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労働基準法第84条

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

条文

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(他の法律との関係)

第84条  
  1. この法律に規定する災害補償の事由について、労働者災害補償保険法 (昭和二十二年法律第五十号)又は厚生労働省令で指定する法令に基づいてこの法律の災害補償に相当する給付が行なわれるべきものである場合においては、使用者は、補償の責を免れる。
  2. 使用者は、この法律による補償を行った場合においては、同一の事由については、その価額の限度において民法による損害賠償の責を免れる。

解説

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本章(第8章 災害補償)において定めるいわゆる労働災害(労災)補償は、労働者において労働の機会に負った災害の補償を確保するものである。
しかしながら、その原資は本来使用者に求められるべきところ、使用者の態度や財務状況によっては災害補償が確保されないというおそれがある一方、使用者側も不測の事故により支払いや経営に支障をきたすという可能性もある。その双方におけるリスクを保険により解決するため「労働者災害補償保険法(労災保険法)」等(例えば、公務員は扱いが別となっている)の措置がなされている。労災保険法第3条により、おおよそ労働者を使用する事業は適用事業とされているため、本法に定める労災に対する補償は原則として労災保険により解決されている。
本保険に加入していることにより、労災被災労働者は、たとえ、使用者が保険料を支払っていない事実がある場合でも確実に補償が受けられる。一方、使用者は補償から免責されるが、普段の保険料支払いは強制され、支払わずに労災が発生した場合、補償の免責を受けられない。
なお、労働災害は、雇用者又は使用者に対する「債務不履行責任」又は「不法行為責任」など、民法上の責任を一件問い得るが、過失の存在他責任認定等訴訟上の困難も生じ、使用側・労働側ともに過剰な負担となるため、労働災害については労働災害認定を以て無過失責任とし、労災補償がなされた金額の限度で民法上の損害賠償責任が免除される。

参照条文

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労働基準法の災害補償に相当する給付に関する法令を指定する省令

労働基準法第84条第1項の規定に基づき指定する法令は、次のとおりとする。
  1.  国家公務員災害補償法(昭和26年法律第191号)
  2.  公立学校の学校医、学校歯科医及び学校薬剤師の公務災害補償に関する法律(昭和32年法律第143号)
  3.  地方公務員災害補償法(昭和42年法律第百121号)第69条第1項の規定に基づく条例

判例

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  1. 損害賠償(最高裁判決  昭和62年07月10日)労働者災害補償保険法第12条の4労働者災害補償保険法第14条労働者災害補償保険法第18条厚生年金保険法第40条,厚生年金保険法(昭和60年法律第34号による改正前のもの)47条,民法第709条民法第710条
    労働者災害補償保険法による休業補償給付若しくは傷病補償年金又は厚生年金保険法(昭和60年法律第34号による改正前のもの)による障害年金を被害者の受けた財産的損害のうちの積極損害又は精神的損害から控除することの可否
    労働者災害補償保険法による休業補償給付若しくは傷病補償年金又は厚生年金保険法(昭和60年法律第34号による改正前のもの)による障害年金は、被害者の受けた財産的損害のうちの積極損害又は精神的損害から控除すべきでない。
  2. 損害賠償(最高裁判決 平成8年02月23日)労働者災害補償保険法第12条の4,労働者災害補償保険法第(平成7年法第律第35号による改正前のもの)23条1項,労働者災害補償保険特別支給金支給規則(昭和49年労働省令第30号)1条,労働者災害補償保険特別支給金支給規則(昭和49年労働省令第30号)2条,民法第709条
    労働者災害補償保険特別支給金支給規則による特別支給金を被災労働者の損害額から控除することの可否
    労働者災害補償保険特別支給金支給規則(昭和49年労働省令第30号)による特別支給金は、被災労働者の損害額から控除することができない。

前条:
労働基準法第83条
(補償を受ける権利)
労働基準法
第8章 災害補償
次条:
労働基準法第85条
(審査及び仲裁)
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