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刑法第240条

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

条文

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(強盗致死傷)

第240条
強盗が、人を負傷させたときは無期又は6年以上の拘禁刑に処し、死亡させたときは死刑又は無期拘禁刑に処する。

改正経緯

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2022年、以下のとおり改正(施行日2025年6月1日)。

(改正前)懲役
(改正後)拘禁刑

解説

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趣旨: 強盗犯が、その機会(判例・通説)に暴行・脅迫(脅迫も含むとする見解:西田=橋爪220頁など。なお本条の旧版においては相当因果関係が欠けることを理由として脅迫と致死傷結果の間の因果関係を否定する見解がとられていたが、脅迫されたために被害者が畏怖し逃亡のの際に冷静な行為できずに死傷したというような場合には必ずしも因果関係ないし危険の現実化が否定されるわけではなかろう)被害者を殺傷した場合には、強盗罪と殺人罪(199条)、傷害罪(204条)等が成立するのではなく、本条が適用され、より重く処罰される。

主体: 強盗の未遂・既遂犯人/純強盗犯人
  • 強盗における盗取行為が成立せず強盗または準強盗自体は未遂であっても強盗致死傷は成立する(最判昭和24・2・22

類型(西田=橋爪219)

  • 強盗殺人(強盗と殺人の結合犯)
  • 強盗致死(結果的加重犯)
  • 強盗傷害[傷人](強盗と傷害の結合犯)
  • 強盗致傷(結果的加重犯)
行為と結果の関係
  • 機会説と手段説
    • 広:機会説(判例・通説)
      ↓限定:密接関連説(大塚231、平川360、大谷258以下、曽根138、高橋306、井田297)
      ↑拡張:拡張手段説(手段+事後強盗類似状況での暴行・脅迫:西田=橋爪220、山口242)
      狭:手段説(滝川131)
      ↓限定:限定手段説(川口・姫路法学36号1以下)  
  • 【事例】
    • ① Xは,自らの強盗の犯行をYに目撃されたところ,犯行の翌日,犯行現場から約10キロメートル離れた路上において,たまたまYに発見され,Yに捕まらないようにするため,Yの顔面を拳骨で多数回殴打し,Yに傷害を負わせた。
    • ② Xは,Yから金品を強取することをZと計画し,Zと共にY方に侵入してYから金品を強取したが,その直後,Y方において,Zに対する日頃の不満を解消するためだけに,Zの顔面を拳骨で多数回殴打し,Zに傷害を負わせた。
    • ③Xは,Yから金品を強取することを計画し,Y方に侵入してYに包丁を突き付けて金品を要求したが,これにYが応じなかったため,金品強取を諦めて逃走しようとしたところ,Yから金品を強取できなかった腹いせに,Yとは別の部屋で寝ていた1歳のZの腹部を多数回蹴り付け,Zに傷害を負わせた。
未遂 
  • 強盗が未遂でも強盗傷人罪(最判昭和23・6・12刑集2巻7号676頁):結果的加重犯・傷害罪に未遂はないので、結局この立場からは、強盗殺人において殺人が未遂に終わった場合にのみ、本罪の未遂が成立するとする(反対:中山=松宮158→強盗が未遂の場合も含む)。
  • 【事例】
    • ① Xは、Vを殺して財物を奪取しようとし、財物は奪取したが、殺人は未遂に終わった。
      • ② Xは、Vを殺して財物を奪取しようとし、Vは殺害したが、財物は奪取できなかった。

参照条文

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判例

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  1. 強盗傷人(最高裁判決昭和22年11月5日)
    共犯者の一人の加えた傷害と共犯者全員に對する強盜傷人罪の成立
    およそ強盜の共犯者中の一人の施用した財物奪取の手段としての暴行の結果、被害者に傷害を生ぜしめたときは、その共犯者の全員につき強盜傷人罪は成立するのであつて、このことは強盜傷人罪が所謂結果犯たるの故に外ならない。
  2. 強盗傷人(最高裁判決昭和24年2月22日)
    窃盜未遂の準強盜につき強盜傷人罪既遂の成否
    刑法第240條前段の強盜傷人罪は、強盜犯人が強盜の機會において人を傷害した場合を犯情の重いものとして通常の傷害罪と區別して處斷することとした結果的加重犯であるから、いやしくも傷害の結果が發生した以上、強盜行爲が既遂であると未遂であるとを問わず、同條の既遂罪が成立するのである。されば所論のように窃盜行爲が未遂であるため、刑法第238條の準強盜罪の未遂罪に當る場合であつても強盜罪に準ぜられることには變りがないのであるから、もし人を傷害する結果が發生したときには、同法第240條前段の強盜傷人罪の既遂罪として所斷されるべきものであることは當然である。

前条:
刑法第239条
(昏酔強盗)
刑法
第2編 罪
第36章 窃盗及び強盗の罪
次条:
刑法第241条
(強盗・不同意性交等及び同致死)
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