約によって承認されるように、
  • aut ipse propius accedat aut se patiatur accedere;
    • (カエサル)自身により近くに(ポンペイウスが)接近するか、自分(カエサル)が(ポンペイウスが)接近して来ることを受け入れるべきだ。
  • fore uti per colloquia omnes controversiae componantur.
    • すべての論争が会談を通じて解決されるようになるであろう。

10節[編集]

古代のカプアにあった円形闘技場の遺跡。

ポンペイウスと両執政官からカエサルへの条件通告

  • ①Acceptis mandatis,
    • 言伝ことづてを受け取って、
  • Roscius cum L. Caesare Capuam pervenit
    • ロスキウスは、ルキウス・カエサルとともに、カプアに到着して、
  • ibique consules Pompeiumque invenit;
    • そこで両執政官とポンペイウスに会った。
  • postulata Caesaris renuntiat.
    • カエサルの申し立てを伝えた。
  • ②Illi deliberata <re> respondent
    • 彼ら(ポンペイウスたち)は<事情を>相談して答えを出し、
  • scriptaque ad eum mandata per eos remittunt;
    • 彼ら(ロスキウスたち)を通して、書き留められた言伝ことづてを彼(カエサル)のところへ送り返した。
  • quorum haec erat summa:
    • その要旨は、以下の通りであった。

ポンペイウスと両執政官のカエサルに対する条件

  • ③Caesar in Galliam reverteretur, Arimino excederet, exercitus dimitteret;
    • カエサルはガリアに引き返し、アリミヌムから立ち退き、軍隊を解散させるべきだ。
  • quae si fecisset, Pompeium in Hispanias iturum.
    • もし(カエサルが)それらを実行したら、ポンペイウスは両ヒスパニアに行くであろう。
  • ④Interea, quoad fides esset data Caesarem facturum, quae polliceretur,
    • その間、カエサルが約束したことを実行するだろうという確証が与えられるまでは、
  • non intermissuros consules Pompeiumque delictus.
    • 両執政官とポンペイウスは徴兵を中断することはないであろう。

11節[編集]

カエサルの抗弁、軍の展開

  • ①Erat iniqua condicio postulare,
    • (ポンペイウスらが返答した以下の)要求は、不公平な条件であった。
  • ut Caesar Arimino excederet atque in provinciam reverteretur,
    • カエサルはアリミヌムから退去して、属州に引き返すべし。
  • ipsum et provincias et legiones alienas tenere;
    • (ポンペイウス)自身は、両属州も(カエサルから引き離した)他人の軍団も持ち続ける。
  • exercitum Caesaris velle dimitti, dilectus habere;
    • カエサルの軍隊が解散されることを望むが、(ポンペイウス自身は)徴兵を行う。
  • ②polliceri se in provinciam iturum neque, ante quem diem iturus sit, definire,
    • (ポンペイウスは)属州に行くだろうと約束しても、期日より前に行く、というその日を指定してはいない。
  • ut, si peracto consulatu Caesaris non profectus esset,
    • もしカエサルの執政官(代理)職が完了して(ポンペイウスが属州に)出発していなくても、
  • nulla tamen mendacii religione obstrictus videretur;
    • それでも神聖な義務に対して何ら嘘をついたとは思われない、ということか。
  • ③tempus vero colloquio non dare neque accessurum polliceri
    • 他方で、会談のための機会も与えないし、(ポンペイウスがカエサルのところへ)赴くと約束してもいないことは、
  • magnam pacis desperationem adferebat.
    • 和平に対する大きな絶望をもたらした。

カエサル軍の展開

  • ④Itaque ab Arimino M. Antonium cum cohortibus V Arretium mittit;
  • ipse Arimini cum duabus subsistit, ibique dilectum habere instituit;
    • (カエサル)自身はアリミヌムに2個歩兵大隊コホルスとともに留まり、そこで徴兵を行うことを決めた。
  • Pisaurum, Fanum, Anconam singulis cohortibus occupat.
    • ピサウルム、ファヌム、アンコナをそれぞれ(1個)歩兵大隊コホルスによって占領した。
      (ピサウルム(Pisaurum)は現在のペーザロ(Pesaro)、ファヌム(Fanum)は現在のファーノ(Fano)、アンコナ(Ancona)は現在もアンコーナ(Ancona)。)

12節[編集]

イグウィウム(Iguvium)すなわち現在のグッビオ(Gubbio)にある古代ローマ時代の劇場の遺跡。

ウンブリア地方のイグウィウムがカエサルに帰順

  • ①Interea certior factus
    • その間に(カエサルは以下のことを)知らされて、
  • Iguvium Thermum praetorem cohortibus V tenere, oppidum munire,
    • (ウンブリア地方の町)イグウィウムを法務官プラエトルテルムスが歩兵大隊コホルス5個でもって占拠して、城市オッピドゥムの防備を固めていること、
  • omniumque esse Iguvinorum optimam erga se voluntatem,
    • イグウィウムの住民たち皆が自分(カエサル)に対して最良の好意を抱いていること(を知らされてカエサルは)。
  • Curionem cum tribus cohortibus, quas Pisauri et Arimini habebat, mittit.
  • ②Cuius adventu cognito
    • 彼(クリオ)の到来を知って、
  • diffisus municipii voluntati Thermus cohortes ex urbe reducit et profugit.
  • 自治市ムニキピウム(の住民たち)の意思に疑念を抱いたテルムスは、諸歩兵大隊コホルスを町から撤兵させて、逃げ去った。
  • Milites in itinere ab eo discedunt ac domum revertuntur.
    • (テルムス配下の)兵士たちは、行軍中に彼を見捨てて、郷里に帰ってしまった。
  • ③Curio summa omnium voluntate Iguvium recipit.
    • クリオは、イグウィウムを(住民たち)皆の最大限の好意によって受け入れる。
  • Quibus rebus cognitis,
    • それらの事情を知り、
  • confisus municipiorum voluntatibus
    • 自治市ムニキピウム(の住民たち)の好意を確信して、
  • Caesar cohortes legionis XIII ex praesidiis deducit
    • カエサルは、第13軍団の諸歩兵大隊コホルスを陣地から立ち退かせて、
  • Auximumque proficiscitur;
    • (ピケヌム地方の町)アウクシムムに出発した。
  • quod oppidum Attius cohortibus introductis tenebat,
    • その城市オッピドゥムを、アッティウスが諸歩兵大隊コホルスを導き入れて占拠しており、
  • dilectumque toto Piceno circummissis senatoribus habebat.
    • ピケヌム(地方)全域で、元老院議員たちをあちこちへ送って徴兵を行っていたのだ。

13節[編集]

アウクシムム(Auximum)すなわち現在のオージモ(Osimo)の街並み。

ピケヌム地方のアウクシムムがカエサルに帰順

  • ①Adventu Caesaris cognito,
    • カエサルの到来を知ると、
  • decuriones Auximi ad Attium Varum frequentes conveniunt;
    • アウクシムムの参事会議員デクリオたちが大人数で、アッティウス・ウァルスのところへ訪れる。
      (訳注:首都ローマ以外の都市の元老院セナトゥスの議員を参事会議員デクリオと呼んでいる。)
  • docent sui iudicii rem non esse;
    • (彼らは)事態は、自分らの判断力では扱えない、と告げる。
  • neque se neque reliquos municipes pati posse
    • 自分らにも、ほかの自治市住民ムニケプスたちにも耐え難いことだ。
  • C. Caesarem imperatorem, bene de re publica meritum, tantis rebus gestis, oppido moenibusque prohiberi;
    • 国家によく貢献して、あれほどの業績をなした将軍ガイウス・カエサルを(自分らの)城市や城壁から遠ざけることは。
  • proinde habeat rationem posteritatis et periculi sui.
    • それゆえに、ご自分のこれからの危険を考慮されよ(とアッティウス・ウァルスに告げた)。
  • ②Quorum oratione permotus Varus
    • 彼らの弁舌に動揺させられた(アッティウス・)ウァルスは、
  • praesidium, quod introduxerat, ex oppido educit ac profugit.
    • 導き入れていた守備隊を城市から連れ出して、(アウクシムムから)逃げ去った。
  • ③Hunc ex primo ordine pauci Caesaris consecuti
    • 彼(ウァルス)を、カエサルの隊列の前衛のうちから若干の者たちが追跡して、
  • milites consistere coegerunt.
    • (ウァルス配下の)兵士たちに、停止すること強いた。
  • ④Commisso proelio,
    • (ウァルス配下の兵士たちが抵抗したため)戦闘が戦われて、
  • deseritur a suis Varus;
    • ウァルスは味方から見捨てられる。
  • nonnulla pars militum domum discedit;
    • 兵士たちの少なからぬ部分が、郷里に立ち去る。
  • reliqui ad Caesarem perveniunt,
    • 残りの者たちは、カエサルに帰順して、
  • atque una cum iis deprensus L. Pupius, primi pili centurio, adducitur,
    • 彼らと一緒に、捕らえられた首位百人隊長プリミ・ピリ・ケントゥリオのルキウス・プピウスが連れて来られる。
  • qui hunc eundem ordinem in exercitu Cn. Pompei antea duxerat.
  • ⑤At Caesar milites Attianos collaudat, Pupium dimittit,
    • だが、カエサルは、アッティウス隊の兵士たちを誉めそやし、プピウスを放免する。
  • Auximatibus agit gratias
    • アウクシムムの住民たちに礼を述べて、
  • seque eorum facti memorem fore pollicetur.
    • 自分(カエサル)は、彼らの行いを忘れずにいるであろう、と約束する。

14節[編集]

ローマ市のフォルム・ロマヌムにあるサトゥルヌス神殿。ローマ国家の国庫は、この地下に置かれていたという。

執政官レントゥルスら元老院派が、カエサルの侵攻に慌てふためく

  • ①Quibus rebus Romam nuntiatis
    • それらの事態が(首都)ローマに伝えられると、
  • tantus repente terror invasit,
    • 大変な恐怖が瞬く間に(人々を)襲ったので、
  • ut cum Lentulus consul ad aperiendum aerarium venisset
  • ad pecuniamque Pompeio ex senatus consulto proferendam,
    • (それは)ポンペイウスに、元老院決議に基づいて現金を提供するためであったのだが、
  • protinus aperto sanctiore aerario ex urbe profugeret.
    • 神聖金庫アエラリウム・サンクティウスを開けると、都から逃げ去ってしまったほどであった。
      (訳注:首都ローマのサトゥルヌス神殿には、通常の国庫のほかに、非常時にしか開けられない神聖金庫アエラリウム・サンクティウス Aerarium sanctius があった。)
  • Caesar enim adventare iam iamque et adesse eius equites falso nuntiabantur.
    • というのも、すでにカエサルが接近していること、すでに彼の騎兵たちが迫っているということが、誤って伝えられていたためであった。
  • ②Hunc Marcellus collega et plerique magistratus consecuti sunt.
    • 彼(レントゥルス)を、同僚マルケッルスおよび政務官マギストラトゥスの大半がついて行った。
  • Cn. Pompeius pridie eius diei ex urbe profectus
  • iter ad legiones habebat,
    • (2個)軍団のところへ行軍していた。
  • quas a Caesare acceptas in Apulia hibernorum causa disposuerat.
    • それら(2個軍団)は、カエサルから受け取って、アプリア(地方)に冬営のために配置していたものだった。
  • ④Dilectus circa urbem intermittuntur;
    • 徴兵は、都(ローマ)の近辺で中断される。
  • nihil citra Capuam tutum esse omnibus videtur.
    • カプアのこちら側は、誰にとってもまったく安全でないと思われる。
      (訳注:「こちら側」とは、ローマ市を基準にした尺度で、ローマ市とカプアの間を指す。)
  • Capuae primum sese confirmant et colligunt
    • (レントゥルスらは)カプアで初めて元気になって、気を取り直し、
  • dilectumque colonorum, qui lege Iulia Capuam deducti erant, habere instituunt;
    • ユリウス法によりカプアに入植していた植民者たちの徴兵を行うことに取りかかる。
  • gladiatoresque, quos ibi Caesar in ludo habebat,
    • カエサルが当地の学校にて持っていた剣闘士グラディアトルたちを
  • ad forum productos Lentulus <spe> libertatis confirmat
    • 公共広場フォルムに連れ出して、レントゥルスが解放の<希望を持たせて>元気づけて、
  • atque his equos attribuit et se sequi iussit;
    • 彼らに馬を与えて、自らに続くことを命じた。
  • ⑤quos postea monitus ab suis,
    • それから、味方から忠告されて、彼ら(剣闘士)を、
  • quod ea res omnium iudicio reprehendebatur,
    • ─彼の行動は、誰の見解によっても非難されるものであったので─
  • circum familias conventus Campaniae custodiae causa distribuit.
    • カンパニアローマ市民協議会コンウェントゥス家内奴隷ファミリアの周りに、監視のために配分する。
      (訳注:文脈がわかりにくいが、多くの訳本が familias を「奴隷」と表現している。)

15節[編集]

カエサル軍がピケヌム地方を制圧

  • Auximo Caesar progressus omnem agrum Picenum percurrit.
    • アウクシムムから、カエサルはさらに進んで、ピケヌム地方全域を駆け抜けた。
  • Cunctae earum regionum praefecturae libentissimis animis eum recipiunt
    • その地域のすべての知事管轄市プラエフェクトゥラが心から喜んで彼(カエサル)を迎え入れて、
      (訳注: praefecturaプラエフェクトゥラ は、英語のprefecture(県)の語源で、ローマから派遣された praefectusプラエフェクトゥス (知事)が治める都市や区域を指す。
  • exercitumque eius omnibus rebus iuvant.
    • 彼(カエサル)の軍隊をあらゆる事で助ける。
ピケヌム地方のキングルム(Cingulum)すなわち現在のチンゴリ(Cingoli)の眺望。『ガリア戦記』の名将ティトゥス・ラビエヌスはこの地で生まれたとされる。

キングルムの帰順

  • ②Etiam Cingulo,
  • quod oppidum Labienus constituerat suaque pecunia exaedificaverat,
    • ──その城市は、ラビエヌスが築き、自らの資産で造営していたものではあるが──
      (訳注:キングルムで生まれたティトゥス・ラビエヌスは、
      『ガリア戦記』では一貫して、カエサルが信頼する最も有能な副官であったが、)
      この時点では、旧縁のあるポンペイウスの側に寝返っていたようだ。
      カエサルにとって、片腕をもがれるようなよほどの痛恨事であったのか、
      『内乱記』では、ラビエヌスの寝返りの経緯にはまったくふれられていない。)
  • ad eum legati veniunt,
    • (その町からさえも)彼(カエサル)のところへ使節たちが来ており、
  • quaeque imperaverit se cupidissime facturos pollicentur.
    • (カエサルが)命令したことは何であれ、自分たちはとても熱心に行うであろう、と約束する。
  • ③Milites imperat: mittunt.
    • (カエサルは)兵士たち(の提供)を要求する。(キングルムの人々が兵士を)派遣する。

レントゥルス・スピンテルとウィブッリウス・ルフス

  • Interea legio XII Caesarem consequitur.
    • そのうちに、第12軍団がカエサルに追い付く。
  • Cum his duabus Asculum Picenum proficiscitur.
    • (カエサルは)この2個(軍団)とともにピケヌム(地方)のアスクルムに出発する。
  • Id oppidum Lentulus Spinther X cohortibus tenebat;
    • その城市は、レントゥルス・スピンテルが10個歩兵大隊コホルスとともに占拠していたが、
      (訳注:プブリウス・コルネリウス・レントゥルス・スピンテルは、BC57年の執政官で、当年(BC49年)の執政官レントゥルス・クルスの兄。)
  • qui, Caesaris adventu cognito, profugit ex oppido,
    • その者は、カエサルの到来を知って、城市から逃げ去り、
  • cohortesque secum abducere conatus
    • 歩兵大隊コホルスを自分とともに連れ去ることを試みたが、
  • magna parte militum deseritur.
    • 兵士たちの大半により見捨てられる。
  • ④Relictus in itinere cum paucis incidit in Vibullium Rufum
    • (レントゥルス・スピンテルは)道中にわずかな者たちとともに見捨てられたが、ウィブッリウス・ルフスと出くわした。
  • missum a Pompeio in agrum Picenum confirmandorum hominum causa.
  • (ウィブッリウス・ルフスは)人々を激励するために、ポンペイウスによってピケヌム地方に派遣されていたのだ。
  • A quo factus Vibullius certior, quae res in Piceno gererentur,
    • その者(スピンテル)により、ウィブッリウスは、ピケヌムにおいて行われた事態を知らされて、
  • milites ab eo accipit, ipsum dimittit.
    • 彼(スピンテル)から兵士たちを受け取り、(スピンテル)当人を立ち去らせる。
  • ⑤Item ex finitimis regionibus quas potest contrahit cohortes ex dilectibus Pompeianis;
    • (ウィブッリウスは)さらに、近隣地域から、ポンペイウス派の徴用された者たちのうちから歩兵大隊コホルスを集められるだけ集める。
  • in his Camerino fugientem Lucilium Hirrum cum sex cohortibus, quas ibi in praesidio habuerat, excipit;
    • これらに、カメリヌムから、6個歩兵大隊コホルス──そこで守備隊として持っていた──とともに逃げて来たルキリウス・ヒッルスを、迎え入れて、
  • quibus coactis XIII efficit.
    • それらを集めて13個(大隊)にする。

ドミティウス・アヘノバルブス

  • ⑥Cum his ad Domitium Ahenobarbum Corfinium magnis itineribus pervenit,
    • これら(の軍勢)とともに、コルフィニウムドミティウス・アヘノバルブスのところへ強行軍で到着して、
      (訳注:6節⑤項で既述のように、ルキウス・ドミティウス・アヘノバルブスはカエサルの後任のガリア総督となることが決議されていた。
      カエサルにとって、ドミティウスは数年来の仇敵であり、ぜひとも叩いておかなければならない相手であっただろう。)
  • Caesaremque adesse cum legionibus duabus nuntiat.
    • カエサルが2個軍団とともに迫っていることを、知らせる。
  • ⑦Domitius per se circiter XX cohortes Alba, ex Marsis et Paelignis, finitimis ab regionibus, coegerat.
    • ドミティウスは自ら、アルバで、マルスィ族やパエリグニ族から、近隣地域から、およそ20個歩兵大隊コホルスを(すでに)徴集していたのだ。
      (訳注:アルバ Alba はマルスィ族 Marsi の古い町。コルフィニウムはパエリグニ族 Paeligni の町であった。)

ドミティウスのコルフィニウム籠城[編集]

16節[編集]

カエサルが、コルフィニウムのドミティウス勢に攻めかかる

  • ①Recepto Firmo expulsoque Lentulo,
    • フィルムム(の帰順)を受け入れて、レントゥルス(・スピンテル)を追い払うと、
      (訳注:フィルムム Firmum はピケヌム地方の都市で、現在のフェルモ Fermo。)
  • Caesar conquiri milites, qui ab eo discesserant, dilectumque institui iubet;
    • カエサルは、彼(レントゥルス・スピンテル)から離れていた兵士たちが捜し求められるように(命じ)、徴兵に取り掛かることを命じた。
  • ipse, unum diem ibi rei frumentariae causa moratus, Corfinium contendit.
    • (カエサル)自身は、一日だけそこに糧食徴発のために滞在してから、コルフィニウムに急いで行った。
      (訳注:コルフィニウム Corfinium はパエリグニ族 Paeligni の町で、現在のコルフィーニオ。)
  • ②Eo cum venisset,
    • (カエサルが)そこにやって来ると、
  • cohortes V praemissae a Domitio ex oppido pontem fluminis interrumpebant,
    • 城市からドミティウスによって先遣された5個歩兵大隊コホルスが、川にかかる橋を破却しており、
  • qui erat ab oppido milia passuum circiter III.
    • (橋は)城市から約3ローママイル(=約4.5km)のところであった。
  • ③Ibi cum antecursoribus Caesaris proelio commisso,
    • (ドミティウス勢は)そこにおいてカエサルの(部隊の)前衛と交戦したが、
  • celeriter Domitiani a ponte repulsi se in oppidum receperunt.
    • ドミティウス勢が速やかに橋から撃退されて、城市の中に撤収した。
  • Caesar, legionibus transductis,
    • カエサルは、諸軍団レギオを渡河させると、
  • ad oppidum constitit iuxtaque murum castra posuit.
    • 城市の辺りに留まって、城壁のすぐ近くに陣営カストラを設営した。

17節[編集]

ドミティウスがポンペイウスに救援を求める嘆願状

  • ①Re cognita, Domitius ad Pompeium in Apuliam
  • peritos regionum magno proposito praemio cum litteris mittit,
    • 当地方を熟知した者たちを、大きな報酬を約束して、書状とともに遣わして、
  • qui petant atque orent, ut sibi subveniat:
    • 自分を援けに来てくれるように、頼み、願う。
  • Caesarem duobus exercitibus et locorum angustiis
    • カエサルは、陣地が狭いので、二手の軍隊(の挟撃)により、
  • facile intercludi posse frumentoque prohiberi.
    • 容易に閉塞させられるし、糧道を断つこともできる、と。
  • ②Quod nisi fecerit,
    • (ポンペイウスが)それをしなかったならば、
  • se cohortesque amplius XXX magnumque numerum senatorum atque equitum Romanorum
    • 自分(ドミティウス)も30個以上の歩兵大隊コホルスも、多数のローマ人の元老院議員セナトルたちや騎士階級エクィテスの者たちも
  • in periculum esse venturum.
    • 危険に陥るであろう、と。
  • ③Interim suos cohortatus tormenta in muris disponit
    • (ドミティウスは)さしあたり、配下の者たちを励まして、投石器トルメントゥムを城壁に配置し、
  • certasque cuique partes ad custodiam urbis attribuit;
    • 各人に、都市防護のための一定の任務を割り当てた。
  • ④militibus in contione agros ex suis possessionibus pollicetur,
    • (ドミティウスは)集会において、兵士たちに、自分の所有地から耕地(の提供)を約束する。
  • XL in singulos iugera,
    • (兵士たち)おのおのに40ユゲルムを、
      (訳注:ユゲルム jugerum は面積の単位で、1ユゲルム=約0.25ヘクタール、40ユゲルム=約10ヘクタール。)
  • et pro rata parte centurionibus evocatisque.
    • 百人隊長ケントゥリオ(再召集された)古参兵エウォカティには一定の割合で(土地を与える、と)。
      (訳注:pro rata parte「一定の割合で」)

18節[編集]

アントニウス隊がスルモを制圧。コルフィニウムの包囲開始

  • ①Interim Caesari nuntiatur
    • そうこうするうちに、カエサルに(以下のことが)報告される。
  • Sulmonenses, quod oppidum a Corfinio VII milium intervallo abest,
  • cupere ea facere, quae vellet,
    • (彼らは、カエサルが)望むことをしたいと切望しているのだが、
  • sed a Q. Lucretio senatore et Attio Peligno prohiberi,
    • しかし、元老院議員セナトルクィントゥス・ルクレティウスおよびパエリグニ族のアッティウスによって妨げられていて、
  • qui id oppidum VII cohortium praesidio tenebant.
    • その者たち(二人)は、その城市を7個歩兵大隊コホルスの守備隊によって占拠していたのだ。
スルモ(Sulmo)すなわち現在のスルモーナ(Sulmona)の街にあるオウィディウスの像。『変身物語』で有名なこの詩人は、カエサルの死の翌年に、この街で生まれた。
  • ②Mittit eo M. Antonium cum legionis XIII cohortibus V.
  • Sulmonenses, simul atque signa nostra viderunt,
    • スルモの住民たちは、我が方(カエサル勢)の軍旗を見るや否や、
  • portas aperuerunt universique, et oppidani et milites, obviam gratulantes Antonio exierunt.
    • 城門を開けて、町の住民たちも兵士たちも総勢が、喜んでアントニウスを出迎えに出た。
  • ③Lucretius et Attius de muro se deiecerunt.
    • ルクレティウスとアッティウスは、城壁から身を投げた。
  • Attius ad Antonium deductus petit ut ad Caesarem mitteretur.
    • アッティウスは、アントニウスのところへ引き出されるや、カエサルのところへ送られるように頼む。
  • Antonius cum cohortibus et Attio eodem die, quo profectus erat, revertitur.
    • アントニウスは、(スルモの)諸歩兵大隊コホルス

とアッティウスを伴って、出発したのと同じ日に(カエサルのもとへ)帰還する。

  • ④Caesar eas cohortes cum exercitu suo coniunxit
    • カエサルは、その諸歩兵大隊コホルスを自分の軍隊と連結して、
  • Attiumque incolumem dimisit.
    • アッティウスを無傷のまま放免した。
      (訳注:元老院議員クィントゥス・ルクレティウス・ウェスピッロ Q. Lucretius Vespillo のその後の消息は不詳だが、
      城壁から飛び降りてから何とか逃げ延びたものか、第3巻7節に再び登場する。30年後のBC19年に執政官に就任。)


コルフィニウムの包囲開始

  • Caesar primis diebus
    • カエサルは、(城攻めの)はじめの日々に、
  • castra magnis operibus munire
    • 陣営カストラを大がかりな堡塁オプスによって防備を固めること、
  • et ex finitimis municipiis frumentum comportare
    • 近隣の自治市ムニキピウムから穀物を運び集めること、
  • reliquasque copias exspectare instituit.
    • 残りの軍勢を待つこと、に取りかかる。
  • ⑤Eo triduo legio VIII ad eum venit
    • その3日間のうちに、彼(カエサル)のところへやって来たのは、第8軍団
  • cohortesque ex novis Galliae dilectibus XXII
    • ガリアで新たに徴兵された歩兵大隊コホルス22個、
  • equitesque ab rege Norico circiter CCC.
    • (同盟者である)ノリクムの王から(供出された)約300騎の騎兵である。
  • Quorum adventu altera castra ad alteram oppidi partem ponit;
    • 彼らの到着により、城市のもう一方の側へ二つ目の陣営カストラを設営する。
  • his castris Curionem praefecit.
    • クリオをこの陣営の長に任じた。
  • ⑥Reliquis diebus oppidum vallo castellisque circummunire instituit.
    • (カエサルは、城攻めの)残りの日々に、城市を、防柵ウァッルム物見櫓カステッルムで包囲することに取りかかる。
  • Cuius operis maxima parte effecta,
    • その堡塁オプスがあらかた完成され、
  • eodem fere tempore missi ad Pompeium revertuntur.
    • ほぼ同じ頃に、(ドミティウスから)ポンペイウスのところへ遣わされた者たちが(返書を持って)帰還する。
      (訳注:コルフィニウムの城市がカエサル勢によって包囲されてしまったのに、返書を持った使者たちがどうやって城内に戻れたのかは不明。
      言うまでもなく、カエサルが正確な真実を書いているとは限らない。)

19節[編集]

救援を断られたドミティウスが脱走を計画

  • ①Litteris perlectis, Domitius dissimulans in consilio pronuntiat
    • (ポンペイウスからの)書状を読み通すと、ドミティウスは作戦会議において(以下のように)偽って述べる。
  • Pompeium celeriter subsidio venturum,
    • ポンペイウスは急いで加勢にやって来るであろう、と。
  • hortaturque eos, ne animo deficiant, quaeque usui ad defendendum oppidum sint parent.
    • 気落ちするな、城市を防衛するために役立つものは何でも提供するように、と励ます。
  • ②Ipse arcano cum paucis familiaribus suis colloquitur
    • (ドミティウス)自身は、自分の親しいわずかな者たちとひそかに話し合い、
  • consiliumque fugae capere constituit.
    • (城から)脱走する計画を立てることを決心した。
  • ③Cum vultus Domitii cum oratione non consentiret,
    • ドミティウスの顔つきは(険しく)、話していることと合致していなかったので、
  • atque omnia trepidantius timidiusque ageret quam superioribus diebus consuesset,
    • かつ、それ以前の日々に常であったよりも、何をするにも狼狽しびくびくしていたので、
  • multumque cum suis consiliandi causa secreto praeter consuetudinem colloqueretur,
    • かつ、配下の者たちと大いに協議するために、いつもの状態からはずれて、こっそりと話し合っていたので、
  • concilia conventusque hominum fugeret,
    • (さらに)会合や人々が集まっているところを避けていたので、
  • res diutius tegi dissimularique non potuit.
    • 事態がより長く隠されたり偽られたりすることができなかった。


ポンペイウスの返事

  • ④Pompeius enim rescripserat:
    • すなわち、ポンペイウスは(以下のように)返事を書いていたのだ。
  • sese rem in summum periculum deducturum non esse,
    • 自分(ポンペイウス)は、事態を決定的な危険に導くつもりはない。
  • neque suo consilio aut voluntate Domitium se in oppidum Corfinium contulisse;
    • ドミティウスがコルフィニウムの城市に詰めたのは、自分(ポンペイウス)の助言または同意によるものではない。
  • proinde, siqua fuisset facultas, ad se cum omnibus copiis veniret.
    • ゆえに、もし何らかの手段があったならば、自分のところへ全軍勢とともにやって来るように、と。


  • ⑤Id ne fieri posset, obsidione atque oppidi circummunitione fiebat.
    • (カエサルの)包囲や、堡塁を巡らすことによって、そうできなくなりつつあったのだ。

20節[編集]

ドミティウスの脱走計画を知った兵士らが造反

  • ①Divulgato Domiti consilio
  • milites, qui erant Corfinii, primo vesperi secessionem faciunt
    • コルフィニウムにいた兵士たちは、夕方のはじめ頃に(持ち場を)離脱して、
  • atque ita inter se per tribunos militum centurionesque atque honestissimos sui generis colloquuntur:
    • 軍団次官トリブヌス・ミリトゥムたちや百人隊長ケントゥリオたち、および自分の階級の高位の者たちを介して互いに(以下のように)話し合う。
  • ②obsideri se a Caesare, opera munitionesque prope esse perfectas;
    • 自分たちは、カエサルによって攻囲されており、堡塁オプス塁壁ムニティオはほとんど完成されている。
  • ducem suum Domitium, cuius spe atque fiducia permanserint,
    • 自分たちの将帥であるドミティウスを、(兵士たちは)彼への期待と信頼に留まっていたのだが、
  • proiectis omnibus fugae consilium capere;
    • (ドミティウスは)皆を捨てて、脱走の計画を立てている。
  • debere se suae salutis rationem habere.
    • 自分たちは、自らの身の安全を考慮しなければならないのだ。
  • ③Ab his primo Marsi dissentire incipiunt
    • 初めに、マルスィ族が彼ら(ドミティウス配下のローマ人兵士たち)と争い始め、
  • eamque oppidi partem, quae munitissima videretur, occupant,
    • (コルフィニウムの)城市の防備が最も固いと思われる方面を占拠して、
  • tantaque inter eos dissensio exsistit,
    • 彼ら(マルスィ族とローマ兵の両者)の間で、大変な衝突が生じたので、
  • ut manum conserere atque armis dimicare conentur;
    • 交戦し、武器で戦うことが試みられるほどであった。
  • ④post paulo tamen internuntiis ultro citroque missis
    • けれども、少し後になって(双方による仲裁の)伝令があちらこちらに遣わされて、
  • quae ignorabant, de L. Domiti fuga, cognoscunt.
    • ルキウス・ドミティウスの脱走について知らなかった者たち(マルスィ族たち)が、知るようになる。
  • ⑤Itaque omnes uno consilio
    • こうして、(ドミティウス配下の)皆が考えを一つにして、
  • Domitium productum in publicum circumsistunt et custodiunt
    • ドミティウスを公けの場に連れ出して、取り囲んで軟禁して、
  • legatosque ex suo numero ad Caesarem mittunt:
    • 自分たちの集団から使節たちを、カエサルのところへ遣わす。


(使節たちは、カエサルに伝えた。)

  • sese paratos esse
    • 自分たち(コルフィニウム籠城兵たち)は、覚悟ができている。
  • portas aperire, quaeque imperaverit facere
    • 城門を開き、(カエサルが)要求したことは何でも行い、
  • et L. Domitium vivum in eius potestatem tradere.
    • ルキウス・ドミティウスを生きたままで、彼(カエサル)の権限のもとに引き渡す(覚悟ができている)、と。


(訳注:『内乱記』は、以上のような、ドミティウスの脱走計画と兵士たちの造反を伝えるが、ほかの史料では異なっている。
プルタルコスの『対比列伝』が伝えるところによれば、
ドミティウスは、悲観して侍医に毒薬を求め、服毒した。ところが実は、侍医が渡したのは睡眠薬だったので、
ドミティウスは一命を取り止め、カエサルに赦しを求めることになったという。)

21節[編集]

コルフィニウム開城の前夜

  • ①Quibus rebus cognitis
    • そのような事情を知ると、
  • Caesar, etsi magni interesse arbitrabatur
    • カエサルは、(以下のことが)大いに重要であると判断していたけれども、
  • quam primum oppido potiri
    • ── まず、城市が(カエサルによって)獲得されること、
  • cohortesque ad se in castra traducere,
    • および、諸歩兵大隊コホルス陣営カストラ内の自分(カエサル)のところへ引き渡されること;
  • ne qua aut largitionibus aut animi confirmatione aut falsis nuntiis commutatio fieret voluntatis,
    • 贈賄、あるいは士気の鼓舞、あるいは偽りの知らせによって、(籠城兵たちの)意志に何らかの変化が生じないように、
  • quod saepe in bello parvis momentis magni casus intercederent,
    • というのも、戦争においてはしばしば、わずかな影響力により、大きな危機が介在するものである(けれども) ──、
  • ②tamen veritus, ne militum introitu et nocturni temporis licentia oppidum diriperetur,
    • しかしながら、兵士たちの入城によって、および夜間の気ままさによって、城市が略奪されるのではないかと(カエサルは)恐れて、
  • eos, qui venerant, collaudat atque in oppidum dimittit,
    • やって来ていた(使節の)者たちを誉めそやし、城市の中に送り返し、
  • portas murosque adservari iubet.
    • 城門と城壁が警戒されることを命じた。
  • ③Ipse iis operibus, quae facere instituerat, milites disponit,
    • (カエサル)自身は、建設に取りかかっていた堡塁オプスに、兵士たちを配置して、
  • non certis spatiis intermissis, ut erat superiorum dierum consuetudo,
    • これまでの慣習であったように一定の間隔を開けるのではなく、
  • sed perpetuis vigiliis stationibusque, ut contingant inter se atque omnem munitionem expleant;
    • 寝ずの番の哨兵を、互いに隣接するようにして、塁壁の全周を埋め尽くすようにする。
  • tribunos militum et praefectos circummittit
    • 軍団次官トリブヌス・ミリトゥムたちや(騎兵の)隊長たちをあちこちへ送り、
  • atque hortatur, non solum ab eruptionibus caveant, sed etiam singulorum hominum occultos exitus adservent.
    • (籠城軍の)出撃に用心するだけではなく、人っ子一人がひそかに出て行くことも警戒するように、激励する。
  • ⑤Neque vero tam remisso ac languido animo quisquam omnium fuit, qui ea nocte conquieverit.
    • 事実、(城内では)その夜、安眠していられるほど、くつろいだり、たるんだ気持ちの者は、誰一人としていなかった。
  • ⑥Tanta erat summae rerum exspectatio, ut alius in aliam partem mente atque animo traheretur,
    • 最終的な事態をこれほど(の緊張で)待ち受けていたので、おのおのの考えや気持ちはあちらこちらに引きずられる。
  • quid ipsis Corfiniensibus, quid Domitio, quid Lentulo, quid reliquis accideret,
    • コルフィニウムの住民自身に、ドミティウスに、レントゥルス(・スピンテル)に、残りの者たちに、何が起こるのか。
  • qui quosque eventus exciperent.
    • どのような結末が、各人に降りかかるのだろうか。

22節[編集]

レントゥルス・スピンテルの命乞い

  • ①Quarta vigilia circiter
    • 第四夜警時の頃に、
      (訳注:第四夜警時は、真夜中から日の出までの間の後半の時間帯「明け方」を指す。『古代ローマの不定時法』を参照。)
  • Lentulus Spinther de muro cum vigiliis custodibusque nostris conloquitur;
    • レントゥルス・スピンテルは、城壁から、我が方(カエサル勢)の寝ずの番をしている哨兵に話しかける。
  • velle, si sibi fiat potestas, Caesarem convenire.
    • もし、自分らに機会が与えられるのならば、カエサルに面会したい、と。
  • ②Facta potestate, ex oppido mittitur,
    • (カエサルに会う)機会が与えられ、(レントゥルス・スピンテルは)城市から送られて来たが、
  • neque ab eo prius Domitiani milites discedunt quam in conspectum Caesaris deducatur.
    • カエサルの眼前に引き出されるまでは、ドミティウス勢の兵士たちが彼から離れることはなかった。
  • ③Cum eo de salute sua <agit>,
  • (レントゥルスは)彼(カエサル)と自らの身の安全について談判して、
  • orat atque obsecrat ut sibi parcat,
    • 自らを容赦してくれるように懇願し、嘆願して、
  • veteremque amicitiam commemorat
    • (カエサルとの)古い友情に言及し、
  • Caesarisque in se beneficia exponit;
    • カエサルの自分に対する恩恵を述べる。
  • quae erant maxima:
    • それは絶大なものであった、と。
  • ④quod per eum in collegium pontificum venerat,
    • 彼(カエサル)によって、(レントゥルスが)神祇官団に所属していたこと、
  • quod provinciam Hispaniam ex praetura habuerat,
  • quod in petitione consulatus erat sublevatus.
    • 執政官職への立候補において(カエサルから)支持されていたこと(などがカエサルの恩恵であった、と)。
  • ⑤Cuius orationem Caesar interpellat:
    • 彼の話を、カエサルがさえぎる。
  • se non maleficii causa ex provincia egressum,
    • 自分が属州(ガリア・キサルピナ)から進撃して来たのは、(政敵に)危害を及ぼすためではなく、
  • sed uti se a contumeliis inimicorum defenderet,
    • 自らを敵対者たちの侮辱から守らんがためであり、
  • ut tribunos plebis in ea re ex civitate expulsos in suam dignitatem restitueret,
    • 今回の事で国から放逐された護民官たちを、彼らの地位に復権させるためであり、
  • ut se et populum Romanum factione paucorum oppressum in libertatem vindicaret.
  • わずかな者たちの派閥に抑圧されている自分(カエサル)とローマの民衆を開放するためである、と。
  • ⑥Cuius oratione confirmatus Lentulus,
    • 彼(カエサル)の話によって元気付けられたレントゥルスは、
  • ut in oppidum reverti liceat, petit:
    • (コルフィニウムの)城市に戻ることを許されるように頼む。
  • quod de sua salute impetraverit, fore etiam reliquis ad suam spem solatio;
    • (レントゥルスが)自分の身の安全についてかなえてもらったことは、ほかの者たちさえ自らの希望の慰めになるはずである、と。
  • adeo esse perterritos nonnullos, ut suae vitae durius consulere cogantur.
    • 少なからぬ者たちが大いに怖れており、自らの生命に対してより困難に考えることを強いられているほどである、と。
  • Facta potestate, discedit.
    • (帰城の)機会が与えられて、(レントゥルスは)立ち去る。

23節[編集]

コルフィニウムの開城

  • ①Caesar, ubi luxit,
    • カエサルは、夜が明けると、
  • omnes senatores senatorumque liberos, tribunos militum equitesque Romanos ad se produci iubet.
    • 元老院議員セナトルとその子供たち、軍団次官トリブヌス・ミリトゥムたち、ローマ人の騎士階級の者エクィテスたちの全員を、自分のところへ連れて来ることを命じた。
  • ②Erant quinque senatorii ordinis,
    • 元老院階級の者たちは5名おり、
  • L. Domitius, P. Lentulus Spinther,
  • L. Caecilius Rufus, Sex. Quintilius Varus quaestor, L. Rubrius;
    • ルキウス・カエキリウス・ルフス、財務官セクストゥス・クイン(ク)ティリウス・ウァルス、ルキウス・ルブリウス(の5名であった)。
  • praeterea filius Domiti aliique complures adulescentes
    • さらに、ドミティウスの息子や、その他の多くの青年たち、
  • et magnus numerus equitum Romanorum
  • et decurionum, quos ex municipiis Domitius evocaverat.
    • 自治市ムニキピウムからドミティウスが召集していた参事会議員デクリオたち(も含まれていた)。
      (訳注:参事会議員デクリオ については、13節で既出。)
  • ③Hos omnes productos a contumeliis militum conviciisque prohibet;
    • これらの連れて来られた者たち全員を、(カエサル勢の)兵士たちの侮辱や非難から守ってやる。
  • pauca apud eos loquitur,
    • (カエサルは)彼らのもとで、わずか(の言葉)を述べ、
  • <queritur> quod sibi a parte eorum gratia relata non sit pro suis in eos maximis beneficiis;
    • 自分(カエサル)の彼らに対する絶大な恩恵に対して、彼らの側から自分(カエサル)に感謝が示されていない、と不平を言うが、
  • dimittit omnes incolumes.
    • 全員を無事なままで放免する。
  • ④HS |LX| (sexagies),
    • 60セステルティウス
      (訳注:HS はセステルティウス(sestertius)を表す略語。
      写本では文字が欠けており、校訂者が60セステルティウスとしたが、少額なので、各訳書では倍数を補って高額にしている。)
  • quod advexerat Domitius atque in publico deposuerat,
    • ドミティウスが運んで来ていて、国庫に預けておいたが、
  • adlatum ad se ab quattuorviris Corfiniensibus
    • コルフィニウムの四人委員により、自分(カエサル)のところへ運ばれたが、
      (訳注:四人委員 quattuorviris は修正提案の一つで、ローマ史家モムゼンによるもの。)
  • Domitio reddit,
    • ドミティウスに返した。
  • ne continentior in vita hominum quam in pecunia fuisse videatur,
    • (カエサルが)人間の生命ほどには、金銭に対しては自制がきかない、と思われないように。
  • etsi eam pecuniam publicam esse constabat datamque a Pompeio in stipendium.
    • その金銭は国家のものであり、(兵士の)俸給としてポンペイウスから委ねられた、ということは明白であった。
  • ⑤Milites Domitianos sacramentum apud se dicere iubet
    • ドミティウス勢の兵士たちには、自分(カエサル)のもとで(カエサルに服従すると)宣誓することを命じ、
  • atque eo die castra movet
    • その日のうちに陣営カストラを移設し、
  • iustumque iter conficit,
    • 正規の行軍を遂行し、
  • VII omnino dies ad Corfinium commoratus,
    • 全部で7日間もコルフィニウムの近辺に滞在したが、
  • et per fines Marrucinorum, Frentanorum, Larinatium in Apuliam pervenit.
    • マッルキニ族、フレンタニ族、ラリヌムの住民たちの領土を通って、アプリア(地方)に到達した。

ポンペイウスのブルンディシウム出港[編集]

24節[編集]

ブルンディシウムBrundisium)すなわち現在のブリンディジ(Brindisi)にあるアッピア街道の終点であることを示す柱。

カエサルがポンペイウスに会談を提案

  • Pompeius his rebus cognitis, quae erant ad Corfinium gestae,
  • Luceria proficiscitur Canusium atque inde Brundisium.
  • ②Copias undique omnes ex novis dilectibus ad se cogi iubet;
    • 新たに徴兵された全軍勢を、至る所から自分のところへ集結させることを命じる。
  • servos, pastores armat atque iis equos attribuit;
    • 奴隷たち、羊飼いたちを武装させて、彼らに馬を割り当てる。
  • ex his circiter CCC equites conficit.
    • 彼らから約300騎の騎兵を編制する。
  • ③L. Manlius praetor Alba cum cohortibus sex profugit,
    • 法務官ルキウス・マンリウスがアルバから6個歩兵大隊コホルスとともに逃れて来る。
      (訳注:ルキウス・マンリウス・トルクァトゥス Lucius Manlius Torquatus はこの年 BC49年に法務官に指名され、
      第3巻11節③項では、ポンペイウスによって港湾都市オリクムの守備を任されている。)
  • Rutilius Lupus praetor Tarracina cum tribus;
    • 法務官ルティリウス・ルプスがタッラキナから3個(歩兵大隊)とともに(逃れて来る)。
  • quae procul equitatum Caesaris conspicatae, cui praeerat Vibius Curius,
    • 彼らは、ウィビウス・クリウスが率いていたカエサルの騎兵隊に遠くから気付くと、
  • relicto praetore signa ad Curium transferunt atque ad eum transeunt.
    • 法務官を置き去りにして、クリウスの方へ軍旗を移して彼のもとに寝返る。
  • ④Item reliquis itineribus
    • 同様に残りの行軍中に、
  • nonnullae cohortes in agmen Caesaris,
    • 少なからぬ歩兵大隊コホルスがカエサルの(歩兵の)隊列に、
  • aliae in equites incidunt.
    • 他の者たちも(カエサルの)騎兵に合流する。
  • Reducitur ad eum deprensus ex itinere N. Magius Cremona, praefectus fabrum Cn. Pompei.
    • グナエウス・ポンペイウスの工兵の指揮官であるクレモナ出身のヌメリウス・マギウスが道中から捕らえられて彼(カエサル)のところへ連れ戻される。
  • ⑤Quem Caesar ad eum remittit cum mandatis:
    • カエサルは、その者を(以下の)言伝ことづてとともに彼(ポンペイウス)のところへ送り返す。
  • quoniam ad id tempus facultas colloquendi non fuerit atque ipse Brundisium sit venturus,
    • (カエサルとポンペイウスが)話し合うための機会がこのときまでになかったし、(カエサル)自身もブルンディスィウムに来るつもりであるから、
  • interesse rei publicae et communis salutis se cum Pompeio colloqui;
    • 自分(カエサル)がポンペイウスと話し合うことは、国家のため、公共の安全のために好機である。
  • neque vero idem profici longo itineris spatio, cum per alios condiciones ferantur, ac si coram de omnibus condicionibus disceptetur.
    • 遠い道のりを隔てて他者を通じて条件をやり取りすることは、すべての条件について面と向かい合って議論することとは、同様には進まないのだ、と。

25節[編集]

カエサルがポンペイウスの出港を妨害する土木工事

  • ①His datis mandatis
    • (カエサルは)これらの言伝ことづてを託すと、
  • Brundisium cum legionibus VI pervenit,
  • veteranis III
    • (その内の)3個は古参(の軍団)で、
  • et reliquis, quas ex novo dilectu confecerat atque in itinere compleverat;
    • 残り(の軍団)は、新たな徴兵で召集していて、行軍中に補充していたものであった。
  • Domitianas enim cohortes protinus a Corfinio in Siciliam miserat.
  • ②Repperit consules Dyrrachium profectos cum magna parte exercitus,
    • (カエサルがブルンディシウム到着後に)気づいたことは、両執政官コンスルは軍隊の大部分とともにデュッラキウムに出発した後であり、
      (訳注:デュッラキウムは、対岸のギリシアにある軍事拠点であり、現在はアルバニア共和国第2の都市ドゥラス Durrës である。)
  • Pompeium remanere Brundisii cum cohortibus XX(viginti);
    • ポンペイウスはブルンディシウムに20個歩兵大隊コホルスとともに留まっているということだった。
  • ③neque certum inveniri poterat, obtinendine Brundisii causa ibi remansisset,
    • (ポンペイウスが)ブルンディシウムを保持するためにそこに留まっていたのかどうか、確実なことは見出されなかった。
      (訳注:~ -ne, an …(間接疑問文)「~なのかどうか、もしくは…」)
  • quo facilius omne Hadriaticum mare ex ultimis Italiae partibus regionibusque Graeciae in potestate haberet
    • ──(ブルンディシウムを押さえる)その分だけ、イタリアの突端の地方とギリシアの地域(の両岸)からハドリア海アドリア海全域をより容易に影響下に保ち、
  • atque ex utraque parte bellum administrare posset,
    • かつ(イタリアとギリシアの)両岸から戦争を(より容易に)遂行できる──
  • an inopia navium ibi restitisset;
    • もしくは、船舶の不足によりそこに残留していたのかどうか(確実なことは見出されなかった)。
  • ④veritusque ne ille Italiam dimittendam non existimaret,
    • (カエサルは)彼(ポンペイウス)が、イタリアを放棄するべきだと判断しないのではないか、と恐れて、
  • exitus administrationesque Brundisini portus impedire instituit.
    • ブルンディシウムの港の出港・業務を妨害することに決めた。


ブルンディシウム港におけるカエサルとポンペイウスの攻防。ブルンディシウムの城塞都市は、堅固な城壁で守られており、その周囲を取り巻くY字形の入江が港の狭い出入口につながっていた。カエサルは、ポンペイウス軍が出港できないように、港の狭い出入口を封鎖しようと企てたのである。


ブルンディシウムの港湾工事

  • ⑤Quorum operum haec erat ratio.
    • それらの工事の手段は、以下の通りであった。
  • Qua fauces erant angustissimae portus,
    • 港の最も狭い出入口に
  • moles atque aggerem ab utraque parte litoris iaciebat,
    • 大きな石や土砂を海岸の両側から投げ込んだ。
  • quod iis locis erat vadosum mare.
    • というのは、その地点では海が浅かったからである。
  • ⑥Longius progressus,
    • (岸から)より遠くに進むと、
  • cum agger altiore aqua contineri non posset,
    • 土砂がより深いところの水で保持されることができないので、
  • rates duplices quoquo versus pedum XXX e regione molis collocabat.
    • (縦横)どの方向も30ペース(=約9m四方)の二重にしたいかだを大石と真直ぐに置いた。
  • ⑦Has quaternis ancoris ex IIII angulis destinabat, ne fluctibus moverentur.
    • これらを四つの隅から、四つずつの錨によって、波に動かされないように、固定した。
  • ⑧His perfectis collocatisque
    • これらが完成されて、配置されると、
  • alias deinceps pari magnitudine rates iungebat.
    • 次から次へと筏を同じ大きさで連結していった。
  • ⑨Has terra atque aggere integebat,
    • これらに土や土砂をかぶせて、
  • ne aditus atque incursus ad defendendum impediretur.
    • 防御するために、出入りしたり突進したりするのを妨げられないようにした。
  • A fronte atque ab utroque latere cratibus ac pluteis protegebat;
    • (筏の列の)前面から、両側面から、枝編み細工や障壁で覆った。
  • ⑩in quarta quaque earum turres binorum tabulatorum excitabat,
    • それらの4分の1ずつそれぞれに、2階のやぐらを建てて、
  • quo commodius ab impetu navium incendiisque defenderet.
    • それにより、(敵方の)船の突撃や焼き討ちから防御するようにしていた。

26節[編集]

両軍の攻防。カエサルとポンペイウスの代理人が会談

  • ①Contra haec
    • これに対して、
  • Pompeius naves magnas onerarias, quas in portu Brundisino deprehenderat, adornabat.
    • ポンペイウスは、ブルンディシウムの港で見つけておいた大きな貨物船団を、艤装させた。
  • Ibi turres cum ternis tabulatis erigebat
    • そこに、3階のやぐらを建てて、
  • easque multis tormentis et omni genere telorum completas
    • それを、多くの投石機トルメントゥムやあらゆる種類の飛び道具で満たされたものとして、
  • ad opera Caesaris adpellebat, ut rates perrumperet atque opera disturbaret.
    • いかだを突き破って工事を混乱させるべく、カエサルの工事の辺りに接岸させた。
  • Sic cotidie utrimque eminus fundis, sagittis reliquisque telis pugnabatur.
    • このようにして、毎日、双方により遠方から、投石器フンダサギッタやそのほかの飛び道具によって、戦われていた。
  • ②Atque haec Caesar ita administrabat, ut condiciones pacis dimittendas non existimaret;
    • さらに、カエサルはこれら(の作戦)を、和平協定(の機会)を逸するべきでないと判断しながら、指揮していた。
  • ac tametsi magnopere admirabatur Magium, quem ad Pompeium cum mandatis miserat, ad se non remitti,
    • そして、ポンペイウスのところへ言伝ことづてとともに遣わしていたマギウスが送り返されて来ないことを大いにいぶかしく思ったけれども、
  • atque ea res saepe temptata etsi impetus eius consiliaque tardabat,
    • そのこと(=和平交渉)がしばしば試みられることで、たとえ彼(カエサル)の突撃や作戦計画を遅らせたとしても、
  • tamen omnibus rebus in eo perseverandum putabat.
    • それでも、あらゆる方策によって、それ(=和平交渉)をやり通すべきだと考えていた。


両者の代理人スクリボニウス・リボとカニニウス・レビルスの会談

  • ③Itaque Caninium Rebilum legatum, familiarem necessarium<que> Scriboni Libonis,
    • こうして、スクリボニウス・リボの親しい友人である副官レガトゥスカニニウス・レビルスを
      (訳注:スクリボニウス・リボ Lucius Scribonius Libo はポンペイウスの親類で、かつポンペイウスの次男の岳父。
      BC34年に執政官。アウグストゥスの義兄となる。)
  • mittit ad eum colloquii causa;
    • 話し合いのために彼(リボ)のもとへ遣わす。
  • mandat, ut Libonem de concilianda pace hortetur;
    • (カエサルは、カニニウスに)和平をもたらすことについて、リボを励ますように、と命じる。
  • in primis, ut ipse cum Pompeio conloqueretur, postulat;
    • 第一に、自分(カエサル)がポンペイウスと話し合うように、要求する、と。
  • ④magnopere sese confidere demonstrat, si eius rei sit potestas facta, fore, ut aequis condicionibus ab armis discedatur.
    • もし、その事の機会が与えられたならば、対等な条件により武器が放棄されるようになる、と自分(カエサル)は確信する、と説明する。
  • Cuius rei magnam partem laudis atque existimationis ad Libonem perventuram,
    • その事の賞賛と名声の大部分は、リボに帰せられるであろう。
  • si illo auctore atque agente ab armis sit discessum.
    • もし、彼(リボ)が(和平の)提唱者・交渉者となって武器が放棄されたならば(の話だが)。
  • ⑤Libo a conloquio Canini digressus ad Pompeium proficiscitur.
    • リボは、カニニウスとの話し合いから離れて、ポンペイウスのところへ出発する。
  • Paulo post renuntiat, quod consules absint, sine illis non posse agi de compositione.
    • 少し後で、(リボは)両執政官が不在であるので、彼らを抜きにして、和解について交渉することはできない、と伝えて来る。
  • ⑥Ita saepius rem frustra temptatam
    • こうして、よりしばしば試みられた事がむなしく終わり、
  • Caesar aliquando dimittendam sibi iudicat et de bello agendum.
    • カエサルは、ついに(和平交渉を)断念するべきで、戦争を遂行するべきであると、判断する。

27節[編集]

ポンペイウスが城市の防備を固めて、出帆を準備

  • ①Prope dimidia parte operis a Caesare effecta
    • カエサルによって工事のほぼ半分が完成され、
  • diebusque in ea re consumptis VIIII,
    • その事に9日間が費やされたときに、
  • naves a consulibus Dyrrachio remissae, quae priorem partem exercitus eo deportaverant,
    • 軍隊の先発部隊をデュッラキウムに運び終えていた船団が、そこから両執政官により送り返されて、
  • Brundisium revertuntur.
  • Pompeius sive operibus Caesaris permotus
    • ポンペイウスは、カエサルの工事に動揺させられたにせよ、
      (訳注:sive ~ sive …「あるいは~にせよ、あるいは…にせよ」)
  • sive etiam quod ab initio Italia excedere constituerat,
    • あるいは、はじめからイタリアを出て行くことさえ決めていたにせよ、
  • adventu navium profectionem parare incipit,
    • (戻って来た)船団の到着によって、出発を準備し始める。
  • et quo facilius impetum Caesaris tardaret,
    • そして、カエサルの攻撃をなるべく遅らせるように、
  • ne sub ipsa profectione milites oppidum inrumperent,
    • まさに出発の間に(カエサル軍の)兵士たちが城市に突入して来ないように、
  • portas obstruit, vicos plateasque inaedificat,
    • 城門を塞ぎ、(街の)区画や街路を(障壁などで)囲い、
  • fossas transversas viis praeducit atque ibi sudes stipitesque praeacutos defigit.
    • 道路を横切る溝を築き、そこに杭や先の尖った樹木を打ち込む。
  • ④Haec levibus cratibus terraque inaequat;
    • これらを軽い枝編み細工や土砂で(覆うことで、表面を)平らにする。
  • aditus autem atque itinera duo, quae extra murum ad portum ferebant,
  • (城市の)入口や、城門の外から港へ通じる2本の通路を
  • maximis defixis trabibus atque eis praeacutis praesepit.
    • とても大きな樹木を打ち込んだり、その先を尖らせることにより、柵をめぐらす。
  • ⑤His paratis rebus
    • これらの事を準備すると、
  • milites silentio naves conscendere iubet,
    • (ポンペイウスは)兵士たちに、静寂のうちに乗船することを命じ、
  • expeditos autem ex evocatis <cum> sagittariis funditoribusque raros in muro turribusque disponit.
    • (再召集された)古参兵のうちから軽装歩兵たちを、弓兵たちや投石兵たちとともに、城壁や櫓にまばらに配置する。
  • ⑥Hos certo signo revocare constituit, cum omnes milites naves conscendissent,
    • 彼らを、すべての兵士たちが乗船したときに、決まった合図で呼び戻すことに決めて、
  • atque iis expedito loco actuaria navigia relinquit.
    • 彼らが利用しやすい所に快速船を残しておく。

28節[編集]

ポンペイウスとその軍勢がブルンディシウム港を出帆

  • Brundisini Pompeianorum militum iniuriis atque ipsius Pompei contumeliis permoti
  • Caesaris rebus favebant.
    • カエサルの軍事行動に好意を示していた。
  • ②Itaque cognita Pompei profectione
    • こうして(住民たちは)ポンペイウスの出発を察知すると、
  • concursantibus illis atque in ea re occupatis
    • 彼ら(兵士たち)が走り回って、その事(=出発準備)に専念しているときに、
  • vulgo ex tectis significabant.
    • 公然と、屋根の上から(カエサル勢に)合図した。
  • Per quos re cognita
    • その者たちを通して事態を知ると、
  • Caesar scalas parari militesque armari iubet,
    • カエサルは、梯子はしごを準備することと、兵士たちが武装すること、を命じる。
  • ne quam rei gerendae facultatem dimittat.
    • 事を成すためのいかなる機会も逸することがないように、と。
  • ③Pompeius sub noctem naves solvit.
    • ポンペイウスは、夜の間に、出帆する。
  • Qui erant in muro custodiae causa collocati,
    • 警戒のために城壁に配置されていた者たちは、
  • eo signo, quod convenerat, revocantur
    • (あらかじめ)同意しておいた合図によって呼び戻され、
  • notisque itineribus ad naves decurrunt.
    • よく知られた道を通って船団のところへ走る。
  • ④Milites, positis scalis, muros ascendunt,
    • (カエサル配下の)兵士たちは、梯子を置いて、城壁を登るが、
  • sed moniti a Brundisinis, ut vallum caecum fossasque caveant,
    • ブルンディシウムの住民たちから、防柵や見えない溝に用心しろ、と忠告されて、
  • subsistunt et longo itinere ab his circumducti ad portum perveniunt
    • 動きを止めて、彼らの導きで遠い(迂回)路をぐるりと回って、港へ着き、
  • duasque naves cum militibus, quae ad moles Caesaris adhaeserant,
    • (ポンペイウス配下の)兵士たちとともにカエサルの構築物に立ち往生していた2隻の船を
  • scaphis lintribusque reprehendunt, reprehensas excipiunt.
    • 小舟の類いによってだ捕して、だ捕されたものを収容する。
      (訳注:scaphis は scapha, -ae の複数・奪格、lintribus は linter, -tris の複数・奪格で、どちらも「小舟」の意味。)

29節[編集]

作戦の失敗と変更について、カエサルの弁解

  • ①Caesar etsi ad spem conficiendi negotii maxime probabat coactis navibus mare transire et Pompeium sequi, priusquam ille sese transmarinis auxiliis confirmaret,
    • カエサルは、事態を片付ける見込みのために、ポンペイウスが海の向こうの援軍によって勢いづくより前に、船舶を集めて海を渡り、ポンペイウスを追跡することがこの上ないと判断していたとはいえ、
  • tamen eius rei moram temporisque longinquitatem timebat,
    • しかしながら、その事が遅れることと、時間が長くかかることを、心配していた。
  • quod omnibus coactis navibus Pompeius
    • というのも、ポンペイウスがあらゆる船舶を集めて、
  • praesentem facultatem insequendi sui ademerat.
    • 彼を追撃する目下の機会を奪っていたからである。
  • ②Relinquebatur,
    • 残されたのは、
  • ut ex longinquioribus regionibus Galliae Picenique
    • ガリアやピケヌムといったかなり遠方の地域から、
  • et a freto naves essent exspectandae.
    • および(シキリア島との)海峡から船団が待ち望まれることであった。
  • Id propter anni tempus longum atque impeditum videbatur.
    • それは、季節のゆえに、長引き、かつ妨げられるものと思われていた。
  • ③Interea veterem exercitum, duas Hispanias confirmari,
    • その間に、(ポンペイウスの)古参(兵)の軍隊、両ヒスパニアが確固たるものとされることを(カエサルは望まず)、
  • quarum erat altera maximis beneficiis Pompei devincta,
    • それら(ヒスパニア属州)の一つは、ポンペイウスのこの上ない恩恵によって縛られていたのだが、
  • auxilia, equitatum parari,
    • (傘下の部族からの)支援軍アウクシリア、騎兵隊が準備されること、
  • Galliam Italiamque temptari se absente nolebat.
    • 自分(カエサル)が不在のときに、ガリアやイタリアが(元老院派から)働きかけられることを(カエサルは)望まなかったのだ。

属州サルディニア・シキリア・アフリカの情勢[編集]

30節[編集]

サルディニアとシキリアの政変

  • ①Itaque in praesentia Pompei sequendi rationem omittit,
    • こうして、目下のところ(カエサルは)ポンペイウスの追跡の手段を放棄して、
  • in Hispaniam proficisci constituit;
  • duumviris municipiorum omnium imperat, ut naves conquirant Brundisiumque deducendas curent.
    • (本土イタリアの)すべての自治市ムニキピウムの二人制行政官たちに、船舶を探し集めて、ブルンディシウムに曳航させるべく取り計らうように命令する。
  • ②Mittit in Sardiniam cum legione una Valerium legatum,
    • サルディニア(現在のサルデーニャ島)に副官(クィントゥス・)ウァレリウスを1個軍団とともに派遣し、
  • in Siciliam Curionem pro praetore cum legionibus III;
    • シキリア(現在のシチリア島)法務官代行プロプラエトルクリオを3個軍団とともに(派遣する)。
      (訳注:prō praetōre = prōpraetor 「法務官代行プロプラエトル」 法務官の権限を持って、属州を統治する。)
  • eundem, cum Siciliam recepisset, protinus in Africam traducere exercitum iubet.
    • 同人には、シキリアを回復させたら、直ちにアフリカ(属州)に軍隊を渡らせることを命じる。
  • Sardiniam obtinebat M. Cotta, Siciliam M. Cato;
  • Africam sorte Tubero obtinere debebat.
    • アフリカを、(元老院での)くじ引きによって、(ルキウス・)トゥベロが支配することになっていた。


サルディニアの政変

  • Caralitani, simul ad se Valerium mitti audierunt,
    • カラリスの住民は、ウァレリウスが自分たちのところへ遣わされることを聞くや否や、
      (訳注:カラリス Calaris は、サルディニア島の南部に位置する中心的な都市で、現在のカリャリ Cagliari。)
  • nondum profecto ex Italia
    • (ウァレリウスが)まだ(本土)イタリアから出発していないのに、
  • sua sponte Cottam ex oppido eiciunt.
    • 自発的に、コッタを城市から追い出す。
  • Ille perterritus, quod omnem provinciam consentire intellegebat,
    • 彼(コッタ)は、属州全体が(カラリスの住民に)共感しているのを理解して大いに恐れて、
  • ex Sardinia in Africam profugit.
    • サルディニアからアフリカ(属州)に逃げ去る。


シキリアの政変

古代イタリア半島南部およびシキリア(シチリア島)の地図。イタリック諸語を話すイタリック人のうち、半島南部のルカニア(Lucania)にいたのがルカニ人(Lucani)で、半島南端のブルッティウム(Bruttium)にいたのがブルッティイ人(Brut(t)ii)であった。どちらもオスク語を話していたとされている。
  • ④Cato in Sicilia naves longas veteres reficiebat,
    • カトーは、シキリアにおいて、古い軍船を修理していたが、
  • novas civitatibus imperabat.
    • 新しいもの(の建造)を住民たちに命令していた。
  • Haec magno studio agebat.
    • これらを大いなる熱意で遂行していた。
  • In Lucanis Brutiisque per legatos suos civium Romanorum dilectus habebat,
    • (カトーは)ルカニ人やブルッティイ人の中において、自分の副官レガトゥスたちを通じて、ローマ市民の徴兵を行なっており、
  • equitum peditumque certum numerum a civitatibus Siciliae exigebat.
    • シキリアの市民たちから一定の数の騎兵と歩兵(の供出)を要求していた。
  • ⑤Quibus rebus paene perfectis
    • それらの事がほぼ成し遂げられると、
  • adventu Curionis cognito
    • クリオの到来を知って、
  • queritur in contione sese proiectum ac proditum a Cn. Pompeio,
    • 自分はグナエウス・ポンペイウスによって捨てられ、裏切られたのだ、と会合で不平を言った。
  • qui, omnibus rebus imparatissimis, non necessarium bellum suscepisset
    • 彼(ポンペイウス)は、すべての事柄でまったく準備ができていないのに、戦争を引き受けてしまい、
  • et ab se reliquisque in senatu interrogatus
    • 自分(カトー)やほかの者たちによって、元老院で問い質されて、
  • omnia sibi esse ad bellum apta ac parata confirmavisset.
    • 自分にとって、戦争のためのすべては装備され、準備されている、と断言していたのだ、と。
  • Haec in contione questus ex provincia fugit.
    • (カトーは)集会でこういう不平を言ってから、属州(シキリア)から逃げ出す。

31節[編集]

アッティウス・ウァルスが属州アフリカを支配

  • ①Nacti vacuas [provincias] ab imperiis Sardiniam Valerius,
    • 統治者を欠いた(属州)サルディニアをウァレリウスが手に入れて、
  • Curio Siciliam, cum exercitibus eo perveniunt.
    • (同様に統治者を欠いた)シキリアクリオが(手に入れて)、軍隊とともにそこに到着する。
  • ②Tubero cum in Africam venisset,
  • invenit in provincia cum imperio Attium Varum;
    • 属州においてアッティウス・ウァルスが統治しているのを見出す。
  • qui ad Auximum, ut supra demonstravimus, amissis cohortibus
    • その者は、前に述べたように、アウクシムム(現在のオージモの辺りで諸歩兵大隊コホルスを失い、
      (訳注:12節③項~13節で述べられている。)
  • protinus ex fuga in Africam pervenerat
    • 直ちに逃走して、アフリカ(属州)に到達していた。
  • atque eam sua sponte vacuam occupaverat
  • (アッティウス・ウァルスは、属州の統治者が)空位であるのを、独力で占領して、
  • dilectuque habito duas legiones effecerat,
    • 徴兵を行なって、2個軍団を創設していた。
  • hominum et locorum notitia et usu eius provinciae nactus aditus ad ea conanda,
    • その属州の人間や土地を熟知していること、および経験によって、その企ての機会を得たのだ。
  • quod paucis ante annis ex praetura eam provinciam obtinuerat.
    • というのも、(彼は)数年前に、法務官職の後に、その属州を支配していたのだ。
  • ③Hic venientem Uticam navibus Tuberonem portu atque oppido prohibet
    • 彼は、トゥベロが船団でウティカにやって来たのを、港や城市から遠ざける。
  • neque adfectum valetudine filium exponere in terra patitur,
    • (トゥベロの)息子が健康を害していたのに、陸地に上げることを容認せず、
  • sed sublatis ancoris excedere eo loco cogit.
    • 錨を上げて、当地から立ち去ることを強要する。

32節[編集]

カエサルが元老院に対して弁解および使節派遣の要求

  • ①His rebus confectis Caesar,
    • これらの事柄を成し遂げると、カエサルは、
  • ut reliquum tempus a labore intermitteretur, milites in proxima municipia deducit;
    • 残りの時間に兵役を休ませられるように、兵士たちを近隣の諸自治市ムニキピウムに移動させる。
  • ipse ad urbem proficiscitur.
    • (カエサル)自身は、都(ローマ)へ出発する。
  • ②Coacto senatu iniurias inimicorum commemorat.
    • (カエサルは)元老院を召集すると、敵対者たちの不当行為を述べる。
  • Docet se nullum extraordinarium honorem adpetisse,
    • 曰く:自分は、何ら度を超した名誉を熱望したことはない。
  • sed exspectato legitimo tempore consulatus
    • が、執政官職(選挙の立候補)への合法的な時機を待っていて、
  • eo fuisse contentum, quod omnibus civibus pateret.
    • すべての市民たちに開かれている(立候補の)ことに満足していたのだ。
  • ③Latum ab X tribunis plebis contradicentibus inimicis,
    • (カエサル立候補の件は)10名の護民官たちによって発議されたが、敵対者たちが異議を唱えた。
  • Catone vero acerrime repugnante et pristina consuetudine dicendi mora dies extrahente,
    • カトーは実に激しく抵抗し、古臭いいつもの手口で、演説を遅らせることにより、日程を長引かせる。
  • ut sui ratio absentis haberetur,
    • (護民官たちは、カエサル)自らが(首都ローマに)不在でも(執政官選挙への立候補が)考慮されるようにと(発議していたのだが)。
  • ipso consule Pompeio ;
  • qui si improbasset, cur ferri passus esset?
    • もし彼が(カエサルの立候補を)不可とするならば、なぜ議題にかけられることを認めたのか?
  • Si probasset, cur se uti populi beneficio prohibuisset?
    • もし承認するならば、なぜ自分(カエサル)が(ローマの)民衆の恩恵を享受することを妨害したのか?
  • ④Patientiam proponit suam, cum de exercitibus dimittendis ultro postulavisset;
    • (カエサルは)軍隊の解散について自発的に要求したときの自らの忍耐を説明する。
  • in quo iacturam dignitatis atque honoris ipse facturus esset.
    • その件において、(カエサル)自身が地位や名誉の放棄を行うことになったはずなのだ、と。
  • ⑤Acerbitatem inimicorum docet,
    • (カエサルは)敵対者たちの酷さを述べる。
  • qui, quod ab altero postularent, in se recusarent,
    • 彼らは、(カエサルに)一方に要求していたことを、自分たちにおいては拒否した。
  • atque omnia permisceri mallent, quam imperium exercitusque dimittere.
    • 司令権や軍隊を放棄するよりも、万事が混乱させられることをむしろ望んだのだ、と。
  • ⑥Iniuriam in eripiendis legionibus praedicat,
    • (カエサルは、敵対者らが、対パルティア戦争を口実に、2個)軍団を取り上げた不当行為を言い立て、
  • crudelitatem et insolentiam in circumscribendis tribunis plebis;
    • 護民官たちの権利を制限した無慈悲さや傲慢さを(も言い立てる)。
  • condiciones a se latas, expetita colloquia et denegata commemorat.
    • 自分(カエサル)によって提案された条件、要求された話し合いが、(ポンペイウス側により)拒絶されたことに言及する。
  • ⑦Pro quibus rebus
    • そのような事情に応じて、
  • hortatur ac postulat, ut rem publicam suscipiant atque una secum administrent.
    • 国務を引き受けて、自分と一緒に運営するように、鼓舞し、要求する。
  • Sin timore defugiant,
    • しかしもし、(ポンペイウスへの)恐れにより逃避するならば、
  • illis se oneri non futurum
    • 自分(カエサル)は彼らに対して重荷とはならないであろうし、
  • et per se rem publicam administraturum.
    • (カエサル)自らが国家を運営するであろう。
  • ⑧Legatos ad Pompeium de compositione mitti oportere;
    • 和解について、(元老院から)ポンペイウスのところへ使節団が遣わされるべきである。
  • neque se reformidare, quod in senatu Pompeius paulo ante dixisset,
    • ポンペイウスが元老院で少し前に発言したことに、自分はひるまない。
  • ad quos legati mitterentur, his auctoritatem attribui timoremque eorum, qui mitterent significari.
    • 使節団が遣わされた者たちには権威が与えられ、(使節団を)遣わす者たちの怖れが示される(と、ポンペイウスは発言したのだが)。
  • ⑨Tenuis atque infirmi haec animi videri.
    • これは、弱々しく臆病な精神のものと思われる。
  • Se vero, ut operibus anteire studuerit, sic iustitia et aequitate velle superare.
    • 自分(カエサル)は実に、業績において優れることに努めてきたように、正義と公平において凌駕することを望むものである。

33節[編集]

元老院が抵抗、カエサルの要求を頓挫させる

  • ①Probat rem senatus de mittendis legatis;
    • 元老院は、使節団を遣わすことについての事案を承認する。
  • sed, qui mitterentur, non reperiebantur,
    • けれども、遣わされる者たちは、見出されなかった。
  • maximeque timoris causa pro se quisque id munus legationis recusabat.
    • とりわけ、誰もが自分のための恐れを理由にして、使節の務めを拒否したのだ。
  • Pompeius enim discedens ab urbe in senatu dixerat
    • なぜなら、ポンペイウスは、都(ローマ)から立ち去るにあたって元老院で(次のように)言っていたからだ。
  • eodem se habiturum loco, qui Romae remansissent et qui in castris Caesaris fuissent.
    • 自分は、(首都)ローマに留まっていた者と、カエサルの陣営にいた者を、同じ立場と見なすであろう、と。
  • ③Sic triduum disputationibus excusationibusque extrahitur.
    • このようにして、3日間が議論と弁明によって費やされる。
  • Subicitur etiam L. Metellus, tribunus plebis, ab inimicis Caesaris,
    • 護民官ルキウス・メテッルスでさえも、カエサルの敵対者たちによって買収されてしまう。
  • qui hanc rem distrahat, reliquasque res, quascumque agere instituerit, impediat.
    • 彼は、(使節団派遣についての)この事案を頓挫させ、扱おうと決めていた残りの事案は何でも妨害する。
  • ④Cuius cognito consilio
    • 彼(メテッルス)の考えを知ると、
  • Caesar frustra diebus aliquot consumptis,
    • カエサルは、幾日かをむなしく費やした後、
  • ne reliquum tempus amittat,
    • 残りの時を失わないようにと、
  • infectis iis, quae agere destinaverat,
    • 扱うことを決めていたことが達成されないままに、
  • ab urbe proficiscitur atque in ulteriorem Galliam pervenit.
    • 都(ローマ)から出発して、ガリア・ウルテリオルに到着する。
      (訳注:ガリア・ウルテリオル Gallia ulterior は、ガリア・トランサルピナ Gallia Transalpina「アルプスの向こう側のガリア」とも呼ばれ、
      後にガリア・ナルボネンシス Gallia Narbonensis に再編される。)

マッシリア攻囲戦(1)[編集]

34節[編集]

ドミティウスらポンペイウス派がマッシリアを拠点とする

  • ①Quo cum venisset,
    • (カエサルが)そこにやって来たときに、
  • cognoscit missum <in Hispaniam> a Pompeio Vibullium Rufum,
    • ウィブッリウス・ルフスがポンペイウスによって<ヒスパニアに>派遣されたのを知る。
      (この後、38節で言及される。<ヒスパニアに>は、写本にはないが、挿入することが校訂者により提案されている。)
  • quem paucis ante diebus Corfinio captum ipse dimiserat;
    • その者(ウィブッリウス・ルフス)は、数日前にコルフィニウムで捕虜にされたのを、(カエサル)自身が放免していたのだった。
      (訳注:コルフィニウム籠城と放免の経緯については、15節23節を参照。)
  • ②profectum item Domitium ad occupandam Massiliam navibus actuariis septem,
    • ドミティウスもまた、マッシリアを支配するために、7隻の快速船で出発していた。
      (訳注:マッシリア Massilia はギリシア人の植民市で、現在の仏マルセイユ市。)
  • quas Igilii et in Cosano a privatis coactas servis, libertis, colonis suis compleverat;
    • それら(の船)は、イギリウムやコサ領で私人たちから集められて、(ドミティウス)自らの奴隷たち、解放奴隷たち、農夫たちを詰め込んでいた。
      (訳注:イギリウム Igilium はティレニア海に浮かぶ小島で、現在の名は ジリオ島
      コサ Cosa はエトルリア地方にあったローマの植民市。)
  • ③praemissos etiam legatos Massilienses domum, nobiles adulescentes,
    • マッシリア住民の使節たちもまた名門の青年たちが(ローマから)郷里に先に遣わされた。
  • quos ab urbe discedens Pompeius erat adhortatus,
    • その者たちを、ポンペイウスが都(ローマ)から立ち去るにあたって(次のように)駆り立てた。
  • ne nova Caesaris officia veterum suorum beneficiorum in eos memoriam expellerent.
    • カエサルの最近の尽力が、彼ら(マッシリア住民)における自分(ポンペイウス)の古い恩恵の記憶を退けることがないように、と。
  • ④Quibus mandatis acceptis
    • それらの言伝ことづてを受け取ったので、
  • Massilienses portas Caesari clauserant;
    • マッシリアの住民たちは、カエサルに対して城門を閉ざしていた。
  • Albicos, barbaros homines,
    • 蛮族であるアルビキ族は、
  • qui in eorum fide antiquitus erant
    • 昔から彼ら(マッシリア住民)の庇護下にあって、
  • montesque supra Massiliam incolebant,
    • マッシリアより上の山脈に住んでいたが、
  • ad se vocaverant;
    • 自分たちのところ(マッシリア)へ呼び寄せていた。
  • ⑤frumentum ex finitimis regionibus atque ex omnibus castellis in urbem convexerant;
    • 糧食を、近隣の地域から、すべての城砦から、都市に運び集めていた。
  • armorum officinas in urbe instituerant;
    • 武器の工場を都市の中に建てていて、
  • muros, portas, classem reficiebant.
    • 城壁、城門、艦隊を修理していた。

35節[編集]

カエサルに対して、マッシリアが中立を通告

  • ①Evocat ad se Caesar Massilia XV primos;
    • カエサルは、マッシリアから主だった者たち15名を自分のところへ呼び寄せる。
  • cum his agit, ne initium inferendi belli a Massiliensibus oriatur;
    • マッシリアの住民たちによって戦争を引き起こす発端が生じることがないように、と彼らと交渉する。
  • debere eos Italiae totius auctoritatem sequi potius quam unius hominis voluntati obtemperare.
    • 彼らは、1人の男(=ポンペイウス)の意向に従うことよりも、むしろ(本土)イタリア全体の権威に従うべきである、と。
  • ②Reliqua, quae ad eorum sanandas mentes pertinere arbitrabatur, commemorat.
    • そのほかに、彼らの考えを正しくするために役立つと思われたことを、述べる。
  • ③Cuius orationem legati domum referunt
    • 彼(カエサル)の発言を、使節団は故郷に報告し、
  • atque ex auctoritate haec Caesari renuntiant:
    • (マッシリア市議会の)決議により、以下のことをカエサルに伝える。


マッシリアからカエサルへの通告

  • intellegere se divisum esse populum <Romanum> in partes duas;
    • 自分たち(マッシリア住民)は、<ローマの>民衆が二派に分裂していることを認識している。
      (訳注:<ローマの><Romanum> は写本にないが、挿入することが提案されている。)
  • neque sui iudicii neque suarum esse virium discernere, utra pars iustiorem habeat causam.
    • (二者のうち)どちらの派がより正当な(戦争の)大義を持っているのか、自分たちの判断力や武力では裁定しかねる。
  • ④Principes vero esse earum partium Cn. Pompeium et C. Caesarem patronos civitatis;
    • 実に、それらの派の指導者グナエウス・ポンペイウスとガイウス・カエサルは、(マッシリアの)都市共同体の庇護者である。
  • quorum alter agros Volcarum Arecomicorum et Helviorum publice iis concesserit,
    • 彼らの一方は、ウォルカエ・アレコミキ族とヘルウィイ族の領地を公けに彼ら(マッシリア住民)に引き渡してくれたし、
  • alter bello victos Sallyas attribuerit vectigaliaque auxerit.
    • 他方は、戦争で負かしたサッリュエス族を(マッシリアに)従属させて、年貢を増やしてくれた。
  • ⑤Quare paribus eorum beneficiis parem se quoque voluntatem tribuere debere
    • それゆえに、彼らの同等の恩恵に対しては、自分たち(マッシリア住民)もまた同等な厚意を与えるべきである。
  • et neutrum eorum contra alterum iuvare
    • 彼らのどちらにも、もう一方に抗して、助力するべきではないし、
  • aut urbe ac portibus recipere.
    • あるいは、都市や港に迎え入れるべきではない。

36節[編集]

マッシリアがドミティウスを迎えて戦争準備。激怒したカエサルが攻囲を準備

  • ①Haec dum inter eos aguntur,
    • これらが彼らの間で協議されている間に、
  • Domitius navibus Massiliam pervenit
  • atque ab iis receptus urbi praeficitur;
    • 彼ら(マッシリアの住民たち)に迎え入れられて、都市の長に任じられ、
  • summa ei belli administrandi permittitur.
    • 戦争遂行の最高権力が彼に委託される。
  • ②Eius imperio classem quoquo versus dimittunt;
    • 彼(ドミティウス)の命令により、(マッシリア住民たちは)艦隊をあらゆる方面に派遣する。
  • onerarias naves, quas ubique possunt, deprehendunt atque in portum deducunt,
    • どこであれ、できるかぎりの貨物船を捕獲して、港に移送する。
  • parum clavis aut materia atque armamentis instructis ad reliquas armandas reficiendasque utuntur;
    • かじあるいは材木や戦備が十分に装備されていなければ、残り(の船)を武装したり修理したりするために利用される。
  • ③frumenti quod inventum est, in publicum conferunt;
    • 見つけ出された穀物を、公けの貯蔵庫に運び入れる。
  • reliquas merces commeatusque ad obsidionem urbis, si accidat, reservant.
    • 残りの物品や糧秣を、勃発するかも知れない都市の包囲戦のために、保存しておく。


激怒したカエサルがマッシリア攻囲を準備

  • ④Quibus iniuriis permotus Caesar legiones tres Massiliam adducit;
    • それらの不当行為に動揺させられて、カエサルは3個軍団をマッシリアに差し向ける。
  • turres vineasque ad oppugnationem urbis agere,
    • 都市の攻囲のための櫓や工兵小屋を持ち込むこと、
  • naves longas Arelate numero XII facere instituit.
    • アレラテにおいて軍船12隻を建造することを決める。
      (訳注:アレラテ Arelate は現在のフランスのアルル。)
  • ⑤Quibus effectis armatisque diebus XXX, a qua die materia caesa est,
    • 材木が伐採されてから30日間でそれらを完成させて武装させ、
  • adductisque Massiliam his D. Brutum praeficit,
  • C. Trebonium legatum ad oppugnationem Massiliae relinquit.

ヒスパニア戦役(1)─イレルダの戦い①(前哨戦と洪水)[編集]

37節[編集]

カエサルの副官ファビウスが先遣隊を率いてヒスパニアに侵攻

  • ①Dum haec parat atque administrat,
    • (カエサルは)これらを準備し、遂行している間に、
  • C. Fabium legatum cum legionibus III, quas Narbone circumque ea loca hiemandi causa disposuerat,
    • 副官レガトゥスガイウス・ファビウスを、ナルボとその地の周辺に冬営するために配置していた3個軍団とともに、
  • in Hispaniam praemittit celeriterque saltus Pyrenaeos occupari iubet,
  • qui eo tempore ab L. Afranio legato praesidiis tenebantur.
    • それら(の隘路)はそのとき、(ポンペイウスの)副官ルキウス・アフラニウスの守備隊によって占拠されていた。
  • ②Reliquas legiones, quae longius hiemabant, subsequi iubet.
    • (ヒスパニアから離れている)より遠方で冬営していた他の諸軍団には、(ファビウスの)後に続くことを命じる。
  • ③Fabius, ut erat imperatum, adhibita celeritate praesidium ex saltu deiecit
    • ファビウスは、命令されていたように、迅速さをもって、(アフラニウスの)守備隊を隘路から追い払い、
  • magnisque itineribus ad exercitum Afrani contendit.
    • 強行軍で、アフラニウスの軍隊のところへ急行した。

38節[編集]

ポンペイウスの副官アフラニウスとペトレイウスらが迎撃態勢を整える

  • ①Adventu L.Vibulli Rufi, quem a Pompeio missum in Hispaniam demonstratum est,
    • ルキウス・ウィブッリウス・ルフス ──その者がポンペイウスによってヒスパニアに派遣されたと既に述べた── の到来によって、
      (訳注:34節を参照。)
  • Afranius et Petreius et Varro, legati Pompei,
  • quorum unus Hispaniam citeriorem <tribus legionibus, alter ulteriorem> a saltu Castulonensi ad Anam duabus legionibus,
    • 彼らのうちの一人(アフラニウス)は、ヒスパニア・キテリオルを<3個軍団で、もう一人(ウァッロ)はヒスパニア・ウルテリオルを>カストゥロの隘路からアナス川までを2個軍団で、
      (訳注:< >内は写本になく、挿入提案された箇所。アナス川 Anas は、現在のグアディアナ川。)
  • tertius ab Ana Vettonum agrum Lusitaniamque pari numero legionum optinebat,
    • 3人目(ペトレイウス)は、アナス川からウェットネス族の領地とルシタニアを同数(2個軍団)で保持していた。
      (訳注:ペトレイウスは、BC63年にカティリナの反乱を鎮圧した武功で名高い。)
  • ②officia inter se partiuntur, uti
    • (彼らは)互いに任務を(以下のように)割り当てる。
  • Petreius ex Lusitania per Vettones cum omnibus copiis ad Afranium proficiscatur,
    • ペトレイウスは、ルシタニアからウェットネス族領を通って、全軍勢とともにアフラニウスのところへ出発するように。
  • Varro cum iis, quas habebat, legionibus omnem ulteriorem Hispaniam tueatur.
    • ウァッロは、保有していた(2個)軍団とともに、ヒスパニア・ウルテリオル全域を保つように。
  • ③His rebus constitutis, equites auxiliaque
    • これらの事が取り決められて、騎兵と支援軍アウクシリア(の供出)が、
  • toti Lusitaniae a Petreio,
    • ペトレイウスによって全ルシタニアに対して(命令され)、
  • Celtiberiae, Cantabris barbarisque omnibus, qui ad Oceanum pertinent, ab Afranio imperantur.
    • アフラニウスによってケルティベリア、カンタブリ族と大洋オケアヌス(=大西洋に至るすべての蛮族に対して命令される。
      (訳注:ケルティベリア Celtiberia は半島中部にいたケルティベリ族の国。カンタブリ族 Cantabri らは半島北部の大西洋岸にいた。)
  • ④Quibus coactis celeriter Petreius per Vettones ad Afranium pervenit,
    • それらが集められて、ペトレイウスは速やかにウェットネス族領を通ってアフラニウスのところへ到着する。
  • constituuntque communi consilio bellum ad Ilerdam propter ipsius opportunitatem gerere.
    • (彼らは)共通の考えによって、その地の利の良さのためにイレルダの辺りで戦争を遂行することを取り決める。
      (訳注:イレルダ Ilerda は、現在名はカタルーニャ語リェイダ Lleida、カスティーリャ語でレリダ Lérida と呼ばれる。)

39節[編集]

両軍の動員兵力と構成。カエサルが金銭をばらまく

アフラニウスとペトレイウスの動員兵力

  • ①Erant, ut supra demonstratum est, legiones Afranii III, Petreii duae,
    • 前述したように、アフラニウスの軍団は3個、ペトレイウスのは2個であった。
  • praeterea scutatae citerioris provinciae et caetratae ulterioris Hispaniae cohortes circiter LXXX
    • さらに加えて、属州(ヒスパニア・)キテリオルの重装兵の、およびヒスパニア・ウルテリオルの軽装兵カエトラティ部隊コホルスが約80個、
      (訳注:写本では LXXX (80個)とあるが、アレシア古戦場の発掘者ストッフェル(Stoffel )は XXX (30個)と修正提案している。)
  • equitumque utriusque provinciae circiter V milia.
    • および双方の属州の騎兵が約5000騎であった。


カエサルの動員兵力

  • ②Caesar legiones in Hispaniam praemiserat [ad] sex [milia],
    • カエサルがヒスパニアに先遣していたのは、6個軍団と、
      (訳注:[ ]内の箇所は、写本にあるが、削除提案されている。)
  • auxilia peditum nulla,
    • 歩兵のない支援軍アウクシリアと、
      (訳注:写本では、歩兵は「ない」 nulla とあるが、5000、6000、10000などの修正提案が出されている。)
  • equitum III milia, <quae> omnibus superioribus bellis habuerat,
    • (カエサルが)以前のすべての戦争で保有していた騎兵3000騎と、
      (訳注:関係代名詞 <quae> は写本にないが、挿入提案されている。)
  • et parem ex Gallia numerum, quam ipse pacaverat,
    • (カエサル)自身が平定していたガリアから同数(の騎兵)と、
  • nominatim ex omnibus civitatibus nobilissimo et fortissimo quoque evocato,
    • すべての部族国家から名門で屈強でもある者を名指しで召集し、
  • huic optimi generis hominum ex Aquitanis montanisque, qui Galliam provinciam attingunt ****
    • これに、アクィタニア人たちや属州ガリア(・トランサルピナ)に隣接する山地の住人たちの内から最上層の人たちを ****。
      (訳注:**** 部分は写本の本文が壊れているが、「付け加えた」(<addiderat> または <adiecerat>)が挿入提案されている。)



カエサルが金銭をばらまく

  • ③Audierat Pompeium per Mauretaniam cum legionibus iter in Hispaniam facere confestimque esse venturum.
    • (カエサルは)ポンペイウスマウレタニアを通って諸軍団とともにヒスパニアに行軍しており、直ちに到着することになるであろう、と聞いていた。
  • Simul a tribunis militum centurionibusque mutuas pecunias sumpsit;
    • 同時に(カエサルは)、軍団次官トリブヌス・ミリトゥムたちや百人隊長ケントゥリオたちから、借金を借りた。
  • has exercitui distribuit.
    • これらを軍隊(の兵士たち)に分け与えた。
  • ④Quo facto duas res consecutus est,
    • (カエサルは)それをすることによって、二つの事を獲得した。
  • quod pignore animos centurionum devinxit
    • (借金の)担保によって、百人隊長たちを従わせたし、
  • et largitione militum voluntates redemit.
    • 気前よい施しによって、兵士たちの好意を買ったのである。

40節[編集]

アフラニウスとペトレイウスが、ファビウス麾下の部隊を襲撃

  • ①Fabius finitimarum civitatum animos litteris nuntiisque temptabat.
    • ファビウスは、近隣の部族の心を書状や伝令たちによって動かそうとしていた。
  • In Sicore flumine pontes effecerat duos distantes inter se milia passuum IIII.
    • (ファビウスは)シコリス川に、互いに4ローママイル(=約6 km)離れて二つの橋を架けてあった。
  • His pontibus pabulatum mittebat,
    • これらの橋により、糧秣徴発のために(人員を川の西岸から東岸に)遣わしていた。
  • quod ea quae citra flumen fuerant, superioribus diebus consumpserat.
    • というのも、川のこちら側(=西岸)にあったものを、それ以前の日々で費やしてしまっていたからだ。
  • ②Hoc idem fere atque eadem de causa Pompeiani exercitus duces faciebant,
    • これとほぼ同じことを同じ理由で、ポンペイウス派の軍隊の将帥たちも行なっていて、
  • crebroque inter se equestribus proeliis contendebant.
    • たびたび、互いに騎兵戦により争っていたのだった。
  • ③Huc cum cotidiana consuetudine egressae pabulatoribus praesidio propiore <ponte> legiones Fabianae duae flumen transissent,
    • ファビウス麾下の2個軍団が、毎日の習慣どおりに糧秣徴発員たちの護衛として近い方の<橋により>こちらへ出て来て川を渡っていたときに、
  • impedimentaque et omnis equitatus sequeretur,
    • (そのときに)輜重(隊)とすべての騎兵隊は後に続いていたのだが、
  • subito vi ventorum et aquae magnitudine pons est interruptus
    • 突然に(嵐のために)風と水の猛烈な勢いによって橋が破断されて、
  • et reliqua multitudo equitum interclusa.
    • 残りの大勢の騎兵が(東岸への渡河を)遮られてしまった。
  • ④Quo cognito a Petreio et Afranio ex aggere atque cratibus, quae flumine ferebantur,
    • それが、川を運ばれて来た土砂と編み細工から、ペトレイウスとアフラニウスによって知られてしまい、
  • celeriter suo ponte Afranius, quem oppido castrisque coniunctum habebat,
    • 速やかに、アフラニウスは(イレルダの)城市や陣営と隣接していた橋によって、
  • legiones IIII equitatumque omnem traiecit
    • 4個軍団と騎兵隊すべてを渡河させて、
  • duabusque Fabianis occurrit legionibus.
    • ファビウス麾下の2個軍団に襲いかかった。
  • ⑤Cuius adventu nuntiato
    • それら(アフラニウスの軍勢)の到来が報告されて、
  • L. Plancus, qui legionibus praeerat, necessaria re coactus
    • (ファビウス麾下の2個)軍団を統率していたルキウス・プランクスは、緊急事態に強いられて、
  • locum capit superiorem diversamque aciem in duas partes constituit,
    • より高い地点を占拠し、戦列を二正面に分散して配置して、
  • ne ab equitatu circumveniri posset.
    • (敵方の)騎兵隊によって包囲され得ないようにした。
  • ⑥Ita congressus impari numero magnos impetus legionum equitatusque sustinet.
    • こうして(味方の)劣った兵数で(敵方の)軍団と騎兵隊の猛攻に持ちこたえた。
  • ⑦Commisso ab equitibus proelio
    • 騎兵戦を戦わせていると、
  • signa legionum duarum procul ab utrisque conspiciuntur,
    • 遠方に、2個軍団の軍旗が(プランクスとアフラニウス)双方により視認された。
  • quas C. Fabius ulteriore ponte subsidio nostris miserat
    • それらは、ガイウス・ファビウスが遠い方の橋から我が方(プランクス隊)の増援に派遣していたもので、
  • suspicatus fore, id quod accidit,
    • (実際に)起こったことが、起こりうるのではないかと疑念を抱いて、
  • ut duces adversariorum occasione et beneficio fortunae ad nostros opprimendos uterentur.
    • (すなわち)敵対する将帥たちが我が方を急襲するべく好機と偶然の恩恵を利用するのではないかと(懸念して派遣したものだった)。
  • Quarum adventu proelium dirimitur,
    • それら(2個軍団)が到着して戦闘は終わりを告げ、
  • ac suas uterque legiones reducit in castra.
    • 双方ともに味方の諸軍団を陣営に撤収させた。

41節[編集]

カエサルが戦地に到着。イレルダ近郊で対峙しながら陣営を造り始める

  • ①Eo biduo Caesar cum equitibus DCCCC, quos sibi praesidio reliquerat, in castra pervenit.
    • 2日以内に、カエサルは、自らにとっての護衛隊として残しておいた騎兵900騎とともに、(ファビウスが造った)陣営に到着した。
  • Pons, qui fuerat tempestate interruptus, paene erat refectus;
    • 嵐により破断されていた橋は、ほとんど修復されており、
  • hunc noctu perfici iussit.
    • これが夜のうちに完成されることを命じた。
  • ②Ipse cognita locorum natura
    • (カエサル)自身は(イレルダ周辺の)地勢を認識すると、
  • ponti castrisque praesidio sex cohortes relinquit atque omnia impedimenta
    • 橋と陣営の守備隊として6個歩兵大隊コホルスとすべての輜重(隊)を残して、
  • et postero die omnibus copiis triplici instructa acie ad Ilerdam proficiscitur
    • 翌日には、全軍勢を三重の戦列に整列させて、イレルダ方面へ出発し、
  • et sub castris Afranii constitit et ibi paulisper sub armis moratus facit aequo loco pugnandi potestatem.
    • アフラニウスの陣営の下方に停止し、そこでしばらく武装したままで留まって、平地で戦う機会を作った。
  • Potestate facta Afranius copias educit et in medio colle sub castris constituit.
    • (戦う)機会が作られると、アフラニウスは軍勢を進発させて、陣営の下方の丘の中腹に配置した。
  • ③Caesar, ubi cognovit <per> Afranium stare, quo minus proelio dimicaretur,
    • カエサルは、戦闘が闘われないのはアフラニウスのせいだと認識すると、
      (訳注:per ~ stare quo minus …「…しないのは~のせい」。<per> は写本になく、最初の印刷本(editio princeps)で挿入されたもの。)
  • ab infimis radicibus montis intermissis circiter passibus CCCC castra facere constituit,
    • 山のいちばん下のふもとから約400パッスス(=約600m)間をあけて、陣営を造ることを決めて、
  • ④et, ne in opere faciundo milites repentino hostium incursu exterrerentur atque opere prohiberentur,
    • 工事の作業中に、兵士たちが不意に敵方の襲撃に脅かされたり、工事を妨げられたりしないようにした。
  • vallo muniri vetuit,
    • 防柵が巡らせれることを禁じた。
  • quod eminere et procul videri necesse erat,
    • というのも、(防柵は)目立つし、遠くから見られてしまうことが避けられなかったからである。
  • sed a fronte contra hostem pedum XV fossam fieri iussit.
    • しかし、敵に相対する前面に、15ペース(=約4.4m)(の幅)の堀を造ることを命じた。
  • ⑤Prima et secunda acies in armis, ut ab initio constituta erat, permanebat;
    • 第一・第二の戦列は、武装したままで、当初から配置されていたように、留まり続けていた。
  • post hos opus in occulto a III(tertia) acie fiebat.
    • これらの後ろで、工事がひそかに第三戦列によって行なわれていた。
  • Sic omne prius est perfectum, quam intellegeretur ab Afranio castra muniri.
    • こうして、すべて(の工事)が、アフラニウスによって陣営が防備を固められていることが把握されるより前に、完成した。
  • ⑥Sub vesperum Caesar intra hanc fossam legiones reducit
    • 夕方の頃に、カエサルは、この堀の内側に諸軍団を撤収させて、
  • atque ibi sub armis proxima nocte conquiescit.
    • そこで武装したまま、その夜は休息した。

42節[編集]

アフラニウスとペトレイウスの挑発に乗らず、新たな陣営を完成

  • ①Postero die omnem exercitum intra fossam continet
    • (カエサルは)翌日に全軍を堀の内側に引き留めておき、
  • et, quod longius erat agger petendus,
    • (陣営を造るための)土砂をより遠方に求めざるをえなかったので、
  • in praesentia similem rationem operis instituit
    • 目下のところは(前日と)同様の工事のやり方を採用して、
  • singulaque latera castrorum singulis attribuit legionibus munienda
    • 陣営のそれぞれの側面の防備を固めるために、1個ずつの軍団を割り当てて、
  • fossasque ad eandem magnitudinem perfici iubet;
    • 堀を同じ大きさで完成することを命じる。
  • reliquas legiones in armis expeditas contra hostem constituit.
    • 残りの(3個)軍団に軽武装をさせて、敵に相対して配置する。
      (訳注:軍団兵は、ふつうは重い甲冑などで頑丈に身を固める重装歩兵だが、この場合は甲冑などを省いた軽武装にしたのであろう。)
  • Afranius Petreiusque terrendi causa atque operis impediendi
    • アフラニウスとペトレイウスは(カエサルの軍勢を)威圧して工事を妨害するために、
  • copias suas ad infimas montis radices producunt et proelio lacessunt,
    • 自分たちの軍勢を山のいちばん下のふもとに進出させて、戦いを挑む。
  • neque idcirco Caesar opus intermittit
    • カエサルはそのために工事を中断することはしない。
  • confisus praesidio legionum trium et munitione fossae.
    • 3個軍団の守備と堀の防備を信頼してのことだ。
  • ③Illi non diu commorati nec longius ab infimo colle progressi
    • 彼ら(アフラニウスら)は長くは滞留せず、丘のいちばん下からさらに前進することもなく、
  • copias in castra reducunt.
    • 軍勢を陣営に撤収させる。
  • ④Tertio die Caesar vallo castra communit;
    • 3日目に、カエサルは防柵で陣営を堅固にする。
  • reliquas cohortes, quas in superioribus castris reliquerat, impedimentaque ad se traduci iubet.
    • (ファビウスが造った)以前の陣営に残してあった(6個)歩兵大隊コホルス、および輜重(隊)を、自分のもとへ連れて来ることを命じる。
      (訳注:41節②項を参照。)

43節[編集]

アフラニウス軍がカエサル軍を撃退して、急所の小山を占領

  • ①Erat inter oppidum Ilerdam et proximum collem, ubi castra Petreius atque Afranius habebant,
  • planities circiter passuum CCC,
    • 約300パッスス(=約450m)ほどの平地があって、
  • atque in hoc fere medio spatio tumulus erat paulo editior;
    • この広がりのほぼ真ん中に少し高い小山があった。
  • ②quem si occupavisset Caesar et communivisset,
    • もし、それをカエサルが占領して(堡塁で)固めたならば、
  • ab oppido et ponte et commeatu omni, quem in oppidum contulerant,
    • (イレルダの)城市や橋からも、城市に運び集めていたすべての糧秣からも、
  • se interclusurum adversarios confidebat.
    • 敵対者たちを遮断することになる、と(カエサルは)確信していた。
  • ③Hoc sperans legiones III ex castris educit
    • (カエサルは)これに期待をかけて、3個軍団を陣営から進発させて、
  • acieque in locis idoneis structa
    • 適当な場所に戦列アキエスを整列させて、
  • unius legionis antesignanos procurrere atque eum tumulum occupare iubet.
    • 1個軍団の軍旗前の散開歩兵アンテシグナヌスたちに、突進してその小山を占領することを命じる。
      (訳注:軍団は、三列横隊の密集陣形が中心だが、軍旗の前に散開して戦う前線部隊がいた。)
  • ④Qua re cognita
    • その事態が知られると、
  • celeriter quae in statione pro castris erant Afranii cohortes
    • 陣営の前で(歩哨として)立っていたアフラニウス勢の歩兵大隊コホルスが速やかに
  • breviore itinere ad eundem occupandum locum mittuntur.
    • (カエサル勢より)近い道によって、同じ場所を占領するために派遣される。
  • ⑤Contenditur proelio,
    • 戦闘が戦われ、
  • et, quod prius in tumulum Afraniani venerant,
    • アフラニウス勢が小山により先に来ていたので、
  • nostri repelluntur atque aliis submissis subsidiis terga vertere
    • 我が方(の散開歩兵)は撃退され、かつ(敵方の)別の増援部隊が派遣されたので、(我が方は敵に)背を向けて、
  • seque ad signa legionum recipere coguntur.
    • 諸軍団の軍旗のもとまで退却することを強いられる。

44節[編集]

カエサルが敗退の理由について弁解

  • ①Genus erat pugnae militum illorum, ut
    • あちらの兵士たちの戦いの方法は、以下のようであった。
  • magno impetu primo procurrerent, audacter locum caperent,
    • 初めに、猛烈な勢いで突進して来て、勇敢に場所を占めるが、
  • ordines suos non magnopere servarent, rari dispersique pugnarent;
    • 自軍の隊列を全力で維持することはなく、まばらに分散して戦っていた。
  • ②si premerentur, pedem referre et loco excedere non turpe existimarent,
    • もし、圧倒されたならば、きびすを返して、その場から退去することを恥辱と思わなかった。
  • cum Lusitanis reliquisque barbaris <barbaro> genere quodam pugnae adsuefacti;
    • ルシタニ族やほかの蛮族との、ある種の野蛮な戦いに慣らされていたのだ。
      (訳注:この箇所は、写本の文章が不完全なため、校訂者たちによってさまざまな挿入・修正提案がなされている。)
  • quod fere fit, quibus quisque in locis miles inveteraverit, ut multum earum regionum consuetudine moveatur.
    • というのも、その土地に根付いた兵士は誰でも、たいていはその地方の慣習に大いに影響を与えられるようになるからである。
  • ③Haec tum ratio nostros perturbavit insuetos huius generis pugnae;
    • そのとき、このやり方は、この種の戦いに慣れていない我が方(カエサル軍)を動揺させた。
  • circumiri enim sese ab aperto latere procurrentibus singulis arbitrabantur;
    • なぜなら、(敵勢が)一人ずつ突撃して来たときに、自分たちが開けた側面から包囲されると思っていたからだ。
      (訳注:軍団兵は、盾を持つ左手の側面は護られていたが、「開けた側面」すなわち、盾のない右手の側面から攻撃されることには弱かった。)
  • ipsi autem suos ordines servare
    • さらに、彼ら自身は、隊列を維持すること(をすべきと思っていたし)、
  • neque ab signis discedere neque sine gravi causa eum locum, quem ceperant, dimitti censuerant oportere.
    • 軍旗のもとから退去したり、重大な理由なしに占拠していたその持ち場を放棄したり、すべきではないと思っていたからだ。
  • ④Itaque, perturbatis antesignanis,
    • こうして、(カエサル軍の)軍旗前の散開歩兵アンテシグナヌスが動揺したので、
  • legio, quae in eo cornu constiterat, locum non tenuit atque in proximum collem sese recepit.
    • そのよくに留まっていた軍団は、その場を維持せずに、すぐ近くの丘陵に退却した。
      (訳注:「翼」cornu は軍事用語で、陣形の左右に張り出した部分をいう。)

45節[編集]

カエサルが増援し、イレルダの山麓で一進一退の激戦

  • ①Caesar paene omni acie perterrita,
    • カエサルは、ほとんどすべての戦列アキエスが戦慄したので、
  • quod praeter opinionem consuetudinemque acciderat,
    • そのことは、予想に反し、(これまでの)慣例にも反して起こっていたのだが、
  • cohortatus suos legionem nonam subsidio ducit;
    • 自軍を鼓舞して、第9軍団を増援部隊として率いて行く。
  • hostem insolenter atque acriter nostros insequentem supprimit
    • 敵が我が方を過度に激しく追撃しているのを阻んで、
  • rursusque terga vertere seque ad oppidum Ilerdam recipere et sub muro consistere cogit.
    • (敵に)再び背を向けさせ、城市イレルダの辺りまで退却させて、城壁のすぐ下に留まることを強いる。
  • ②Sed nonae legionis milites elati studio,
    • けれども、第9軍団の兵士たちは(戦う)意気込みにわれを忘れて、
  • dum sarcire acceptum detrimentum volunt,
    • 蒙っていた敗北を埋め合わせることを欲するうちに、
  • temere insecuti longius fugientis in locum iniquum progrediuntur
    • 向こう見ずに、より遠くへ逃げる(敵方の)者たちを追撃して、不利な場所に進出し、
  • et sub montem, in quo erat oppidum positum Ilerda, succedunt.
    • 城市イレルダが位置していた山のすぐ下に迫る。
  • ③Hinc se recipere cum vellent,
    • (我が方の第9軍団が)ここから引き上げようと欲していたときに、
  • rursus illi ex loco superiore nostros premebant.
    • 再び、あちらの者たちは、より高い所から我が方を追い込んでいた。
  • ④Praeruptus locus erat utraque ex parte derectus
    • (その)場所は、両側から真っ直ぐに切り立ったところであった。
  • ac tantum in latitudinem patebat, ut tres instructae cohortes eum locum explerent,
    • 整列した3個歩兵大隊コホルスがその場所をいっぱいにしてしまうほどの幅しか広がりがなかったので、
  • ut neque subsidia ab lateribus submitti
    • (切り立った崖になっている)側面から増援部隊が派遣されることもできず、
  • neque equites laborantibus usui esse possent.
    • 騎兵たちが(第9軍団の)苦戦している者たちに役立つこともできなかった。
  • ⑤Ab oppido autem declivis locus tenui fastigio vergebat in longitudinem passus circiter CCCC.
    • さらに、城市からは、傾斜地が約400パッスス(=約600m)にわたって、ゆるやかな斜面で(下に)延びていた。
  • ⑥Hac nostris erat receptus,
    • 我が方にとっては、これが退却路であった。
  • quod eo incitati studio inconsultius processerant;
    • そこに、意気込みに駆られて軽率に進出していたので、
  • hoc pugnabatur loco, et propter angustias iniquo et quod sub ipsis radicibus montis constiterant,
    • 狭さのゆえに、かつ、山のふもとのすぐ下に留まっていたので、この不利な場所で(退却戦が)戦われたが、
  • ut nullum frustra telum in eos mitteretur.
    • (敵方の)飛び道具は無駄なく投げ落とされていた。
  • Tamen virtute et patientia nitebantur atque omnia vulnera sustinebant.
    • にもかかわらず、(我が方の退却戦は)武勇と忍耐により闘われ、(第9軍団の兵士たちは)あらゆる負傷に耐えていた。
  • ⑦Augebantur illis copiae,
    • あちらの軍勢には(新たな兵士が)増強されて、
  • atque ex castris cohortes per oppidum crebro submittebantur,
    • 歩兵大隊コホルスが陣営から城市(イレルダ)を通って頻繁に派遣されて、
  • ut integri defessis succederent.
    • 無傷の者たちが、疲弊した者たちに取って代わっていた。
  • ⑧Hoc idem Caesar facere cogebatur,
    • カエサルもこれと同じことをせざるを得ず、
  • ut submissis in eundem locum cohortibus defessos reciperet.
    • 歩兵大隊コホルスが同じ場所に派遣されて、疲弊した者たちを退却させていた。

46節[編集]

イレルダの山麓の斜面で激しい退却戦

  • ①Hoc cum esset modo pugnatum continenter horis quinque
    • このようなやり方で5時間にわたって間断なく戦われたときに、
      (訳注:古代ローマでは不定時法が用いられていたので、ローマ人にとっての夏季の5時間は、現代人にとっての最大6時間以上にも達する。)
  • nostrique gravius a multitudine premerentur,
    • 我が方は、(敵方の)多勢によって激しく追い込まれていた。
  • consumptis omnibus telis
    • 飛び道具がすべて費やされてしまったので、
      (訳注:飛び道具とは、ピルムPilum)などの投げ槍の類いと思われる。)
  • gladiis destrictis impetum adversus montem in cohortis faciunt,
    • 長剣グラディウスを抜いて、山に向かって(敵方の)歩兵大隊コホルスに対して突撃を敢行し、
  • paucisque deiectis reliquos sese convertere cogunt.
    • (敵方の)若干名をたおして、残りの者たちに敗走を強いる。
  • ②Submotis sub murum cohortibus
    • (敵方の)歩兵大隊コホルスは城壁のすぐ下に退けられ、
  • ac nonnulla parte propter terrorem in oppidum compulsis
    • 少なからぬ部隊が恐怖のために城市(イレルダ)の中に追いやられたので、
  • facilis est nostris receptus datus.
    • 我が方には容易に退却(の機会)が与えられた。
  • ③Equitatus autem noster
    • 我が方の騎兵隊もまた、
  • ab utroque latere, etsi deiectis atque inferioribus locis constiterat,
    • 両側面の(崖下の)下り坂やより低い所に留まっていたが、
  • tamen summa in iugum virtute conititur,
    • けれども最高の勇気により尾根に登り切り、
  • atque inter duas acies perequitans
    • 二つの戦列の間を馬で駆け回りながら、
  • commodiorem ac tutiorem nostris receptum dat.
    • 我が方にとってより好都合でより安全な退却(の機会)を与える。


カエサル勢の死傷者

  • ④Ita vario certamine pugnatum est.
    • こうして、変化に富む戦闘が戦われた。
  • Nostri in primo congressu circiter LXX ceciderunt,
    • 我が方(カエサル勢)は、初めの交戦で約70名がたおれ、
  • in his Q. Fulginius ex primo hastato legionis XIIII,
    • この者らの中には、第14軍団のプリムス・ハスタトゥスのうちの一人であるクィントゥス・フルギニウスがいた。
      (訳注:プリムス・ハスタトゥス primus hastatus とは、第一歩兵大隊コホルスおよび第一戦列ハスタトゥスに属する歩兵小隊ケントゥリアを指揮する高位の百人隊長ケントゥリオである
      primus hastatus prior および primus hastatus posterior を指すと思われる。)
  • qui propter eximiam virtutem ex inferioribus ordinibus in eum locum pervenerat;
    • その者は、並外れた武勇のゆえに、より下の階級から彼の地位へ登り詰めていたのである。
  • vulnerantur amplius DC.
    • 600名より多くの者が負傷させられる。


アフラニウス勢の死者

  • ⑤Ex Afranianis interficiuntur
    • アフラニウス勢のうちで殺害されたのは、
  • T. Caecilius, primi pili centurio,
    • 首位百人隊長プリムス・ピルスであるティトゥス・カエキリウス、
  • et praeter eum centuriones IIII, milites amplius CC.
    • および彼以外に4名の百人隊長ケントゥリオと、200名より多くの兵士であった。

47節[編集]

戦いの優劣について、双方で評価が分かれる

  • ①Sed haec eius diei praefertur opinio, ut se utrique superiores discessisse existimarent:
    • その日(の激戦)について、優勢なものとして(戦場から)撤退したと評価していたような見解が、双方に好まれる。
  • ②Afraniani,
    • アフラニウス勢は、
  • quod, cum esse omnium iudicio inferiores viderentur,
    • 皆の判断で劣勢と思われたのに、
  • comminus tam diu stetissent
    • 白兵戦でこんなに長い間にわたって留まっていて、
  • et nostrorum impetum sustinuissent
    • 我が方(カエサル勢)の突撃に持ちこたえていたし、
  • et initio locum tumulumque tenuissent, quae causa pugnandi fuerat,
    • 戦闘する理由であった小山を初めに占拠していたし、
  • et nostros primo congressu terga vertere coegissent;
    • 我が方(カエサル勢)を初めの交戦で、背を向け(て逃げ)ることを強いたのだ、と。
  • ③nostri autem,
    • 我が方(カエサル勢)もまた、
  • quod iniquo loco atque impari congressi numero quinque horis proelium sustinuissent,
    • 不利な場所で、劣った兵員で5時間にわたって戦闘を持ちこたえていたし、
  • quod montem gladiis destrictis ascendissent,
    • 長剣グラディウスを抜いて、山を登っていたし、
  • quod ex loco superiore terga vertere adversarios coegissent atque in oppidum compulissent.
    • 敵方の者たちに、より高い所から背を向け(て逃げ)ることを強いて、城市の中に追いやっていたのだ、と。
  • ④Illi eum tumulum, pro quo pugnatum est,
    • あちらの者たち(=アフラニウス勢)は、そのために戦ったところの小山を
  • magnis operibus muniverunt praesidiumque ibi posuerunt.
    • 大きな堡塁で防備を固めて、そこに守備隊を配置した。

48節[編集]

突然の嵐と洪水により橋が壊れて、カエサル軍は孤立して糧秣不足に陥る

  • ① Accidit etiam repentinum incommodum biduo, quo haec gesta sunt.
    • さらに、これ(=戦闘)がなされてから2日のうちに、思いがけない災難が起こった。
  • Tanta enim tempestas cooritur, ut numquam illis locis maiores aquas fuisse constaret.
    • すなわち、かの地では決してなかったと周知であった洪水になるほどのたいへんな嵐が発生した。
  • ② Tum autem ex omnibus montibus nives proluit ac summas ripas fluminis superavit
    • そのうえ、そのときに、すべての山々から雪を洗い流して、川岸のてっぺんを超えて、
  • pontisque ambos, quos C. Fabius fecerat, uno die interrupit.
    • ガイウス・ファビウスが造っておいた両方の橋を、1日で破却したのだ。
      (訳注:ファビウスの橋については、40節①項を参照。)
  • ③ Quae res magnas difficultates exercitui Caesaris attulit.
    • その事態は、カエサルの軍隊にとって大きな困難をもたらした。
  • Castra enim, ut supra demonstratum est, cum essent inter flumina duo, Sicorim et Cingam, spatio milium XXX,
    • なぜなら(カエサルの)陣営は、前に述べたように、30ローママイル(=約45km)隔てた二つの川 シコリスとキンガの間にあったので、
      (訳注:シコリス川(Sicoris)は現在のセグレ川(Segre)、キンガ川(Cinga)は現在のシンカ川(Cinca)でセグレ川から枝分かれしている。
      「前に述べたように」に該当する箇所は見当たらないので、カエサルの思い違いか?)
  • neutrum horum transiri poterat,
    • これら(二つの川)のどちらも渡河されえず、
  • necessarioque omnes his angustiis continebantur.
    • やむを得ず(カエサル勢の)全員がこの狭い場所に閉じ込められたのだ。
  • ④ Neque civitates, quae ad Caesaris amicitiam accesserant, frumentum supportare,
    • カエサルとの友好関係に近寄っていた諸部族は、穀物を(カエサルのもとへ)輸送すること(ができなかったし)、
  • neque ii, qui pabulatum longius progressi erant, interclusi fluminibus reverti,
    • 糧秣を徴発するためにより遠くに進み出ていた者たちは(二つの)川に遮られて引き返すこと(ができなかったし)、
  • neque maximi commeatus, qui ex Italia Galliaque veniebant, in castra pervenire poterant.
    • イタリアやガリアからやって来た大量の糧秣は(カエサルの)陣営に到達することができなかった。
  • ⑤ Tempus erat autem difficillimum,
    • そのうえ、時季は(1年のうちで)最も困難であって、
  • quo neque frumenta in hibernis erant
    • (前年に収穫された)穀物は冬営地に(残って)なかったし、
  • neque multum a maturitate aberant, ac civitates exinanitae,
    • (今年の穀物は)まったく熟していないことはなかったが、部族(の倉)はからにされていた。
  • quod Afranius paene omne frumentum ante Caesaris adventum Ilerdam convexerat,
    • というのも、アフラニウスは、ほとんどすべての穀物を、カエサルの到来の前に、イレルダに運び集めていたからだ。
  • reliqui si quid fuerat, Caesar superioribus diebus consumpserat;
    • 残り物があったとしても、カエサルはこれまでの数日で使い果たしていた。
  • ⑥ pecora, quod secundum poterat esse inope re subsidium,
    • 家畜は、(食糧の)欠乏に好都合な助けに成り得たが、
  • propter bellum finitimae civitates longius removerant.
    • 戦争のゆえに、近隣の諸部族がより遠くに遠ざけていた。
  • ⑦ Qui erant pabulandi aut frumentandi causa progressi,
    • 糧秣徴発のため、あるいは穀物徴発のために進み出ていた者たちといえば、
  • hos levis armaturae Lusitani peritique earum regionum caetrati citerioris Hispaniae consectabantur;
    • 彼らを、軽武装のルシタニ族や、その地域を熟知するヒスパニア・キテリオルの軽装兵カエトラティたちが追撃した。
  • quibus erat proclive tranare flumen,
    • その者たちにとって、川を泳いで渡ることは容易であった。
  • quod consuetudo eorum omnium est, ut sine utribus ad exercitum non eant.
    • というのも、革の浮き袋なしには軍隊へ行かない、というのが彼ら全員の慣習であるからだ。

49節[編集]

他方、アフラニウス軍には、潤沢な糧秣があふれる

  • ①At exercitus Afranii omnium rerum abundabat copia.
    • 他方で、アフラニウスの軍隊は、あらゆる物が豊富にあふれていた。
  • Multum erat frumentum provisum et convectum superioribus temporibus,
    • 大量の穀物がこれまでの日々にあらかじめ準備されて、運び集められ、
  • multum ex omni provincia comportabatur;
    • 大量(の穀物)が属州(ヒスパニア・キテリオル)の全域から運び込まれていた。
  • magna copia pabuli suppetebat.
    • 大量のまぐさが十分にあった。
  • ②Harum omnium rerum facultates sine ullo periculo
    • これらのあらゆる物の(調達の)手段を、何らの危険なしに、
  • pons Ilerdae praebebat et loca trans flumen integra,
    • イレルダの(近郊にあるアフラニウス勢の)橋と、川の向こう側の手つかずの地域が提供していた。
  • quo omnino Caesar adire non poterat.
    • 後者には、カエサルはまったく近づくことができなかった。

50節[編集]

カエサル軍が橋の修繕を試みるが、洪水と敵からの攻撃に難渋する

  • ①Hae permanserunt aquae dies complures.
    • この洪水は、何日も続いた。
  • Conatus est Caesar reficere pontes,
    • カエサルは(二つの)橋を修繕することを試みた。
  • sed nec magnitudo fluminis permittebat,
    • しかし、川の水量が許さなかったし、
  • neque ad ripam dispositae cohortes adversariorum perfici patiebantur.
    • 岸辺に配置された敵方の諸歩兵大隊コホルスが(橋が)完成されることを黙認しなかった。
  • ②Quod illis prohibere erat facile
    • そのことを妨げることは、彼ら(アフラニウス軍)にとって、容易であった。
  • cum ipsius fluminis natura atque aquae magnitudine,
    • その川の状態や水量の多さによるのみならず、
      (訳注:cum ~ , tum …「~のみならず、…もまた」の構文)
  • tum quod ex totis ripis in unum atque angustum locum tela iaciebantur;
    • 岸の全域から一つの狭い所に飛び道具が投げつけられていたのだから。
  • ③atque erat difficile eodem tempore rapidissimo flumine opera perficere et tela vitare.
    • 川が急流で、工事を成し遂げることと、飛び道具を避けることは、同時には困難であった。

51節[編集]

カエサル方のガリア人後続部隊が川に阻まれ、アフラニウス軍に襲撃される

  • ①Nuntiatur Afranio magnos commeatus, qui iter habebant ad Caesarem, ad flumen constitisse.
    • カエサルのもとへ行軍していた大がかりな輜重隊が川辺で停止していると、アフラニウスに報告される。
  • Venerant eo sagittarii ex Rutenis, equites ex Gallia cum multis carris magnisque impedimentis, ut fert Gallica consuetudo.
    • そこには、ルテニ族から弓兵たちが、ガリアから騎兵たちが、ガリアの慣習が示すように、多数の荷車と大きな輜重とともにやって来ていた。
  • ②Erant praeterea cuiusque generis hominum milia circiter VI cum servis liberisque;
    • さらに、あらゆる類いの(階層の)人々が、奴隷たちや子供たちとともに約6000名いた。
  • sed nullus ordo, nullum imperium certum,
    • しかし、秩序もなく、確実な統帥もなく、
  • cum suo quisque consilio uteretur atque omnes sine timore
    • おのおのが自らの考えを採っていて、皆が怖れもなしに、
  • iter facerent usi superiorum temporum atque itinerum licentia.
    • それまでの旅の気ままさを享受しながら行軍していたのだ。
  • ③Erant complures honesti adulescentes, senatorum filii et ordinis equestris;
    • 多くの名門の若者たち、元老院議員の息子たちや騎士階級の者たちもいた。
  • erant legationes civitatum;
    • 部族国家の使節団がいた。
  • erant legati Caesaris.
    • カエサルの使節たちがいた。
  • Hos omnis flumina continebant.
    • これら皆(の通行)を(二つの)川が妨げていたのだ。
  • ④Ad hos opprimendos cum omni equitatu tribusque legionibus Afranius de nocte proficiscitur
    • この者たちを奇襲するために、アフラニウスはすべての騎兵隊と3個軍団とともに、夜のうちに出発して、
  • imprudentisque ante missis equitibus aggreditur.
    • (敵からの襲撃を)予期せぬ者たちを、先だって派遣していた騎兵たちにより襲撃した。
  • Celeriter sese tamen Galli equites expediunt proeliumque committunt.
    • それにもかからず、ガリア人騎兵たちは、速やかに(戦闘の)態勢を整えて、戦闘を開始する。
  • ⑤Ii, dum pari certamine res geri potuit,
    • 彼ら(ガリア人騎兵たち)は、互角の戦いで交戦し得た間に、
  • magnum hostium numerum pauci sustinuere;
    • 多勢の敵に、わずかな兵員で持ちこたえていたが、
  • sed ubi signa legionum appropinquare coeperunt,
    • けれども(アフラニウス勢の)軍団の軍旗が接近し始めるや否や、
  • paucis amissis sese in proximos montes conferunt.
    • わずかな者たちを失って、すぐ近くの山の中に身を寄せた。
  • ⑥Hoc pugnae tempus magnum attulit nostris ad salutem momentum;
    • 戦いのこの時間は、我が方にとって、安全のための大きな影響力をもたらした。
  • nacti enim spatium se in loca superiora receperunt.
    • すなわち(彼らは)猶予を得て、より高い所に退却したのだ。
  • Desiderati sunt eo die sagittarii circiter CC, equites pauci,
    • その日に(戦闘で)失われたのは、約200名の弓兵、わずかな騎兵、
  • calonum atque impedimentorum non magnus numerus.
    • 多くない数の軍属奴隷カロネスや輜重兵であった。
      (訳注:軍属奴隷については、ガリア戦記 第2巻 24節・26節~27節でも言及されている。)

52節[編集]

カエサル勢が糧秣の欠乏に苦しみもがく

  • ①His tamen omnibus annona crevit;
    • とはいえ、これらすべてにより、穀物価格が増大した。
  • quae fere res non solum inopia praesentis,
    • こういう事態はたいてい、現在の欠乏によってのみならず、
      (訳注:non solum ~, sed etiam …「~のみならず、…もまた…」)
  • sed etiam futuri temporis timore ingravescere consuevit.
    • 将来の時の懸念によってもまた、深刻になるのが常であった。
  • ②Iamque ad denarios L in singulos modios annona pervenerat,
    • すでに、穀物価格は1モディウス当たり50デナリウスにも達していた。
      (訳注:モディウス modius は穀物量の単位で、1モディウスは8.75リットルほど。デナリウスは銀貨。)
  • et militum vires inopia frumenti deminuerat,
    • 兵士たちの気力は、穀物の欠乏により減退しており、
  • atque incommoda in dies augebantur;
    • 損失は日を追うごとに増大させられていたのだ。
  • ③et tam paucis diebus magna erat rerum facta commutatio ac se fortuna inclinaverat,
    • かつ、これほどわずかな日々で事態の大きな変動がなされ、運命が傾いてしまっていたので、
      (訳注:tam ~, ut +[接続法] …「…ほど~だ」「これほど~なので、…ほどである」)
  • ut nostri magna inopia necessariarum rerum conflictarentur,
    • 我が方(=カエサル勢)は必需品の重大な欠乏に苦しめられていたほどであったし、
  • illi omnibus abundarent rebus superioresque haberentur.
    • あちら(アフラニウス勢)はあらゆる物があふれていて、勝勢と思われていたほどであった。
  • ④Caesar iis civitatibus, quae ad eius amicitiam accesserant,
    • カエサルは、彼との友好に近寄っていた部族国家に対して、
  • quod minor erat frumenti copia, pecus imperabat;
    • 穀物の供給が不足していたので、家畜(の供出)を要求していたし、
  • calones ad longinquiores civitates dimittebat;
    • 軍属奴隷カロネスたちをより遠方の部族国家のもとへ遣わしていた。
  • ipse praesentem inopiam quibus poterat subsidiis tutabatur.
    • (カエサル)自身は、(糧食・物資の)目下の欠乏を、できるかぎりの支援策により回避しようとしていたのだ。

53節[編集]

アフラニウスとペトレイウスらが、勝利の見通しを首都ローマの味方に伝える

  • ①Haec Afranius Petreiusque et eorum amici pleniora etiam atque uberiora Romam ad suos perscribebant.
    • これら(の状況)をアフラニウスとペトレイウスおよび彼らの友人たちは、(首都)ローマの味方のもとへ、あり余るほどの委細を尽くしたことばで書き知らせていた。
  • Multa rumores adfingebant, ut paene bellum confectum videretur.
    • 多くの噂を付け加えたので、戦争は(アフラニウスらの勝利で)ほとんど成し遂げられたと思われていたほどであった。
      (訳注:上の下線部は、写本によって細部がかなり異なる。)
  • ②Quibus litteris nuntiisque Romam perlatis
    • それらの手紙や知らせがローマにもたらされて、
  • magni domum concursus ad Afranium magnaeque gratulationes fiebant;
    • 大勢の者たちが、アフラニウスの家へ群がり集まって、大がかりな祝賀がなされていた。
  • multi ex Italia ad Cn. Pompeium proficiscebantur,
  • alii, ut principes talem nuntium attulisse,
    • ある者は、一番手としてこのような知らせをもたらした(と思われるように)、
  • alii ne eventum belli exspectasse aut ex omnibus novissimi venisse viderentur.
    • ある者は、戦争の結果(がどうなるか)を待ち構えていた、あるいは、びりっけつでやって来た、と皆から思われないように。

54節[編集]

古代ローマの軍船(ガレー船)の構成

カエサル勢がシコリス川の上流に新たな橋を架け、兵站線が回復する

  • ①Cum in his angustiis res esset,
    • 事態がこのような苦境にあったので、
  • atque omnes viae ab Afranianis militibus equitibusque obsiderentur,
    • かつ、あらゆる道がアフラニウス勢の兵士(=軍団兵)たちや騎兵たちによって封鎖されており、
  • nec pontes perfici possent,
    • (二つの)橋(の修繕)が成し遂げられていなかったので、
  • imperat militibus Caesar, ut naves faciant,
    • カエサルは、兵士たちに、船団を造るように命令していた。
  • cuius generis eum superioribus annis usus Britanniae docuerat.
  • ②Carinae ac prima statumina ex levi materia fiebant;
    • 竜骨キールや主要な肋材ろくざいは、軽い木材から作られていた。
  • reliquum corpus navium viminibus contextum coriis integebatur.
    • 残りの船体は、小枝で編み合わされていて、革で覆われていた。
  • ③Has perfectas carris iunctis devehit noctu milia passuum a castris XXII
    • 完成されたこれらを荷車でつないで、陣営から22ローママイル(=約33km)のところへ夜間に運び、
  • militesque his navibus flumen transportat
    • 兵士(=軍団兵)たちをこれらの船舶により川を渡らせて、
  • continentemque ripae collem improviso occupat.
    • 岸に隣接する丘陵を、不意に占領する。
  • ④Hunc celeriter, priusquam ab adversariis sentiatur, communit.
    • これを、敵方によって気付かれるより前に、速やかに(とりでで)固める。
  • Huc legionem postea transiecit
    • 後に(1個)軍団を渡らせて、
  • atque ex utraque parte pontem institutum biduo perficit.
    • (川の)両側から橋を架けて、2日間で完成する。
  • ⑤Ita commeatus et, qui frumenti causa processerant, tuto ad se recipit
    • こうして、(ガリア人の)輜重隊と、穀物のために進出していた者たちを、自分(カエサル)のもとへ引き上げさせて、
  • et rem frumentariam expedire incipit.
    • 糧秣事情がはかどり始める。

55節[編集]

カエサル勢が、川の東岸でアフラニウス勢を略奪・殺戮する

  • ①Eodem die equitum magnam partem flumen traiecit.
    • (カエサルは)同じ日に、騎兵の大部分に川を渡らせた。
  • Qui inopinantes pabulatores et sine ullo dissipatos timore aggressi
    • 彼ら(騎兵たち)は、(カエサル勢の渡河に)気付かない(敵方の)糧秣徴発員たちが何の恐れもなしに散らばっているのを、襲撃して、
  • magnum numerum iumentorum atque hominum intercipiunt
    • 多数の駄獣だじゅうや人間どもを略奪する。
      (訳注:非武装の糧秣徴発員たちは、奴隷など身分の低い者たちで、奴隷として売却する目的で捕らえられたのであろう。)
  • cohortibusque caetratis subsidio missis
    • (敵方の)軽装兵カエトラティ部隊コホルスが増援として派遣されて来ると、
  • scienter in duas partes sese distribuunt,
    • 巧みに二手に分かれて、
  • alii ut praedae praesidio sint,
    • ある者たちは、略奪したものに対する護衛になるようにし、
  • alii ut venientibus resistant atque eos propellant,
    • 他の者たちは、(敵方の)やって来た者たちに抵抗して、彼らを追い払うようにする。
  • ②unamque cohortem, quae temere ante ceteras extra aciem procurrerat,
    • (敵方の)1個部隊コホルスが軽率にも、他の隊より前に、戦列の外に突出して来ていたのを、
  • seclusam ab reliquis circumveniunt atque interficiunt,
    • 残りの隊から切り離して取り囲んで、殺戮さつりくし、
  • incolumesque cum magna praeda eodem ponte in castra revertuntur.
    • (カエサルの騎兵たちは)無傷のままで、多くの略奪したものとともに、同じ橋を通って陣営に引き返す。

マッシリア攻囲戦(2)[編集]

56節[編集]

ドミティウスが、マッシリアから提供された艦隊を率いて進発

  • ①Dum haec ad Ilerdam geruntur,
    • これらがイレルダの近辺で行われている間に、
  • Massilienses usi L. Domitii consilio navis longas expediunt numero XVII,
  • quarum erant XI tectae.
    • それらのうち11隻は、甲板で覆われていた。
      (訳注:tectus, -a, -um:形容詞「(屋根・甲板で)覆われた」)
  • ②Multa huc minora navigia addunt,
    • (マッシリア人たちは)これに、多くのより小形の船舶を付け加えて、
  • ut ipsa multitudine nostra classis terreatur.
    • 数の多さそのものにより、我が方(カエサル勢)の艦隊が威圧されるようにする。
  • Magnum numerum sagittariorum, magnum Albicorum, de quibus supra demonstratum est, imponunt
    • 多数の弓兵たち、前に述べられたアルビキ族の多数、を(船団に)乗せて、
      (アルビキ族については、34節④項で言及されている。)
  • atque hos praemiis pollicitationibusque incitant.
    • 彼らを報酬と約束により駆り立てる。
  • ③Certas sibi deposcit navis Domitius
    • ドミティウスは(マッシリア人たちに対して)自分へのある程度の船団を要求して、
  • atque has colonis pastoribusque, quos secum adduxerat, complet.
    • これら(の船団)に、(ドミティウスの領地から)一緒に連れて来ていた農夫たちや羊飼いたちを詰め込む。
  • ④Sic omnibus rebus instructa classe
    • このようにして、艦隊があらゆるもので装備されて、
  • magna fiducia ad nostras navis procedunt, quibus praeerat D. Brutus.
    • (ドミティウスは)大いなる自信をもって、デキムス・ブルトゥスが統率していた我が方(カエサル勢)の船団の方へ、進発する。
  • Hae ad insulam, quae est contra Massiliam, stationes obtinebant.
    • これら(ブルトゥスの船団)は、マッシリアの向かい側にある島において、停泊地を保持していたのだ。

57節[編集]

海戦において敵船に接舷するために用いられていた、多数のかぎを備えたもりの一種(英語 grappling hook)。
本節②項で言及されている マヌス(manus)やハルパゴ(harpago)はいずれもこのようなものと思われる。

カエサルの部将ブルトゥスも艦隊を出港させ、マッシリア方のアルビキ族と激突

  • ①Erat multo inferior numero navium Brutus;
    • ブルトゥスは、船の数においては(マッシリア勢に)はるかに劣っていた。
  • sed electos ex omnibus legionibus fortissimos viros, antesignanos, centuriones,
    • けれども、すべての軍団の中から、最も勇敢な勇士たち、軍旗前の散開歩兵アンテシグナヌスたち、百人隊長ケントゥリオたちを
  • Caesar ei classi attribuerat,
    • カエサルが彼(ブルトゥス)の艦隊に割り当てていた。
  • qui sibi id muneris depoposcerant.
    • その者たちは、その務めを自らに要求していたのだった。
  • ②Hi manus ferreas atque harpagones paraverant
    • 彼らは、鉄製の引掛けマヌスや、接舷用のハルパゴを用意していて、
  • magnoque numero pilorum, tragularum reliquorumque telorum se instruxerant.
    • 投槍ピルム紐付き投槍トラグラやそのほかの飛道具の多数でもって、自らを武装していた。
      (訳注:ピルムpilum)はローマ兵が多用した投槍で、敵の盾に突き刺さると先端が折れ曲がって抜きにくくなった。
      トラグラ(tragula)はガリアヒスパニア独特の投槍で、柄に革紐が付いていて投げ方を工夫することができた。)
  • Ita cognito hostium adventu
    • こうして、敵方の到来を知ると、
  • suas naves ex portu educunt, cum Massiliensibus confligunt.
    • (彼らは)自軍の船団を港から進発させて、マッシリア人たちと激突する。
  • ③Pugnatum est utrimque fortissime atque acerrime;
    • (海戦は)双方からとても勇敢かつ激烈に戦われたが、
  • neque multum Albici nostris virtute cedebant,
    • アルビキ族は武勇において我が方(=ブルトゥス勢)にあまり劣らなかった。
  • homines asperi et montani, exercitati in armis;
    • 粗野な山の民で、武具に熟練していたのだ。
  • ④atque hi modo digressi <a> Massiliensibus
    • そして、彼ら(アルビキ族)はたった今マッシリア人たちから離れて来たばかりで、
  • recentem eorum pollicitationem animis continebant,
    • 彼ら(マッシリア人たち)の最近の約束を心に留めていた。
  • pastoresque Domitii spe libertatis excitati
    • ドミティウス(が領地から連れて来ていた配下)の羊飼いたちは(従属の身分からの)解放への希望により駆り立てられて
  • sub oculis domini suam probare operam studebant.
    • 主人(ドミティウス)の眼下で自らの尽力を証明することに熱中していた。

58節[編集]

ブルトゥスが、操船に巧みなマッシリア艦隊を、接舷戦で打ち負かす

  • ①Ipsi Massilienses et celeritate navium et scientia gubernatorum confisi
    • マッシリア人たち自身は、船団の速さと操舵手たちの老練さを信頼して、
  • nostros eludebant impetusque eorum <non> excipiebant
    • 我が方(=ブルトゥスの艦隊)をかわし、その攻勢を受け止めなかった。
      (訳注:<non> は写本になく、挿入提案されたもの)
  • et, quoad licebat latiore uti spatio,
    • (マッシリア艦隊は)より広大な海域を利用することが可能であった限りは、
  • producta longius acie circumvenire nostros
    • 戦列をより長く延ばして、我が方を取り囲むことを(努力し)、
  • aut pluribus navibus adoriri singulas
    • あるいは、多くの船団で(ブルトゥス側の船の)個々に襲いかかったり、
  • aut remos transcurrentes detergere,
    • あるいは、(敵船の横を)通過しながらかいを粉砕することを、
  • si possent, contendebant;
    • もし可能であれば、努力していた。
  • ②cum propius erat necessario ventum,
    • やむを得ずに、より近くに接近してしまったときは、
  • ab scientia gubernatorum atque artificiis
    • 操舵手の老練さや熟達さによって、
  • ad virtutem montanorum confugiebant.
    • 山の民(アルビキ族)の武勇を頼みとしていた。


  • ③<Nostri> cum minus exercitatis remigibus minusque peritis gubernatoribus utebantur,
    • <我が方(ブルトゥス艦隊)は>あまり熟練していない漕ぎ手たちや、あまり熟知していない操舵手たちを用いていたので、
      (訳注:<Nostri> <我が方> は写本になく、挿入提案されたもの。)
  • qui repente ex onerariis navibus erant producti
    • ──彼らは、思いがけなく貨物船から連れて来られた──
  • nequedum etiam vocabulis armamentorum cognitis,
    • まだ、(帆船の)操帆用索具アルマメンタの名称さえ知らなかったのだが、
  • tum etiam tarditate et gravitate navium impediebantur;
    • 船団の(動きの)鈍さや重さにより妨げられていた。
  • factae enim subito ex humida materia non eundem usum celeritatis habebant.
    • (ブルトゥスの船団は)にわかに湿った材木から造られていて、(敵船と)同じ速さを持たなかった。


  • ④Itaque, dum locus comminus pugnandi daretur,
    • こうして、白兵戦で戦う場を与えられる間、
  • aequo animo singulas binis navibus obiciebant
    • (ブルトゥス艦隊は)冷静な心でもって、個々(の船)を(敵方の)二隻ずつに対して対峙させていて、
  • atque iniecta manu ferrea et retenta utraque nave
    • 鉄製のひっかけマヌスを投げ入れて、双方の船をしっかり捉まえ、
  • diversi pugnabant atque in hostium naves transcendebant
    • (二手に)分散して、敵方の船に乗り移っていた。
  • et magno numero Albicorum et pastorum interfecto
    • アルビキ族や羊飼いの多数を殺戮さつりくして、
  • partem navium deprimunt,
    • 船団の一部を沈没させ、
  • nonnullas cum hominibus capiunt,
    • 少なからぬもの(=船)を人員とともに拿捕だほして、
  • reliquas in portum compellunt.
    • 残り(の船団)を港の中に追いやる。


  • ⑤Eo die naves Massiliensium cum his, quae sunt captae, intereunt VIIII.
    • その日に、マッシリア人たちの船団は、拿捕されたものも併せて、9隻が失われる。

ヒスパニア戦役(2)─イレルダの戦い②(アフラニウス勢の南下とカエサル勢の追撃)[編集]

59節[編集]

アフラニウス勢の糧秣徴発員たちが、カエサルの騎兵隊を怖れるようになる

  • ①Hoc primum Caesari ad Ilerdam nuntiatur;
    • これ(=海戦の勝利)が、まずイレルダ辺りのカエサルに報告される。
  • simul perfecto ponte celeriter fortuna mutatur.
    • 同じ頃に(上流に架けていた)橋が完成して、急速に境遇が変わる。
      (訳注:54節④項で、2日間で完成したと述べている橋のことであろう。)
  • ②Illi perterriti virtute equitum
    • あの者たち(アフラニウス側の糧秣徴発員たち)は、(カエサルの)騎兵たちの勇猛さに震撼させられ、
  • minus libere, minus audacter vagabantur,
    • より自由に、より大胆に動き回ることはなくなっていた。
  • alias non longo a castris progressi spatio, ut celerem receptum haberent, angustius pabulabantur,
    • あるときは、すばやい退却を行うように、陣営からあまり遠距離に進出せずに、より狭いところで糧秣を徴発していたし、
      (訳注:aliās ~, aliās …「あるときは~、あるときは…」)
  • alias longiore circuitu custodias stationesque equitum vitabant,
    • あるときは、より遠い回り道をすることにより(カエサルの)騎兵たちの歩哨ほしょうや前哨部隊を避けていた。
  • aut aliquo accepto detrimento
    • あるいは何らかの損失をこうむったり、
  • aut procul equitatu viso ex medio itinere proiectis sarcinis fugiebant.
    • あるいは遠くに(カエサルの)騎兵隊を望見するや、道中から荷物を捨てて逃げ去っていた。
  • ③Postremo et plures intermittere dies
    • ついには、かなりの日々の間をあけて、
  • et praeter consuetudinem omnium noctu constituerant pabulari.
    • あらゆる慣習に逆らって、夜間に糧秣徴発することを決めていた。

60節[編集]

イレルダ周辺の諸部族が、アフラニウスから離反してカエサルに帰順し出す

  • ①Interim Oscenses et Calagurritani, qui erant [cum] Oscensibus contributi,
    • そうこうするうちに、オスカの住民たち、およびオスカの住民たち(の傘下)に組み込まれていたカラグッリスの住民たちが、
      (訳注:オスカOsca)は、ローマ人に支配される前はボルスカン Bolskan といい、現在のウエスカ市 Huesca で、
      イレルダ(現在のリェイダ市)の北西ほぼ100kmに位置する。カラグッリスCalagurris)は、現在のカラオラ市 Calahorra で、
      イレルダの北西およそ230kmに位置し、オスカの西方およそ130kmに位置する。いずれも原バスク系住民と考えられる。
      セルトリウスがローマ国家に反旗を翻したセルトリウス戦争のとき、オスカはセルトリウスの本拠地となり、カラグッリスも彼に従った。
      ポンペイウスがこの反乱を鎮圧したときに、カラグッリスを苛烈な兵糧攻めによって攻め落とした指揮官がほかならぬアフラニウスであった。
  • mittunt ad eum legatos
    • 彼(カエサル)のもとへ使節たちを遣わして、
  • seseque imperata facturos pollicentur.
    • 自分たちは(カエサルによって)命令されたことを実行するであろう、と約束する。
  • ②Hos Tarraconenses et Iacetani et Ausetani
    • この者たちに、タッラコの住民たちや、ヤケタニ族や、アウセタニ族が、
      (訳注:タッラコTarraco)は、現在のタラゴナ市で、イレルダの南東およそ70kmに位置する、地中海に面する港町である。
      ヤケタニ族Iacetani)はピレネー山脈のふもとのヤカ Iaca (現在のハカ)を首邑としていた原バスク系部族と考えられる。
      アウセタニ族Ausetani)は、イレルダの東方150km周辺に住んでいたイベリア人部族と考えられている。)
  • et paucis post diebus Illurgavonenses, qui flumen Hiberum attingunt, insequuntur.
    • そして数日後には、ヒベルス川に隣接するイッルルガウォネンセス族が、後に続く。
      (訳注:イッルルガウォネンセス族 Illurgavonenses は、イレルカウォネス族Ilercavones)などの呼称で知られ、
      ヒベルス川(現在のエブロ川)南岸の地中海岸に住んでいたイベリア人部族と考えられている。
  • ③Petit ab his omnibus, ut se frumento iuvent.
    • (カエサルは)彼ら皆に、自分(カエサル)を穀物で援助するように頼む。
  • Pollicentur atque omnibus undique conquisitis iumentis in castra deportant.
    • (諸部族は)約束して、すべて(の穀物)をいたるところから調達して、駄獣だじゅうによって(カエサルの)陣営に運ぶ。
  • ④Transit etiam cohors Illurgavonensis ad eum cognito civitatis consilio
    • (アフラニウス勢に従軍していた)イッルルガォネンセス族の支援部隊コホルスさえも、部族国家の判断を知るや彼(カエサル)の方へ寝返り、
      (訳注:コホルス(cohors)という単語は、軍団兵(=ローマ人)については歩兵大隊を指すが、
      従軍する同盟部族については支援部隊(英 auxiliary troopsを指すと思われる。)
  • et signa ex statione transfert.
    • (アフラニウス勢の)前哨地スタティオから撤収する。
      (訳注:signa transferre「軍旗を移す」=「(宿営地を)移す」)
  • ⑤Magna celeriter commutatio rerum.
    • 急速に、事態の大きな変動(が生じる)。
  • Perfecto ponte,
    • (上流の)橋が完成すると、
  • magnis quinque civitatibus ad amicitiam adiunctis,
    • 五つの大きな部族国家が(カエサルとの)同盟アミキティアを結び、
  • expedita re frumentaria,
    • 糧秣の事態が解決して、
  • exstinctis rumoribus de auxiliis legionum, quae cum Pompeio per Mauretaniam venire dicebantur,
  • multae longinquiores civitates ab Afranio desciscunt
    • より遠方の多くの部族国家がアフラニウスから離反して、
  • et Caesaris amicitiam sequuntur.
    • カエサルとの同盟に従う。

61節[編集]

アフラニウスとペトレイウスが、戦場をヒベルス川南岸へ移そうと企てる

  • ①Quibus rebus perterritis animis adversariorum
    • それらの事態に敵方の心は震撼しんかんさせられ、
  • Caesar, ne semper magno circuitu per pontem equitatus esset mittendus,
    • カエサルは、騎兵隊がいつも大きな回り道をして(かなり上流の)橋を通って派兵されるべきことにならないようにと、
  • nactus idoneum locum,
    • 適切な場所を見つけて、
  • fossas pedum XXX in latitudinem complures facere instituit,
    • 30ペース(=約9m)の幅のいくつもの水路を作り始めた。
  • quibus partem aliquam Sicoris averteret
    • それにより、シコリス川のある程度の部分の向きを変えて、
  • vadumque in eo flumine efficeret.
    • (水位を下げることにより)その川の中に浅瀬を作り出そうとしていた。
  • ②His paene effectis
    • これらがほとんど完成すると、
  • magnum in timorem Afranius Petreiusque perveniunt,
  • ne omnino frumento pabuloque intercluderentur,
    • 穀物やまぐさからまったく切り離されるのではないか、と。
  • quod multum Caesar equitatu valebat.
    • というのも、カエサルは騎兵隊において大いに力を持っていたからである。
  • Itaque constituunt ipsi locis excedere et in Celtiberiam bellum transferre.
    • こうして(アフラニウスらは)彼ら自身がその場を後にしてケルティベリア人のところに戦争(の場)を移すことを決意する。
      (訳注:ケルティベリア人はヒベルス川(エブロ川)南岸の高原地帯に居住していたと考えられている。)
  • ③Huic consilio suffragabatur etiam illa res,
    • この作戦を、以下の事情さえもが支えていた。
  • quod ex duobus contrariis generibus
    • 二つの相反するグループのうち、
  • quae superiore bello cum [L.] Sertorio steterant civitates,
    • 一方の部族国家群は、かつての戦争において、セルトリウスに味方をしていたが、
      (訳注:stare cum ~「~の側に立つ」=「~の味方をする」)
      (訳注:写本には [L.](ルキウス) とあるが、誤りなので、削除提案されている。)
  • victae nomen atque imperium absentis <Pompei> timebant,
    • 打ち負かされて、(この場に)不在である者<ポンペイウス>の名前と威令を怖れていた。
      (訳注:<Pompei><ポンペイウスの> は写本にはないが、挿入提案されている。)
  • quae in amicitia manserant [Pompei], magnis affectae beneficiis eum diligebant;
    • もう一方(の部族国家郡)は、[ポンペイウスとの]同盟アミキティアに留まっていて、大きな恩恵を与えられて、彼(ポンペイウス)を尊重していた。
      (訳注:[Pompei][ポンペイウスの] は写本にあるが、削除して上の箇所に挿入するように提案されている。)
  • Caesaris autem erat in barbaris nomen obscurius.
    • これに対して、カエサルの名前は、蛮族においてはより知られていなかった。
  • ④Hic magnos equitatus magnaque auxilia exspectabant
    • (アフラニウスらは)そこに、大勢の騎兵隊や、大勢の支援軍アウクシリアを期待していたし、
  • et suis locis bellum in hiemem ducere cogitabant.
    • 味方の土地で、戦争を冬まで引き延ばすことを考えていた。
  • ⑤Hoc inito consilio
    • この作戦が着手されると、
  • toto flumine Hibero naves conquiri et Octogesam adduci iubent.
    • ヒベルス川の全流域から船が徴発されることと、オクトゲサに運ばれることを命じる。
      (訳注:写本の地名の周辺が壊れており、「オクトゲサに」 Octogesam または「オトゲサに」 Otogesa と修正されている。
      Octogesa オクトゲサ(オトゲサ)の場所については諸説があるが、ヒベルス川(エブロ川)とシコリス川(セグレ川)の合流地点の周辺と考えられている。)
  • Id erat oppidum positum ad Hiberum
    • その城市オッピドゥムはヒベルス川のたもとに位置していて、
  • miliaque passuum a castris aberat XX.
    • (アフラニウスの)陣営から20ローママイル(=約30km)離れていた。
      (訳注:写本では XX (20マイル)だが、XXX (30マイル)とする修正提案もある。)
  • ⑥Ad eum locum fluminis navibus iunctis pontem imperant fieri
    • (アフラニウスらは)川のその場所に、船団をつないだ橋が造られることを命令して、
  • legionesque duas flumen Sicorim transducunt
    • 2個軍団にシコリス川を(イレルダのある西岸から東岸へ)渡らせて、
  • castraque muniunt vallo pedum XII.
    • 陣営を12ペース(=約3.6m)の防柵で固める。

62節[編集]

カエサルがシコリス川に浅瀬を作るが、アフラニウスもヒベルス川に橋を架ける

  • ①Qua re per exploratores cognita
    • その事を斥候エクスプロラトルを通じて知ると、
  • summo labore militum Caesar continuato diem noctemque opere in flumine avertendo
    • カエサルは、兵士たちの最大限の労苦により、川の向きを転じる工事を昼も夜も継続して、
  • huc iam reduxerat rem,
    • やっと、ある程度まで事態を復旧させたので、
      (訳注:huc ~ ut …「…するほどまで~」)
  • ut equites, etsi difficulter atque aegre fiebat, possent tamen atque auderent flumen transire,
    • たとえ(工事が)かろうじて、やっとのことでなされたとしても、それでも騎兵たちは渡河を敢行することが可能になったほどであった。
  • ②pedites vero tantummodo umeris ac summo pectore exstarent
    • だが、歩兵たちは、ただ肩や、胸のてっぺんを(水面から)突き出しただけで、
  • et cum altitudine aquae tum etiam rapiditate fluminis ad transeundum impedirentur.
    • 水の深さによって、川の(流れの)速さによってさえも、渡ることを妨げられたのであった。
  • ③Sed tamen eodem fere tempore
    • しかしながら、ほぼ同時であった。
  • pons in Hibero prope effectus nuntiabatur,
    • ヒベルス川に橋がほとんど完成したと報告されたのと、
  • et in Sicori vadum reperiebatur.
    • シコリス川に浅瀬が見出されたのが。

63節[編集]

アフラニウス勢がヒベルス川方面へ発つが、カエサルの騎兵隊が喰らい付く

  • ①Iam vero eo magis illi maturandum iter existimabant.
    • 他方で、あの者ら(アフラニウスとペトレイウス)は、もはやより一層のこと(ヒベルス川方面への)行軍を急ぐべきだと判断していた。
  • Itaque duabus auxiliaribus cohortibus Ilerdae praesidio relictis
    • こうして、支援軍アウクシリアの2個支援部隊コホルスイレルダへ守備隊として残して、
  • omnibus copiis Sicorim transeunt
    • (残りの)全軍勢でシコリス川を(イレルダのある西岸から東岸へ)渡り、
  • et cum duabus legionibus, quas superioribus diebus traduxerant, castra coniungunt.
    • 先日(東岸に)渡らせていた2個軍団に、陣営を隣接させる。
  • ②Relinquebatur Caesari nihil, nisi uti equitatu agmen adversariorum male haberet et carperet.
    • カエサルには、敵方の騎兵隊の隊列を困らせたり悩ませたりするよりほかには、何ら(の選択肢が)残されていなかった。
  • Pons enim ipsius magnum circuitum habebat,
    • なぜなら、(カエサルが架橋させた)自身の橋により大きな回り道をしていたので、
  • ut multo breviore itinere illi ad Hiberum pervenire possent.
    • あの者たち(アフラニウス勢)ははるかに近道によりヒベルス川のところへ到達することができていたのだ。
  • ③Equites ab eo missi flumen transeunt,
    • 彼(カエサル)によって派遣された騎兵たちは、(シコリス)川(の浅瀬)を渡り、
  • et, cum de tertia vigilia Petreius atque Afranius castra movissent,
    • 第三夜警時の頃に、ペトレイウスとアフラニウスが陣営を移動しようとしていたときに、
      (訳注:第三夜警時は、真夜中から日の出までの間の前半の時間帯を指す。『古代ローマの不定時法』を参照。)
  • repente sese ad novissimum agmen ostendunt,
    • 不意に(アフラニウス勢の)隊列の最後尾のところに姿を現わして、
  • et magna multitudine circumfusa morari atque iter impedire incipiunt.
    • 大勢で取り囲んで、(隊列を)遅らせて、行軍を妨害し始める。

64節[編集]

カエサルの軍団兵もシコリス渡河を敢行して、アフラニウス勢に追い付く

  • ①Prima luce
    • 夜明けに、
  • ex superioribus locis, quae Caesaris castris erant coniuncta, cernebatur
    • カエサルの陣営に隣接していた高地からは、(以下のことが)見分けられていた。
  • equitatus nostri proelio novissimos illorum premi vehementer
    • 我が方(カエサル勢)の騎兵隊の戦闘により、あの者たち(アフラニウス勢)の後衛が猛烈に圧倒されていることや、
  • ac nonnumquam <non> sustinere extremum agmen atque interrumpi,
    • (アフラニウス勢の)隊列の最後尾がしばしば(カエサルの騎兵隊の攻撃を)持ちこたえられずに(隊列のほかの部分と)分断されたり、
      (訳注:<non> は写本にはないが、挿入提案されている。)
  • alias inferri signa et universarum cohortium impetu nostros propelli,
    • あるときは(アフラニウス勢の)諸歩兵大隊コホルスの進軍と総突撃により我が方が撃退されたこと、
      (訳注:signa inferre または signa ferre「軍旗を運ぶ」=「進軍する」。なお、inferri はζ系写本の記述で、その他の写本では ferri となっている。)
  • dein rursus conversos insequi.
    • それから(アフラニウス勢の)再び向きを変えて(行軍して)いる者たちを(カエサルの騎兵隊が)追撃していること、が(カエサル側から見分けられていた)。
  • ②Totis vero castris milites circulari
    • しかしながら、(カエサルの)陣営のいたるところで、兵士(=軍団兵)たちが群れをなして、
  • et dolere hostem ex manibus dimitti, bellum non necessario longius duci,
    • 敵が交戦マヌスから逃れて、戦争が不必要に長く引き延ばされることを、残念がり、
      (訳注:non necessario はσ系写本の記述で、β系写本では単に necessario となっている。)
  • centurionesque tribunosque militum adire
    • 百人隊長ケントゥリオたちや軍団次官トリブヌス・ミリトゥムたちに近寄って
      (訳注:-que はT写本にはない。)
  • atque obsecrare, ut per eos Caesar certior fieret, ne labori suo neu periculo parceret;
    • (軍団兵たちが)自らの労苦も危険も惜しまないのを、彼らを通じてカエサルに知らされるように、懇願する。
  • paratos esse sese,
    • 自分たち(軍団兵)は、覚悟ができている。
  • posse et audere ea transire flumen, qua traductus esset equitatus.
    • 騎兵隊が渡らせられていた(シコリス)川を渡ることができるし、敢行する、と。
  • ③Quorum studio et vocibus excitatus
    • 彼らの意気込みと言葉に駆り立てられて、
  • Caesar, etsi timebat tantae magnitudini fluminis exercitum obicere,
    • カエサルは、軍隊(=軍団兵)を川のこれほどの大量(の水)にさらすことを心配していたとはいえ、
  • conandum tamen atque experiendum iudicat.
    • それでも(軍団兵による渡河を)試みて努力するべきだと判断する。
  • ④Itaque infirmiores milites ex omnibus centuriis deligi iubet, quorum aut animus aut vires videbantur sustinere non posse.
    • こうして、すべての歩兵小隊ケントゥリアから、気力あるいは体力が持ちこたえられないと思われる柔弱な兵士たちを選び出すことを命じる。
  • ⑤Hos cum legione una praesidio castris relinquit;
    • この(柔弱な)者らを、1個軍団とともに、陣営の守備隊として残留させ、
  • reliquas legiones expeditas educit
    • 残りの諸軍団を軽武装のまま進発させて、
  • magnoque numero iumentorum in flumine supra atque infra constituto traducit exercitum.
    • 多数の駄獣だじゅうを川の中の上流側と下流側に配置して、(その中間地点で)軍隊を渡らせる。
  • ⑥Paucis ex his militibus arma in flumine abrepta <sunt, ipsi> ab equitatu excipiuntur ac sublevantur;
    • この兵士たちのうちのわずかな者らにとっては武器が川(の流れ)にさらわれ<て、彼ら自身は>騎兵隊によって受け止められ、支えられる。
  • interit tamen nemo.
    • けれども、誰も落命していない。
  • Traducto incolumi exercitu
    • 軍隊を無事に渡らせると、
  • copias instruit triplicemque aciem ducere incipit.
    • (カエサルは)軍勢を整列させて、三重の戦列トリプレクス・アキエスとして指揮し始める。
  • ⑦Ac tantum fuit in militibus studii,
    • そしてそれから、兵士たちにおいては意気込みがたいへんなものだったので、
  • ut milium VI(sex) ad iter addito circuitu
    • 行軍に6ローママイル(=約9km)の回り道を加えて、
  • magnaque ad vadum fluminis mora interposita
    • かつ、川の浅瀬のところでかなりの時間モラが経過してしまったが、
  • eos, qui de tertia vigilia exissent,
    • 第三夜警時から出陣していた彼らが
      (訳注:第三夜警時は、真夜中から日の出までの間の前半の時間帯を指す。『古代ローマの不定時法』を参照。)
  • ante horam diei VIIII (nōnam) consequerentur.
    • 昼間の第9時の前には(アフラニウス勢に)追いついていたのであった。
      (訳注:第9時は、正午から日の入までの中間頃であった。『古代ローマの不定時法』を参照。)

65節[編集]

カエサル勢がアフラニウス勢の南下を妨害し、両軍が宿営する

  • ①Quos ubi Afranius procul visos cum Petreio conspexit,
    • 彼ら(カエサル勢)が姿を見せたのを遠くからアフラニウスがペトレイウスとともに視認するや否や、
  • nova re perterritus locis superioribus constitit aciemque instruit.
    • 不意の事態に戦慄せんりつして、より高い所に停止して、戦列アキエスを整える。
  • ②Caesar in campis exercitum reficit, ne defessum proelio obiciat;
    • カエサルは、疲弊した者を戦闘にさらさないように、平原において軍隊に元気を回復させる。
  • rursus conantes progredi insequitur et moratur.
    • (それから、敵方の)再び前進することを試みる者たちを、追撃して遅らせた。
  • ③Illi necessario maturius quam constituerant, castra ponunt.
    • あの者たち(アフラニウス勢)はやむを得ず、決めていたよりも早くに、陣営を設置する。
  • Suberant enim montes
    • なぜなら、山々がすぐ迫っていたし、
  • atque a milibus passuum V itinera difficilia atque angusta excipiebant.
    • 5ローママイル(=約7.5km)離れて、困難で狭い道が待ち受けていたからだった。
  • ④Hos montes intrare cupiebant,
    • 彼らは(以下の目的で)山々に入り込むことを切望していた。
  • ut equitatum effugerent Caesaris
    • カエサルの騎兵隊(の追撃)を逃れて、
  • praesidiisque in angustiis collocatis exercitum itinere prohiberent,
    • 隘路あいろに守備隊を配置して(カエサルの)軍隊が進軍するのを防ぎ、
  • ipsi sine periculo ac timore Hiberum copias traducerent.
  • ⑤Quod fuit illis conandum atque omni ratione efficiendum;
    • そのことは、彼ら(アフラニウス勢)にとって試みられるべきであり、あらゆる方法でやり遂げられるべきであった。
  • sed totius diei pugna atque itineris labore defessi
    • けれども、一日中の戦いと行軍の労苦により疲弊していたので、
  • rem in posterum diem distulerunt.
    • 事を翌日に延期した。
  • Caesar quoque in proximo colle castra ponit.
    • カエサルもまた、すぐ近くの丘陵に陣営を設置する。

66節[編集]

カエサルがアフラニウス勢の深夜の出発を妨害。両軍が地勢を偵察

  • ①Media circiter nocte
    • 真夜中の頃に、
  • iis qui aquandi causa longius a castris processerant, ab equitibus correptis,
    • 水を汲むために(アフラニウスの)陣営からより遠くへ進み出ていた者たちが(カエサルの)騎兵たちに引っ捕まえられて、
  • fit ab his certior Caesar duces adversariorum silentio copias castris educere.
    • カエサルは、この者らから、敵方の将帥たちが(夜の)静寂のうちに軍勢を陣営から進発させようとしていることを知る。
  • Quo cognito
    • それを知ると、
  • signum dari iubet et vasa militari more conclamari.
    • (戦闘の)号令を出すことと、荷造りをするように軍隊式に合図すること、を命じる。
      (訳注:vasa conclamare「荷造りをするように合図する」)
  • ②Illi exaudito clamore
    • あの者たち(アフラニウス勢)は、(カエサル勢の)どよめきを聞き取ると、
  • veriti ne noctu impediti sub onere confligere cogerentur
    • 夜間に、手荷物の下で(手を)ふさがれたまま(敵と)闘うことを強いられるのではないかと怖れ、
  • aut ne ab equitatu Caesaris in angustiis tenerentur,
    • あるいは、カエサルの騎兵隊によって隘路を占拠されるのではないか(と怖れて)、
  • iter supprimunt copiasque in castris continent.
    • 行軍を差し控えて、軍勢を陣営の中に留める。
  • ③Postero die
    • 翌日(の朝)に、
  • Petreius cum paucis equitibus occulte ad exploranda loca proficiscitur.
    • ペトレイウスはわずかな騎兵たちとともに、ひそかに土地を偵察するために出発する。
  • Hoc idem fit ex castris Caesaris.
    • これと同じことがカエサルの陣営からもなされる。
  • Mittitur L. Decidius Saxa cum paucis, qui loci naturam perspiciat.
    • ルキウス・デキディウス・サクサが、わずかな者たちとともに、地勢を調べるために遣わされる。
  • ④Uterque idem suis renuntiat:
    • 双方とも、自軍に同じことを報告する。
  • V milia passuum proxima intercedere itineris campestris,
    • すぐ前の5ローママイル(=約7.5km)の平原の道をはさんで、
  • inde excipere loca aspera et montuosa;
    • そこからはデコボコした山の多い土地が待ち受けている。
  • qui prior has angustias occupaverit, ab hoc hostem prohiberi nihil esse negotii.
    • これらの隘路を先に占領した者たちが敵を妨げることに、何の面倒もない、と。

67節[編集]

アフラニウスとペトレイウスの陣営で、出発時刻について討議される

  • ① Disputatur in consilio a Petreio atque Afranio et tempus profectionis quaeritur.
    • 作戦会議において、ペトレイウスとアフラニウスによって議論され、出発の時刻が問われる。
  • Plerique censebant, ut noctu iter facerent;
    • 大半の者たちは、夜のうちに行軍するようにと意見していた。
  • posse prius ad angustias veniri, quam sentiretur.
    • (カエサル勢に)感づかれるよりも早めに(ヒベルス川へ通じる)隘路のところに到着することができるのだ、と。


昼間に出発すべきだ

  • ② Alii, quod pridie noctu conclamatum esset in Caesaris castris,
    • 別の者たちは、前日の夜にカエサルの陣営においてどよめかれていたことは、
  • argumenti sumebant loco non posse clam exiri.
    • その場からこっそりと出て行くことができない証拠の類いである、と主張していた。
  • ③ Circumfundi noctu equitatum Caesaris
    • カエサルの騎兵隊が夜のうちに展開して、
      (訳注:circumfundi=受動の不定法「展開すること」)
  • atque omnia loca atque itinera obsidere;
    • (ヒベルス川に通じる)すべての場所と道を封鎖してしまう。
  • nocturnaque proelia esse vitanda,
    • 夜間の戦闘は、避けるべきである。
  • quod perterritus miles in civili dissensione timori magis quam religioni consulere consuerit.
    • というのも、(ローマ)市民どうしの激突に怖気おじけづいた兵士たちは、(軍隊の)規律レリギオよりも怖れティモルを気にかけるのが常であったからだ。
      (訳注:consuerit は、動詞 cōnsuēscō の接続法・完了・3人称単数形 cōnsuēverit において、r の前の ve が脱落した形態。)
  • ④ At lucem multum per se pudorem omnium oculis,
    • それに対して、(昼間の)光はそれ自体が、皆のまなざしに対する忸怩じくじたる思いを大いに(引き起こし)、
  • multum etiam tribunorum militum et centurionum praesentium afferre;
    • その場にいる軍団次官トリブヌス・ミリトゥム百人隊長ケントゥリオ(のまなざしに対する忸怩たる思い)さえも大いに引き起こす。
  • quibus rebus coerceri milites et in officio contineri soleant.
    • そのような事情により、兵士たちは抑制されて、職責オッフィキウムのうちに保たれる傾向にある。
  • ⑤ Quare omni ratione esse interdiu perrumpendum;
    • それゆえに、あらゆる方策をもって、昼間に突き進むべきである。
  • etsi aliquo accepto detrimento, tamen summa exercitus salva locum, quem petant, capi posse.
    • たとえ何らかの損失をこうむったとしても、それでも軍隊の総勢が無事なままで、求める地点を占領することができる、と。
      (訳注:etsi ~ tamen …「たとえ~としても、それでも…」)
  • ⑥ Haec vincit in consilio sententia,
    • この意見が会議において(議論に)勝ち、
  • et prima luce postridie constituunt proficisci.
    • 翌日の夜明けに出発することを取り決める。

68節[編集]

カエサル勢が、先回りをするために道なき岩場を登り始める

  • ① Caesar, exploratis regionibus,
    • カエサルは、土地を偵察していたので、
  • albente caelo omnes copias castris educit
    • (夜明けに)空が白みかけると、すべての軍勢を陣営から進発させて、
  • magnoque circuitu nullo certo itinere exercitum ducit.
    • 大きな回り道をして、何ら確かな道がないところで、軍隊を率いて行く。
  • Nam quae itinera ad Hiberum atque Octogesam pertinebant,
    • なぜなら、ヒベルス(川)やオクトゲサの辺りに達していた道は、
      (訳注:61節⑤項の訳注で述べたように、オクトゲサ(Octogesa)という地名は、オトゲサ(Otogesa)とする説もある。)
  • castris hostium oppositis tenebantur.
    • 敵方の陣営が置かれて掌握されていたからだ。
  • ② Ipsi erant transcendendae valles maximae ac difficillimae,
    • (その道なき道には、カエサル)自身にとって登り越えなければならない大きくて困難な谷があって、
  • saxa multis locis praerupta iter impediebant,
    • 切り立った岩が多い場所が、行軍を妨げていたので、
  • ut arma per manus necessario traderentur,
    • やむを得ずに、武器は手で渡され、
  • militesque inermes sublevatique alii ab aliis
    • 兵士たちは非武装のまま、互いに手助けされて、
  • magnam partem itineris conficerent.
    • 行軍の大部分を成し遂げていた。
  • ③ Sed hunc laborem recusabat nemo,
    • けれども、この労苦を誰も拒まなかった、
  • quod eum omnium laborum finem fore existimabant,
    • というのも、それが皆の労苦の終わりになるであろうと(将兵たちは)考えていたからだ。
  • si hostem Hibero intercludere et frumento prohibere potuissent.
    • もしも、敵をヒベルス(川)から遮断して穀物(の補給)を妨げることができたなら(の話だが)。

69節[編集]

アフラニウス勢が、カエサル勢の先回りに気付いて動き出す

  • ① Ac primo Afraniani milites visendi causa laeti ex castris procurrebant
    • そして、アフラニウス勢の兵士たちは、初めは(カエサル勢を)眺めるために喜んで陣営から走り出ていたし、
  • contumeliosisque vocibus prosequebantur nostros:
    • 我が方(カエサル勢)をあざけりのことばで見送っていた。
  • necessarii victus inopia coactos fugere atque ad Ilerdam reverti.
    • (カエサル勢は)必要な食糧の不足に強いられて逃げ出して、イレルダの方へ引き返すのだ、と。
  • Erat enim iter a proposito diversum, contrariamque in partem iri videbatur.
    • なぜなら、(カエサル勢の)行軍は目的地からはそっぽを向いていて、反対の方面に行くように思われたからだ。
      (訳注:īrī は、不規則動詞 の受動・不定法・現在で、非人称の用法。)
  • ② Duces vero eorum consilium suum laudibus ferebant, quod se castris tenuissent;
    • 確かに、彼ら(兵士たち)の将帥ドゥクスたち(アフラニウスら)は、陣営に留まった自分たちの作戦計画を誉めそやしていた。
  • multumque eorum opinionem adiuvabat,
    • 彼らの見解を大いに補強していたのは、
  • quod sine iumentis impedimentisque ad iter profectos videbant,
    • (カエサル勢が)駄獣だじゅう輜重しちょうもなしに行軍に出発した、と見ていたことで、
  • ut non posse inopiam diutius sustinere confiderent.
    • (その結果として、カエサル勢が食糧の)不足により長く持ちこたえられない、と確信していたのだ。
  • ③ Sed, ubi paulatim retorqueri agmen ad dextram conspexerunt
    • けれども、(カエサル勢の)隊列アグメンが次第に右側へそれて行くことを視認して、
  • iamque primos superare regionem castrorum animum adverterunt,
    • かつ、すでに(カエサル勢の)先頭が(アフラニウスらの)陣営のある地域を通り過ぎるのを注視するや否や、
  • nemo erat adeo tardus aut fugiens laboris, quin statim castris exeundum atque occurrendum putaret.
    • すぐに陣営から出陣して(カエサル勢に)対抗するべきだと思わないほど、ぐずぐずしたり労苦を避けようとする者は、誰もいなかった。
    • (=誰もぐずぐずしたり労苦を避けようとせずに、すぐに陣営から出陣してカエサル勢に対抗するべきだと思った。)
      (訳注:nemo erat adeo ~, quin ・・・「・・・でないほど~な者は、誰もいなかった」)
  • ④ Conclamatur ad arma,
    • (アフラニウスの陣営で)武器を取るように号令されて、
  • atque omnes copiae, paucis praesidio relictis cohortibus, exeunt
    • 若干の歩兵大隊コホルスを守備隊として残すと、すべての軍勢が出陣して、
  • rectoque ad Hiberum itinere contendunt.

70節[編集]

カエサル勢が先回りに成功するが、アフラニウス勢は路線変更に失敗

  • ① Erat in celeritate omne positum certamen, utri prius angustias montesque occuparent;
    • 両者のどちらがより早く隘路と山々を占領するか、という競争は、まったく(行軍の)速さのうちにかかっていた。
  • sed exercitum Caesaris viarum difficultates tardabant,
    • けれども、カエサルの軍隊を道程の困難さが妨げていたし、
  • Afranii copias equitatus Caesaris insequens morabatur.
    • アフラニウスの軍勢をカエサルの騎兵隊が追撃して遅らせていた。
  • ② Res tamen ab Afranianis huc erat necessario deducta,
    • しかしながら、アフラニウス勢によって、事態はやむなく以下(のようなのっぴきならない状況)に導かれていた。
  • ut, si priores montes, quos petebant, attigissent, ipsi periculum vitarent,
    • もし(アフラニウス勢が)向かっていた山々により早く到達してしまうと、自身は危険を免れるが、
  • impedimenta totius exercitus cohortesque in castris relictas servare non possent;
    • 陣営に残しておいた軍隊全体の輜重歩兵大隊コホルスを救助することができないのだ。
  • quibus interclusis exercitu Caesaris auxilium ferri nulla ratione poterat.
    • カエサルの軍隊により、それらからさえぎられて、いかなる手段をもってしても救援をもたらすことができない。
  • ③ Confecit prior iter Caesar atque ex magnis rupibus nactus planitiem
    • カエサルは、より早い行軍を成し遂げて、大きな岩場から平らな土地を見つけて、
  • in hac contra hostem aciem instruit.
    • そこにおいて、敵に対して戦列アキエスを整える。
  • Afranius, cum ab equitatu novissimum agmen premeretur et ante se hostem videret,
    • アフラニウスは、(カエサルの)騎兵隊によって隊列の最後尾を圧迫されて、自分たちの前方にも敵を見たので、
  • collem quendam nactus ibi constitit.
    • とある丘陵を見つけて、そこに留まった。
  • ④ Ex eo loco IIII caetratorum cohortes in montem, qui erat in conspectu omnium excelsissimus, mittit.
    • その場から、見渡すかぎりにおいて一際ひときわ高くそびえていた山に、軽装兵カエトラティの4個支援部隊コホルスを派遣する。
  • Hunc magno cursu concitatos iubet occupare,
    • 大急ぎで突進して、これを占領することを命じる。
  • eo consilio, uti ipse eodem omnibus copiis contenderet
    • 彼の作戦は、自身は同じところに全軍勢をあげて急行して、
  • et mutato itinere iugis O(c)togesam perveniret.
    • 進路を変更して、尾根づたいにオ(ク)トゲサに到達する、というものであった。
  • ⑤ Hunc cum obliquo itinere caetrati peterent,
    • これ(=山)に軽装兵カエトラティたちが間道により向かっていたときに、
  • conspicatus equitatus Caesaris in cohortes impetum fecit;
    • カエサルの騎兵隊が気づいて、(軽装兵カエトラティの)支援部隊コホルスを襲撃する。
  • nec minimam partem temporis equitum vim caetrati sustinere potuerunt
    • (カエサルの)騎兵たちの攻勢に、(アフラニウスの)軽装兵カエトラティたちは瞬時も持ちこたえることができずに、
  • omnesque ab eis circumventi in conspectu utriusque exercitus interficiuntur.
    • 軽装兵カエトラティの)全員が彼ら(カエサルの騎兵たち)に取り囲まれて、両軍の見ている中で殺戮さつりくされたのだ。

ヒスパニア戦役(3)─イレルダの戦い③(和平の機運)[編集]

71節[編集]

カエサルの形勢判断。戦いをけしかける将校たち

  • ① Erat occasio bene gerendae rei.
    • (このとき、まさに)戦役レスをうまくやり遂げる好機であった。
  • Neque vero id Caesarem fugiebat,
    • 確かに、カエサルは(以下の)そのことに気付いていた。
      (訳注:id Caesarem fugere「それがカエサルを逃れる」=「カエサルがそれに気付かない」
      neque id Caesarem fugere「それがカエサルを逃れない」=「カエサルがそれに気付かないではない」)
  • tanto sub oculis accepto detrimento perterritum exercitum sustinere non posse,
    • 眼下にこれほどの損害をこうむって、ひるんだ(アフラニウス麾下きかの)軍隊が持ちこたえられないことに。
  • praesertim circumdatum undique equitatu, cum in loco aequo atque aperto confligeretur;
    • とりわけ、平らで開けた場所で戦われていた場合は、(アフラニウス勢はカエサルの)騎兵隊により至る所から包囲されてしまうことに。
  • idque ex omnibus partibus ab eo flagitabatur.
    • そのことは、すべての部隊パルスから彼(カエサル)に迫られていた。


戦いをけしかける将校たち

  • ② Concurrebant legati, centuriones tribunique militum:
    • 副官レガトゥスたち、百人隊長ケントゥリオたち、軍団次官トリブヌス・ミリトゥムたちが群がり集まっていた。
  • ne dubitaret proelium committere;
    • (カエサルが)戦闘を開始することをためらいませんように、と。
  • omnium esse militum paratissimos animos.
    • すべての兵士たちの心は(戦う)覚悟ができています、と。
  • ③ Afranianos contra multis rebus sui timoris signa misisse:
    • これに反して、アフラニウス勢は、多くの事柄において、自分たちの怖れティモル徴候シグヌムを発していました。
  • quod suis non subvenissent,
    • 配下の者たちを助けに行かなかったこと、
  • quod de colle non decederent,
    • (閉じこもった)丘から立ち退かなかったこと、
  • quod vix equitum incursus sustinerent collatisque in unum locum signis conferti neque ordines neque signa servarent.
    • (カエサルの)騎兵たちの突撃をほとんど持ちこたえられず、軍旗を1か所に運び集めて密集し、隊形オルドも軍旗も保っていられなかったことです。
  • ④ Quod si iniquitatem loci timeret,
    • だがもし、(カエサルが)地形の不利を心配するのならば、
  • datum iri tamen aliquo loco pugnandi facultatem,
    • それでも(別の)何らかの場所で戦う機会が与えられるでありましょう。
  • quod certe inde decedendum esset Afranio nec sine aqua permanere posset.
    • というのも、確かにアフラニウスにとってはそこから退去しなければならず、飲み水なくして(その丘に)留まることはできないのですから。

72節[編集]

カエサルが、血気にはやる将兵たちを抑えて、無血の勝利に傾く

  • ① Caesar in eam spem venerat se sine pugna et sine volnere suorum rem conficere posse,
    • カエサルは、戦いプグナもなく、配下の者たちを負傷させることもなしに戦役レスを成し遂げられるという希望を持つようになっていた。
  • quod re frumentaria adversarios interclusisset.
    • というのも、敵方の糧秣供給を遮断していたのだから。
  • ② Cur etiam secundo proelio aliquos ex suis amitteret?
    • (それならば)一体なぜ、戦闘プロエリウムに応じて何人もの配下の者たちを失わねばならないのか?
  • cur volnerari pateretur optime meritos de se milites?
    • なぜ、自分(カエサル)のために最も立派に功績をあげてくれた兵士たちが傷付けられることを、耐え忍べるのか?
      (訳注:bene mereor de ~「~のために立派に功績をあげる」;optimēbene の最上級。meritōsmereō の完了受動分詞の男性・複数・対格形)
  • cur denique Fortunam periclitaretur?
    • 要するに、なぜ、運命(の女神)フォルトゥナを試さねばならないのか?
  • praesertim cum non minus esset imperatoris consilio superare quam gladio.
    • とりわけ、将軍インペラトルたるものは、長剣グラディウスにおいてと同様に判断力コンシリウムにおいても優っていなければならないのに。
      (訳注:non minus ~ quam ・・・「・・・と同じように~」)
  • ③ Movebatur etiam misericordia civium, quos interficiendos videbat;
    • そのうえ(カエサルは、自分の敵として)誅殺ちゅうさつされるべきと思っていた(ローマ人の)市民キウィスたちへの哀れみに揺り動かされていた。
  • quibus salvis atque incolumibus rem obtinere malebat.
    • その者たちが安全かつ無事なままで、戦役レスに成功することをむしろ望んでいた。
  • ④ Hoc consilium Caesaris plerisque non probabatur;
    • カエサルのこの判断は、大半の者たちにとって賛同されるものではなかった。
  • milites vero palam inter se loquebantur,
    • 実際、兵士たちは、おおっぴらに互いに話し合った。
  • quoniam talis occasio victoriae dimitteretur, etiam cum vellet Caesar, sese non esse pugnaturos.
    • (カエサルが)これほどの勝利の好機を逸するというのだから、カエサルが(決戦を)望んだとしても、自分たちは戦うまいぞ、と。
  • Ille in sua sententia perseverat
    • 彼(カエサル)は、自らの考えに固執していて、
  • et paulum ex eo loco digreditur, ut timorem adversariis minuat.
    • 敵方の怖れティモルを和らげるように、(布陣していた)その場からいくらか遠ざかった。
  • ⑤ Petreius atque Afranius oblata facultate in castra sese referunt.
    • ペトレイウスとアフラニウスは、(カエサル勢の後退により、帰陣の)機会をもたらされたので、陣営に戻る。
  • Caesar praesidiis in montibus dispositis
    • カエサルは、山々に守備隊を配置して、
  • omni ad Hiberum intercluso itinere,
  • quam proxime potest hostium castris, castra communit.
    • 敵方の陣営にできるだけ近づけて、陣営を固める。

73節[編集]

アフラニウスらが今後の方策を協議し、給水のための防塁の築造に着手

  • ① Postero die duces adversariorum perturbati,
    • 翌日に、敵方の将帥ドゥクスたちは動揺していたが、
  • quod omnem rei frumentariae fluminisque Hiberi spem dimiserant,
    • というのも、糧秣供給とヒベルス川へのすべての希望を逸していたからで、
  • de reliquis rebus consultabant.
    • ほかの事柄について相談していた。
  • ② Erat unum iter, Ilerdam si reverti vellent,
    • もし、イレルダへ引き返すことを望むのであれば、一つの道があったし、
  • alterum, si Tarraconem peterent.
    • もし、タッラコへ向かう(ことを望む)のであれば、もう一つの道があった。
      (訳注:タッラコについては、60節②項で、カエサル側についたことが述べられている。)
  • Haec consiliantibus eis nuntiantur aquatores ab equitatu premi nostro.
    • これを協議している彼らに、水汲みずくみ人たちが、我が方(カエサル勢)の騎兵隊によって襲撃されたことが報告される。
  • ③ Qua re cognita
    • その事を知ると、
  • crebras stationes disponunt equitum et cohortium alariarum
    • 翼軍アラの騎兵・歩兵隊コホルス歩哨スタティオを密集させて配置して、
      (訳注:翼軍アラ ala は、共和制期においてはおおむね支援軍アウクシリアのことを指す。)
  • legionariasque intericiunt cohortes
    • 軍団レギオ歩兵大隊コホルスを間に置く。
  • vallumque ex castris ad aquam ducere incipiunt,
    • 陣営から水辺アクアまで防柵ウァッルムを引き始めて、
  • ut intra munitionem et sine timore et sine stationibus aquari possent.
    • 防塁ムニティオの内側では、(カエサルの騎兵隊に襲われる)怖れティモル歩哨スタティオもなしに、水をんで来ることができるようにする。
  • ④ Id opus inter se Petreius atque Afranius partiuntur
  • ipsique perficiundi operis causa longius progrediuntur.
    • 自分たちが作業を成し遂げるために、より遠くに進んで行った。

74節[編集]

アフラニウスらの不在により、将兵たちが勝手にカエサル側と和平交渉を始める

  • ① Quorum discessu
    • 彼ら(アフラニウスとペトレイウス)が(陣営から)遠ざかったので、
  • liberam nacti milites conloquiorum facultatem volgo procedunt,
    • 兵士たちは、自由な会話の機会を得て、普通に(陣営から)外出して、
  • et quem quisque in <Caesaris> castris notum aut municipem habebat conquirit atque evocat.
    • それぞれが<カエサルの>陣営に持っていた知人たちや(自分と同じ)自治市ムニキピウムの者たちを、探し集めて、招き寄せる。
      (訳注:<カエサルの> <Caesaris> は写本にはなく、挿入提案されている。)
  • ② Primum agunt gratias omnes omnibus,
    • まず、(アフラニウス勢の兵士たち)皆が(カエサル勢の兵士たち)皆に、感謝する。
  • quod sibi perterritis pridie pepercissent:
    • 前日に、怖気おじけづいていた自分たちを助命してくれたことを。
      (訳注:72節④項の記述によれば、決戦を主張する将兵の反対を押し切ってアフラニウス勢を助けたのはカエサルということになる。)
  • eorum se beneficio vivere.
    • 自分たち(アフラニウス勢)は、彼ら(カエサル勢)の厚意により生きのびている、と。
  • Deinde imperatoris fidem quaerunt,
    • その次に、将軍インペラトル(カエサル)を信頼できるかと問う。
  • rectene se illi sint commissuri,
    • 彼(カエサル)に身を委ねるのは適切だろうか、と。
  • et quod non ab initio fecerint armaque quod cum hominibus necessariis et consanguineis contulerint, queruntur.
    • そして、初めからそうしなかったこと、親密な人たちや肉親たちと武器で闘ったこと、を嘆いた。
  • ③ His provocati sermonibus
    • これらの話し合いに刺激されて、
  • fidem ab imperatore de Petreii atque Afranii vita petunt,
    • (アフラニウス勢の兵士たちは)将軍インペラトル(カエサル)に、ペトレイウスとアフラニウスの生命の容赦フィデスを嘆願する。
  • ne quod in se scelus concepisse neu suos prodidisse videantur.
    • 自軍によこしまな心を抱いたとか、味方を裏切ったとか、思われないように。
  • Quibus confirmatis rebus
    • それらの事が保証されると、
  • se statim signa translaturos confirmant
    • (アフラニウス勢の兵士たちは)すぐにでも軍旗を委譲するでしょう、と請け合って、
      (訳注:軍旗を委譲するとは、降伏するということ。)
  • legatosque de pace primorum ordinum centuriones ad Caesarem mittunt.
    • 和平パクスについての使節レガトゥスたちとして最上位の百人隊長ケントゥリオたちをカエサルのもとに遣わす。
  • ④ Interim alii suos in castra invitandi causa adducunt,
    • そうこうするうちに、ある者たちは、(自分の)陣営に招待するために、(敵の陣営にいる)身内の者らを連れ出して行き、
  • alii ab suis abducuntur,
    • 別のある者たちは、(逆に)身内の者らに連れ去られて、
  • adeo ut una castra iam facta ex binis viderentur;
    • あたかも、すでに二つ(の陣営)から一つの陣営が作られてしまった、と思われるほどであった。
  • compluresque tribuni militum et centuriones ad Caesarem veniunt
    • かなりの軍団次官トリブヌス・ミリトゥムたちや百人隊長ケントゥリオたちがカエサルのもとにやって来て、
  • seque ei commendant.
    • 彼(カエサル)に自分(の身柄の保護)を託す。
      (訳注:commendo「(ある人に)取り入る」「気に入られようとする」「(保護を)託す」)
  • ⑤ Idem hoc fit a principibus Hispaniae,
    • これと同じことがヒスパニアの(部族国家の)領袖たちによってなされる。
  • quos illi evocaverant et secum in castris habebant obsidum loco.
    • その者たちは、あの者ら(アフラニウスら)が呼び出して、人質の身分として陣営に自分のもとに侍らせておいたのだった。
  • Hi suos notos hospitesque quaerebant,
    • 彼ら(ヒスパニアの領袖たち)は、自分の知人たちや客人たちを探し求めていて、
  • per quem quisque eorum aditum commendationis haberet ad Caesarem.
    • その者たちを通して、めいめいが彼ら(自身の身柄の保護)を託すことコンメンダティオのための、カエサルへ近づく機会アディトゥスを得ていた。
  • ⑥ Afranii etiam filius adulescens
    • アフラニウスの若い息子でさえもが、
  • de sua ac parentis sui salute cum Caesare per Sulpicium legatum agebat.
    • 自らと自分の父親の身の安全について、副官レガトゥススルピキウスを通して、カエサルと談判していた。
      (訳注:プブリウス・スルピキウス・ルフス Publius Sulpicius Rufus は、カエサルの副官として、
      ガリア戦記 第4巻 22節ガリア戦記 第7巻 90節で言及されている。この翌年(BC48年)に法務官プラエトルに就任。)
  • ⑦ Erant plena laetitia et gratulatione omnia,
    • (両陣営の)全体が喜びと祝賀に満ちていた。
  • eorum qui tanta pericula vitasse,
    • その一方(アフラニウス勢)は、これほどの危険を回避したことで。
  • et eorum qui sine volnere tantas res confecisse videbantur,
    • もう一方(カエサル勢)は、(将兵の)負傷もなく、これほどの戦役レスを成し遂げたと思われたので。
  • magnumque fructum suae pristinae lenitatis omnium iudicio Caesar ferebat,
    • そして、皆の見解では、カエサルが自らの直近の寛大さにより大きな成果をもたらした。
  • consiliumque eius a cunctis probabatur.
    • かつ、彼(カエサル)の判断は皆から賞賛されたのだ。

75節[編集]

事態の急変を知ったペトレイウスが、カエサル勢の兵士らを陣営から追い払う

  • ① Quibus rebus nuntiatis
    • それらの事態が報告されると、
  • Afranius ab instituto opere discedit seque in castra recipit,
    • アフラニウスは、着手していた作業から離れて、陣営に引き上げて、
  • sic paratus, ut videbatur, ut, quicumque accidisset casus, hunc quieto et aequo animo ferret.
    • どのような危難カススが生じようとも、これに落ち着いた冷静な心で耐えようと、覚悟しているように思われた。
  • ② Petreius vero non deserit sese.
  • Armat familiam;
    • (ペトレイウスは)家内奴隷ファミリアを武装させる。
  • cum hac et praetoria cohorte cetratorum
    • これと、(ヒスパニア出身の)軽装兵カエトラティたちから成る近衛兵団コホルス・プラエトリアとともに、
      (訳注:近衛兵団コホルス・プラエトリア は、法務官プラエトル代理など属州総督軍指揮官の天幕プラエトリウム を護衛していた部隊。帝政期に皇帝親衛隊となる。)
  • barbarisque equitibus paucis, beneficiariis suis, quos suae custodiae causa habere consuerat,
    • および(ペトレイウスが)自らの警護のために常に侍らせていた雑用免除兵士ベネフィキアリウスである蛮族のわずかな騎兵たちとともに、
      (訳注:beneficiarius「雑用を免除された兵士」)
  • improviso ad vallum advolat,
    • 不意に防柵ウァッルムのところへ飛んで来て、
  • conloquia militum interrumpit,
    • 兵士たちの会話をさえぎって、
  • nostros repellit a castris,
    • 我が方(カエサル勢の将兵たち)を陣営から追い払い、
  • quos deprendit interficit.
    • 捕らえた者たちを殺害する。
  • ③ Reliqui coeunt inter se et repentino periculo exterriti
    • (アフラニウス勢の陣営の中に)残った者たちは、互いに集まって、思いがけない危険にじけて、
  • sinistras sagis involvunt gladiosque destringunt
    • 左(の腕)を軍用外套サグスで包み、長剣グラディウスを抜いて、
  • atque ita se a caetratis equitibusque defendunt
    • このように、軽装兵カエトラティたちや騎兵たちから身を守り、
  • castrorum propinquitate confisi
    • (カエサル勢の)陣営が近いことを頼みとして、
  • seque in castra recipiunt
    • 陣営の中に引き上げて、
  • et ab iis cohortibus, quae erant in statione ad portas, defenduntur.
    • (陣営の)門のところに歩哨スタティオに立っていた歩兵大隊コホルスによって守られる。

76節[編集]

ペトレイウスが将兵たちを説き伏せて、和平の機運を払拭する

  • ① Quibus rebus confectis
    • それらの事が果たされると、
  • flens Petreius manipulos circumit militesque appellat,
  • neu se neu Pompeium absentem imperatorem suum adversariis ad supplicium tradant, obsecrat.
    • 自分(ペトレイウス)のことも、ここにいない自分たちの総大将インペラトルであるポンペイウスのことも、処刑のために敵方に引き渡さないでくれ、と嘆願する。
  • ② Fit celeriter concursus in praetorium.
    • (兵士たちは)速やかに司令官幕舎プラエトリウムに群がり集まる。
  • Postulat, ut iurent omnes
    • (ペトレイウスは、将兵たち)全員に(以下のことを)誓うことを、要求する。
  • se exercitum ducesque non deserturos neque prodituros neque sibi separatim a reliquis consilium capturos.
    • 自分たちは、軍隊や将帥ドゥクスたちを見捨てないであろうし、裏切らないであろうし、他の者たちとは個別に方策を立てないであろう、と。
ローマ軍の陣営における司令官幕舎プラエトリウムpraetorium)の位置(中央の1)。
  • ③ Princeps in haec verba iurat ipse;
    • (ペトレイウス)自身が、主唱者としてこれらの言葉を誓う。
  • idem iusiurandum adigit Afranium;
    • 同じ誓約をアフラニウスに強いる。
  • subsequuntur tribuni militum centurionesque;
    • 軍団次官トリブヌス・ミリトゥムたちや百人隊長ケントゥリオたちが後に続く。
  • centuriatim producti milites idem iurant.
    • (軍団の)兵士たちは、歩兵小隊ケントゥリアごとに進み出て、同じことを誓う。
  • ④ Edicunt, penes quem quisque sit Caesaris miles, ut producat:
    • カエサルの兵士が誰であれ、それを手中にしている者は引き出すように、と(彼らは)指図する。
  • productos palam in praetorio interficiunt.
    • 引き出された(カエサル勢の)者たちを、司令官幕舎プラエトリウムにおいて、(彼らは)おおっぴらに殺害する。
  • Sed plerosque ii, qui receperant, celant noctuque per vallum emittunt.
    • けれども、(カエサル勢の兵士を)受け入れていた者たちの大半は、隠し通して、夜のうちに防柵ウァッルムを越えて送り出す。
  • ⑤ Sic terror oblatus a ducibus,
    • このように、将帥ドゥクスたちによって威圧テッロルが示され、
  • crudelitas in supplicio,
    • (カエサル勢の兵士らの)処刑における残酷さにより、
  • nova religio iurisiurandi
    • 新たな誓約の義務付けにより、
  • spem praesentis deditionis sustulit
    • 目下の降伏の希望を取り上げ、
  • mentesque militum convertit
    • 兵士たちの心を転向させて、
  • et rem ad pristinam belli rationem redegit.
    • 事態を以前の戦争状態に戻してしまった。

77節[編集]

カエサルが、陣営に留まった敵方の将校たちを厚遇する

  • ① Caesar, qui milites adversariorum in castra per tempus conloquii venerant,
    • カエサルは、話し合いの時に陣営に来ていた敵方の兵士たちを
  • summa diligentia conquiri et remitti iubet.
    • 最大限の注意深さをもって探し集めて送り返すこと、を命じる。
  • ② Sed ex numero tribunorum militum centurionumque nonnulli
    • けれども、少なからぬ数の軍団次官トリブヌス・ミリトゥムたちや百人隊長ケントゥリオたちが、
  • sua voluntate apud eum remanserunt.
    • 自らの意志で彼(カエサル)のもとに留まった。
  • Quos ille postea magno in honore habuit;
    • その者たちに、彼(カエサル)は後で、大きな敬意ホノルを払った。
  • centuriones in priores ordines,
    • 百人隊長ケントゥリオたちを以前の階級オルドに、
  • equites Romanos in tribunicium restituit honorem.
    • ローマ人騎士階級の者エクィテスたちを次官トリブヌス顕職ホノルに復権させた。

ヒスパニア戦役(4)─イレルダの戦い④(アフラニウスとペトレイウスの降伏)[編集]

78節[編集]

糧秣の不足に窮したアフラニウス勢がイレルダへ引き返し始め、カエサル勢が追撃

  • ① Premebantur Afraniani pabulatione, aquabantur aegre.
    • アフラニウス勢は、まぐさの徴発に悩まされていて、やっとのことで水みしていた。
  • Frumenti copiam legionarii nonnullam habebant,
    • 軍団兵レギオナリウスたちは、少なからぬ量の穀物を持っていた。
  • quod dierum XXII ab Ilerda frumentum iussi erant efferre,
    • というのも、イレルダから22日分の穀物を運ぶように命じられていたからだ。
      (訳注:写本では XXII (22日分) とあるが、多すぎるという批判により、VII (7日分)、VIII (8日分) などの修正提案がなされている。)
  • caetrati auxiliaresque nullam,
    • (ヒスパニア出身の)軽装兵カエトラティたちや支援軍アウクシリア(の兵士たち)は何も(持っていなかった)。
  • quorum erant et facultates ad parandum exiguae et corpora insueta ad onera portanda.
    • 彼らには、少量(の穀物)を準備するための備蓄もなかったし、重荷を運搬することに身体が慣れていなかったからだ。
  • ② Itaque magnus eorum cotidie numerus ad Caesarem perfugiebat.
    • このようにして、毎日、彼らの多数がカエサルのもとへ逃げ込んでいた。
  • In his erat angustiis res.
    • (アフラニウス勢の)事情は、このような困窮のうちにあった。
  • Sed ex propositis consiliis duobus
    • けれども、提案されていた二つの作戦計画案のうち、
      (訳注:73節②項で、イレルダ行き・タッラコ行きの二つの選択肢が示されている。)
  • explicitius videbatur Ilerdam reverti,
    • イレルダへ引き返すことが、より簡単であると思われていた。
  • quod ibi paulum frumenti reliquerant.
    • というのも、そこに、いくらかの穀物を残しておいたからだ。
  • Ibi se reliquum consilium explicaturos confidebant.
    • そこにおいて、残りの作戦計画案を実施するであろう、と確信していた。
  • ③ Tarraco aberat longius;
  • quo spatio plures rem posse casus recipere intellegebant.
    • (タッラコまでの)距離のために、より多くの危難カススが降りかかりうることを(アフラニウスらは)知っていた。
  • Hoc probato consilio ex castris proficiscuntur.
    • この作戦計画案が承認されると、(アフラニウス勢は、イレルダへ引き返すために)陣営から出発する。
  • ④ Caesar, equitatu praemisso,
    • カエサルは、騎兵隊を先に遣わして、
  • qui novissimum agmen carperet atque impediret,
    • (アフラニウス勢の)隊列の最後尾を苦しめて、妨げようとしていた。
  • ipse cum legionibus subsequitur.
    • (カエサル)自身は、諸軍団とともに後に続く。
  • Nullum intercedebat tempus, quin extremi cum equitibus proeliarentur.
    • (アフラニウス勢の)最後尾が(カエサル勢の)騎兵たちと交戦するのに、時間はかからなかった。

79節[編集]

アフラニウス勢が、追撃するカエサル勢と戦いながら山や谷を越える山岳戦

  • ① Genus erat hoc pugnae.
    • (アフラニウス勢の)戦いプグナのやり方は、以下の通りであった。
  • Expeditae cohortes novissimum agmen claudebant
    • 軽武装の歩兵大隊コホルス行軍隊列アグメンの最後尾の殿しんがりを務めていて、
  • pluresque in locis campestribus subsistebant.
    • より大勢の者たちが平らな場所で動きを止めたりしていた。
  • ② Si mons erat ascendendus,
    • もし、山を登らなければならないならば、
  • facile ipsa loci natura periculum repellebat,
    • その地の地勢をもって、より容易に危険を回避していた。
  • quod ex locis superioribus, qui antecesserant, desuper ascendentes protegebant;
    • というのも、(行軍隊列を)先導していた者たちが、より高い所から、(下方から)登って来る者たちを上方から防護していたからだ。
      desuper「上方から」は σ 系写本の記述で、β系写本では suos 「(登って来る)味方を」となっている。)
  • ③ cum vallis aut locus declivis suberat,
    • 峡谷または傾斜地(の下り坂)が間近に迫っていたときは、
  • neque ii, qui antecesserant, morantibus opem ferre poterant,
    • (行軍隊列を)先導していた者たちは、(下り坂で)遅れている者たちに助力を与えることができず、
  • equites vero ex loco superiore in aversos tela coniciebant,
    • その一方で(カエサル勢の)騎兵たちが、より高い所から(坂を下って)背を向けている(アフラニウス勢の)者たちに飛び道具を投げつけていた。
  • tum magno erat in periculo res.
    • そんなときは、(アフラニウス勢の)事態は、大きな危険に陥っていた。
  • ④ Relinquebatur, ut cum eiusmodi locis esset adpropinquatum,
    • そのような(下り坂の)場所に近づいたときに、(アフラニウス勢に)残されていたのは、
  • legionum signa consistere iuberent
    • 軍団の旗が停止することを命じて、
      (訳注:signa consistere「軍旗が停止する」=「行軍を停止する」)
  • magnoque impetu equitatum repellerent,
    • (カエサル勢の)騎兵隊を、猛攻により撃退して、
  • eo submoto repente incitati cursu sese in valles universi demitterent
    • それ(=カエサル勢の騎兵隊)が退けられたら、たちまち猛烈な駆け足で、総勢が峡谷にくだって、
      (訳注:sese dimitto「降りる」「くだる」)
  • atque ita transgressi rursus in locis superioribus consisterent.
    • このようにして(峡谷を)越えて、再びより高い所において立ち止まることであった。
  • ⑤ Nam tantum ab equitum suorum auxiliis aberant,
    • なぜなら、(アフラニウス勢が)味方の騎兵たちによる加勢からこれほどにも無縁であったからだ。
  • quorum numerum habebant magnum,
    • その者たち(アフラニウス勢の騎兵たち)は多くの兵数を持っていたが、
  • ut eos superioribus perterritos proeliis
    • 彼らは以前の戦闘に(敗れて)怖気おじけ付いており、
  • in medium reciperent agmen ultroque eos tuerentur;
    • 行軍隊列アグメンの真ん中に引っ込めていた彼ら(騎兵たち)を(軍団兵が)両側から防御していたのだ。
  • quorum nulli ex itinere excedere licebat, quin ab equitatu Caesaris exciperetur.
    • 彼らがカエサルの騎兵隊によって襲撃されないように、誰も行軍(の隊列)から離れることが許されなかった。

80節[編集]

脱兎のごとく逃げ出すアフラニウス勢に、カエサル勢が喰らい付く山岳戦

  • ① Tali dum pugnatur modo,
    • このようなやり方で戦われている間に、
  • lente atque paulatim proceditur
    • (アフラニウス勢は)ゆっくり、少しずつ前進して、
  • crebroque, ut sint auxilio suis, subsistunt;
    • 味方の加勢となるように、たびたび立ち止まる。
  • ut tum accidit.
    • そのときも生じていたように(以下のことが生じる)。
  • ② Milia enim progressi IIII
    • すなわち、(アフラニウス勢が、カエサル勢の本隊よりも)4ローママイル(=約6km)前を進んでいたときに、
  • vehementiusque peragitati ab equitatu
    • (カエサル勢が先遣していた)騎兵隊によって、より猛烈に、大いに悩まされて、
  • montem excelsum capiunt ibique una fronte contra hostem castra muniunt
    • (アフラニウス勢は)高い山を占領して、そこで、敵(=カエサル勢)に対抗して、前面のみ陣営(の防備)を固めるが、
  • neque iumentis onera deponunt.
    • 駄獣だじゅうから荷物を下ろさない。
  • ③ Ubi Caesaris castra posita tabernaculaque constituta
    • カエサルの陣営が設置され、天幕が立てられて、
  • et dimissos equites pabulandi causa animum adverterunt,
    • まぐさを徴発するために騎兵たちが派遣されたのに気付くや否や、
  • sese subito proripiunt hora circiter sexta eiusdem diei
    • 同じ日の第6時の頃に(アフラニウス勢は、陣営から)不意に飛び出す。
      (訳注:「第6時」は正午より前の時間を指す。「古代ローマの不定時法」を参照。)
  • et spem nacti morae discessu nostrorum equitum iter facere incipiunt.
    • 我が方(カエサル勢)の騎兵たちが立ち去ったので、(追撃の)遅れの希望を得て、行軍し始めるのだ。
  • ④ Qua re animum adversa
    • その事に気付くと、
  • Caesar relictis <impedimentis cum> legionibus subsequitur,
    • カエサルは、輜重を残して、諸軍団とともに(アフラニウス勢の)後を追う。
      (訳注:写本では relictis legionibus「諸軍団を残して」 となっているが、refectis legionibus「諸軍団の元気を回復させて」、
      あるいは relictis <impedimentis cum> legionibus「輜重を残して、諸軍団とともに」などと修正提案されている。)
  • praesidio impedimentis paucas cohortes relinquit;
    • 輜重の守備隊として数個の歩兵大隊コホルスを残す。
  • hora X (decimā) subsequi, pabulatores equitesque revocari iubet.
    • 第10時に(カエサルの諸軍団の)後を追うことと、糧秣徴発者たちと騎兵たちを呼び戻すことを命じる。
      (第10時は、正午から日の入りまでの間の3分の2が経過した夕方前の頃。「古代ローマの不定時法」を参照。)
  • Celeriter equitatus ad cotidianum itineris officium revertitur.
    • (カエサルの)騎兵隊は、速やかに、日常の行軍の任務に戻る。
  • ⑤ Pugnatur acriter ad novissimum agmen,
    • (カエサルの騎兵隊が追い付いて、アフラニウス勢の)行軍隊列アグメンの最後尾のところで激しく戦われて、
  • adeo ut paene terga convertant,
    • (アフラニウス勢が)ほとんど(敵に)背を向けたほどであった。
  • compluresque milites, etiam nonnulli centuriones, interficiuntur.
    • かなりの兵士たちが、少なからぬ百人隊長ケントゥリオたちでさえも、たおされる。
  • Instabat agmen Caesaris atque universum imminebat.
    • カエサルの(軍団本隊の)行軍隊列アグメンが殺到して、(アフラニウス勢)全体を脅かしていた。

81節[編集]

両陣営のにらみ合い。アフラニウス勢が糧秣不足に苦しむ

  • ① Tum vero neque ad explorandum idoneum locum castris
    • (アフラニウス勢は)そのとき確かに、陣営(の設置)に適当な場所を偵察するため(の機会)も、
  • neque ad progrediendum data facultate consistunt necessario
    • (イレルダ方面へ)前進するための機会も与えられずに、やむを得ずに立ち止まり、
  • et procul ab aqua et natura iniquo loco castra ponunt.
    • 水辺から遠く、地の利も良くない場所に、陣営を設置する。
      (訳注:水辺のある谷底は防戦に不利なため、やむを得ずに山の傾斜地に陣営を構えたのであろう。)
  • ② Sed isdem de causis Caesar, quae supra sunt demonstratae, proelio non lacessit
    • けれども、前に述べたのと同じ理由から、カエサルは戦闘を挑まなかった。
  • et eo die tabernacula statui passus non est,
    • その日は、天幕を立てることを許さず、
  • quo paratiores essent ad insequendum omnes, sive noctu sive interdiu erumperent.
    • それにより(アフラニウス勢が)夜間や昼間に飛び出て行こうとした場合に追撃するために、総員が臨戦態勢であった。
  • ③ Illi animadverso vitio castrorum
    • あの者ら(アフラニウス勢)は、(山の傾斜地にある)陣営の欠点を気にかけると、
  • tota nocte munitiones proferunt castraque castris convertunt.
    • 夜通しで防塁ムニティオを動かして、陣営を移し変える。
      (訳注:castra castris convertunt「陣営を(別の)陣営に移す」)
  • Hoc idem postero die a prima luce faciunt totumque in ea re diem consumunt.
    • これと同じことを翌日の明け方から行なって、その事に一日中を費やす。
  • ④ Sed quantum opere processerant et castra protulerant,
    • けれども、堡塁オプスによって前進して陣営を推し進めるほど、
      (訳注:quantum ~, tanto ・・・「~ほど、それだけいっそう・・・」
      opere は「工事によって」とも「構築物(堡塁)によって」とも解釈できる。)
  • tanto aberant ab aqua longius,
    • それだけいっそう水辺からより遠くに離れて、
  • et praesenti malo aliis malis remedia dabantur.
    • 目下の災難を、別の災難によって、救済策レメディウムが与えられた。
  • ⑤ Prima nocte aquandi causa nemo egreditur ex castris;
    • 最初の夜には、水汲みずくみのために陣営から出て行く者は誰もいなかった。
  • proximo die praesidio in castris relicto universas ad aquam copias educunt,
    • 翌日は、陣営に守備隊を残して、全軍勢を水辺に連れ出すが、
  • pabulatum emittitur nemo.
    • まぐさを徴発するためには誰も派遣されない。
  • ⑥ His eos suppliciis male haberi Caesar et necessariam subire deditionem quam proelio decertare malebat.
    • カエサルは、このような責め苦スップリキウムに苦しめられた彼らが、戦いで決着をつけるよりも、むしろ、やむを得ぬ降伏デディティオを耐え忍ぶことを、望んでいた。
  • Conatur tamen eos vallo fossaque circummunire,
    • それにもかかわらず、(カエサルは)彼らを防柵ウァッルムフォッサで包囲することを試みて、
  • ut quam maxime repentinas eorum eruptiones demoretur;
    • 彼らの思いがけない飛び出しをできるだけ手間取らせようとした。
  • quo necessario descensuros existimabat.
    • それにより、やむを得ず(彼らが最後の手段に)訴えるであろう、と考えていたのだ。
  • ⑦ Illi et inopia pabuli adducti
    • あの者ら(アフラニウス勢)は、まぐさの欠乏に強いられて、
  • et quo essent ad iter expeditiores,
    • 行軍の足手まといにならないように、
      (訳注:下線部は、写本では ad id だが、 ad iter「行軍のため」と修正提案されたり、削除提案されたりしている。)
  • omnia sarcinaria iumenta interfici iubent.
    • 荷を運ぶためのすべての駄獣だじゅう屠殺とさつすることを命じる。

82節[編集]

カエサル勢が、決戦を避けつつ、包囲網を狭める

  • ① In his operibus consiliisque biduum consumitur;
    • これら(カエサルの包囲網)の工事と計画において、2日間が費やされる。
  • tertio die magna iam pars operis Caesaris processerat.
    • 3日目には、すでにカエサルの工事の大部分がはかどっていた。
  • Illi impediendae reliquae munitionis causa
    • あの者ら(アフラニウス勢)は、(カエサル勢の)残りの防塁ムニティオ(の工事)を妨害するために、
  • hora circiter VIIII (nōnā) signo dato
    • 第9時の頃に(出撃の)号令シグヌムを与えて、
      (訳注:「第9時」は、正午から日の入りまでの間の3分の1が経過した頃。夏季なら、現代の午後2時よりも後の時間。
      古代ローマの不定時法』を参照。)
  • legiones educunt aciemque sub castris instruunt.
    • 軍団レギオを進発させて、陣営のすぐ下で戦列アキエスを整える。
  • ② Caesar ab opere legiones revocat,
    • カエサルは、諸軍団レギオを工事から呼び戻して、
  • equitatum omnem convenire iubet, aciem instruit;
    • 騎兵隊の全員に集結することを命じて、戦列アキエスを整える。
  • contra opinionem enim militum famamque omnium videri proelium defugisse
    • なぜなら、兵士たちの期待オピニオや皆の評判ファマに反して、(カエサルが)戦闘プロエリウムを避けたと思われることは、
  • magnum detrimentum afferebat.
    • 大いなる不利益をもたらしていたからである。
  • ③ Sed eisdem [de] causis, quae sunt cognitae, quo minus dimicare vellet, movebatur,
    • けれども、(カエサルは)あまり戦うことを望まないほど、既述の同じ理由に動かされていた。
  • atque hoc etiam magis, quod spatii brevitas etiam in fugam coniectis adversariis non multum ad summam victoriae iuvare poterat.
    • (両陣営の)へだたりが短いことが、敵方の者たちが敗走に追いやられてさえも、決定的な勝利をするためにはあまり役立てないなら、なおのことだ。
  • ④ Non enim amplius pedum milibus duobus ab castris castra distabant;
    • 確かに、陣営から陣営(の隔たり)は、2000ペース(=約600m)ほどしか離れていなかった。
      (訳注:ガードナーの英訳(J. P. Gardner, 1976)は 2マイル(two miles)、カーターの英訳(J. M. Carter, 1990)は 3 km (three thousand metres)としているが、明らかな誤訳である。)
  • hinc duas partes acies occupabant duae;
    • この(隔たりの)3分の2(=約400m)を、二つの戦列アキエスが占めていた。
      (訳注:duas partes「二つの部分を」=「3分の2を」;分数の分子が分母より1少ないときは「分子 + partes」で表わされる。)
  • tertia vacabat ad incursum atque impetum militum relicta.
    • 残された3分の1(の隔たり)は、兵士たちの突進や攻撃のための余地があった。
  • ⑤ Si proelium committeretur,
    • もし、白兵戦プロエリウムが闘われれば、
  • propinquitas castrorum celerem superatis ex fuga receptum dabat.
    • 両陣営が近接していることは、打ち負かされた者たちに敗走からの迅速な退却(の機会)を与えることになった。
  • Hac de causa constituerat signa inferentibus resistere, prior proelio non lacessere.
    • (カエサルは)この理由により、進撃して来る者たちに対しては抗戦するが、(こちらから)より先に戦闘を挑まないこと、を決意していた。
      (訳注:signa inferentibus「軍旗を進めて来る者たちに対して」=「進撃して来る者たちに対して」)

83節[編集]

両軍が戦列を整えて対峙し、膠着状態が続く

  • ① Acies erat Afraniana duplex legionum V,
    • アフラニウスの戦列アキエスは、5個軍団レギオから成る二重(の戦列)であった。
  • tertium in subsidiis locum alariae cohortes obtinebant;
    • 3列目の場所は、予備兵力として、翼軍アラ歩兵隊コホルスが占めていた。
  • ② Caesaris triplex;
    • カエサルの(戦列)は、三重だった。
  • sed primam aciem quaternae cohortes ex V legionibus tenebant,
    • けれども、第一戦列は、5個軍団レギオのうちから4個ずつの歩兵大隊コホルスが占めていて、
  • has subsidiariae ternae et rursus aliae totidem suae cuiusque legionis subsequebantur;
    • これらに、予備兵力としての3個ずつと、さらに別の同数が、めいめいの自分の軍団レギオの後に続いていた。
      (訳注:第一戦列に5×4個大隊、第二戦列に5×3個大隊、第三戦列に5×3個大隊が配置されたことになる。)
  • sagittarii funditoresque media continebantur acie,
    • 弓兵たちと投石兵たちは、戦列アキエスの真ん中に取り囲まれており、
  • equitatus latera cingebat.
    • 騎兵隊が(戦列の)側面を囲んでいた。
  • ③ Tali instructa acie
    • このような戦列アキエスが整えられて、
  • tenere uterque propositum videbatur:
    • 双方(の将帥たち)が(作戦の)意図を達成したと思われていた。
  • Caesar, <ut> nisi coactus proelium non committeret,
    • カエサルは、(敵方から)強いられない限りは、交戦しないようにしていたし、
      (訳注:下線部は写本によって異なるが、古い印刷本の記述では上のようになっている。)
  • ille, ut opera Caesaris impediret.
    • あの者(アフラニウス)は、カエサルの工事を妨げようとしていたのだ。
  • Producitur tamen res
    • それにもかかわらず、(膠着こうちゃくした)事態は長引かされて、
  • aciesque ad solis occasum continentur;
    • (両軍の)戦列アキエスは日没の頃まで維持される。
  • inde utrique in castra discedunt.
    • それから、両軍は陣営の中に退去する。
  • ④ Postero die munitiones institutas Caesar parat perficere;
    • 翌日、カエサルは、(敵を包囲するために)築かれつつあった防塁ムニティオを完成しようとするし、
  • illi vadum fluminis Sicoris temptare, si transire possent.
    • あの者ら(アフラニウスら)は、シコリス川の浅瀬を渡ることができるかどうか、試してみようとする。
  • ⑤ Qua re animadversa
    • その事態を見て取ると、
  • Caesar Germanos levis armaturae equitumque partem flumen traicit
    • カエサルは、軽武装のゲルマニア人たち、および騎兵たちの一部を渡河させて、
  • crebrasque in ripis custodias disponit.
    • 両岸に多数の歩哨を配置する。

84節[編集]

兵糧攻めに耐えかねたアフラニウスが、カエサルとの和平交渉を申し入れる

  • ① Tandem omnibus rebus obsessi,
    • ついに、(アフラニウス勢は)あらゆる物事から封鎖されて、
  • quartum iam diem sine pabulo retentis iumentis,
    • 4日目にはもはや、(殺さずに)持ち続けていた駄獣だじゅうにとってのまぐさもなく、
  • aquae, lignorum, frumenti inopia,
    • 水・まき・穀物にも事欠いて、
  • conloquium petunt et id, si fieri possit, semoto a militibus loco.
    • もし、兵士たちから遠ざけられた所で催されうるならば(という条件付きで)、(カエサルに和平の)話し合いを求める。
  • ② Ubi id a Caesare negatum, et palam si conloqui vellent, concessum est,
    • それがカエサルによって拒絶され、もし(アフラニウスらが)おおっぴらに話し合うことを望むのなら(という条件付きで)、(カエサルに)聞き入れられるや否や、
  • datur obsidis loco Caesari filius Afranii.
    • アフラニウスの息子が人質の立場で、カエサルに差し出される。

アフラニウスの命乞い

  • ③ Venitur in eum locum quem Caesar delegit.
    • (和平の話し合いは)カエサルが選んだ場所で催される。
  • Audiente utroque exercitu loquitur Afranius:
    • 両軍が耳を傾ける中で、アフラニウスが話す。
  • non esse aut ipsis aut militibus suscensendum,
    • 自分ら(アフラニウスとペトレイウス)あるいは兵士たちに対して怒りが向けられるべきではない。
  • quod fidem erga imperatorem suum Cn. Pompeium conservare voluerint.
    • というのも、(アフラニウス勢は)自分たちの総大将インペラトルであるグナエウス・ポンペイウスに対して忠誠を守ることを望んだだけだから、と。
  • ④ Sed satis iam fecisse officio
    • けれども、(アフラニウス勢は)すでに十分に責務オッフィキウムを果たしたし、
  • satisque supplicii tulisse perpessos omnium rerum inopiam;
    • あらゆる物の欠乏に耐え抜くことで十分に責め苦スップリキウムに甘んじた。
  • nunc vero paene ut feras circummunitos prohiberi aqua, prohiberi ingressu,
    • さらに今や、ほとんど、囲い込まれた野獣たちのように、水(の補給)を妨げられ、(イレルダ方面へ)前進することも妨げられて、
      (訳注:写本では ut feminas circummunitos「囲い込まれた女たちのように」とあるが、ut feras circummunitos「囲い込まれた野獣たちのように」と修正提案されている。なお、サビニの女たちの略奪の伝承は有名だが、カエサルもガリアなどで多くの先住民を拉致して奴隷として売却したと考えられている。)
  • neque corpore dolorem neque animo ignominiam ferre posse.
    • (兵糧攻めによって)体は苦痛ドロルに、心は恥辱イグノミニアに持ちこたえられない。
  • ⑤ Itaque se victos confiteri;
    • このように、自分たちは、打ち負かされたことを認める。
  • orare atque obsecrare,
    • (以下のことを)い願う。
  • si qui locus misericordiae relinquatur,
    • もし、何らかの哀れみミセリコルディアの余地が残されているのならば、
  • ne ad ultimum supplicium progredi necesse habeat.
    • (アフラニウスらを)極刑スップリキウムに処さねばならぬ、とは考えないでいただきたい。
      (訳注:necesse habere ~(不定法) 「~することを必要と考える」「~ねばならぬと考える」)
  • Haec quam potest demississime et subiectissime exponit.
    • (アフラニウスは)これら(の命乞い)を、できるかぎり卑屈に、へりくだって、語る。

85節[編集]

カエサルが長い反論演説でアフラニウスらを非難し、最後通牒を突き付ける

  • ① Ad ea Caesar respondit:
    • (アフラニウスの命乞いが終わると)それにカエサルが答えた。
      (訳注:これ以降の長文はカエサルがアフラニウスらに話しかける間接話法で、カエサル自身は se(自分)、アフラニウスらは illi(あの者ら)などで示される
      が、分かりにくいので、アフラニウスらを二人称で呼びかけるように和訳する。)
  • nulli omnium has partes vel querimoniae vel miserationis minus convenisse.
    • (アフラニウスよ、そなたほど)不平を述べたり、哀れみを誘う役回りパルスにあまりふさわしくない者は(ほかに)誰もいない。
  • ② Reliquos enim omnes officium suum praestitisse:
    • すなわち、ほかの皆の者は、自分たちの責務オッフィキウムを果たした。
  • se, qui etiam bona condicione et loco et tempore aequo confligere noluerit,
    • 自分(カエサル)は、(戦うための)状況が良く、地形や時機が有利なときでさえも、(アフラニウス勢と)激突することを望まず、
  • ut quam integerrima essent ad pacem omnia;
    • 和平(の機会)のために、すべてができるだけ偏見のないようにしたのだ。
  • exercitum suum, qui iniuria etiam accepta suisque interfectis,
    • 自分(カエサル)の軍隊は、(前の和平交渉のときにアフラニウスの陣営で)暴行を受けたり、殺害されたりさえしたのに、
  • quos in sua potestate habuerit, conservarit et texerit;
    • (カエサルの陣営に来て)自分たちの統制下にあった(アフラニウス勢の)者たちを、救って保護してやった。
      (訳注:conservarit は、動詞 cōnservō の接続法・完了・3人称単数形conservaverit において、r の前の ve が脱落した形態。)
  • illius denique exercitus milites, qui per se de concilianda pace egerint,
    • ついに、そなた(アフラニウス)の兵士たちは、自分たち(の意志)で、和平を獲得することについて協議した。
  • qua in re omnium suorum vitae consulendum putarint.
    • (彼らは)その事において、味方の全員の生命(の安全)が配慮されるべきと思っていた。
  • ③ Sic omnium ordinum partes in misericordia constitisse,
    • このように、(アフラニウス勢の)すべての階級オルドの者たちの役回りパルス同情を誘うことミセリコルディアは明らかだが、
  • ipsos duces a pace abhorruisse;
    • 当の(アフラニウスら)将帥ドゥクスたちが和平に尻込みしたのだ。
  • eos neque colloquii neque indutiarum iura servasse
    • そなたらは、(和平の)話し合いも(せず)、休戦インドゥティアエ義務ユラ遵守じゅんしゅせずに、
  • et homines imperitos et per colloquium deceptos crudelissime interfecisse.
    • 未熟な者たちや(和平の)話し合いに欺かれ(る形になっ)た者たちを、無慈悲にも殺害した。
  • ④ Accidisse igitur his, quod plerumque hominum nimia pertinacia atque arrogantia accidere soleat,
    • したがって、極端に強情ペルティナキア傲慢アッロガンティアな人間たちに起こりがちなことが、そなたらに起こって、
  • uti eo recurrant et id cupidissime petant, quod paulo ante contempserint|contempserint.
  • ⑤ Neque nunc se illorum humilitate neque aliqua temporis opportunitate postulare, quibus rebus opes augeantur suae;
    • 自分(カエサル)は今、そなたらの卑屈さフミリタスや、いつ何時なんどきかの好機オッポルトゥニタスがつがつして、それによって自分の勢力を増強したりはしない。
  • sed eos exercitus, quos contra se multos iam annos aluerint, velle dimitti.
    • けれども、そなたらが自分(カエサル)に対抗して、すでに多年にわたって育て上げた軍隊が解散されることを、(自分(カエサル)は)望む。
  • ⑥ Neque enim sex legiones alia de causa missas in Hispaniam septimamque ibi conscriptam,
    • 確かに、6個軍団レギオヒスパニアに派遣されたり、第7軍団がそこで徴募されたのは、(カエサルに対抗するためであって)ほかの理由からではない。
  • neque tot tantasque classes paratas
    • あれだけたくさんの、あれだけ大きな軍隊クラッシスが徴集されたのも、
      (訳注:軍事用語としての classis という単語には、fleet (艦隊) または the armed forces (軍隊) という意味があるが、
      カエサルは、これまで『ガリア戦記』や本巻の36節56節57節では、海戦に臨む「艦隊」の意味で用いて来た。
      ガードナーの英訳(J. P. Gardner, 1976)は fleets (艦隊)としている。カーターの英訳(J. M. Carter, 1990)は auxiliary (支援軍)としているが、
      後者は写本にある tantasque classes paratas という記述を tantaque auxilia parata と書き換える修正提案を採用したものである。
      いずれにしても、アフラニウスやペトレイウスが艦隊を徴集した話は出て来ないので、「軍隊」と解釈されるべきであろう。)
  • neque submissos duces rei militaris peritos.
    • 軍事にけた将帥ドゥクスたちが派遣されたのも(カエサルに対抗するためであって、ほかの理由からではない)。
  • ⑦ Nihil horum ad pacandas Hispanias,
    • これら(の軍備)は、ヒスパニアを平和にするため(に配慮されたの)でもないし、
  • nihil ad usum provinciae provisum,
    • 属州(の統治)の有益のために配慮されたものでもない。
  • quae propter diuturnitatem pacis nullum auxilium desiderarit.
    • それ(=ヒスパニア属州)は、平和の期間が永いために、何ら(軍事的な)助けを切望していなかった。
  • ⑧ Omnia haec iam pridem contra se parari;
    • これらすべては、すでにずっと前から、自分(カエサル)に対抗して徴集されているのだ。
  • in se novi generis imperia constitui,
    • 自分(カエサル)に対抗して、新しい類いの軍隊司令権インペリウムが取り決められて、
  • ut idem ad portas urbanis praesideat rebus et duas bellicosissimas provincias absens tot annos obtineat;
    • 同一人物が、都(ローマ)の城門のたもとで政務を司りながら、二つの戦争好きな属州を(その場に)居ずにこれほどの年月にわたって支配しようとしている。
      (訳注:2節①項の訳注でふれたように、ポンペイウスは軍隊司令権インペリウムを保持していたので、首都ローマの聖域ポメリウムに立ち入ることが許されていなかった。
      カエサルは、ポンペイウスが副官たち(アフラニウス、ペトレイウス、ウァッロ)を通じて、属州に不在のまま支配していることを非難している。
      また、カエサルは、⑦項でヒスパニアは平和が永いと述べておきながら、舌の根も乾かないうちに「戦争好きな」と言い切っている。)
  • ⑨ in se iura magistratuum commutari,
    • 自分(カエサル)に対抗して、政務官マギストラトゥス権利ユラが変更されて、
  • ne ex praetura et consulatu, ut semper,
    • (従来は)常にそうであったように法務官プラエトゥラ執政官コンスラトゥスから(辞任した者たちが直ちに属州総督に就任するの)ではなく、
  • sed per paucos probati et electi in provincias mittantur;
    • 門閥派オプティマテスの)わずかな者たちによって承認されて選ばれた者たちが諸属州に派遣されるようにしている。
  • in se etiam aetatis excusationem nihil valere,
    • 自分(カエサル)に対抗して、(老いた者の)年齢の言い訳が何ら役立たない。
  • quod superioribus bellis probati ad obtinendos exercitus evocentur;
    • 往年の諸戦争で(戦績を)認められた者たちが、軍隊を統轄するために召集されるのだから。
  • ⑩ in se uno non servari, quod sit omnibus datum semper imperatoribus,
    • 自分(カエサル)一人に対しては、(ほかの)すべての将軍インペラトルたちに対して常に与えられていることが、守られていない。
  • ut rebus feliciter gestis aut cum honore aliquo aut certe sine ignominia domum revertantur exercitumque dimittant.
    • 戦役レスを成功裏に成し遂げて、何らかの名誉を伴って、あるいは確かに不名誉もなく、故国へ帰還して、軍隊を解散するようなことが(カエサルに対して守られていない)。
  • ⑪ Quae tamen omnia et se tulisse patienter et esse laturum;
    • それにもかかわらず、それらのすべてに、自分(カエサル)は辛抱強く耐えて来たし、(これからも)耐えて行くであろう。
  • neque nunc id agere, ut ab illis abductum exercitum teneat ipse,
    • 今、そなた(アフラニウス)らから奪い取った軍隊を(カエサル)自身が牛耳ろうとはしていない。
  • quod tamen sibi difficile non sit,
    • そのことは自分(カエサル)にとっては困難ではないにもかかわらず、
  • sed ne illi habeant, quo contra se uti possint.
    • けれども、そなた(アフラニウス)らが、自分(カエサル)に対抗して行使できるようなもの(軍隊)を持てないようにするのだ。
  • ⑫ Proinde, ut esset dictum,
    • それゆえに、(すでに)述べたように、
  • provinciis excederent exercitumque dimitterent;
    • (ヒスパニアの)両属州から退去して、軍隊を解散したまえ。
  • si id sit factum, se nociturum nemini.
    • もし、それがなされたら、自分(カエサル)は誰も傷つけないであろう。
  • Hanc unam atque extremam esse pacis condicionem.
    • これが、唯一の、そして最後の和平条件である。

86節[編集]

アフラニウスとペトレイウスの兵士たちの除隊が取り決められる

  • ① Id vero militibus fuit pergratum et iucundum, ut ex ipsa significatione cognosci potuit,
    • 兵士たちにとってそれは、当人たちが(身振りや表情で賛意を)表したことで知ることができたように、実に喜ばしく、うきうきさせることであった。
  • ut, qui aliquid iusti incommodi exspectavissent, ultro praemium missionis ferrent.
    • 十分に厄介な何らか(の処罰)を予期していたのに、逆に(軍隊からの)除隊というご褒美ほうびを獲得したわけなのだ。
  • ② Nam cum de loco et de tempore eius rei controversia inferretur,
    • 一方で、その事(=兵士たちの除隊)の場所や日時について、論争が引き起こされたときには、
  • et voce et manibus universi ex vallo, ubi constiterant, significare coeperunt,
    • (兵士たち)一同が、持ち場についていた防柵ウァッルムのところから、声を上げたり、手を振ったりして、合図し始めた。
  • ut statim dimitterentur,
    • ただちに解散されるように、
  • neque omni interposita fide firmum esse posse, si in aliud tempus differretur.
    • もし、ほかの時に延期されるのならば、その間に示されるあらゆる誓約が信頼できるものになり得ない、と。
ウァルス川Varus)こと現在のヴァル川Var)流域の景観
  • ② Paucis cum esset in utramque partem verbis disputatum,
    • (アフラニウス勢とカエサル勢の)両方の側で、わずかな発言で討論されて、
  • res huc deducitur,
    • (議論の)状況は、以下の点まで導かれる。
  • ut ii qui habeant domicilium aut possessionem in Hispania, statim,
    • ヒスパニアに住居や資産を持っている者たちは、ただちに(除隊され)、
  • reliqui ad Varum flumen dimittantur;
    • ほかの者たちは、ウァルス川のたもとで解散される。
      (ウァルス川 Varum flumen は、現在のフランスのヴァル川 Var で、ヴァル県の名にもなっている。)
  • ③ ne quid iis noceatur
    • 彼らが、何ら傷付けられることがないように、
  • neu quis invitus sacramentum dicere cogatur,
    • かつ、誰も不本意なまま(カエサル軍へ徴兵されて、カエサルへの忠誠の)誓いを述べることを強制されないように、
  • a Caesare cavetur.
    • カエサルによって保証される。

87節[編集]

アフラニウスとペトレイウスの兵士たちの除隊と護送が執り行なわれる

  • ① Caesar ex eo tempore, dum ad flumen Varum veniatur,
    • カエサルは、その時から、ウァルス川のたもとに到着するまでは、
  • se frumentum daturum pollicetur.
    • 自分(カエサル)が(アフラニウスとペトレイウスらの兵士たちに)穀物を与えるであろうと保証する。
  • Addit etiam,
    • さらに付け加えて言うには、
  • ut quid quisque eorum in bello amiserit, quae sint penes milites suos, iis qui amiserint restituat;
    • 彼らの誰でも、戦争において何かを失って、それが(カエサル)配下の兵士たちの手中にあれば、失った者たちに、(カエサルが)返還する。
  • militibus aequa facta aestimatione pecuniam pro his rebus dissolvit.
    • (カエサル配下の)兵士たちには、公正な評価をして、これらの物に応じて金銭を支払う。
  • ② Quascumque postea controversias inter se milites habuerunt,
    • 後に、(アフラニウスとペトレイウスらの)兵士たちが互いに、どんな言い争いになっても、
  • sua sponte ad Caesarem in ius adierunt.
    • 自発的に、カエサルに裁決を頼んだ。
  • ③ Petreius atque Afranius
  • cum stipendium ab legionibus paene seditione facta flagitarentur,
    • 軍団レギオから俸給をしつこく要求されて、ほとんど内紛になったとき、
  • cuius illi diem nondum venisse dicerent,
    • あの者ら(ペトレイウスとアフラニウス)が、彼ら(兵士たち)の(俸給支給の)期日はまだ来ていないと言ったときに、
  • Caesar ut cognosceret, postulatum est,
    • カエサルが審理するように、と(兵士たちから)要求されて、
  • eoque utrique, quod statuit, contenti fuerunt.
    • (カエサルが)判断したことに、双方とも満足していたのだ。
  • ④ Parte circiter tertia exercitus eo biduo dimissa
    • (アフラニウスとペトレイウスらの)軍隊のおよそ3分の1が、その2日のうちに解散されて、
  • duas legiones suas antecedere, reliquas subsequi iussit,
    • (カエサルは)配下の2個軍団レギオに(護送する兵士たちを)先導すること、残り(の諸軍団)に後に続くことを命じて、
  • ut non longo inter se spatio castra facerent,
    • (護送する兵士たちから)互いに遠からぬ距離をとって陣営を設置するようにした。
  • eique negotio Q. Fufium Calenum legatum praeficit.
    • その任務を副官レガトゥスクィントゥス・フフィウム・カレヌスに指揮させる。
  • ⑤ Hoc eius praescripto ex Hispania ad Varum flumen est iter factum,
    • 彼(カエサル)のこの指図により、ヒスパニアからウァルス川まで行軍がなされて、
  • atque ibi reliqua pars exercitus dimissa est.
    • そこで(アフラニウスとペトレイウスの)軍隊の残りの部分が解散された。
      (訳注:解散されたアフラニウスの部隊(の一部)は、第3巻88節で述べられるように、パルサルスの決戦場に現われる。
      また、カエサルは、アフラニウスとペトレイウスの処遇について記していないが、カエサルによって放免されたようだ。
      アフラニウスは、パルサルスの戦いにも参戦し、BC46年にタプススの戦いで戦死する。
      ペトレイウスも、パルサルスの戦い・タプススの戦いと転戦した後で自害している。)