手形法第70条

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

法学民事法商法コンメンタールコンメンタール手形法

条文[編集]

第70条  
  1. 引受人ニ対スル為替手形上ノ請求権ハ満期ノ日ヨリ三年ヲ以テ時効ニ罹ル
  2. 所持人ノ裏書人及振出人ニ対スル請求権ハ適法ノ時期ニ作ラシメタル拒絶証書ノ日附ヨリ、無費用償還文句アル場合ニ於テハ満期ノ日ヨリ一年ヲ以テ時効ニ罹ル
  3. 裏書人ノ他ノ裏書人及振出人ニ対スル請求権ハ其ノ裏書人ガ手形ノ受戻ヲ為シタル日又ハ其ノ者ガ訴ヲ受ケタル日ヨリ六月ヲ以テ時効ニ罹ル

解説[編集]

  1. 引受人に対する為替手形上の請求権は、満期の日から3年をもって時効にかかる。
  2. 所持人の裏書人及び振出人に対する請求権は、適法の時期に作成された拒絶証書の日附から、無費用償還文句がある場合においては、満期の日から1年をもって時効にかかる。
  3. 裏書人の他の裏書人及び振出人に対する請求権は、その裏書人が手形の受戻をした日又はその者が訴えを受けた日から6月をもって時効にかかる。

判例[編集]

  1. 約束手形金(最高裁判決 昭和55年05月30日)手形法第77条1項8号,民法第166条1項
    約束手形の所持人と裏書人との間において支払猶予の特約がされた場合と所持人の裏書人に対する手形上の請求権の消滅時効の起算点
    約束手形の所持人と裏書人との間において裏書人の手形上の債務につき支払猶予の特約がされた場合には、所持人の裏書人に対する手形上の請求権の消滅時効は、右猶予期間が満了した時から進行する。
  2. 約束手形金(最高裁判決 昭和57年07月15日)手形法第50条1項,手形法第77条1項4号,手形法第77条1項8号,民法第1条2項
    約束手形の裏書人が振出人の手形金支払義務の時効による消滅に伴い自己の所持人に対する償還義務も消滅したとしてその履行を免れようとすることが信義則に反し許されないとされた事例
    約束手形の裏書人が、その所持人に対して、自己の償還義務について消滅時効の利益の放棄ないし債務の承認をしたうえ、専ら自己に対する信頼に基づいて右手形を取得した所持人本人及びその代理人である弁護士に対して、再三にわたり、しかも振出人の債務とは必ずしも関係なく自己固有の債務として手形金の支払義務があることを認めるような態度を示し、同人らに確実にその履行がされるものとの期待を抱かせながら、のちに右態度をひるがえし、その信頼を裏切つて償還義務を履行しようとせず、やむなく右所持人より提起された手形金請求訴訟においても当該手形の裏書自体を否認したりその他種々の主張を提出して引延しとみられる抗争をすることによりその審理に長期間を費やさせ、その間に所持人が専ら裏書人を信頼してその義務履行が確実にされるものと期待する余り振出人に対する手形金請求権についての消滅時効中断の措置を怠つたがために振出人の手形金支払義務が消滅したのに乗じ、これに伴い自己の償還義務も当然消滅するに至つたとしてその履行を免れようとする所為に出ることは、信義則に反し許されない。
  3. 約束手形金(最高裁判決 平成5年07月20日)手形法第77条1項
    白地手形の満期が補充された場合とその他の手形要件の白地補充権の消滅時効
    満期及びその他の手形要件を白地として振り出された手形の満期が補充された場合は、右手形のその他の手形要件の白地補充権は、手形上の権利と別個独立に時効によって消滅することなく、手形上の権利が消滅しない限りこれを行使することができる。

参照条文[編集]


前条:
第69条
手形法
第11章 時効
次条:
第71条
このページ「手形法第70条」は、まだ書きかけです。加筆・訂正など、協力いただける皆様の編集を心からお待ちしております。また、ご意見などがありましたら、お気軽にトークページへどうぞ。