民法第119条
条文
[編集]- 第119条
- 無効な行為は、追認によっても、その効力を生じない。ただし、当事者がその行為の無効であることを知って追認をしたときは、新たな行為をしたものとみなす。
解説
[編集]本条は「無効な法律行為」に関する規定である。無効な行為は、法律上まったく成立しないものであり、当事者の意思によってこれを有効にすることはできない。したがって、当事者がそれを追認しようとしても、追認することは許されない。なぜなら、当事者の意思によって「無」(存在しないもの)を「有」(存在するもの)に変えることはできないからである。
したがって、当事者がもしその行為によって達しようとした目的を実現したいのであれば、改めて新しい行為を行わなければならない。そして、当事者がその行為が無効であることを知りながら(悪意で)、あえてそれを追認する意思を示した場合には、法律はその意思表示を「新たな行為を行おうとする意思」とみなすのであり、旧行為を有効とする追認の効果が発生するものではない。仮に追認が認められるとして旧行為を追認した場合と、新たに行為をした場合とでは、法律上大きな違いがある。たとえば、所有権移転を目的とする行為の場合、その所有権は旧行為の時点からではなく、新しい行為をした時点から初めて移転する。
施行が見送られた旧民法のもとでも、本条とほぼ同じ結果が生じていたが、フランス方の影響が強い旧民法では「自然義務(obligatio naturalis, obligation naturelle)」という概念を認めていた。つまり、無効な行為からも一種の自然義務が生じ、その後の新たな行為によってそれを追認すれば、自然義務が「法的強制力をもつ義務(obligation civile)」となるとされていた。しかし、新民法(現行民法)では自然義務という概念を認めていない。したがって、この「新たな行為」は純粋に新しい法律行為であり、旧行為とは何ら法律上の関係を持たないものと解されなければならない。
関連条文
[編集]参考文献
[編集]判例
[編集]- 転付債権請求(最高裁判決 昭和52年03月17日)民法第466条,民法第467条
- 譲渡禁止の特約のある指名債権を譲受人が特約の存在を知つて譲り受けたのち債務者がその譲渡につき承諾を与えた場合と承諾後債権の差押・転付命令を得た第三者に対する右債権譲渡の効力
- 譲渡禁止の特約のある指名債権を譲受人が特約の存在を知つて譲り受けた場合でも、債務者がその譲渡につき承諾を与えたときは、債権譲渡は譲渡の時にさかのぼつて有効となり、譲渡に際し債権者から債務者に対して確定日付のある譲渡通知がされている限り、債務者は、右承諾後に債権の差押・転付命令を得た第三者に対しても債権譲渡の効力を対抗することができる。
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