特許法第121条

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特許法第121条

拒絶査定不服審判について規定している。

条文[編集]

(拒絶査定不服審判)

第121条 拒絶をすべき旨の査定を受けた者は、その査定に不服があるときは、その査定の謄本送達があつた日から3月以内に拒絶査定不服審判を請求することができる。

2 拒絶査定不服審判を請求する者がその責めに帰することができない理由により前項に規定する期間内にその請求をすることができないときは、同項の規定にかかわらず、その理由がなくなつた日から14日(在外者にあつては、2月)以内でその期間の経過後6月以内にその請求をすることができる。

解説[編集]

拒絶査定不服審判とは、審査官が下した拒絶査定(49条)の妥当性について審理判断する準司法的行政手続をいう。

特許法は、真に産業の発達に寄与する発明を保護すべく(1条)、審査主義を採用している(47条)。そのため審査官が実体審査を行っており、出願に拒絶理由が存在すれば審査官がその出願に対し拒絶査定をする。 しかし、出願人の対応の不備や審査官の誤判が存在しないことは保証できず、拒絶査定に対し何ら不服申立手段を認めないことは出願人にとって酷であり、発明の保護に欠け産業の発達を阻害し法目的(1条)に反することになる。

ここで、不服の申立ては一般には行政不服審査法によるが、発明が特許要件を満たすか否かの判断は専門的になる場合もあり、同法による不服申立て手続きを採用することは必ずしも妥当とはいえない。

そこで、特許法は拒絶査定に対する不服申立手段として、拒絶査定不服審判制度を設け、準司法的手続に基づいて審判官の合議体に審理・判断させることとした。

要件[編集]

主体[編集]

拒絶査定を受けた者すなわち出願人である(本条1項)。本審判は拒絶査定を受けた者を保護するための審判であるからである。 共同出願の場合は、出願人全員で請求しなければならない(132条3項)。審決は合一にのみ確定すべきであるからである。

客体[編集]

審査官がした拒絶査定という行政処分である(本条1項)。その際、補正却下決定に対する不服申立てを伴わせることができる(53条3項ただし書)。出願審査の迅速化から出願審査中にされた補正却下決定について単独で不服を申し立てることができない(同項本文)代わりに、通常出願審査中の補正却下決定は拒絶査定に直結している[1]ことから本審判においてかかる不服の申立てを認めたものである。

なお、特許査定(51条)に対しては不服を申し立てられない。特許査定には不服が無いとするのが建前である。特許査定となった特許請求の範囲が思っていたものより狭かったのであれば、分割出願(44条1項2号)をし、特許請求の範囲の一部に本来権利化できないはずのものが含まれている場合には、訂正審判を請求することになる。

時期[編集]

拒絶査定の謄本送達日から3月以内に請求しなければならない(本条1項)。この3月の期間に対し、地理的不平等から出願人を救済するため延長が認められ(4条)、不可抗力から出願人を救済するため追完が認められる(本条2項)。


謄本送達日から3月の期間は、出願人に対する手続保障と特許権付与の迅速化の両観点を勘案して定められている。特許権付与までの期間を短くするには審判請求期間も短くしたほうが良いことになるが、短ければ(請求期間の延長が認められることもないわけではないが)拒絶査定の当否を検討することなく本審判を請求せざるをえず、補正もおざなりなものになりかねず、結果として審理期間が長くなることも考えられ、かえって出願人に酷となるといえるからである。また、平成19年7月に出された「行政不服審査制度検討会最終報告」の内容、諸外国における同様の不服制度の請求期間の長さも考慮している[2]

手続の迅速な解決の観点からは、この3月が経過すれば、係る特許出願は特許庁に係属しなくなり、本審判の請求は審決により却下すべきであるといえる。しかし、出願人の事情によっては、本来の請求期間を徒過したからといって拒絶査定不服審判の請求を認めないことは、著しく不当であると考えられるので、民事訴訟法の追完の規定に倣って、特定の場合に限り救済を認めることとしている。この特定の場合とは、特許出願人が「その責めに帰することができない理由により前項に規定する期間内にその請求をすることができない」(本条2項)場合であり、たとえば、天災地変、通常の注意力を有する特許出願人が通常期待される注意を尽くしても、なお請求期間を徒過せざるを得なかったような場合[3]などが考えられる。 なお、この点、裁判所では、天災地変その他客観的に避けることのできない事故のほか、通常の注意力を有する当事者が万全の注意を払っても回避できない事情を意味すると解しているが(東京高等裁判所平成15年6月9日判決ほか)、特許庁の見解と大きく違いがあるようには見えない。

手続[編集]

請求の趣旨、請求の理由など所定の事項を記載した審判請求書(施規41条1項、様式61の6)を特許庁長官に提出しなければならない(131条)。 また、所定の審判請求料を納付しなければならない(195条2項、別表16号、手数料令1条2項16号)。この審判請求料は審判請求時の請求項の数を変数とする一次関数の解として求められる。特許庁内での事務処理のほか、審判合議体は請求項に記載された発明の特許要件の充足性だけでなく明細書図面の妥当性も審理しなければならず(49条4号、36条参照)、また、請求項の数が増えるにしたがって、審判合議体が審理する対象も増え、彼らの作業量が増加するからである。

ここにいう「請求項」とは拒絶理由のある請求項ではなく、特許請求の範囲に記載されたすべての請求項である。これは、査定という行政処分は請求項がいくつあっても1つの処分であり、また審査段階において拒絶理由が発見されていなかったまたは拒絶理由が発見されていたとしてもそれが解消していた請求項に対しても改めて特許要件の充足性を審理する(153条1項参照)からである。 審判請求時に請求項を削除・追加する補正をした場合は補正後の請求項の数が基準となる[4]。また、審判請求後にした補正により請求項の数が増加したときは、増加分の審判請求料の納付が必要となる[4]。ただし、それ以前に請求項の数を減らす補正をしていたときは、審判請求後最も多かった請求項の数よりも多くならない限り、追加の審判請求料の納付をする必要は無い[4]

効果[編集]

特許出願が拒絶査定不服審判に係属する。

審理の主体[編集]

方式審理は審判長が審理する(133条133条の2)。判断に慎重を期し審理の客観性を担保するため、適法性審理(135条)および実体審理は3人または5人の審判官の合議体が審理する(136条)。

審判の公正を担保するため、一定の場合には審判官の除斥・忌避が認められる(139-144条)。

審理の内容[編集]

方式審理(133条133条の2)、適法性審理(135条)の後、拒絶査定の適否を審理する。

この審理は、特許庁への出頭による負担を免除する意図や、主張内容の理解が容易になると考えられることから、出願人と審判合議体間での書面のやりとりによる進行(145条2項本文、書面審理)が原則である。ただし、出願人から直接話を聞けば真相の把握が容易となり審理に資すると判断されれば口頭審理となる場合がある(同項ただし書)。また、条文上の規定は無いが、審査段階と同様、出願人が審判官と面接の機会をもつこともある。

また、審決の対世的効力に鑑み、職権主義が採用されている(150-153条)。 さらに、審判経済上の要請から、続審主義を採用している(158, 159条)。

答弁書提出、参加の制度はない(161条において134条1項、148, 149条を準用せず)。当事者対立構造を採らないため認める必要性が乏しいからである。


拒絶査定不服審判の請求と同時に特許請求の範囲などを補正した場合は、まず前置審査に係属する。特許査定ができない場合にのみ、審判合議体による審理が行われる(137条1項かっこ書参照)。

審判の終了[編集]

原則として、審理終結通知(156条)の後、請求認容または請求棄却の審決によって終了する(157条)。 不適法な請求で補正ができない場合は、却下審決により終了することもある(135条)。 また、請求却下の決定(133条)、請求の取下げ(155条)、特許出願の放棄・取り下げ、実用新案登録出願・意匠登録出願への変更(実10条意13条[5]によっても終了する。

拒絶査定が維持できるか否かを自判するのが原則であるが、出願人に審級の利益を確保する必要があるような例外的な場合には、いわゆる差し戻し審決と呼ばれる審査に差し戻す旨の請求認容審決がされることもないわけではない(160条1項)。

棄却・却下審決、請求却下決定に不服がある場合は、東京高等裁判所に訴えを提起することができる(178条)。

前置審査において特許査定となる場合は、審査官が拒絶査定を取り消して(164条1項)、特許査定をする(163条3項で準用する51条)。

審決確定の効果[編集]

請求認容審決は、審決の謄本送達がされた時に確定する。通常は特許審決(159条3項で準用する51条)であり、この場合は、原則として第1年から第3年分を含む特許料の納付を条件に設定登録され(66条)、特許権が発生する。 差し戻し審決の場合は再度出願が審査に係属する。なおその際、審査官は審決の判断に拘束される(160条2項)。

棄却審決または却下審決は不服申立手段が尽きたときに確定する。

確定審決に対する非常の不服申立手段として再審がある(171条)。


前置審査において特許査定となる場合もその謄本の送達時に確定する。

改正履歴[編集]

  • 平成6年法律第116号 - 在外者の追完を認める期間の緩和(2項かっこ書追加)
  • 平成15年法律第47号 - 名称付与に伴う修正(見出し含む)
  • 平成20年法律第16号 - 請求可能期間の延長(1項)

平成6年改正では、地理的不平等是正の観点から、在外者がその責めに帰することができない理由(不責事由)により拒絶査定不服審判の請求ができなかった場合に追完ができる期間を14日から2月に延長した。もっとも、本来の拒絶査定不服審判の請求期間経過後6月が経過した後はかかる理由が存在したとしても追完ができないことに変更はない。

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関連条文[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 補正が却下されると特許出願はその補正前の状態になり、通常この状態では拒絶理由が存在する(53条1項参照)。このため、当該拒絶理由が解消していないとの理由から拒絶査定となる。
  2. ^ 特許庁総務部総務課制度改正審議室編『平成20年 特許法等の一部改正 産業財産権法の解説』発明協会(現発明推進協会)、2008、pp. 51-52
  3. ^ 特許庁編『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説』〔第20版〕発明推進協会、2017、pp. 400-401。
  4. ^ 4.0 4.1 4.2 審判便覧21-09
  5. ^ 出願変更により原特許出願が取り下げたものとみなされること(実10条5項、意13条4項)により審理対象が消滅するため。
前条:
120条の8
特許法
第6章 審判
次条:
123条
122条


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