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民法第321条

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

法学民事法コンメンタール民法第2編 物権 (コンメンタール民法)>民法第321条

条文

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動産売買の先取特権

第321条
動産の売買の先取特権は、動産の代価及びその利息に関し、その動産について存在する。

解説

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動産の売買における先取特権について定める。
この先取特権は、買主が売主に支払うべき動産の代金およびその利息について認められるものであり、その目的物は売買された動産そのものに限られる。
この先取特権が認められるのは、売主が自分の所有する動産を買主に売った結果、買主がその動産を自分の財産の中に取り込むことができるようになったためである。したがって売主は、他の債権者に対して次のように主張することができる 「もし私がこの動産を売っていなければ、この動産はあなたがた債権者(自分以外の債権者)が当てにする債務者の財産の中に存在していなかったはずである。ゆえに、まず私にこの動産の代金などを支払った後でなければ、この動産の価値をもってあなたがたの弁済に充当することはできない」と(この場合にも、民法第295条の適用により、売主が留置権を有することが多い)。
先取特権の範囲
本条によって先取特権により担保される債権は、動産の代金およびその利息に限られる。ただし、利息は常に含まれるわけではなく、契約において支払うことが定められている場合、または買主が代金の支払いを怠ったために当然に利息を支払わざるを得なくなった場合に限って、利息にも先取特権が及ぶ(民法第575条第2項参照)。
反対解釈として、代金および利息以外の金銭債権には、この先取特権による担保は及ばない。
たとえば、買主が違約金を支払う約束をしていたとしても、その違約金は先取特権によって担保されない。なぜなら、代金およびその利息は、その物の価値を表すものであり、これを支払わない限り他の債権者はその物の価格から弁済を受けることができないが、違約金はしばしば物の価格とは無関係に定められるものだからである。ましてや、純粋な損害賠償金にいたっては物の価値を表すものではないのは、言うまでもない。
先取特権を成立させる契機
この条文による先取特権は、売買契約に基づく場合にのみ成立し、贈与(負担付き贈与を含む)や代物弁済など、これに類する契約には適用されない。
そもそも先取特権は、公益上特に必要と判断される場合にのみ認められるものであり、理論上同種の理由があるからといって一律に認められるものではない。
したがって、法律は売買のように日常的に頻繁に行われる契約については、当事者を保護するために先取特権を与えているが、負担付き贈与や代物弁済のように頻度が低く、特に保護を要しない契約には同じ保護を与える必要がないと起草者は考えた。
そうでなければ、先取特権を与えるべき場合が非常に多くなり、結果として通常の債権者は、他の先取特権を持つ者たちに債務者の全財産を取られてしまい、自分が弁済を受けられなくなるおそれがあることとなる。
ただし、交換契約における「補足金(差額)」については、この条文の規定を準用する(民法第586条第2項)。
たとえば、甲が乙と動産の交換契約をして、甲の持つ動産Aと乙の持つ動産Bを交換し、Aの値段がBよりも安いために、甲が乙に別途1000万円を支払うと約束した場合、もし甲がこの1000万円を支払わないときは、乙は甲に引き渡した動産Bについて、この条文に基づく先取特権を有する。

参照条文

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判例

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  1. 債権差押命令及び転付命令に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告(最高裁決定 平成10年12月18日)民法第304条,旧・民法第322条(現本条),民法第632条
    1. 請負工事に用いられた動産の売主が請負代金債権に対して動産売買の先取特権に基づく物上代位権を行使することの可否
      請負工事に用いられた動産の売主は、原則として、請負人が注文者に対して有する請負代金債権に対して動産売買の先取特権に基づく物上代位権を行使することができないが、請負代金全体に占める当該動産の価額の割合や請負契約における請負人の債務の内容等に照らして請負代金債権の全部又は一部を右動産の転売による代金債権と同視するに足りる特段の事情がある場合には、右部分の請負代金債権に対して右物上代位権を行使することができる。
    2. 請負工事に用いられた動産の売主が請負代金債権の一部に対して動産売買の先取特権に基づく物上代位権を行使することができるとされた事例
      甲から機械の設置工事を請け負った乙が右機械を代金1575万円で丙から買い受け、丙が乙の指示に基づいて右機械を甲に引き渡し、甲が乙に支払うべき2080万円の請負代金のうち1740万円は右機械の代金に相当するなど判示の事実関係の下においては、乙の甲に対する1740万円の請負代金債権につき右機械の転売による代金債権と同視するに足りる特段の事情があるということができ、丙は、動産売買の先取特権に基づく物上代位権を行使することができる。

前条:
民法第320条
(動産保存の先取特権)
民法
第2編 物権

第8章 先取特権

第2節 先取特権の種類
次条:
民法第322条
(種苗又は肥料の供給の先取特権)
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