民法第882条
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法学>民事法>コンメンタール民法>第5編 相続 (コンメンタール民法)
条文
[編集](相続開始の原因)
- 第882条
- 相続は、死亡によって開始する。
- (昭和22年12月22日法律第222号全部改正、平成16年12月1日法律第147号一部改正)
改正前
[編集]昭和22年12月22日法律第222号
[編集]- 第882条
- 相続は、死亡によつて開始する。
明治31年6月21日法律第9号
[編集]- 第992条
- 遺産相続ハ家族ノ死亡ニ因リテ開始ス
解説
[編集]- 本条は、相続の開始の原因と時期について定めている。
- 相続開始原因は、人の自然の死亡および失踪宣告による法律上の死亡とされる。旧民法では、家督相続と遺産相続の2種類の相続があり、家督相続に関しては、戸主の死亡のほか、隠居、国籍喪失、去家なども相続開始原因とされていた(旧民法第964条)。
- 相続開始時期は、自然の死亡は医学的に死亡が確認された瞬間とされ、失踪宣告による法律上の死亡は死亡がみなされた日とされる。
- 推定相続人という地位のみに基づく期待利益は保護の対象ではない(判例)。寄与分が推定相続財産に混入する場合は別途考慮する必要がある。
参照条文
[編集]判例
[編集]- 最高裁判所第三小法廷判決、昭和30年12月26日、昭和27年(オ)第683号、『売買無効確認並びに所有権取得登記抹消手続請求上告事件』、最高裁判所民事判例集9巻14号2082頁。
- 推定相続人は被相続人がなした仮装売買について無効確認を求め得るか
- たとえ被相続人が所有財産を他に仮装売買したとしても、単にその推定相続人であるというだけでは、右売買の無効(売買契約より生じた法律関係の不存在)の確認を求めることはできない。
- 推定相続人は被相続人の権利を代位行使し得るか
- 単に推定相続人であるというだけでは、被相続人の権利を代位行使することはできない。
- 推定相続人は被相続人がなした仮装売買について無効確認を求め得るか
- 最高裁判所第三小法廷判決、平成11年3月9日、平成9年(オ)第953号、『所有権移転登記等抹消登記手続、所有権移転登記手続、損害賠償請求事件』、最高裁判所裁判集民事192号65頁。
- 被相続人の生存中に相続人に対し売買を原因としてされた所有権移転登記につき被相続人の死亡後に相続を原因とするものに更正することの可否
- 被相続人の生存中に相続人に対し売買を原因としてされた所有権移転登記について、被相続人の死亡後に、相続を原因とするものに更正することはできない。
- 被相続人の生存中にその所有不動産につき共同相続人の一人に対し所有権移転登記がされた上で第三者のために抵当権設定登記がされた場合において被相続人の死亡後に他の相続人がした真正な登記名義の回復を原因とする持分移転登記手続請求及び抵当権設定登記についての更正登記手続請求が認められた事例
- 相続人の生存中にその所有する不動産につき共同相続人の一人である甲に対し仮空の売買を原因として所有権転移登記がされ、甲が第三者乙のために抵当権設定登記をした場合には、被相続人の死亡後、他の相続人は、甲に対しては真正な登記名義の回復を原因とする持分の移転登記手続を、乙に対しては甲の持分についての抵当権設定登記に改める更正登記手続を請求することができる。
- 被相続人の生存中に相続人に対し売買を原因としてされた所有権移転登記につき被相続人の死亡後に相続を原因とするものに更正することの可否
- 最高裁判所第一小法廷判決、平成12年1月27日、平成11年(オ)第773号、『所有権移転登記抹消登記手続請求事件』、最高裁判所裁判集民事196号239頁。
- 甲名義の不動産につき乙、丙が順次相続したことを原因として直接丙に対してされた所有権移転登記を甲の共同相続人丁及び乙に対する所有権移転登記並びに乙から丙に対する持分全部移転登記に更正することの可否
- 甲名義の不動産につき、甲から乙、乙から丙への順次の相続を原因として直接丙に対する所有権移転登記がされているときに、右登記を甲の共同相続人丁及び乙に対する所有権移転登記並びに乙から丙に対する持分全部移転登記に更正することはできない。
参考文献
[編集]- 島津一郎・久貴忠彦編 『新・判例コンメンタール民法 14 相続(1)』 三省堂、1992年6月1日。ISBN 9784385311661。
- 中川善之助・泉久雄編 『新版 注釈民法(26) 相続(1)』 有斐閣、1992年6月30日。ISBN 9784641017269。
参考
[編集]明治民法において、本条には以下の規定があった。趣旨は、民法第822条に継承された。
- 親権ヲ行フ父又ハ母ハ必要ナル範囲内ニ於テ自ラ其子ヲ懲戒シ又ハ裁判所ノ許可ヲ得テ之ヲ懲戒場ニ入ルルコトヲ得
- 子ヲ懲戒場ニ入ルル期間ハ六个月以下ノ範囲内ニ於テ裁判所之ヲ定ム但此期間ハ父又ハ母ノ請求ニ因リ何時ニテモ之ヲ短縮スルコトヲ得
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