刑法第247条
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条文
[編集](背任)
- 第247条
- 他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、5年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処する。
改正経緯
[編集]2022年、以下のとおり改正(施行日2025年6月1日)。
- (改正前)懲役
- (改正後)拘禁刑
解説
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参照条文
[編集]- 第250条(未遂罪)
- 未遂は、罰する。
特別背任
[編集]法定される委任業務については、各法により受任者としての責任相当を加重して特別背任罪を定め、法定刑も重いものとなっている。
- (例)会社法における役員等による特別背任罪の法定刑(会社法第960条 )
- 10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
- 特別背任が定められる法律
判例
[編集]- 業務上横領、背任(最高裁判決 昭和29年11月05日)民法第192条,民法第703条
- 背任罪における目的の主従と同罪の成否
- 主として、不法に融資して第三者の利益を図る目的がある以上、従として、右融資により本人(貯蓄信用組合)の貸付金回収を図る目的であつても、背任罪を構成する。
- 背任(最高裁判決 昭和31年12月07日)
- いわゆる二重抵当は背任罪を構成するか
- 甲に対し自己の不動産につき根抵当権設定後、いまだその登記なきを利用し、さらに乙に対して根抵当権を設定してその登記を了する所為は、甲に対する背任罪を構成する。
- 背任、加重収賄(最高裁判決 昭和43年04月26日)物品管理法第(昭和40年法第律41号による改正前のもの)28条,予算決算及び会計令(昭和37年政令314号による改正前のもの)73条
- 被告人に会計法規に違反する認識のあつたことをもつて直ちに国に損害を加える認識もあつたとして背任罪の成立を認めるのは相当でないとされた事例
- 農林省仙台農地事務局八郎潟南部干拓建設事業所長であつた被告人が、不用物品の払下げにあたり、物品管理法(昭和四〇年法律第四一号による改正前のもの)および予算決算及び会計令(昭和三七年政令第三一四号による改正前のもの)の規定に違反し、あらかじめ不用決定等をすることなく、代金納入前に、所管の廃材を引き渡した事実があつたとしても、右代金は物件引渡の二日後に納入され、被告人が、右引渡当時、その代金支払の確実性を信じていたと認められる状況があるときは、被告人に前記会計法規に違反する認識のあつたことをもつて、直ちに国に損害を加える認識もあつたものとして、背任罪が成立するものとするのは相当でない。
- 背任(最高裁決定 昭和58年05月24日)信用保証協会法第1条,信用保証協会法第20条
- 刑法247条にいう「本人ニ財産上ノ損害ヲ加ヘタルトキ」の意義
- 刑法247条にいう「本人ニ財産上ノ損害ヲ加ヘタルトキ」とは、経済的見地において本人の財産状態を評価し、被告人の行為によつて本人の財産の価値が減少したとき又は増加すべかりし価値が増加しなかつたときをいう。
- 信用保証協会職員の保証業務行為が背任罪に該当するとされた事例
- 信用保証協会の業務の性質上、その行う債務保証が、常態においても同協会に損害を生じさせる場合が少なくないとしても、同協会の支所長が、企業者の資金使途が倒産を一時糊塗するためのものであることを知りながら、委任された限度額を超えて同人に対する債務保証を専決し、あるいは協会長に対する稟議資料に不実の記載をし、保証条件についての協会長の指示に従わないで保証書を交付するなどして、同協会をして企業者の債務を保証せたときは、右支所長は、任務に背き同協会に財産上の損害を加えたものというべきである。
- 刑法247条にいう「本人ニ財産上ノ損害ヲ加ヘタルトキ」の意義
- 背任(最高裁決定 昭和60年04月03日)
- 背任罪にいわゆる任務違背の行為に当たるとされた事例
- 信用組合の専務理事である被告人が、自ら所管する貸付事務について、貸付金の回収が危ぶまれる状態にあることを熟知しながら、無担保あるいは不十分な担保で貸付を実行する手続をとつた本件行為は、それが決裁権を有する理事長の決定・指示によるものであり、被告人がその貸付について理事長に対し反対意見を具申したという事情があつたとしても、背任罪にいわゆる任務違背の行為に当たる。
- 恐喝、商法第違反(最高裁決定 昭和63年11月21日)
- 図利加害の意欲ないし積極的認容と特別背任罪における図利加害目的
- 別背任罪における図利加害目的の存在を肯認するには、図利加害の意欲ないし積極的認容までを要するものではない。
- 背任(最高裁決定 平成8年02月06日)
- 手形保証債務を負担させたことが刑法(平成7年法律第91号による改正前のもの)247条にいう「財産上ノ損害」に当たるとされた事例
- 甲銀行から当座貸越契約に基づき融資を受けていた乙会社が、手形を振り出しても自ら決済する能力を欠く状態になっていたのに、乙会社の代表者である被告人が、甲銀行の支店長と共謀の上、乙会社振出しの約束手形に甲銀行をして手形保証をさせた場合において、右保証と引換えに、額面金額と同額の資金が乙会社名義の甲銀行預金口座に入金され、甲銀行に対する当座貸越債務の弁済に充てられるとしても、右入金が、被告人と右支店長との間の事前の合意に基づき、一時的に右貸越残高を減少させ、乙会社に債務の弁済能力があることを示す外観を作り出して、甲銀行をして更に乙会社への融資を行わせることなどを目的として行われたものであるなど判示の事実関係の下においては、甲銀行が手形保証債務を負担したことは、刑刑法(平成7年法律第91号による改正前のもの)247条にいう「財産上ノ損害」に当たる。
- 商法違反被告事件(最高裁決定 平成15年02月18日)
- 住宅金融専門会社の融資担当者の特別背任行為につき同社から融資を受けていた会社の代表者が共同正犯とされた事例
- 住宅金融専門会社の役員ら融資担当者が実質的に破たん状態にある不動産会社に対して多額の運転資金を継続的に実質無担保で融資した際に,上記不動産会社の代表取締役において,融資担当者らの任務違背,上記住宅金融専門会社の財産上の損害について高度の認識を有し,融資担当者らが自己の保身等を図る目的で本件融資に応じざるを得ない状況にあることを利用しつつ,迂回融資の手順を採ることに協力するなどして,本件融資の実現に加担したなど判示の事情の下では,上記代表取締役は,融資担当者らの任務違背に当たり,支配的な影響力を行使することや,社会通念上許されないような方法を用いるなどして積極的に働き掛けることがなかったとしても,融資担当者らの特別背任行為について共同加功をしたというべきである。
- 背任被告事件(最高裁決定 平成15年03月18日)
- 質権設定者が質入れした株券につき除権判決を得て失効させ質権者に損害を加えた場合と背任罪の成否
- 株式を目的とする質権の設定者が,質入れした株券について虚偽の申立てにより除権判決を得て株券を失効させ,質権者に損害を加えた場合には,背任罪が成立する。
- 商法違反,法人税法第違反被告事件(最高裁決定 平成17年10月07日)
- 会社の絵画等購入担当者の特別背任行為につき同社に絵画等を売却した会社の支配者が共同正犯とされた事例
- 甲社の絵画等購入担当者である乙らが,丙の依頼を受けて,甲社をして丙が支配する丁社から多数の絵画等を著しく不当な高額で購入させ,甲社に損害を生じさせた場合において,その取引の中心となった甲と丙の間に,それぞれが支配する会社の経営がひっ迫した状況にある中,互いに無担保で数十億円単位の融資をし合い,各支配に係る会社を維持していた関係があり,丙がそのような関係を利用して前記絵画等の取引を成立させたとみることができるなど判示の事情の下では,丙は,乙らの特別背任行為について共同加功をしたということができる。
- 商法第違反被告事件(最高裁決定 平成20年05月19日)
- 銀行がした融資に係る頭取らの特別背任行為につき,当該融資の申込みをしたにとどまらず,その実現に積極的に加担した融資先会社の実質的経営者に,特別背任罪の共同正犯の成立が認められた事例
- 銀行がした融資に係る頭取らの特別背任行為につき,当該融資の申込みをしたにとどまらず,融資の前提となるスキームを頭取らに提案してこれに沿った行動を取り,同融資の担保となる物件の担保価値を大幅に水増しした不動産鑑定書を作らせるなどして,同融資の実現に積極的に加担した融資先会社の実質的経営者は,上記特別背任行為に共同加功をしたということができる。
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