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刑法第65条

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

条文

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(身分犯の共犯)

第65条
  1. 犯人の身分によって構成すべき犯罪行為に加功したときは、身分のない者であっても、共犯とする。
  2. 身分によって特に刑の軽重があるときは、身分のない者には通常の刑を科する。

解説

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身分犯の共犯について定める。以下のとおり、当該身分犯が、
  1. 第1項、真正身分犯については、身分の無い者についても共犯とする。
    「身分によって構成すべき犯罪行為」の判断が論点となる。
    • 公務員でないものが主犯である公務員を教唆・幇助して主犯に賄賂を受け取らせた場合、収賄罪の教唆犯・幇助犯に問われる。
    • 交際中の母親(監護者)に娘を説得させて被告との性交に応じさせた内縁の夫が監護者たる母親と共謀して子どもと性交をした場合、監護者ではない者でも監護者性交等罪(刑法第179条)第1項が成立する(2025年(令和7年)1月27日付最高裁判所決定[1])。
  2. 第2項、不真正身分犯については、身分の無い者には、身分ある者に適用される加重された刑ではなく、通常の刑が科される。
    • 母体保護法などの適用のない堕胎を妊婦の依頼により、看護師が医師に加担して行った場合、医師は業務上堕胎罪(第214条)が適用されるが、看護師は同条に定められる加重身分ではないため、通常の同意堕胎罪(第213条)が適用される。

判例

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  1. 横領(最高裁判決昭和31年6月5日)刑法第253条
    業務上横領罪の共犯ではあるが身分なき被告人に対し刑法第253条を適用したる違法と判決への影響
    業務上の占有者たる身分なき被告人が他人の業務上横領罪に共同正犯として加功した事実を認めながら刑法253条を適用処断したのは性質上判決に影響を及ぼすことの明らかな法律適用の誤りがあるものというべきこと論をまたない。
  2. 商法第違反被告事件(最高裁決定 平成20年05月19日)商法第(平成17年法第律第87号による改正前のもの)486条1項, 刑法第247条
    銀行がした融資に係る頭取らの特別背任行為につき,当該融資の申込みをしたにとどまらず,その実現に積極的に加担した融資先会社の実質的経営者に,特別背任罪の共同正犯の成立が認められた事例
    銀行がした融資に係る頭取らの特別背任行為につき,当該融資の申込みをしたにとどまらず,融資の前提となるスキームを頭取らに提案してこれに沿った行動を取り,同融資の担保となる物件の担保価値を大幅に水増しした不動産鑑定書を作らせるなどして,同融資の実現に積極的に加担した融資先会社の実質的経営者は,上記特別背任行為に共同加功をしたということができる。
    • 「同融資の実現に積極的に加担した融資先会社の実質的経営者」 - 特別背任罪を構成する身分を有していない。
  3. 監護者性交等、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件(最高裁決定令和7年1月27日)第179条
    18歳未満の者を現に監護する者の身分のない者が、監護者と共謀して、監護者であることによる影響力があることに乗じて当該18歳未満の者に対し性交等をした場合における監護者性交等罪の共同正犯の成否
    18歳未満の者を現に監護する者(以下「監護者」という。)の身分のない者が、監護者と共謀して、監護者であることによる影響力があることに乗じて当該18歳未満の者に対し性交等をした場合、監護者の身分のない者には刑法65条1項の適用により監護者性交等罪の共同正犯が成立する。

脚注

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出典

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  1. ^ 交際相手の娘と性交、親でなくても「監護者性交罪」 最高裁が初判断” (日本語). 朝日新聞 (2025年1月29日). 2025年1月30日閲覧。

前条:
刑法第64条
(教唆及び幇助の処罰の制限)
刑法
第1編 総則
第11章 共犯
次条:
刑法第66条
(酌量減軽)
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