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特許法第180条の2

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

特許法第180条の2

審決取消訴訟における特許庁の意見表明について規定する。本条は、実用新案法、意匠法、商標法で準用されている。

条文[編集]

(審決取消訴訟における特許庁長官の意見)

第180条の2 裁判所は、第179条ただし書に規定する訴えの提起があつたときは、特許庁長官に対し、当該事件に関するこの法律の適用その他の必要な事項について、意見を求めることができる。

2 特許庁長官は、第179条ただし書に規定する訴えの提起があつたときは、裁判所の許可を得て、裁判所に対し、当該事件に関するこの法律の適用その他の必要な事項について、意見を述べることができる。

3 特許庁長官は、特許庁の職員でその指定する者に前ニ項の意見を述べさせることができる。

解説[編集]

審決等取消訴訟においては、特許法などの法令解釈、運用基準、審査基準、審査実務、審判実務が争点となることが少なくない。判決で示された規範によっては、特許庁だけでなく日本国民に大きな影響を与えることにもなりかねない(判決の拘束力)。

査定系審判の審決等取消訴訟においては、特許庁長官被告となるため(179条本文)、被告の立場でこれらの争点について意見を陳述することができ、特許庁における考え方が訴訟審理に反映され、それを踏まえた判決が下されることが期待できる。しかし、当事者系審判の審決等取消訴訟においては原告、被告は当該審判の当事者となるため(179条ただし書)、特許庁における考え方が訴訟審理に反映されるとは限らない。

もっとも、審決等取消訴訟は行政訴訟の一類型であるため、特許庁に参加の途は開かれている(行訴23条)。とはいえ、特許庁が必ず参加しなければならないとすると、訴訟の審理が必要以上に複雑化し遅延をもたらす可能性があって現実的ではないし[1]、特許庁が訴訟に参加するとしても、被参加人の訴訟行為と抵触する訴訟行為はその効力が生じず(行訴7条民訴45条2項)、特許庁における考え方が訴訟審理に反映されないこともありえる。

そこで、査定系審判の審決等に対する審決等取消訴訟において、特許庁から意見を聴取する制度(求意見制度)および特許庁が意見を述べる制度(意見陳述制度)を設けることとした(本条)。ただ、後述するようにこれらの制度を採用するか否かは裁判所の裁量行為であるため、引き続き特許庁における考え方が審理に反映されないことはありえるが、従前よりはその危険が低減されるものと考えられる。


対象となる訴訟は当事者系審判およびこれらの171条1項の再審の審決等である(本条1, 2項)。上述したように、これら以外の審決等取消訴訟では特許庁長官が被告となるため、本条の規定によるまでもなく特許庁は訴訟審理において意見を述べることができる。

意見を述べる対象は、当該事件に関する特許法などの適用その他の必要な事項についてである(本条1, 2項)。より具体的には、主として、審決において問題となった法令解釈、運用基準の扱い等、法律の適用について行うことが想定されるが[2]、これに限られない。


特許庁を代表して意見を述べるという形式であることおよび手続上の便宜から特許庁長官が意見を述べることとした(本条1, 2項)。実際には特許庁長官自身が意見を述べることは現実的ではないため、代理人たる特許庁の職員に意見を述べさせることとしている(本条3項)。


裁判所が発議して特許庁が意見を述べる類型が求意見制度であり、特許庁が発議して特許庁が意見を述べる類型が意見陳述制度である。もっとも、特許庁が発議するといっても、三権分立の建前からすれば特許庁が訴訟の主導的立場に立つことは問題であるし、また、いずれの側が発議するにせよ、特許庁が意見を述べることにより訴訟が遅延するなどの問題が生じる可能性もあり、訴訟審理の迅速性、公平性あるいは充実性の観点から[2]、裁判所が特許庁が意見を陳述することの是非を判断し、許可に係らしめることとした。


なお、実際に求意見制度を利用した例としては、平成21年(行ケ)10084号事件がある。

改正履歴[編集]

  • 平成15年法律第47号 - 追加

脚注[編集]

  1. ^ 特許庁総務部総務課制度改正審議室編『平成15年 特許法等の一部改正 産業財産権法の解説』発明協会(現発明推進協会)、2003、p. 102
  2. ^ 2.0 2.1 特許庁総務部総務課制度改正審議室編『平成15年 特許法等の一部改正 産業財産権法の解説』発明協会(現発明推進協会)、2003、p. 104

関連条文[編集]

前条:
180条
特許法
第8章 訴訟
次条:
181条