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民法第136条

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

法学民事法民法コンメンタール民法第1編 総則 (コンメンタール民法)民法第136条

条文

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期限の利益及びその放棄)

第136条
  1. 期限は、債務者の利益のために定めたものと推定する。
  2. 期限の利益は、放棄することができる。ただし、これによって相手方の利益を害することはできない。

解説

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期限は、債務の履行等の猶予であるから、一般的には債務者の利益である。したがって、債務者は任意にその利益を放棄できる。ただし、期限の設定により相手方に利益が生じている場合にはそれを害することはできない。反対に解釈すれば、相手方の利益を補償することのみが放棄の条件であるとも言える(判例)。

例を挙げると、AがBに「1000万円を借り受け、1年後の○年○月○日に1030万円返済する」と約した場合で、半年後、Aに資金返済の目処が立ったので期日前返済をしたいという場合、Bにとっては、1年で30万円の利益を期待していたという事情があるため、契約が期間利息を定める内容などになっていないかぎり、Bは1030万円を請求できる。なお、AがBの要求に応じて半年後に1030万円を返済した場合、30万円は期間計算の基礎を半年としたみなし利息として計算され、利息制限法に定める限度額を超過する場合、その部分は無効となる。

参照条文

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判例

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  1. 大審院判決昭和9年9月15日 民集13巻1839頁
    期限の利益が債権者・債務者双方にある場合、債務者一方の意思により期限の利益を放棄できるか。
    定期預金の返還期が当事者双方の利益の為に定められたる場合と雖も預り主は預け主が該返還期までに享くべき利益の喪失を填補したるときは一方的に該返還期の利益を放棄することを妨げざるものとす
    • 定期預金の返還期が当事者双方の利益のために定められた場合でも、債務者である預金受入者(銀行)は、返還期までの約定利息を支払うなど、債権者である預金者が返還期の未到来によって享受する利益の喪失を補填することで、自己の返還期に関する利益を一方的に放棄することができる。
  2. 不当利得請求事件(最高裁判決 平成15年07月18日)利息制限法第1条1項,利息制限法第2条,利息制限法第3条,民法第488条,民法第489条(改正により趣旨は第488条に吸収),民法第491条
    1. 信用保証会社の受ける保証料及び事務手数料が貸金業者の受ける利息制限法3条所定のみなし利息に当たるとされた事例
      貸金業者甲の受ける利息,調査料及び取立料と甲が100%出資して設立した子会社である信用保証会社乙の受ける保証料及び事務手数料との合計額が利息制限法所定の制限利率により計算した利息の額を超えていること,乙の受ける保証料等の割合は銀行等の系列信用保証会社の受ける保証料等の割合に比べて非常に高く,乙の受ける保証料等の割合と甲の受ける利息等の割合との合計は乙を設立する以前に甲が受けていた利息等の割合とほぼ同程度であったこと,乙は甲の貸付けに限って保証しており,甲から手形貸付けを受ける場合には乙の保証を付けることが条件とされていること,乙は,甲に対し,保証委託契約の締結業務,保証料の徴収業務,信用調査業務及び保証の可否の決定業務の委託等をしており,債権回収業務も甲が相当程度代行していたことなど判示の事実関係の下においては,乙の受ける保証料等は,甲の受ける利息制限法3条所定のみなし利息に当たる。
    2. 同一の貸主と借主との間で基本契約に基づき継続的に貸付けが繰り返される金銭消費貸借取引において借主が一つの借入金債務につき利息制限法所定の制限を超える利息を任意に支払ったことによって生じた過払金と他の借入金債務への充当
      同一の貸主と借主との間で基本契約に基づき継続的に貸付けが繰り返される金銭消費貸借取引において,借主が一つの借入金債務につき利息制限法所定の制限を超える利息を任意に支払い,この制限超過部分を元本に充当してもなお過払金が存する場合,この過払金は,当事者間に充当に関する特約が存在するなど特段の事情のない限り,民法489条及び491条の規定に従って,弁済当時存在する他の借入金債務に充当され,当該他の借入金債務の利率が利息制限法所定の制限を超える場合には,貸主は充当されるべき元本に対する約定の期限までの利息を取得することができない。

前条:
民法第135条
(期限の到来の効果)
民法
第1編 総則

第5章 法律行為

第5節 条件及び期限
次条:
民法第137条
(期限の利益の喪失)
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