刑法第177条
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条文[編集]
(強制性交等)
- 第177条
- 13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、
肛 門性交又は口腔 性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。
改正経緯[編集]
2022年改正[編集]
2022年改正により、以下のとおり改正。施行日については未定(2022年10月7日時点)。
- (改正前)懲役
- (改正後)拘禁刑
2017年改正[編集]
2017年改正により以下の条項から改正。
(改正前)
- 見出し
- 強姦
- 条文
- 暴行又は脅迫を用いて十三歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、三年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。
(改正のポイント)
- 処罰行為の拡張
- 処罰行為が、暴行又は脅迫を用いて(13歳未満については手段を問わない)の姦淫(「性交」)、いわゆる「強姦」に、「肛門性交」又は「口腔性交」を加えた。
- 被害客体の拡張
- 処罰行為が拡張されたことに伴い、被害客体が女子のみであったものを、男性も被害客体とした。
- 科刑の重罰化
- 科刑下限を3年の有期懲役から、5年の有期懲役へと厳罰化された。
解説[編集]
改正試案[編集]
法制審議会・刑事法(性犯罪関係)部会は、第10回会議(令和4年10月24日開催)において配布された「試案」において刑法上の性犯罪規定の改正試案が提示された。 177条に関する項目は以下のとおりである。
- 第1-1 暴行・脅迫要件、心神喪失・抗拒不能要件の改正
- 第1-2 刑法第176条後段及び第177条後段に規定する年齢の引上げ
- 第1-3 (欠落?)
- 第1-4 刑法第176条の罪に係るわいせつな挿入行為の同法における取扱いの見直し
- 第1-5 配偶者間において強制性交等罪などが成立することの明確化
これらの項目を条文化すれば、新177条以下のようなものになろう(号番号は参議院法制局「条・項・号・号の細分」に従って変更した)。
177条(試案)
① 次の第一号に掲げる行為その他これらに類する行為により人を拒絶困難にさせ、又は次の第二号に掲げる事由その他これらに類する事由により人が拒絶困難であることに乗じて、性交、肛門性交若しくは口腔性交、又は膣若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く)又は物を挿入する行為であってわいせつなもの(以下「性交等」という。)をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、5年以上の有期拘禁刑に処する。 一 次に掲げる行為
- イ 暴行又は脅迫を用いること。
- ロ 心身に障害を生じさせること。
- ハ アルコール又は薬物を摂取させること。
- ニ 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にすること。
- ホ 拒絶するいとまを与えないこと。
- へ 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、又は驚愕させること。
- ト 虐待に起因する心理的反応を生じさせること。
- チ 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること。
ニ 次に掲げる事由
- イ 暴行又は脅迫を受けたこと。
- ロ 心身に障害があること。
- ハ アルコール又は薬物の影響があること。
- ニ 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にあること。
- ホ 拒絶するいとまがないこと。
- へ 予想と異なる事態に直面して恐怖し、又は驚愕していること。
- ト 虐待に起因する心理的反応があること。
- チ 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮していること。
2 行為がわいせつなものではないと誤信させ若しくは行為の相手方について人違いをさせて、又は行為がわいせつなものではないと誤信していること若しくは行為の相手方について人違いをしていることに乗じて、性交等をした者も、前項と同様とする。
参照条文[編集]
- 第180条(未遂罪)
- 未遂は、罰する
- 第241条(強盗・強制性交等及び同致死)
- 強盗の罪若しくはその未遂罪を犯した者が強制性交等の罪(第百七十九条第二項の罪を除く。以下この項において同じ。)若しくはその未遂罪をも犯したとき、又は強制性交等の罪若しくはその未遂罪を犯した者が強盗の罪若しくはその未遂罪をも犯したときは、無期又は七年以上の懲役に処する。
- 2 前項の場合のうち、その犯した罪がいずれも未遂罪であるときは、人を死傷させたときを除き、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思によりいずれかの犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。
- 3 第一項の罪に当たる行為により人を死亡させた者は、死刑又は無期懲役に処する。
判例[編集]
- 強姦致傷(最高裁判決 昭和24年05月10日)
- 本条の暴行又は脅迫の程度
- 本条にいわゆる暴行又は脅迫は相手方の抗拒を著しく困難ならしめる程度のものであることを以て足りる。
- 強姦致死(最高裁判決 昭和24年07月09日)
- 暴行又は脅迫を以つて婦女の心神を喪失させ若しくは抗拒不能に為して姦淫した行為の擬律
- 刑法第177条は暴行又は脅迫を以つて婦女を姦淫した者は、強姦の罪として処罰するを規定し、次に同法第178條において、人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又はこれをして心神を喪失せしめ、若しくは抗拒不能ならしめて姦淫したる者についても、前条の例による旨を規定している。かかる法条の排列から見れば、苟しくも暴行又は脅迫を以つて婦女を姦淫した者は、前条に該当するのであつて従ってその暴行又は脅迫によつて、婦女をして心神を喪失せしめ、若しくは抗拒不能ならしめて姦淫した者も、また当然これに包含せられるものと解すべきである。
- 暴行脅迫により心神喪失となった被害者に対する姦淫行為(→強制性交行為)は次条準強姦(→準強制性交)ではなく、直接強姦(→強制性交)となる。
- 強姦の点が未遂に終つた強姦致死罪の擬律
- 強姦致死罪は単一な刑法第181条の犯罪を構成するものであつて、強姦の点が未遂であるかどうか及びその未遂が中止未遂であるか障礙未遂であるかということは、単に情状の問題にすぎないのであつて、処断刑に変更を来たすべき性質のものではないから、本罪に対しては刑法第181条を適用すれば足り、未遂軽減に関する同法第43条本文又は但書を適用すべきものではない。
- 驚愕によつて犯行を中止した場合と中止未遂
- 犯罪の実行に着手した後、驚愕によつて犯行を中止した場合においても、その驚愕の原因となつた諸般の状況が、被告人の犯意の遂行を思い止まらしめる障碍の事情として客観性のあるものと認められるときは、障碍未遂であつて中止未遂ではない。
- 窃盗、強姦致傷 (最高裁判決 昭和33年06月06日)
- 本条の暴行又は脅迫の程度
- 本条にいわゆる暴行脅迫は、単にそれのみを取り上げて観察すれば「相手方の抗拒を著しく困難ならしめる」程度には達しないと認められるようなものであつても、その相手方の年令、性別、素行、経歴等やそれがなされた時間、場所の四囲の環境その他具体的事情の如何と相伴つて、相手方の抗拒を不能にし又はこれを著しく困難ならしめるものであれば足りると解すべきである。
- 強姦致傷 (最高裁決定 昭和45年7月28日)
- 自動車により婦女を他所へ連行したうえ強姦した場合につき婦女を自動車内に引きずり込もうとした時点において強姦罪の実行の着手があるとされた事例
- 被告人が、外一名と共謀のうえ、夜間一人で道路を通行中の婦女を強姦しようと企て、共犯者とともに、必死に抵抗する同女を被告人運転のダンプカーの運転席に引きずり込み、発進して同所から約5,800メートル離れた場所に至り、運転席内でこもごも同女を強姦した本件事実関係のもとにおいては、被告人が同女をダンプカーの運転席に引きずり込もうとした時点において強姦罪の実行の着手があつたものと解するのが相当である。
- 被害者を拘禁した現場と姦淫した現場が乖離し、移動の間に被害者が受傷した事案について、拘禁行為に姦淫行為の実行の着手を認め、結果的加重犯である強姦致傷を認めた事例。
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