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民法第512条

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

法学民事法コンメンタール民法第3編 債権 (コンメンタール民法)

条文

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(相殺の充当)

第512条
  1. 債権者が債務者に対して有する一個又は数個の債権と、債権者が債務者に対して負担する一個又は数個の債務について、債権者が相殺の意思表示をした場合において、当事者が別段の合意をしなかったときは、債権者の有する債権とその負担する債務は、相殺に適するようになった時期の順序に従って、その対当額について相殺によって消滅する。
  2. 前項の場合において、相殺をする債権者の有する債権がその負担する債務の全部を消滅させるのに足りないときであって、当事者が別段の合意をしなかったときは、次に掲げるところによる。
    1. 債権者が数個の債務を負担するとき(次号に規定する場合を除く。)は、第488条第4項第二号から第四号までの規定を準用する。
    2. 債権者が負担する一個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべきときは、第489条の規定を準用する。この場合において、同条第2項中「前条」とあるのは、「前条第4項第二号から第四号まで」と読み替えるものとする。
  3. 第1項の場合において、相殺をする債権者の負担する債務がその有する債権の全部を消滅させるのに足りないときは、前項の規定を準用する。

改正経緯

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2017年改正により、以下の条文から改正。

第488条から第491条までの規定は、相殺について準用する。
改正前、対応条文。
  • 民法第488条(弁済の充当の指定)
    →現.第488条第1項〜第3項
    2017年改正において、相殺に関しては適用しないこととした。
  • 民法第489条(法定充当)
    →現.第488条に吸収。
    2017年改正において、第1号については、改正第1項で「相殺に適するようになった時期の順序に従って」とあるため適用しない。
  • 民法第490条(数個の給付をすべき場合の充当)
    →現.第491条
    2017年改正において、第512条の2を新設。
  • 民法第491条(元本、利息及び費用を支払うべき場合の充当)
    →現.第489条
    2017年改正で、現第2項第2号に定める。

解説

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「相殺の充当」について定める。2017年改正前は「弁済の充当」を準用していたが、弁済の充当に認められる当事者一方の選択の余地を無くした。

以下の順による。

  1. 当事者の合意(第490条参照)
  2. 相殺適状の順
  3. すべての債務を消滅させるのに足りない場合
    1. 元本のほか利息及び費用を支払うべきとき
      費用→利息→元本 の順で充当する。
      • 費用、利息又は元本のいずれかの全てを消滅させるのに足りない場合
        以下(3-2)による。
    2. その他の場合(民法第488条第4項各号の準用)
      1. 当事者一方のために相殺の利益が多いもの(第2号準用)
      2. 当事者一方のために相殺の利益が相等しいときは、相殺適状が先に到来したもの又は先に到来すべきもの(第3号準用)
      3. 相殺適状の到来期も同一な場合は、各債務の額に応じる(第4号準用)

参照条文

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判例

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  1. 定期預金払戻(最高裁判決  昭和56年07月02日) 旧・民法第489条(現・民法第488条),旧・民法第491条(現・民法第489条
    自働債権又は受働債権として数個の元本債権があるにもかかわらず当事者が相殺の順序の指定をしなかつた場合における相殺充当の方法
    自働債権又は受働債権として複数の元本債権を含む数個の債権があり、当事者のいずれもが右元本債権につき相殺の順序の指定をしなかつた場合には、まず元本債権相互間で相殺に供しうる状態となつた時期の順に従つて相殺の順序を定めたうえ、その時期を同じくする元本債権相互間及び元本債権とこれについての利息、費用債権との間で民法第489条(旧)、民法第491条(旧)の規定の準用により相殺充当を行うべきである。

前条:
民法第511条
(支払の差止めを受けた債権を受働債権とする相殺の禁止)
民法
第3編 債権

第1章 総則
第6節 債権の消滅

第2款 相殺
次条:
民法第512条の2
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