民法第898条
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法学>民事法>コンメンタール民法>第5編 相続 (コンメンタール民法)
条文
[編集](共同相続の効力)
- 第898条
改正経緯
[編集]2021年改正にて第2項が追加され、以下の判例を吸収。
- 損害賠償請求 (最高裁判決 昭和29年04月08日) 民法第899条
- 相続財産たる金銭その他の可分債権と共同相続人の分割承継
- 相続人数人ある場合において、相続財産中に金銭の他の可分債権あるときは、その債権は法律上当然分割され各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継するものと解すべきである。
- 共有物分割請求 (最高裁判決 昭和30年05月31日)民法第906条、民法第907条
解説
[編集]- 相続人が複数あるときは、相続財産は遺産分割が完了するまで相続人による共有となる。明治民法第1002条を承継。
- 遺産分割まで、相続財産について共有に関する規定を適用するときは、第900条から第902条までの規定(遺言及び法定相続)により算定した相続分をもって各相続人の共有持分とする。この場合、寄与分及び遺留分については適用がなされていない点に留意する必要がある(参考判例)。
参照条文
[編集]判例
[編集]- 貸金請求(最高裁判決 昭和34年06月19日)民法第427条,民法第432条,民法第899条
- 連帯債務の相続
- 連帯債務者の一人が死亡し、その相続人が数人ある場合に、相続人らは、被相続人の債務の分割されたものを承継し、各自その承継した範囲において、本来の債務者とともに連帯債務者となる。
- 登記抹消登記手続請求(最高裁判決 昭和38年02月22日)民法第177条、民法第249条
- 共同相続と登記
- 甲乙両名が共同相続した不動産につき乙が勝手に単独所有権取得の登記をし、さらに第三取得者丙が乙から移転登記をうけた場合、甲は丙に対し自己の持分を登記なくして対抗できる。
- 共有持分に基づく登記抹消請求の許否
- 右の場合、甲が乙丙に対し請求できるのは、甲の持分についてのみの一部抹消(更正)登記手続であつて、各登記の全部抹消を求めることは許されない。
- 当事者が所有権取得登記の全部抹消を求めている場合に更正登記を命ずる判決をすることの可否
- 右の場合、甲が乙丙に対し右登記の全部抹消登記手続を求めたのに対し、裁判所が乙丙に対し前記一部抹消(更正)登記手続を命ずる判決をしても、民訴法第186条(判決事項 現・民訴法第246条)に反しない。
- 共同相続と登記
- 売得金] (最高裁判決 昭和52年09月19日)民法第899条,民法第907条2項
- 共同相続人がその全員の合意によつて遺産を構成する特定不動産を第三者に売却した場合における代金債権の性質
- 共同相続人が全員の合意によつて遺産を構成する特定不動産を第三者に売却した場合における代金債権は、分割債権であり、各相続人は相続分に応じて個々にこれを行使することができる。
- 遺産確認(最高裁判決 昭和61年03月13日)民訴法第225条
- 遺産確認の訴えの適法性
- 共同相続人間において特定の財産が被相続人の遺産に属することの確認を求める訴えは、適法である。
- 保管金返還(最高裁判決 平成4年04月10日)民法第899条,民法第907条
- 相続人が遺産分割前に遺産である金銭を保管している他の相続人に対して自己の相続分相当の金銭の支払を請求することの可否
- 相続人は、遺産の分割までの間は、相続開始時に存した金銭を相続財産として保管している他の相続人に対して、自己の相続分に相当する金銭の支払を求めることはできない。
- 貸金 (最高裁判決 平成5年01月21日) 民法第112条,民法第117条,民法第896条
- 無権代理人が本人を共同相続した場合における無権代理行為の効力
- 無権代理人が本人を共同相続した場合には、共同相続人全員が共同して無権代理行為を追認しない限り、無権代理人の相続分に相当する部分においても、無権代理行為が当然に有効となるものではない。
- 遺留分減殺 (最高裁判決 平成8年01月26日)民法第907条、民法第964条、民法第1031条
- 遺言者の財産全部の包括遺贈に対して遺留分権利者が減殺請求権を行使した場合に遺留分権利者に帰属する権利の性質
- 遺言者の財産全部の包括遺贈に対して遺留分権利者が減殺請求権を行使した場合に遺留分権利者に帰属する権利は、遺産分割の対象となる相続財産としての性質を有しない。
- 土地建物共有物分割等(最高裁判決 平成8年12月17日)民法第249条,民法第593条,民法第703条,民事訴訟法第185条
- 遺産である建物の相続開始後の使用について被相続人と相続人との間に使用貸借契約の成立が推認される場合
- 共同相続人の一人が相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物において被相続人と同居してきたときは、特段の事情のない限り、被相続人と右の相続人との間において、右建物について、相続開始時を始期とし、遺産分割時を終期とする使用貸借契約が成立していたものと推認される。
- なお、2018年改正によって、相続人たる配偶者については「配偶者居住権」の制度が法定された。
- 預託金返還請求事件(最高裁判決 平成17年09月08日)民法第88条2項,民法第89条2項,民法第427条,民法第601条,民法第896条,民法第899条,民法第900条,民法第907条,民法第909条
- 共同相続に係る不動産から生ずる賃料債権の帰属と後にされた遺産分割の効力
- 相続開始から遺産分割までの間に共同相続に係る不動産から生ずる金銭債権たる賃料債権は,各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得し,その帰属は,後にされた遺産分割の影響を受けない。
- 土地所有権移転登記抹消登記手続請求事件 (最高裁判決 平成17年12月15日) 民法第249条,不動産登記法第66条,不動産登記法第68条
- 甲名義の不動産につき乙,Yが順次相続したことを原因として直接Yに対して所有権移転登記がされている場合において甲の共同相続人であるXが上記登記の全部抹消を求めることの可否
- 甲名義の不動産につき,甲から乙,乙からYが順次相続したことを原因として直接Yに対して所有権移転登記がされている場合に,甲の相続につき共同相続人Xが存在するときは,Yが上記不動産につき共有持分権を有しているとしても,Xは,Yに対し,上記不動産の共有持分権に基づき,上記登記の全部抹消を求めることができる。
参考
[編集]明治民法において、本条には親権失権の宣告の取消しに関する以下の規定があった。趣旨は、民法第836条に継承された。
- 前二条ニ定メタル原因カ止ミタルトキハ裁判所ハ本人又ハ其親族ノ請求ニ因リ失権ノ宣告ヲ取消スコトヲ得
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