刑法第43条

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条文[編集]

(未遂減免)

第43条
犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。

解説[編集]

本条は未遂犯の刑についての規定である。本条後段の、「自己の意思により犯罪を中止した」場合のことを中止未遂といい、この場合には刑の必要的減免が定められている。ここでいう自己の意思によりとは、犯罪をやろうと思えばでき、中止するような事情がないにもかかわらず自発的に中止することを言い、例えばパトカーが近付いてきたので中止して逃亡したような場合には、中止未遂ではない。これに対して、中止未遂以外の場合を障害未遂といい、この場合の刑の減軽は裁判所の裁量に委ねられている。

判例[編集]

  • 強姦致死(最高裁判決  昭和24年07月09日)
    強姦の点が未遂に終つた強姦致死罪の擬律
    強姦致死罪は単一な刑法第181条の犯罪を構成するものであつて、強姦の点が未遂であるかどうか及びその未遂が中止未遂であるか障礙未遂であるかということは、単に情状の問題にすぎないのであつて、処断刑に変更を来たすべき性質のものではないから、本罪に対しては刑法第181条を適用すれば足り、未遂軽減に関する同法第43条本文又は但書を適用すべきものではない。
    驚愕によつて犯行を中止した場合と中止未遂
    犯罪の実行に着手した後、驚愕によつて犯行を中止した場合においても、その驚愕の原因となつた諸般の状況が、被告人の犯意の遂行を思い止まらしめる障碍の事情として客観性のあるものと認められるときは、障碍未遂であつて中止未遂ではない。
  • 強姦致傷、不法第監禁(最高裁判決 昭和24年07月12日)
    数名共謀による強姦致傷罪と共犯者の一人の犯行の中止
    甲が他の数名の者と同一帰女を強姦しようと共謀し、右数名の者が同女を強いて姦淫し、因つて同女に傷害の結果を与えたときは、甲が自己の意思により姦淫することを中止したとしても、甲は他の共犯者と同様強姦致傷罪の共同正犯の責を負い、中止未遂とはならない。
    「共犯と中止未遂」に関する判例
    複数で犯行に及び、途中で翻意して自らの意思で犯罪行為を中止したとしても、共犯による犯罪行為が継続していれば、中止未遂とは評価されない(そもそも未遂でもない)。共犯者に働きかけ犯罪行為を中止させる行為をもって、中止未遂と評価できる。
  • 強姦致傷 (最高裁決定  昭和45年7月28日)
    自動車により婦女を他所へ連行したうえ強姦した場合につき婦女を自動車内に引きずり込もうとした時点において強姦罪の実行の着手があるとされた事例
    被告人が、外一名と共謀のうえ、夜間一人で道路を通行中の婦女を強姦しようと企て、共犯者とともに、必死に抵抗する同女を被告人運転のダンプカーの運転席に引きずり込み、発進して同所から約5,800メートル離れた場所に至り、運転席内でこもごも同女を強姦した本件事実関係のもとにおいては、被告人が同女をダンプカーの運転席に引きずり込もうとした時点において強姦罪の実行の着手があつたものと解するのが相当である。
    被害者を拘禁した現場と姦淫した現場が乖離し、移動の間に被害者が受傷した事案について、拘禁行為に姦淫行為の実行の着手を認め、結果的加重犯である強姦致傷を認めた事例。

前条:
刑法第42条
(自首等)
刑法
第1編 総則
第8章 未遂罪
次条:
刑法第44条
(未遂罪)


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