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民法第256条

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

法学民事法民法コンメンタール民法第2編 物権

条文

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共有物の分割請求)

第256条
  1. 各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、5年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。
  2. 前項ただし書の契約は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から5年を超えることができない

解説

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共有物分割についての規定である。

共有者間に共有物の管理、変更等をめぐって、意見の対立、紛争が生じやすく、いったんこのような意見の対立、紛争が生じたときは、共有物の管理、変更等に障害を来し、物の経済的価値が十分に実現されなくなるという事態となるので、本条は、かかる弊害を除去し、共有者に目的物を自由に支配させ、その経済的価値を十分に発揮させるため、各共有者はいつでも共有物の分割を請求することができるものとしている。 また、2項により共有者の締結する共有物の不分割契約について期間の制限を設け、不分割契約は当該期間の制限を超えたら効力を有しないとして、共有者の共有物の分割請求権が保障されている。

立法の趣旨・目的

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森林法共有林事件 昭和62年04月22日最高裁判所大法廷判決民集 第41巻3号408頁

  • 共有とは、複数の者が目的物を共同して所有することをいい、共有者は各自、それ自体所有権の性質をもつ持分権を有しているにとどまり、共有関係にあるというだけでは、それ以上に相互に特定の目的の下に結合されているとはいえない。
  • 共有の場合にあつては、持分権が共有の性質上互いに制約し合う関係に立つため、単独所有の場合に比し、物の利用又は改善等において十分配慮されない状態におかれることがあり、また、共有者間に共有物の管理、変更等をめぐつて、意見の対立、紛争が生じやすく、いつたんかかる意見の対立、紛争が生じたときは、共有物の管理、変更等に障害を来し、物の経済的価値が十分に実現されなくなるという事態となるので、同条は、かかる弊害を除去し、共有者に目的物を自由に支配させ、その経済的効用を十分に発揮させるため、各共有者はいつでも共有物の分割を請求することができるものとし、しかも共有者の締結する共有物の不分割契約について期間の制限を設け、不分割契約は右制限を超えては効力を有しないとして、共有者に共有物の分割請求権を保障している。
  • 共有物分割請求権は、各共有者に近代市民社会における原則的所有形態である単独所有への移行を可能ならしめ、上記公益的目的をも果たすものとして発展した権利であり、共有の本質的属性として、持分権の処分の自由とともに、民法において認められるに至つたものである。

参照条文

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判例

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  1. 共有物分割請求(最高裁判決 昭和30年05月31日)民法第898条民法第258条民法第906条民法第907条,旧民法第1002条家事審判法第9条乙類10号,家事審判規則第104条家事審判規則第107条
    1. 相続財産の共有の性質
      相続財産の共有は、民法改正の前後を通じ、民法第249条以下に規定する「共有」とその性質を異にするものではない。
    2. 遺産分割の方法
      遺産の分割に関しては、民法第256条以下の規定が適用せられる。
  2. 登記申請却下処分取消請求 (最高裁判決  昭和42年08月25日)不動産登記法39条ノ2
    共有物分割の結果不動産の一部について単独所有権を取得した場合の登記方法
    共有物分割の結果不動産の一部について単独所有権を取得した場合には、分筆登記を経由したうえで、権利の一部移転の登記手続をすべきである。
  3. 森林法共有林事件(最高裁判決 昭和62年04月22日)憲法29条民法第258条、森林法第186条(削除)
    • 森林法第186条(当時、現在は本判決を受け削除)
      森林の共有者は、民法(明治29年法律第89号)第256条第1項(共有物の分割請求)の規定にかかわらず、その共有に係る森林の分割を請求することができない。ただし、各共有者の持分の価額に従いその過半数をもって分割の請求をすることを妨げない。
    森林法186条本文と憲法29条2項
    森林法186条本文は、憲法29条2項に違反する。

前条:
民法第255条
(持分の放棄及び共有者の死亡)
民法
第2編 物権

第3章 所有権

第3節 共有
次条:
民法第257条
(共有物の分割請求)
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