刑法第179条
条文
[編集](監護者わいせつ及び監護者性交等)
- 第179条
- 18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為をした者は、第176条第1項の例による。
- 18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は、第177条第1項の例による。
改正経緯
[編集]2023年改正
[編集]2023年改正により、以下のとおり改正。
- 第1項
- (改正前)第176条の例による。
- (改正後)第176条第1項の例による。
- 第2項
- (改正前)第177条の例による。
- (改正後)第177条第1項の例による。
2017年改正
[編集]2017年改正において以下に定められた条項に替え新設。以下の条項の趣旨は第180条に移動。
(未遂罪)
解説
[編集]18歳未満の者に対して、その者を現に監護する者(監護者)であることによる影響力があることに乗じてわいせつ行為又は性交等をした場合には、同意の有無に関わらず、不同意わいせつ罪(第176条)又は不同意性交等罪(第177条)が成立する。
「監護者」とは、18歳未満の者を「現に監護する者」であり、真正身分犯である。「現に監護する者」の範囲は、民法第820条による親権の効果としての「監督保護」を行う者をいい、法的権限(親の場合、親権がメルクマールとなる)に拠らなくてもそれと同等の監督保護を行う者を含む。具体的には、養護施設等の職員が含まれ得る。両親が離婚等し片方の親の親権に服している場合の親の配偶者については、養子縁組をしていれば当然に養親として監護者と言いうるが(民法第818条)、そうでない場合は、犯罪前の生活の態様による判断を要する。なお、交際中の母親(監護者)に娘を説得させて被告との性交に応じさせた母親の交際相手が監護者たる母親と共謀して子どもと性交をした場合、監護者ではない者でも本条第1項が成立するとした(2025年(令和7年)1月27日付最高裁判所決定[1])。
監護者わいせつ罪および監護者性交等罪については、脅迫・暴行や意識喪失の機会などの要件は不要であるが、「影響力があることに乗じて」が要件となる。しかしながら、「影響力があることに乗じて」は明示であることを要さず、暗黙の了解であることで足りると解されており、被害者の同意もこの文脈で考慮されることとなり、同意があることで罪の成立は妨げられない。
参照条文
[編集]- 第180条(未遂罪)
- 未遂は、罰する。
判例
[編集]- 監護者性交等、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件(最高裁決定令和7年1月27日)第65条
- 18歳未満の者を現に監護する者の身分のない者が、監護者と共謀して、監護者であることによる影響力があることに乗じて当該18歳未満の者に対し性交等をした場合における監護者性交等罪の共同正犯の成否
- 18歳未満の者を現に監護する者(以下「監護者」という。)の身分のない者が、監護者と共謀して、監護者であることによる影響力があることに乗じて当該18歳未満の者に対し性交等をした場合、監護者の身分のない者には刑法65条1項の適用により監護者性交等罪の共同正犯が成立する。
脚注
[編集]- ^ “交際相手の娘と性交、親でなくても「監護者性交罪」 最高裁が初判断”. 朝日新聞 (2025年1月29日). 2025年1月30日閲覧。
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